たとえばこんな後日談
正しいエンディング静編の後日談
しりとり
♪あ・る・こ〜あ・る・こ〜。わたっしはーげんきー♪
「弁慶さん〜元気がいいですね〜」
「空元気だよ」
「船に乗っていたときには〜ずいぶんと〜元気なかったですよ〜」
「・・・ごめん、平安の船があんなに揺れるとは思わなかったよ」
「船というのは〜時化が来れば〜あのようなものです〜」
そう、俺たちは、静さんの故郷を探すために、南方交易船に乗って
東南アジアへと旅立つ・・・はずだった。
はずだったんだけど、嵐にあって俺が船酔いでダウンしてしまった。
それで、仕方がないから日本を旅している。
仮にも脱走兵で、なぜか弁慶って有名人らしいから、
目をつけられてるっぽいんだよな。
俺、別に、何も目立つ事なんてしてないぞ。
なんでこんなに有名になってしまったんだろう。
「海を渡って〜至近距離から〜矢を二人がかりで射てみたり、
景時さんを〜海に〜たたき落としてみたり、
教経さんに〜弁慶〜弁慶〜と〜連呼されたりすれば、
自然に〜有名になります〜 」
「そういえばそんな事もあったね。
それってそんなに凄い事だったんだ」
「はい〜凄いことなんです〜」
確かに、あの、至近距離まで接近して矢を射たのはやりすぎだと思ったな。
なんとかっていうシューティングゲームだと、大軍のぶつかり合いでは勝てないから
単機突っ込んで敵心臓部を撃破するっていう設定のがあったけど、
それと同じような感じで九羅香達と一緒に平家の軍船に切り込んで射たんだった。
俺たちの突撃で源氏の志気が上がって状況が一変したんだから、
有名になってもおかしくないのかもしれない。
・・てくてくてく・・・
・・・・・・・・・・・
「あの〜弁慶さん〜」
「・・・・あ、なに静さん」
「なにも〜話すことが〜なくなりましたね〜」
「そういえば、そうだね」
「知ってますか〜」
「なにを？」
「黙々と歩くと〜疲れやすくなりますよ〜」
「そうかもね」
「なにか〜話しながら〜歩きましょう〜」
「・・話すって、なにをしようかな？」
「なんでもかまわないです〜」
「・・じゃ、しりとりでもしようか」
「はい〜しりとりですか〜」
「そう。しりとり・・・知ってる？」
「いつか〜弁慶さんから〜聞いたような気がします〜」
「そうなんだ。じゃ・・・どっちから？」
「そうですねえ〜どちらでも〜かまわないです〜」
「じゃ、俺から行こうか・・・なんの言葉がいい？」
「食べ物にしてみましょうか〜」
「みかん」
・・・・・・・・・
「いきなり〜おわっちゃいました〜」
「じゃ、静さんがやってよ」
「はい〜いいですよ〜ナンキン」
「・・・・・・・・・」
「では〜弁慶さんの番です〜」
え、ええと・・・
「じゃあ。・・・田楽」
「くりきんとん」
・・・・・・・
「どうしました〜弁慶さんの番ですよ〜」
「あの、静さん？」
「なんでしょう〜」
「しりとりって、本当に知ってる？」
「はい〜しりとりというのは〜前の人の言葉の最後の音を
次の言葉の頭につないでいく〜遊びですよね〜」
「そ、そうなんだけど・・・」
「んがついたら〜んから始まる言葉を使えば〜いいんですか〜」
「・・・・・いや、ん、が着いたら負けなんだけど・・」
「そうなんですか〜最初に弁慶さんが〜みかん、というから〜
てっきり〜そういうものだと〜」
「ご、ごめん。たまたまミカンの木を見たから言っちゃただけだよ」
「そうなんですか〜」
え？
「静さん。もしかして・・・知っててわざと？」
「なにがでしょう〜」
「なにがって・・・だから、しりとりのルール」
「ルールって・・どういう意味ですか？」
「ルールって言ったら、・・・規則かな。約束事っていうのがいいのかな」
「ええ〜前に〜弁慶さんと〜したことがあるはずです〜」
「・・じゃ、知ってたんだ」
「はい〜前に弁慶さんと〜やった時の事は〜知ってますけど〜
新しいやり方かと〜思いまして〜」
「いや、そんなんじゃないって」
「からかってみたんです〜」
「からかってって・・・静さん〜」
静さんはなぞめいた笑顔を見せるだけだった。
その顔を見て、肩に入っていた力がすっと抜ける。
平成の基準からすれば細い山道でしかない街道を
俺たちは笑いながら歩き続ける。
いつまで？そんなことは分からない。
多分、旅をすることが今の俺たちの生活そのものなんだろうと思う。
その先に何が待ってるか。そんなことは今の俺たちには関係ない。
静さんといっしょにいる。俺に必要なことはそれだけだから。
おしまい
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