「お約束ですけど、武器を捨てて投降してください。抵抗しなければあなたたちには弁明の機会が与えられます」
「弁明の機会、ね。あんまり弁明する必要も感じてないわ」
「なら、実力で捕縛します」

そう言うなり、フェイトはカレンに突撃をかける。さすがに管理局でも屈指の速さを誇るだけのことはある。
カレンが身構えるより先にサンダーレイジをお見舞いする。

半拍遅れて突撃をかけたのが、エリオだ、こちらも速さでならフェイトに負けず劣らずである。
だが、半拍遅れてるだけにエリオの方はヴェイロンに防御される。

『姉貴、これは引いた方がよさそうだ。これ以上ここで粘っても得るものはないぜ』
『そうね、足手まといを抱えて、数的に劣勢、ここが引き時かもね』
『ちょ、足手まといってなによ』
『あなたは貴重な人材ってことよ』
『それならよし』
『話はまとまったな』

フッケバインの方は話がまとまった。
確かに、ハーディス氏一人にも手こずっていたのに、さらに管理局員まで相手にしていては
面倒が増えるだけに間違いはないのだ。

「ふーん、エクリプス感染者に有効な攻撃を加えてるね。管理局も研究が進んでるみたいだな」
「どうしました、ハーディス容疑者」
「いや、なに、こっちのことさ。それより、この手錠ははずしてくれないかね」
「状況が状況なのでご理解ください」

そう言ってるのはキャロである。キャロはハーディス氏を現場から連れ出そうと誘導中だ。
上空ではヘリが待機、操縦しているのはアルト、狙撃態勢にはいってるのはヴァイスである。
ハーディス氏と接触を禁じられてるので、トーマとリリィは手持ちぶさたにヘリに乗っている。
一方アイシスは、バックアップ要員としていつでも現場に介入できるよう待機している。

「そういえば、トーマはどうしてるのかな？」
「答える義務はない」
「あ、そ。でも、一つ忠告しておくわ。あの子はハーディス氏と接触させないことね」
「？」
「忠告っていうと、上から目線かな。お願いっていう方がいいかしら。
　カレンさんからの、お・ね・が・い」
「姉貴っ！」
「了解！」

ハーディス氏はキャロに護送されて扉の外に出ようとしている。
それを見たカレンは頃合いよしとみて闘争の準備に入る。

『灰かぶり！』

カレンは煙幕を張って視界を遮る。
逃走準備はこれで完了。あとは逃げるだけ……のはずだった。

が、それはもう一人の人物にとっても、チャンス到来を意味していた。

「あ……」

ハーディス氏は手錠を外すと、ソニカのそばへディバイダーを構えて突っ込んでいた。

「君、邪魔だよ」

視界はない、フッケバインは逃走にかかってる。当然管理局員からも見えてない。
ソニカは戦闘要員ではない。絶体絶命。もしかして、あたし詰んでる？

「外道のやることなんざお見通しだぜ」

ヴェイロンがソニカとハーディス氏との間に割って入る。

「貴様……」

ハーディス氏にも、あまり時間はない。
フッケバインはすぐに逃走する。一般市民という建前は、もう手錠を外した時点で通用しない。
ヴェイロンを殺し、さらにソニカを殺すだけのゆとりがあるか？

答えはすぐに出た。

「おまえだけか」
「ヴェイ！　ソニカ！　行くよ！」

カレンが転送を仕掛ける。

結果は？

「なんとか、ただ働きだけは避けられたけど……ソニカ、ヴェイ、無事？」
「あたしは無事、ヴェイがかばってくれたから。
　だけど、ヴェイは心臓をもってかれた、かなりやばい、このままじゃヴェイが死んじゃう！」

そう、ハーディス氏は賢明にも二兎を追うことを避け、ヴェイロン一人を確実につぶすことにしたのだ。
心臓を取り戻さなければヴェイロンは死ぬ。ソニカが言うのだからそうなのだろう。

 

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