「はーい、よい子の特務六課のみんな、覚えてるかな、カレンお姉さんだよ〜。
　いやいや、そういきり立たなくていいからね。今日はみんなに大事な情報を教えて上げようっていうんだから。
　ここは、ヴァンディンコーポレーション、第八企画室。そこに転がってるのは、企画室長だった、……名前はなんていったかしら。
　忘れちゃった。まあいいわ。そちらで調べればわかるでしょ。
　とにかく、その人から大事な情報を集めたのよ。
　生体リアクターシュトロゼックシリーズ、４体が現在稼働中でいろんな世界にちらばってるみたいね。
　あと、こっちでも調査はしてるけど、ヴァンディンコーポレーションの科学者連中って結構無能みたいね。
　エクリプス因子適合者の遺伝因子についての情報は断片的にしかもってなくて、結構スカも引いてるみたい。
　ということはぁ……エクリプス因子不適合での死者も結構出してるってことね。
　ま、こんな馬鹿げた研究やってるようなとこは、ぶっつぶした方が世のためってのは、よい子のみんなならわかるわよね。
　そして、ヴァンディンコーポレーションをぶっつぶす、なんてことが、管理局の一部局には不可能だってことも。

　だ・か・ら。
　犯罪組織フッケバインが代わりにやったげる。管理局の出る幕じゃないわよ。こういうことはね。
　これも世直しの一つよ。納得はできないだろうけど、理解はしてね。
　ま、プロレスは上等だけど、本気にはならないでちょうだい、じゃ」

---

「とまあ、こういうビデオメールが機動六課と、本局に送りつけられて来ました。

「弱ったなぁ。本局にまで送りつけられたら、まるで私らがフッケバインとなれ合ってるみたいや」
「前回取り逃がしたのも、民間人を救出することと引き替えに逃走を黙認したんじゃないかと言われてるぐらいですからね」
「まあな。相手が民間人を放出したのが僥倖っちゃ僥倖やったんよ」
「でも、民間人確保が最優先なのは当然ですよね」
「せや、民間人に犠牲出してフッケバイン捕まえるっちゅうわけにもいかんからな。
　その意味じゃ、人質戦術とってこられんで済んで助かったとは思うわ」
「それで、この件をふまえて、方針はどうするんですか」
「どう……っていうてもな、どっちにせよフッケバインを相手にするには戦力が不足や。
　私は負傷、シグナムとヴィータも治療中、ヴォルフラムは修理中、ACE装備も第５世代デバイスも未完成状態なのが露呈したし
　九羅香さんは重傷やし……こんな状態でフッケバインとぶつかっても勝ち目ないやろ。
　普通に戦えるようになるまで、まだ時間が必要や。なんとか、時間を稼ぐ必要があるんよ」
「時間を稼ぐ必要ですか……」
「フッケバインは強い、間違いなくな。ベストな状態で戦える必要があるわ」
「そうですね。ほぼベストメンバーで挑んだあの戦いで、勝ちきれなかったわけですから」
「そうやな……相手の戦力がわからんじょうたいで当たったちゅうのは別にしても、装備は不完全やったし、連携も今一やった。
　ほんまに猫の手もかりたし、トーマやアイシスの手も借りな間に合わんやろな」
「次はギンガさんや私も参加できるようにがんばります」
「その、がんばるいうんは、糸を一本に寄り合わせる言う意味か？」
「ええ、もちろん」
「そうか、それならええんやけどな」
「それにしても、彼らの情報は信憑性あるものなんでしょうかね」
「シュトロゼックに関する情報かいな」
「ええ、稼働中のシュトロゼックが４組だの、エクリプス因子不適合による犠牲者多数だのといった情報は
　どこまで信用していいんでしょう？」
「それを調べるのがティアナの仕事やろ」
「それもそうですね。かといって、正面から聞いても素直には答えてくれないでしょうね」
「答えてはくれへんやろうな。せやけど、工場襲撃っちゅう事実はある。そこの現場検証から入って
　なんとか、手がかりを見つけてくれへんか？」
「わかりました、そこを足がかりになんとか食い込んでみます」
「頼んだで」
「はい」

フッケバインからの情報。それは、ある意味、これからの自分たちの活動の通告だった。
だが、はいそうですか、といってそれを聞き流すことは、特務六課にはできなかった。
悪人といえども、法によって守られているのだから。

フッケバインも、ヴァンディンコーポレーションの非人道的研究所員達も。

 

---