「被害状況の報告は以上です、八神司令」
「はあ、……それにしてもずいぶん派手にやられたもんやなあ。船を直接叩かれたわけやないけど、シグナムとヴィータは重傷。
　救助した民間人も負傷、なによりディバイド・ゼロで乗員を叩かれた、これは痛かったなぁ」
「司令ご自身の負傷が抜けてますよ。一番の重傷じゃありませんか」
「まあ、ちょっと死にかけてもうたな。けど、自己治癒の魔法を掛けてある。歩くロストロギアは伊達やないんよ。
　けど、相転移で逃げられたら、もうフッケバインは捕まらんやろな。……いったん帰るしかないか」
「そうですね、八神司令」
「ルキノ！　本局へ舵をきってや、通常航行で」
「了解です、八神司令」
「ところで、トーマはどうしてる？」
「今、医務室で治療を受けてる最中です。リリィも一緒で、フェイトちゃんが一緒にいます」
「そっか、なのはちゃんももう休み。私は今から報告書書くから」
「今から？　怪我は大丈夫ですか、八神司令」
「……こっから先はプライベートタイムでええよ、なのはちゃん。
　大丈夫や、帰ったらゆっくり休む。……幸い、シャマルはトーマの方で忙しいみたいやからな。
　鬼がいぬまに仕事をすませとくわ」
「トーマくんの治療が終わったら、こっちに跳んでくると思うよ、シャマル先生」
「それまでになんとか下書きだけでもおわらせとかんとな。記憶が鮮明なうちに」
「書くことはいっぱいあるもんね」
「そうやな……かかないかんことは山積みや。とても休んでいられへんわ」
「ほどほどにね」
「シャマルが来るまでや。いやでもほどほどになるわ」
「では、失礼します」
「なのはちゃんもゆっくり休むんやで」
「私も私で報告書を書きますから」

宮仕えは報告書との戦いでもあった。
戦訓の積み重ねが、組織としての管理局の戦闘力を増してくれるのだから、ある意味
この報告書作りも、教導官として、そして司令としての大切な仕事でもあるのだが。

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さて、こちらはトーマ達である。

「３人とも、健康状態に問題はないみたいね。首の骨のヒビも、治癒魔法でちゃんとくっついてるわ。
　それに、エクリプス感染もまだ進行度は軽微みたい。これなら当分大丈夫よ」
「当分大丈夫って、そんなことがわかるんですか？」
「管理局だって、エクリプスについては調べてるのよ。感染者を確保するのは初めてだけど
　無限書庫で感染についての情報は手に入れてるし、自己対滅してしまった犠牲者の細胞なら手に入れてるわ。
　あなたたちが協力してくれるなら、案外早く、エクリプス感染者を救うことができるワクチンなり抗体なりの
　開発ができるかもしれないわね」
「協力するも何も、選択肢はないんでしょ、たぶん」
「そうね。管理局があなたたちを保護する、といえればいいんだけど、実態は逆かもしれないし」
「どういうことなんです？」
「管理局のやり方については多少知ってるわ。万年人手不足で、戦力になりそうなものならなんでも手当たり次第味方に引き入れるのよね。
　あたしらも、管理局に入れってことじゃないの」
「……建前上は、そうね。けど、今回はそればかりでもないのよ」
「建前上は？　フェイトさん、それはいったいどういうことなんです？」
「これは、管理局員が言っていいことじゃないけど、管理局自身が、どっちを向いているかわからないの。
　この事件は根が深いかもしれない。そのとき、管理局の誰が信頼できて、誰が信頼できないのか、それすらわからないのよ」
「自分の身は自分で守れ、ってこと？」
「そういうことになるわね。医療チームは信頼できると思うんだけど……」
「シャマル先生……」
「……管理局が信用で着ないじゃ、いったい何を頼ればいいんだろう……」
「とりあえず、自分を信じなさいって」
「自分が一番信じられないよ、こうなっちゃうとね」
「ごめんなさい、私のせいで、トーマを変なことに巻き込んでしまって」
「いまさらいいっこなし。リリィのおかげで助かったんだから」
「ありがとう、トーマ」
「いずれにせよ、管理局の保護を受ける以外、選択肢はないんですよね、フェイトさん」
「保護というか、管理局預かりということになるわね、スティード」
「自分探しの旅にでて、ぐるり一周して元に戻ってきたような気がする……」
「旅なんてそんなものよ、自分の家が一番って感じるようなもの……って、あたしも管理局預かり？」
「そうなるわね。実家の方に問い合わせましたよ。アイシス＝イーグレットさん。
　ただでさえフッケバインに面が割れてるし、安全を守るためだけでも、特務六課と一緒の方がいいだろうって」
「あ、そ……あー、なんか変なことに首つっこんじゃったかなぁ」
「ぼやかないぼやかない」

ヴォルフラムは本局へ向かっている、そこで得られるものは休息か、それとも……

 

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