「こちら玲奈、負傷した民間人の確保完了」

「こちら紅葉、民間人の負傷はかなりの深傷、魔法的応急処置は施しましたが

　緊急に治療を受けさせる必要があります」

『了解、こちらはやて、今シャマルをそっちに向かわせる。

　悪いけどヴォルフラムは手がはなせんのよ。なんとか、あと3分だけまってや』

「3分？　3分で片がつくの？」

『楓さん、3分も掛けてたら、取り逃がしてまうやろな』

 

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さて、こちらは逃亡中のフッケバインである。

 

「相転移まであとどれくらいです、ステラ」

 

ステラは、指を一本立てた。

 

「あと1分ですか。……とはいえ、あと1分であの少年を確保するのは難しそうですね」

 

次の瞬間、ステラの顔色が変わった。

メインモニタに、その理由が表示される。

それを見たフォルティスも顔色を変えた。

 

「これは……氷山？……だが、ここの海は氷山が出来るような海水温ではないはず。

　これは一体……」

 

理由はすぐに通信回線から入ってきた。

 

『こちら特務六課司令、八神はやてや、大質量による物理的打撃。対魔法防御だろうが

　通常の装甲だろうが、当たれば確実におだぶつ、や。

　30秒だけ時間をあげる。投降するか、昇天するか、二つに一つ、今すぐ選んでもらおうか』

「どっちが悪人だかわかったものじゃありませんね。……それがそっちの切り札ですか。

　でも、……同じことを考える相手が今までいなかったとでも思ってるんですか？」

 

そういうと、フォルティスは、アルに連絡を入れた。

 

「アル、大急ぎで、僕らの上にある氷山を吹っ飛ばしてください、時間がありません」

『わーったフォルティス、今すぐ全力射撃を加えてやるよ』

 

アルの全力砲撃が氷山に突き刺さると、氷山は蒸気へと変わった。

 

「へ、どんなもんだ。あんなもんこのアルさまにかかれば一撃だぜ」

「よそ見してる暇があるとおもってるのかい」

 

確かに、よそ見は危険だった、リーゼ・ロッテのけりがまともに延髄にはいる。

 

「ってーなぁ。使い魔風情のくせに生意気なんだよ」

「使い魔には使い魔の意地ってものがあるんでね」

「だてに教導隊は名乗ってないってこと」

「フェイト、そっちの筋肉だるまは任せたよ」

「わかった、アリアのじゃまはさせないようにする」

「頼んだよ」

「ええい、ちょろちょろと」

「使い魔風情相手に、ずいぶんと手こずるんだね」

「うっせー、すぐにその土手っ腹に風穴あけてやる」

 

半ばトーマそっちのけで、アルとロッテ、ビルとフェイトは戦いを続けていた。

 

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さて、こちらはヴォルフラムの艦上である。

ユニゾン状態のはやてが、シグナムとヴィータを従えて

シュベルトクロイツを構えている。

 

「氷山を蒸発させるか、さすがに一筋縄ではいかへんな。

　けど、それではいそうですか、ちゅうわけにもいかんのよ。

　さて、リィン、フルドライブや、特務六課の本気、みせてやるで」

「はいですぅ」

 

そういうと、はやては全力全開で魔力を放出する。

蒸気と化したはずの氷山が、再び氷の巨大な固まりへと変貌する。

 

「さあ、あと10秒や、さっき程度の砲撃やったら、こんどの氷山はびくともせえへんで。

　あと９，８……どうするんや」

「こうするのさ」

「主はやて！」

「さすがは烈火の将、気づいたか。おかげで急所を外した。この礼はさせてもらわねばな」

 

何が起きたって？

つまり、はやての腹部には刃が突き刺さっていて、その刃を突き立てた女性は

もう片手で、レヴァンティンの刃先を押さえているのだ。

もし、シグナムが気づくのが一瞬でもおそければ、はやての心臓を刃が貫いていたろう。

 

「はやてっ！」

「大丈夫やヴィータ、だてにユニゾンはしてへん。

　けど、氷山は……かわされたろうな」

「はやてちゃんっ！」

 

氷山の自由落下を見たなのはが振り返る。

 

「長居は無用」

「にがすと思うか、はやての敵だ」

「無駄につっかかってくるな」

 

はやてを貫いた刃が、こんどはヴィータを切り捨てた。

生身の人間なら即死だったろう。

 

「ヴィータちゃん！」

 

対艦攻撃用の砲弾でなのはは、突如現れた女性を撃つ。

だが、その砲弾すら、彼女は一刀のもとに切り伏せた。

続いて犠牲になるのはシグナムだった。

レヴァンティンごと、彼女の刃はシグナムの体を貫く。

 

「名乗るのが遅れたな、私はカレン、カレン＝フッケバイン。

　フッケバインのリーダーを務めさせてもらっている。

　アル、ビル、飛空艇に帰還しろ」

「帰還しろって、まだ坊主の収容ができてねぇ」

「あいつなら心配ない、……ここで管理局にとらわれることはない。

　そして、必ず我々の元に来る」

「……了解、そこまで言うなら信用しますかね」

「わかった、今から戻る」

 

アルとビルは、反転してした飛空艇フッケバインへと向かう。

ヴォルフラムの方は、飛空艇から距離をとらざるをえない。

 

「しばらくその命、預けておくぞ」

 

そういうと、カレンもまた、飛空艇へ向けて飛んでいった。

 

「はやてちゃん、ヴィータちゃん、シグナム、大丈夫？」

 

砲撃任務を忘れて、なのはは、はやて達の元へと急ぐ。

 

「心配ない、3人とも自力で医務室にはたどり着くわ。

　それよりなのはちゃんは砲撃をつづけてや。

　フッケバインの反撃で、ヴォルフラムを沈められるわけにいかん。

　ともかく、シャマルに民間人と紅葉さんたちの収容をするように

　つたえておかへんと」

「うん、わかった、ほかには？」

「フッケバインが逃げたら、あの少年の確保の方法を考えへんとな……」

「はやてちゃん、無理してしゃべらないで」

「なのはちゃん、まだ戦いは終わってへんのよ」

 

確かに、その通りだった、フッケバインはまだ逃げてはいないのだし

何より、銀十字に支配されている、トーマがそのままなのだから。

 

 

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