「何が起きてるんだ」

「ああ、また管理局がちょっかいを出してきたみたいですね。

　なに、すぐにまけますよ。このフッケバインに対抗できる

　管理局の艦船なんてありませんからね」

「すごい自信ですね」

「この飛空艇フッケバインには、あらゆる魔道攻撃を無力化する力があるんです。

　その戦力を魔道に頼っている管理局には、指一本ふれることすら出来ません」

「でも、もし、管理局が質量兵器を使ってきたら？」

「世界のバランスが崩れますね、トーマ君」

「世界のバランス……」

 

ずずん……

 

『フッケバイン全乗員に警報。管理局の攻撃により推力部損傷。

　総員戦闘態勢につけ、繰り返す総員戦闘体勢につけ』

「フォルティスさん、なんか打撃を受けたみたいですけど」

「みたいですね。これは、管理局も僕らに対して、本気を出してきたってことですか。

　すいません、トーマ君、戦闘配備がかかったんで、僕はちょっと出かけてきますよ。

　なに、安心してください。たとえ質量兵器を使ってきたとしても

　それで僕らが手も足も出ない、なんてことはありませんからね」

「それより、今世界のバランスが崩れるって……」

「その話は、管理局の連中を撒いてからゆっくりとお話ししますよ。

　そうですね、昼食の時にでも」

 

そういうと、フォルティスは部屋を出て行った。

俺はぽつねんと広い部屋に取り残されたって訳だ。

 

ああ、説明が遅れた。俺はトーマ・アヴェニール。長期旅行中の１５歳だ。

旅行の途中で、リリィって女の子と、アイシスっていう服屋さんと知り合い

旅を続けていた。その途中で、なぜかフッケバインなんて組織に拘束されて

ここにいるってわけだ。

 

しかし、管理局が質量兵器だって。たしか、スゥちゃんも言ってたはずだ。

管理局はその力を魔道に制限されてるって。

フォルティスは言った、管理局が質量兵器を使うと世界のバランスが崩れると。

いったいどういうことなんだろう。

 

いや、考えても仕方ない。この拘束を解くことが出来たとしても

リリィやアイシスの安全を確保しながらここから脱出するなんて

できそうもない。ここは、管理局が勝つことを期待して待つしかないかな。

 

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その、管理局側へとはなしは移る。

 

「全魔道砲、諸元を与一さんの弓にあわせ。

　なのはちゃん、ヴィータ、二人とも与一さんの弓にそろえて砲撃や、ええな」

「了解、はやてちゃん。レイジングハート、ストライクカノン微調整」

「Yes,my master」

「行くぜアイゼン。プラズマモードセット」

「Ja」

「……無想の一矢」

「魔道砲アウグスト発射！」

「ストライクカノン、発射！」

「行け、プラズマパイル！」

 

……

 

「初弾命中、目標、速力低下、間合いがつまります」

「よし、この調子や、砲撃継続、接舷戦準備」

「心得た」

「頼むぜ与一、あたしらじゃ、フェイト達みたいに空を飛んで

　突入するなんて器用なまねはできないんだから」

「わかっている玲奈。まあ、私に任せろ」

「与一様、なのは様、ヴィータ様、よろしくお願いします」

「案ずるな紅葉」

「おねーさまを怪我させるなんて、絶対に許さないんだから」

 

ヴォルフラム側の士気は高いようだ。

 

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一方、こちらは迎撃に回るフッケバインの側である。

 

「やあ、アル、どうやら、管理局の側も本気で来たみたいですね」

「よっしゃ、じゃあ、あたしらも本気だ。

　反転してぶち沈めてやろうぜ」

「まあまあ、そうまでしなくても大丈夫でしょう、いつもみたいに

　振り切ってしまいましょう」

「お、噂をすれば操舵手様出動だぜ」

「ステラ、どうした？」

「えと、なになに、お客さんの分までお昼の準備をしてたのに

　警戒態勢だから操舵に回らないといけない」

 

一応補足しておくと、ステラはしゃべれないので身振り手振りである。

 

「やれやれ、管理局もKYですね」

「危険予知が出来てるともおもわないがな」

「そっちのKYじゃないですよ」

「ともかく、推力が低下してるのは事実だ、ステラ、頼むぞ」

「僕もステラと一緒に行きますよ」

 

ずん。

 

「また着弾した」

「これは急いだ方がいいかもしれませんね」

 

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さて、再び場面はヴォルフラムへと変わる。

 

「第二弾命中、フッケバイン速力さらに低下。接舷戦可能まであと５分」

「よっしゃ、ルキノ、進路そのまま、全速前進や」

「了解艦長」

「こちらなのは、現在ストライクカノンの残存エネルギー６０％。

　あと３回が限度です」

「こちらヴィータ、あたしの方も似たようなもんだ。バッテリーの換えはないのかよ」

「二人とも、全力射撃一回分はのこしておかねばなるまいな。

　ということは、あと２回が限度、ということになる。

　砲撃をつづけるかどうかの判断ははやてに任せる」

「……はぁ。理論上はもっと長く撃てるはずなんやけどな、実戦に使うには

　まだAEC装備も早いんかもしれへん。けど、フッケバインに対抗出来る装備いうたら

　AEC装備か、さもなければフェイトちゃんらの装備してる第五世代デバイスだけや。

　けど、今は砲撃を中止してええやろ、このまま間合いを詰めて、接舷戦闘にはいる直前に

　装甲に穴を開けるのに弾をのこしといてや」

「了解」

「あ、フッケバインの速力が上がっていきます。損傷しているはずの推力部も修復中」

「なんやて！　フッケバインには自己修復能力まで備わってたんか」

「どうするはやて」

「……このままやと逃げ切られてしまう。仕方ない。次善の策や。

　航空魔導師なら追いつくことが出来る。砲撃目標を敵艦の出入り口付近に

　切り替えてや。突破口をひらいて、そこから航空魔導師を突入させる」

「了解した」

「そういうわけや、航空魔導師隊３人、フェイト、スバル、エリオ、頼むで」

「こちらフェイト、了解」

「こちらスバル、了解だよ」

「こちら、エリオ、了解しました」

「突入直前に砲撃を頼む。早めに穴を開けて、突入時には自己修復済みっちゅうんじゃ

　困るさかいな。

　それから、突入隊は突入後、コントロールルーム、もしくは機関部を叩いて

　とにかく相手の足を止めてや。接舷戦闘が可能になれば、打撃隊を突入させることが

　出来るんやから」

「わかった、はやて……目標を機関部にする。最悪の場合も想定しておくから、大丈夫」

「ここでつかまえへんと、次いつ捕まえられるかわからん。ベストメンバーそろってる

　わけやないけど、とにかく、ここで決着をつけるで」

 

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さて、またまたこちらはフッケバインである。

 

「ステラがエンゲージした。これで振り切れるだろう」

「それはどうかな」

「サイ姉、ヴェイ兄」

「質量兵器まで使ってきたんだ。そう簡単にあきらめるともおもえん」

「けど、推力部の修復も進んでるし、間合いもだんだん開いてるんだろ。

　このまままっすぐ飛んでいっても逃げ切れるんじゃないのか」

「そうはなしが簡単だといいんだがな。向こうも必死だろう。

　何かべつな手を考えてくるんじゃないか」

「たとえば？」

「そうだな、アル……たとえば、飛行魔導師がつっこんで来るとか」

「おもしれぇ。あたしらの腹んなか入ってくるってのか。

　そうなったらあたしの出番だな！」

「やめろアル、アルのディバイダーで好き勝手に撃たれたらかえって被害が大きくなる」

「ちぇー、つまんねーの」

「アルは艦砲のサポートに回れ。迎撃はビルとヴェイと私、３人で十分だ」

「けど、本当に奴らつっこんで……」

 

『警報・警報・艦内に侵入者あり。繰り返す、艦内に侵入者あり、直ちに迎撃せよ、繰り返す

　直ちに迎撃せよ』

「ほら来た」

「たく、昼寝のじゃましやがって、全くめんどくせぇ」

「そういうな。虐殺じゃない戦いが出来るだろう」

「ま、そういう考え方もあるか」

 

ヴェイロンはぼやきながら、ドゥビルとサイファーは普通に、でも３人とも急いで

敵〜管理局航空魔導師隊〜の突入箇所へと急ぐ。

 

「こちらは、管理局特務六課です。武器を捨てて投降してください。

　抵抗しなければあなた方には弁明の機会が与えられます」

「ふ、我々の本拠地に土足で踏み込んでおいて、生きて出られるとでも思っているのか」

「生きて出られる？　ここを制圧して出るんだよ。問題ないね」

 

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「はあ。管理局が突入か。……俺はどっちを応援すればいいっていうんだ」

『相棒、まず必要なことは、情報を集めることですよ』

「！　スティード、いったい今までどこへ行ってたんだ」

『はなしは後です。ともかく、今がチャンスです。

　まずは、フッケバインが、エクリプスウィルスを押さえる秘密を

　調査することにしましょう。その秘密さえわかれば、彼らの

　いいなりになる必要もないんですから』

「そうだな。けど、先にリリィとアイシスを見つけないと」

『そうですね。トーマ』

 

スティードが来てくれた。それも、今一番必要な時に。

さて、今まではずっとあいつらのターンだった。

けど、これから、俺のターンの始まりだ。

 

 

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