「うーっす、帰ったぞ」

「ヴェイ兄ぃ、お帰り〜。ねえねえ、おみやげは？　おみやげ〜」

「うるせぇ。食いながらしゃべるな」

 

ここは、俺たちフッケバインの居住区だ。

場所は当然秘密だ。仮にも犯罪者集団のアジトだからな。

 

「食料品輸送トラックを一台かっぱらってきた。それが俺からの土産だ」

「ナイスヴェイ兄。褒美にこいつをファックしていいぞ」

「いらねーよ、お前の食いさしじゃねえか」

「相変わらずのりが悪いなぁ」

「お前は相変わらず口が悪いな」

 

そういいながらも食ってやがる。こいつの胃袋は四次元空間にでもつながってるのか。

今更おどろくことでもないけどよ。

 

ああ、説明が遅れた。俺はフッケバインのメンバー、ヴェイロン。

今話してる相手が、アル、これでも一応女の部類に入る生き物らしい。

黙って座ってりゃかわいいって言う物好きもいるかもしれないが

食い意地の悪さはどっかの黒セイバー並だ。

 

「そうそう、フォルティスとビル兄が呼んでたよ。戻ったらかおだせって」

「用事があるならてめーがこいっていっとけや」

「そいつは自分でいいにいけよ。あたしにゃ関係ないね」

「そっか。じゃあ、俺の方から出向いてやるかな。

　あとステラ！」

 

ステラってのは、俺になついてる少女だ。こっちはかわいいもんだ。

アルと違って、しゃべらないだけでもな。

 

「とってきためし、そこの馬鹿が全部くっちまわないように管理を頼むぜ」

 

ステラは敬礼で同意を示した。

ふぅ。今日は楽しいこともあったが、結構つかれもしたな。

さて、用事があるっていうんなら、一つ顔を出しに行ってやるかな。

 

そんなことを思いながら廊下を歩いてると、後ろから声がした。

もちろん、フォルティスとビルの奴に決まってる。

上半身裸でタオルを首に巻いてるマッチョな野郎がビル。

知らない奴が見たら、作業場のおっさんだと思うだろうな。

もう一人、中性的な感じのする、ローブをまとったやつがフォルティス。

とらえどころのない奴だぜ。

 

「ヴェイロン、お帰り、結構かかりましたね」

「うるせぇよ。めしの補給をしてきたんだ」

「それはどうもありがとう」

「それで、用事っていうのはなんだ？」

「一つ、おもしろいニュースが入ったんですよ」

「おもしろいニュース？　そりゃいったい何のことだ」

「管理局の友人からの情報ですよ。管理局の特務部隊が動き出したそうです。

　６年前にゆりかごを落とした奇跡の部隊、機動六課が再編成されたそうです」

「ふーん、そいつぁあまた、ずいぶんと無駄なことを。

　俺らをそんなんでつぶせるとでも思ってるのかね」

「いや、ディバイダーの確保が優先だろうな。我々も逮捕対象ではあるだろうが」

「ついでで追われるたぁ、ずいぶんとなめられたもんだな」

「ま、僕らを追う無意味さはよく知ってるでしょうからね」

「どうかな。奴ら、俺らを追うぐらいに馬鹿の集まりかもしれねぇぜ」

「それはまたどうして？」

「機動六課については、俺もちったぁ調べてる。ゆりかごを落としたことで有名になったが

　むしろ、管理局のしがらみにとらわれず、好き勝手をやったアンタッチャブルってのが

　俺の印象だ。やつらなら、組織のしがらみなしに、俺らを追ってくるぐらいのことは

　やってのけるだろうさ」

「そうかもしれませんが、連中だって、界境線は無視できませんよ。

　それに、人が戦う力を魔道に頼り、僕らの手にディバイダーがある限り

　僕らフッケバインには、ふれることも出来ません」

「ふ、少しはふれてもらわねぇと困るぜ。お楽しみがなくなるからな」

「ずいぶんと血の気がおおいな」

「殺しは嫌いじゃないが、虐殺は飽きるからな」

「そうそう、ディバイダーといえば、ヴェイロンのリアクターも早く見つけてあげないといけませんね。

　僕らの中で、リアクターなしなのは、君だけですから」

「別にいらねぇけどな。今まで持ったどんな銃より、こいつはおもしれぇ」

「まあまあ、ディバイダーだけでも優秀な武器ではありますが、リアクターがそろえば

　”世界を殺せる毒”になる」

「カレンの奴はそういってたな。まあ、俺には興味ねぇことだが」

「そういうものでもないでしょう。現に、本局の連中と一戦交えたって聞きましたよ」

「まあな。さすがに本局の連中は多少骨があるな。すこしてこずっちまった」

「殺らなかったんでしょう？　リアクターがあれば、話は違ってきますよ」

「そうかもしれん。だが、俺はこいつが気に入ってるんだよ」

 

俺はディバイダー９２８を取り出してみせる。銃剣付きのアサルトライフルといった風情の銃だ。

性能の方は、俺が持ったどんな銃よりすげぇぜ。機関銃からショットガン、近接戦までこなせる

まさに万能銃だ。

 

「ははは、まあ、君はそのままでいいんですよ。世界を変える方は、カレンが考えるでしょうからね」

「カレンはいいんだが、サイファーはどこへ行った？」

「お前と入れ替わりで地上に降りた。確かめたいことがあるそうだ」

「確かめたいこと？」

「お前が出会った少年のことだ」

「ああ、あいつか。あいつの何を確かめるっていうんだ。

　黙ってりゃこっちにくるってのに」

「君は楽天主義者ですね」

「おめーらが悲観的すぎんだよ。ま、すこし休ませてくれや。

　こんだけ働いたんだ、一眠りさせてくれてもいいだろ」

「ええ、そうですね。サイファーも調べごとをしたら、すぐに戻ってくるでしょうから」

 

その、調べごととやらが、あんな大騒ぎになるとは思いもしなかった。

まさか、俺がやったやつらと鉢合わせするなんてよ。

こうだから世の中はわからねぇことばかりだぜ。

 

 

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