「坊主、援護しろ、あたしが決める」
「それはいいけど……」
「どうした、もう仲間割れかね？」
「つべこべ言ってる暇はねえ、この特攻隊長クインがてめえにとどめを刺してやるよ」
「所詮は手品師だろう？　何が出来る」
「特攻隊長の武器は、手品じゃねえって教えてやるよ」

そう言うと、クインは真一文字に突っ込んでいく。
無茶だ、あまりに無茶だ。

僕は誘導弾を放ってクインのために援護射撃を行う。

「無駄だね」
「無駄だよね、パパ」

わかってる、誘導弾ぐらいの威力では援護射撃にもならないってことは。
けど、クインが僕とハーディス容疑者との中間を占めていて、直線的で大火力の砲撃が出来ないんだ。
？　ああ、そうか、この手があった！

「フラッシュバースト！」

閃光弾を放つ。
クインは、僕に背を向けてるから閃光弾で目くらましされる心配はない。
そして、ハーディス容疑者の方は、僕らの方を向いているから、まともに閃光弾を目に受けたはずだ。

「坊主、良い判断だぜ。おら、いくら感染者でも、心臓が急所だっていうのは分かってるんだよ」

真一文字につっこんでたクインが、すっと横にはねる。
そして、一撃で心臓を貫こうと……。

次の瞬間起きたことは、僕の理解を超えていた。

クインの体に、深々とハーディス容疑者のディバイダーが突き刺さっている。
いや、それはまだ理解できることだ。
クインは、刃を伸ばして心臓を狙った。それが、もう一つのハーディス容疑者のディバイダーで防がれている。
それも、予想がついたことだ。

理解を超えているのは、にもかかわらず、ハーディス容疑者のザクロのように割れてることだった。

「へっ、どうだ、急所は……外したぜ」
「急所を外したって、心臓ぎりぎりの所じゃないか！」
「坊主、特攻隊長は、こういうのが仕事なんだよ。
　覚悟決めて肉を切らせ、骨を断つっ！」

そういうと、クインはディバイダーを引き抜いた。

「……ちぃ、ちょっとばかりダメージが大きかったな。
　坊主、ぼんやりせずにとどめさせよ」
「とどめって……」

クインは、ハーディス容疑者から距離をとると、がくっと膝をついた。

「君たち……すこし、おいたが過ぎるようだね」

ハーディス容疑者の傷がみるみるうちに癒えていく。
なんて再生力だ。

「ロロ、すぐに位置を変えるよ、あいつに見つからないと考える方がどうかしてる。
「ロロさん了解。あんなのにとりつかれるなんてまっぴらごめんだからね」

銀十次のセンサーが、僕があけた穴から狙撃した、マリーヤとロロを見つけた。
僕に見つかるぐらいだから、ハーディス容疑者はとっくに見つけてるだろう。

「消し炭に……」

ハーディス容疑者がそういった瞬間、マリーヤとロロの反応が、消えた。
気がつけば、クインも姿を消している。

「よう、０点ドライバー、結局真打ちは俺たちって落ちか？」
「グレンデル、これは一体？」
「……転送を確認したよ。
　どうやら、負傷者を運び去ったようだね」
「ついでに、お役御免のマリーヤとロロも撤収した。
　ま、おまえは俺が軽く仕留めることになってるからよ」
「大口だけは立派だよね、この裏切り者」
「裏切り？　あたまに爆弾仕込むぐらいに信用してなくてよく言うぜ。
　まあいいや、おまえにはもう未来はない」

そう言うなり、グレンデルは両手を上げた。
あれは……

「実体弾なら通用するとでも思ったのかね？」
「当たっても全然効いてないのかよ、ダメージはどうした」
「かすり傷程度だ、問題ない」
「ていうか、次は私たちのターンだよね、パパ」
「残念だが、次は師匠のターンなんだ」

師匠？　誰だ？

「時空管理局教導隊所属、高町なのはです。
　ハーディス・ヴァンディン容疑者。あなたを、逮捕します。
　抵抗しなければ、あなたには弁明の機会が与えられます」
「あのなのはか、けど、しょせんはS+なのだろう？」
「トーマ、体力を回復してて。
　グレンデルは後退、ここは私が引き受けるからね」
「了解、じゃ、師匠の邪魔だけはするなよ、0点ドライバー」
「邪魔するなって……」
「たかだかS+で相手になるって思われるのも心外だよね」

たかだかS+って……相手は、あの高町なのはだというのになんて余裕だ。

「行くよ、レイジングハート」
「Yes」

いや、相手はフェイトさんを子供扱いしたことがあるんだった。
そんな相手に、なのはさんは何をするつもりなんだろう。


　

 

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