「カレン、仕事の依頼が来てますよ」
「仕事の依頼？　どんな仕事？」
「ヴァンデインコーポレーションの部長からですよ、ハーディス＝ヴァンディンを始末してくれっていう依頼です。
　おびき出すのはこちらでやるそうです」
「絵に描いたような罠じゃない。はいそうですかって乗る馬鹿どこの世界にいるって思ってるのかしらね」
「どうします？　ヴァンデインコーポレーションの方を襲撃します？　それとも見なかったことにしますか？」
「どうしようかしらね、フォルティス。いずれはハーディスとやりあうことになるけど、向こうのホームグラウンドで戦うのは御免被りたいわ」
「同感ですね」
「なー、難しいこと考えずにぱーっとやっちゃおうぜ、勝てば官軍だろ」
「向こうはこちらの戦力を百も承知です。その上で、勝てる算段をして待ち構えるつもりなんですよ」
「だからさ、こっちも計算外の戦力を投入しちゃえばいいじゃん」
「計算外の戦力？」
「そ、計算外の戦力」
「どうするんです？」
「へっへっへ……そいつはね……」

アルは、自分の考えを述べた。

「そううまく行くといいんですけどね、失敗したら……」
「失敗したってこっちは失うものないじゃん」
「原初の種を入手する手段を失いますよ」
「ま、それはおいおい手に入れるとすればいいじゃん」
「俺は反対だな、むしろ手順を前後する方がいい」
「手順を前後？」
「つまりだ……」

ヴェイロンもまた、自分の考えを述べた。

「なるほど、うまくいけば全部うまくいきますけど、失敗したら大事ですよ。
「失敗しなければいい」
「でもさあ、そもそも、その部長とやらが本当の情報を流すって保証あるわけ？
　全部が全部罠って可能性もあるでしょ」
「その心配はないな。我々に勝てる戦力を投入しようとすれば、必然的にハーディス氏が必要になる」
「なるほどね」
「でも、ハーディス氏は強敵よ。たとえ、罠がなかったとしてもね」
「確かにね。リアクトなしでもヴェイロンがやられかけた相手だからな」
「その上に援軍を呼んでるだろうからな。やっかいになるな」
「それでも、いずれは決着をつけなければならない相手ではある」
「どうするのがいいだろうね」
「どうするべきかね」
「あの子達を抱えてるのがまた問題よね」
「……そうね。あの子達が戦力として計算できるまで鍛えてから、仕事を受けましょうか」
「それまで時間が持ちませんよ」
「仕事は受けるわ。だけど、すぐにはとりかかれないってこたえて。ほかの仕事で忙しいからって」
「了解。でも、あんまり待たせられないですよ」
「１ヶ月でものにするわ」
「無茶しますね」
「あんまり時間をかけると、ハーディス氏の方も戦力を蓄える。それはまずい。それに
　管理局がハーディス氏を見つけるかもしれない」
「そうですね」
「で、どの作戦で行くんだ」
「ヴェイロンの作戦で行くわ」
「ALL or Nothing　か」
「そうよ。私たちらしいでしょ」

虎穴に入らずんば虎児を得ずで行くことに、フッケバインは決めたらしい。
その作戦がどんなものか、それはこれからの行動で示されることになる。

　

 

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