異聞・少女義経伝・伍
銀十字
【第一章】
〜邂逅〜
前略、スゥちゃん。俺は今ルヴェラの文化保護地区にいます。
この絵はがきが届く頃には、ルヴェラ鉱山遺跡でスゥちゃんへのおみやげを
何か見つけているつもりです。
一昨日からずっと歩きづめですが、俺もスティードもまだまだ元気です。
無理を言って許してもらった自分探しの旅もあと3ヶ月、俺なりの答えを
世界を見て回って見つけ出すつもりです。
では、文化保護地区では次元間通信が不自由なのであまり連絡も出来ないので
次の連絡がいつになるかはわかりませんが、無理はしないので心配しないでください。
トーマより。
追伸。勉強もスティードからちゃんと習っているので、そちらも心配しないでください。
「これでよしっと。シスター、この絵はがきを次元通信で送ってくれませんか」
「ああ、いいですよ。ところで、今からルヴェラ鉱山遺跡に向かうのなら
到着は夜になるけど、大丈夫なの？
このあたり、夜になると、結構危険な野生生物も出るわよ」
「大丈夫ですよシスター。俺、こう見えても陸戦Bクラスなんです。
スティードもいるし、熊やオオカミ程度なら、なんとか出来るつもりです」
「そうかい。まあ、それでも、こどもを持った熊とは喧嘩しないようにね。
無益な殺生はするものじゃないから」
「はい、わかりましたシスター。では、今から出発します」
「気をつけていってらっしゃいね」
「はーい」
俺の名前は、トーマ・アヴェニール。15歳、今はスゥちゃんへの手紙にも書いたとおり
自分探しの旅に出かけている最中だ。今、俺はルヴェラ鉱山遺跡へと向かってる最中なんだ。
元は水晶鉱山の後で、商業レベルでの採掘が出来る鉱脈がつきたことで廃鉱になっているけど
今でも、旅行者がおみやげに出来る程度の水晶や紫水晶なら採掘できるはずだ。
一週間分の食料を用意してあるから、スゥちゃんへのおみやげを見つけるぐらいのことは出来るはず。
もちろん、途中では写真もいろいろ撮って歩くつもりだ。
『さて、トーマ。ぶらぶら歩きでしたら、勉強しながらにしましょうか』
「おいおいスティード、そりゃないぜ、せっかくの文化保護地区なんだから
珍しい花を見つけたりしながらゆっくり行こうよ」
『勉強はおろそかにしない、というのが、旅行をするための条件だったはずですよ』
「わかってるよスティード。じゃ、今は何の勉強をやるんだ」
『そうですね、では軽く歴史など』
「歴史っていっても、近代史だろ」
『古代ベルカの歴史なんてしても仕方ありませんからね』
今話しかけてきたのが、俺の相棒スティード。カメラ型のデバイスだ。
カメラ型、といっても、一見するとガラス玉のついた、男物のネックレスに見える。
だけど、中身はかなり高性能のインテリジェントデバイスになってるんだ。
スゥちゃんのインテリジェントデバイスをさらに高機能化した奴で
スゥちゃんが、知り合いのデバイス工学者に頼んで、俺のために特別に作ってくれたんだ。
『トーマ、何をぼんやりしてるんですか』
「ああ、ごめんごめん。それで、近代ミッドチルダの歴史だったね」
『そうです。昨日は、次元航行艦隊を編成したミッドチルダ連邦軍が次元世界の
事実上の覇者となったところまでをやりましたね』
「そうだったね。ヴァイセンなんかは、かなり早い時期にミッドチルダ軍に制圧されたんだっけ。
その後、ミッドチルダ連邦内の自治共和国となり、管理局態勢が成立したときに
独立した管理世界、第3管理世界として再独立を果たした、ってのは小学校で習ったよ」
『そうですね。ミッドチルダ連邦軍は、発展的に解消されて時空管理局となり、次元航行艦の
建造技術をもたらしたロストロギア〜無限書庫〜の浮かぶ場所に、本局を設置すると同時に
ミッドチルダ陸軍も地上本部へと発展的に解消されました。一方、各管理世界には
高度の自治権が設定されたものの、いくつかの魔道世界は、ミッドチルダと停戦協定を
結んだものの、ロストロギアの自主管理を主張して、管理外世界へととどまる路を選びました』
「そこがよくわからないんだ。ロストロギアなんて危険なもの、持っていてもしかたないだろう」
『ロストロギアは、その次元世界の偶像としてまつられている場合が多いんですよ。
それを管理局に差し出すのは、感情的に許せないものがあったのです。
しかしながら、管理局態勢が安定するに従って、次元移動能力を持つ少数の管理外世界も
管理世界の高度な自治権の様子を見て、それぞれ独自の条件で管理世界になる道を選びました。
現在、次元航行能力を持っている世界で、管理外世界であるものは、２，３を数えるのみです』
「ふーん。それで、今日の授業はどこからかな、スティード先生」
『当時のミッドチルダ連邦軍の統合参謀長、海軍軍令部長、陸軍総参謀長の3人は、そのまま
管理局の評議会を構成することになりました。一方、各管理世界はそれぞれ独自の政治体制を
もっているので、一概にその政治体制を云々することはできません。
ミッドチルダ連邦内のベルカ自治領のような、神政体制をとっているところもあれば
ミッドチルダ本国のような、直接民主主義の行われている場所もありますし、ヴァイセンのような
代議制民主主義の国もあります。ただ、終身執政官による独裁制は、徐々に代議制へ
行する傾向にありますね』
スティードの授業はこんな調子だ。まだ歴史は歩きながら受けられるからいいけれど
数学や物理となると、演習をしなければならないから、宿屋に泊まったり野宿で寝る前に
やらなければならない、結構大変なんだ。
『トーマ、将来何になるか決まらないのなら、なんでもしなければなりませんよ。
それも自分探しのうちなんですから』
「わかってるよスティード」
こんな調子で歩いているうちに、太陽は西へ傾き、やがて稜線の陰へと消えた。
俺たちがルヴェラ鉱山遺跡にたどり着く頃には、とっぷりと日が暮れてたってわけだ。
「スティード、先客みたいだぜ」
『みたいですね、誰でしょう』
「おや、君も旅行者なのか？」
「ええ、そうですけど、あなた方は？」
ルヴェラ文化保護地区は、文化保護地区とはいっても、住人の服装は
特にミッドチルダと変わっているわけではない。それなのに、出会った
二人の服装は、明らかにルヴェラ保護地区ともミッドチルダとも違う。
男の方は、身長が１８０ｃｍぐらい、ええと、陣羽織っていうのかな？
観光案内で見た、第97管理世界のサムライとかいう職業の人たちが着てる
服によく似ている。それに、持っている武器も珍しい。長い棒の先に
刀がついている。薙刀っていうのかな。
女の方も、そういえば第97管理外世界のサムライ風だ。
けど、あの刀からは、魔力を感じる、きっとデバイスなんだ。
長い髪をポニーテールに束ねてる。身長は俺より低いぐらいか。
いずれにせよ、二人ともただ者じゃない、ただの旅行者というには
二人からは、何かの実力者が漂わせる余裕が感じられる。
たとえば、スゥちゃんみたいな。
「俺の名前は武蔵坊弁慶、観光旅行でちょっとルヴェラ鉱山にきてみたところだ」
「わたしの名前は源九羅香。同じく旅行中だよ」
「ええと、夫婦かなにかです」
「その夫婦か何かなんだけど、君は？」
「あ、俺はトーマ。トーマ・アヴェニール、旅行者です。
ルヴェラ鉱山遺跡で、宝探しでもしようかと思ってやってきたんです」
「そうなんだ。私たちと同じだね。
だけど、今から遺跡に行くのはやめた方がいいよ」
「どうしてですか？」
「どうしてって……ほら、先客がいるみたいだし」
「先客？」
「見て」
俺は、九羅香さんに言われて、物陰からそっとルヴェラ鉱山の方をのぞいてみた。
なるほど、確かに物騒な先客がきていた。銃で武装した警備兵、文化保護地区では
使用が厳しく制限されているトラック。そして悪人面した偉そうなおっさん。
出来れば関わり合いになりたくない人種だ。
「ね、今はやめて、また明日にした方がいい」
「そうですね。けど、廃鉱にあれだけ物々しい警備で、いったい
なにをやっているんでしょう」
「さあ、わからないよ。私たちにもね」
嘘だ、絶対に嘘だ。この二人は何か隠し事をしている。
だけど、俺のことを心配しているというのもわかる。
いったいどういうことなんだ？ まさか、あの武装した連中は
犯罪者で……
『痛いよ……』
「あの、今何かおっしゃりました？」
「ううん、何もいってないけど、どうしたの？」
『苦しいよ……』
聞こえた。確かに聞こえた。これは念話だ、いったいどこから？
『助けて……』
あの廃鉱の中から聞こえる。
「あの、すいませんが、やっぱり俺、あの鉱山の中に今から入ります」
「冗談だろ、あれは見たはずだぜ、危険すぎる、やめておくんだ」
「いえ、……あそこから、助けを呼ぶ声がします。俺に助けを求めてるんだ。
行かないと」
「……命がいくつあってもたりない、やめておけ」
「だからって見殺しに……」
「しっ、声が高い。みつかったらどうする」
「見つかったらって……」
「弁慶、おまえはこの子をつれて、その、助けを求めて誰かの救出に行くんだ」
「九羅香？」
「予定は少し狂ったけど、苦しんでる誰かがいるのなら、放っておくわけにはいかない」
「……わかったよ、九羅香。で、作戦はどうする？」
「静がいてくれると、こういうときに作戦を考えてくれるんだけどなぁ……弁慶、なにかない？」
「あるけど、危険だよ」
「危険は承知の上だよ。どんな作戦があるの？」
「九羅香が注意を引きつけてる隙に、俺とこの子が鉱山の中に入って
助けを求めてる誰かを捜し出す」
「うん、それでいい」
「よし、じゃあついてこいよ。裏口は調べてあるんだ」
「調べてある？ あなた方はいったいなにものなんです？」
「通りすがりの旅行者さ。君と同じようにね」
「はぁ……」
通りすがりの旅行者にしては、度胸が据わりすぎてる。
『トーマ。あなたに何かがあったらどうするんですか』
「そうならないようにうまくやるさ。質量兵器に頼ってる奴らが
B級以上の魔導師を相手に出来るとは思えないよ」
「へえ。あんた、B級魔導師なのか、道理で自信ありげだと思ったよ」
「驚かないんですね」
「もっとすごい化け物を知ってるからね」
「すごい化け物？ スゥちゃんみたいな？」
「スゥちゃんが誰だかはわからないけど、たとえば、JS事件の英雄、管理局の白い悪魔に
黒い天使、とかね」
「なのはさんにフェイトさんですか、あれは別格すぎですよ」
「はは、それもそうだ。……と、ほら、ここだ。崖を滑り降りれば
すぐに入り口にたどり着ける。この程度の崖ならいけるな？」
それは、質問じゃなかった。
「もちろんです」
「よし、じゃあ、あとは九羅香が行動してくれるのを待つだけだ」
それほど待つ必要はなかった。
九羅香さんが、堂々と正面から乗り込ん行くのが見える。
「時空管理局だ！ ロストロギア不正所持の疑いでおまえたちを特別捜査する」
「なんだ貴様、時空管理局だと？」
「待ちなさい。……我々はルヴェラ鉱山の観光にきているだけだよ。
時空管理局の査察を受ける謂われはない」
「銃で武装した部隊で警備して観光とはね」
「やんごとなお方の警備中なのでね」
「そうか。でも、調査には協力してもらえますね？」
「お断りする」
「……仕方ない。令状は出ている。強制捜査に踏み切らせていただく」
「強制捜査ですと、それは強引すぎますな」
悪人面した偉そうなおっさんが合図すると、警備兵が一斉に銃を構えた。
九羅香さん、大丈夫かな。
「よし、あとは九羅香が挑発してくれればこっちの準備は完了だ。
すぐに降りるぞ」
「挑発してくれればって？」
「それがおまえたちの返事か？」
「これが返事ではない、返事は、こうだ」
悪人面した男が、親指を下向きに突き出す。
続いて一斉射撃が九羅香さんに襲いかかる。
「よし、今だ、行くぞ」
そういうと、弁慶さんは崖を滑り降りていく。
俺も遅れないように崖を滑り降りる。いや、降りると言うより落ちるという方が
正しいぐらいの急斜面を滑っていく。
「九羅香さんは大丈夫なんですか？」
「九羅香のことなら心配はいらない。心配なら、発砲した警備兵の方にしてやるんだな」
「でも、魔力は感じませんでしたよ。いったい……」
「あの程度の攻撃、魔法を使うまでもないさ」
弁慶さんは、余裕たっぷりに宣言すると、鉱山の中へと向かっていきます。
俺も遅れないように行かないと。
「で、トーマ、どっちだ？」
鉱山遺跡の中は、入り組んでいてまるで迷路のようだ。
鉱脈を求めて、そして、鉱脈に沿ってあちこちを掘り進んでいるためだ。
それに、坑道もそんなに高くない。俺はともかく、弁慶さんは頭を
坑道にぶっつけそうになりながら歩いていく。
「こっちです、……こっちから聞こえる」
「こっちか」
暗闇の中を、スティードの明かりを頼りに進んでいくと、やがて
封印された扉の前に出た。
『トーマ？』
「ここだ、この向こうから聞こえる」
「よし、じゃあ俺が……」
「待ってください弁慶さん。無理に壊すと何が起きるかわからない。
スティード、手伝ってくれ、解錠する」
「アンロックだって？ そんな魔法じゃ急場には間に合わないだろ」
「間に合わせますよ、俺と相棒となら」
『初歩的な封印魔法です。やつら、迷路に頼って、本格的な防護は怠ってると見える』
「ほら、鍵が解けた。今行く」
「気をつけろ、中に何があるかわからないんだから」
「あるったって牢獄か何かでしょう」
俺の想像は、全く外れていた。
中には、素っ裸の少女が、十字架に縛り付けられていた。
『助けに来てくれたの？』
「ああ、助けに来たよ」
俺は、視線を少女の顔に固定した。
体の方に目をやると、余計な気が散って助けるどころじゃなくなってしまう。
顔も十分可愛い。いったいどこの変態がこんなことを……いや、そんなこと
考えている場合じゃないな。
「スティード、もう一勝負頼む、あの子を縛ってる鍵を外すんだ」
『了解』
単に金具とボルトで少女を縛っているだけだから、ボルトを抜くだけで彼女を
助け出すぐらいのことは出来る。へへっ。ここまで簡単に話がいきすぎて恐ろしいぐらいだ。
「大丈夫、怪我はない？ と、それより何か着るもの、服は？」
「あ、それならこれを着せるといい。大きさなら十分あるだろ」
そういうと、弁慶さんは、自分が着ていた陣羽織を俺の方に投げてよこした。
確かに、これだけ大きければ、ぶかぶかになるだろうけど、体全体を覆うことが出来る。
「ありがとう、弁慶さん」
「どういたしまして。さて、とりあえず安全圏まで逃げるとするか。
俺が突破口は開く、トーマはその子を連れてきてくれ」
「わかった。スティード、明かりは頼む」
「了解です」
調子のよい流れはそうそう続かない。
弁慶さんが、扉の外に出た瞬間、この部屋全体が崩れ落ちてきた。
なんだと、俺たちを生き埋めにするつもりなのか？
『プロテクション』
「サンキュー、スティード」
スティードが素早く防御フィールドを張ってくれたおかげで、ひとまず
岩に押しつぶされての即死は免れることが出来た。
弁慶さんは無事だろうか。いや、それ以前に、俺たちはこれからどうなる？
このままじゃ、魔力がつきれば生き埋めになってしまう。
酸素の方は、魔法である程度補充するにしても、そんな魔法にまで魔力を使えば
生き埋めになる時間が短くなるだけだ。……畜生、もはやこれまでか？
「ごめん、いきなり飛び込んできて、こんなことになっちゃったりして」
少女は、首を横に振った。
『私があなたを巻き込んだんです……あなたは、絶対に死なせません』
「絶対にって……」
〜エンゲージ〜
次の瞬間、巨大なエネルギー束が巨大なトンネルを造り出した。
外まで一直線の安全な道だ。
「い、今のはいったい？」
『トーマ、その手に持っているものはなんですか？』
「手に持っているって……あ、あれ、なんだこりゃ」
俺が手に持ってるもの、それは、銃剣付きの拳銃といった代物だった。
はっきり言って、実用性があるのかどうかよくわからない。
いや、それ以前に、俺はこんなものもってないぞ、いったいどうしたんだ？
『キャスト･オフと唱えてください』
「キャスト･オフ？」
俺がそういつぶやくと、銃は姿を消し、代わりに俺の腕に銀の腕輪が現れた。
継ぎ目のない銀の腕輪だ。これも俺が持ってたものじゃない。ということは
これは、あの娘が俺にくれたのか？ いや、今はそんなことを詮索してる場合じゃない。
「よし、逃げよう！」
『そうですねトーマ、長居は無用です』
『はいっ』
俺は、少女を背負うと、巨大なトンネル〜エネルギー束が作り出したもの〜を駆け抜けた。
その駆け抜けた先に待っていたものは、ある意味俺の想像通りの光景だった。
たった一人に、警備兵が全滅させられている。なるほど、彼女が余裕だったわけだ。
陸戦AA級以上あれば、このくらいのことはやってのけることが出来る。
「君、無事だった？ 弁慶は知らない？」
「弁慶さんはまだなんですか？ 俺は……なんだかよくわからないけど、岩盤が崩れてきて
生き埋めになりかけましたけど、エネルギー束がどこからともなくあらわれて
俺たちの脱出口を開いてくれました」
「そうなんだ。……こっちは片付いたよ。 だけど、人手が足りないし、逃げた人がいるかもしれない。
わたしは弁慶を探しに行く」
「俺も手伝います」
「その子を連れてか？」
「え、ええ……一緒の方が心強いですから」
「いや、やめておいたほうがいい。それより、この子を安全なところまで連れて行ってあげてほしい。
そこで待ってて。ここが片付いたら、いずれまた合流しよう。聞きたいことがいろいろあるから」
「ええ、いいですよ。さあ、行こうか……ええと……なんて呼べばいい？」
『リリィ。リリィ・シュトロゼック』
「リリィか、いい名前だね」
『ありがとう』
「リリィをつれていって。……さてと、あなたがここのボスだね。……黙っていてもかまわないよ。
弁慶を捜してもらおう。みんな、坑道の中に入ってもらうよ。弁慶が万が一生き埋めにでもなってたら
……わかるね。ロストロギアの不正所持の可能性に殺人未遂。十分犯罪じゃないか」
「あ、あの……あなたたちはいったい誰なんですか？」
「わたし？ そういえば自己紹介はしてなかったね。わたしは時空管理局本局捜査官、源九羅香。
弁慶も同じ捜査官だよ。……ロストロギアを探してたんだけど、どうやらあいつら
証拠隠滅のために埋め立てたみたいだ。こりゃ、遺跡を掘り返さなきゃだめかな。
じゃ、いずれまた」
「いずれ、また」
俺は、このとき、何が何でも、九羅香さんたちと一緒にいるべきだったろう。
だけど、俺は、まだ、この銀の腕輪が何を意味するのか、わかっていなかったんだ。
そして、九羅香さんもまた。
