異聞・義経伝・四：第二十一章

「さてと、機動六課メンバー勢揃いやな。おおざっぱな説明は、さっき
　九羅香さんから聞いたわ。…アギトっていう融合騎から、騎士ゼストを助けてくれ
　いうて、ビデオレターが届いたんやな」
「うん、そうなんだ。罠かどうか見極めがつかない状態では、出動したくなかったから
　今のところ、待機状態のままにしてる」
「そうか…それで、これから取り得る選択肢は、どれくらいあるやろか？」
「そうですねぇ～３つ、考えられますね～」
「第一には？」
「第一には～、これは罠だと割り切って～あくまで～こちらの予定通り～
　スカリエッティが動くのを待つというのが～あります～」
「第二には？」
「罠かどうか調べるために～アギトさんと～接触を試みる～というのが～あります～」
「第三には？」
「それが罠であったとしても～対処できるだけの戦力を整えて～あえて～相手の策に～
　乗ってやる～というのが～ありますよ～」
「全部罠なの前提なんか？」
「安全第一です～」
「………フェイトちゃん。スカリエッティに関することやったら、フェイトちゃんが
　一番詳しいやろ。どうやろ？これは罠やいうて考えてええことやろか？」
「…私にも判断が出来ないね。スカリエッティがこんな凝った罠を仕掛けるとは
　思わないんだけど、のるかそるかの大ばくちを仕掛けてきているのなら、あえて
　普段とは違うことをやってみせている可能性もある。
　むしろ、スカリエッティより、アギトについて知っている人に聞いてみるべきだよ」
「アギトと接触したことがあるいうたら…エリオと、ヴィータか」
「リインもいますよぉ」
「悪かったなぁ。忘れてたわけやあるんよ。それで、エリオはどう思う？」
「どうって…僕は、ちょっと見ただけで、何も会話したわけではありませんから」
「そうか…ヴィータは？」
「あたしもなぁ…ゼストは本物の騎士だと思うぜ。けど、アギトはどういう奴かわからねえ。
　ただ、ゼストを裏切るタイプじゃねえよ。それは保証できる」
「リインは？」
「ヴィータちゃんと同じですぅ」
「それじゃ忘れてても問題ないじゃねーか」
「あー、ヴィータちゃん、自分だけ目立とうなんてずるいですよぉ。
　リインが先に話せてたら、ヴィータちゃんがリインと一緒って言ってたはずですぅ」
「そうかもな。けど…またこれで、話は振り出しやな。
　騎士ゼストは、何を考えてるんやろ？何をしようとしてるんやろ？」
「わからないから～罠であることを前提に～計画を～立てておくんですよ～。
　もし～罠では無かった場合でも～第一案以外なら～むしろ～有利に状況が～進みますから～」
「結局は、決断次第、ちゅうことなんか？」
「…ここまで来れば、後は、指揮官の決断だけです。
　他人の意見で動いては、かえって失敗してしまいます、はやて様」
「観月さん…」
「主はやて、…主がどのような決断をなされよおうと、我々は必ず」
「ま、なるようになるだろ。静さんなら、どのルートを選んでも、悪い目が出ないように
　計算はしてるはずだから」
「……私は……みんなを、信じてる。
　今まで積み重ねてきた経験を、努力を、そして、勇気を」
「結論は？」
「静さんの第三案で行く。
　罠かどうかはわからへんけど、万が一罠やったとしても、こっちがその上を行けばええんや」
「わかりました～では～第三案についての説明は～グリフィスさんに～お願いしましょう～」
「なんや、もう全部計画立ててあったんか？」
「当然です～それが～軍師の～お仕事ですよ～」
「それで、グリフィス君。どういう作戦になってるんや？」
「はい。まず、スカリエッティのアジトを、拡張された打撃中隊～つまり
　完全戦力の義経軍団、九羅香さん、弁慶さん、紅葉さん、与一さん、玲奈さん
　楓さん、静さん、観月さん、廉也さんの９名で、襲撃します。
　移動手段として、アルトのヘリを使います」
「地上の建物制圧、陸士部隊の出番だね」
「罠かもしれないってとこに飛び込むのかよ」
「どうした弁慶、怖じ気づいたか？」
「いや、べつに、いつもの仕事だろ」
「ま、気楽にやろうぜ。たかだか罠に飛び込むだけだろ」
「…罠でなかった場合のほうが恐ろしいかもしれません」
「どういう事ですか、観月様」
「罠であったならば、主力は別の所にいて、私たちは何かの仕掛けを注意していれば
　いいでしょうが、罠でなかったとすれば、スカリエッティの全力とぶつかる事になるでしょう」
「そういう考え方もあるのですね」
「紅葉、考えても始まらないことは、考えても仕方ないよ。
　罠かどうかは、とりあえず行ってみてから考えよう」
「はい～すこし離れた場所に着陸して～そこから～歩いて行けば～ある程度は～対処できるでしょうから～」
「アルトは上空から偵察して。空から動きを見てもらえると、助かるから」
「はい、わかりました。ですけど、そういうことでしたら、ヴァイス先輩の方が適任ではないでしょうか」
「ヴァイス陸曹には、他にやってもらうべき任務がある」
「…わかりました」
「それで、俺の割り当てはなんだって？」
「それは今から説明する。
　スカリエッティの切り札がゆりかごである場合に備えて、飛行魔導師を
　アースラに待機させる。ゆりかごが起動した場合、あるいは、打撃中隊がスカリエッティの
　罠にはまって、危機的状況に入った場合には、飛行魔導師～隊長達のを投入する。
　その判断は部隊長にゆだねる。
　飛行魔導師、つまり、八神部隊長、高町小隊長、ハラオウン小隊長、ヴィータ副隊長。
　シャマル先生にザフィーラさん。さらに、アルフさんとユーノさんの８人です」
「グリフィス、私の名前が抜けているぞ」
「リインもですぅ」
「その話は、もう少し待ってください。
　八神部隊長は、アースラに待機して、魔道砲をおろしているアースラの
　魔道砲役と、全体指揮をお願いします。
　実際にゆりかごが発見された場合に突入するのは、高町小隊長以下の７名です。
　指揮官としては、…高町小隊長とハラオウン小隊長が同格ですけど…」
「フェイトちゃんでいいんじゃない？」
「私よりなのはのほうが戦闘は上手いよ」
「はやてが決めりゃいいだろ。で、どうするんだよ」
「そうやなぁ…まあ、なのはちゃんでええんちゃう？ユーノくんが一緒やろ」
「そういう基準かよ」
「ユーノ、あんた、責任重大だからね」
「僕も戦闘指揮官じゃないけど…」
「だけど、ゆりかごの事なら、もう全部頭に入ってるんでしょ」
「それはもちろんだよ。見取り図は全部ここ～（そういって頭を人差し指で叩く）～の中に」
「そういうことやろな」
「…そして、騎士ゼストの動きに対応するために、シグナム副隊長とリインフォースツヴァイ曹長に
　待機してもらいます。他の状況とは一切無関係に、騎士ゼスト、及び、アギトとの接触を
　試みて、可能であれば目的を聞き出し、説得を行ってください」
「心得た」
「わかりましたぁ」
「それで、俺の出番は結局なんなんだ？」
「ヴァイス陸曹と、フォワードチーム４人は、機動六課の戦略予備です。
　スカリエッティが、ゆりかごと同時に、何か行動を起こした場合、…それが
　スカリエッティのアジトとも、ゆりかごとも、騎士ゼストとも無関係な何かであった場合。
　それに対応するのは、ヴァイス陸曹とフォワードチーム４人の任務です」
「おい、そりゃえらい無茶だな。まだアジトに飛び込む方がましだろ」
「ですけど～すべてが上手く行けば～待機しているだけで～済むはずですよ～」
「最後に、僕とルキノは、機動六課本部で待機、地上とアースラの通信、及び情報の収集に当たる。
　最悪の事態が起きた場合は、アースラの転送装置で僕とルキノの二人をアースラに回収する。
　作戦は以上ですけれど、何か質問は？」
「…なんだか、スカリエッティに同情したくなるような大戦力ね。
　S級魔導師４人が出動って、教導隊の緊急派遣部隊なみだわ」
「どれほど戦力を集めても～これで十分ということは～ないんですよ～ティアナさ～ん」
「けどまあ、これぐらい集めな、ロストロギアに対応は出来へんやろ。
　せやたら、私らはこれからアースラに帰るわ。悪いけど、飛行魔法許可もろうてくれへん？」
「はやて様、その必要はありません。…転送魔法の使用許可を出しておきますから」
「ええんか？ここでそのカード切って」
「機動六課宿舎と、アースラとの間であれば、転送魔法を使用できるよう、地上本部から
　許可を頂きました」
「よう本部長が出してくれたなあ。…それやったら、話はようてええわ、エイミィさん言うて
　転送してもらうことにするわ」
「うん、そうだね」
「…あ、あの…なのはさん？」
「なに？」
「ええと…ヴィヴィオちゃんの事…」
「あ、ヴィヴィオのこと？なのはさんなら大丈夫。スカリエッティのアジトにいるなら
　九羅香さん達が助け出してくれるし、ゆりかごにいるようなら、私が必ず助け出すから。
　それより、ギンガさんを見つけたら、必ず助け出してくるからね」
「あ、はい…」
「…エリオ、キャロ…じゃあ、お留守番、よろしく」
「はい、行ってらっしゃい、フェイトさん」
「お気をつけて～」
「おめーら、留守番だって気ぃ抜いてるんじゃねーぞ。
　スカリエッティがおとなしくアジトやゆりかごに収まってる保証はねーんだからよ」
「わかってます、ヴィータ副隊長。何が起きるかわからない待機任務が、一番危険だということは」
「本当にわかってんだろうな？」
「どこで、何に対して、どんな対処をするべきか、あらかじめ準備出来ない。
　それが任務として一番困難だということぐらいは、理解してます」
「それだけわかってりゃいい。ま、打撃中隊が任務終えたら、おめーらの援護に帰ってくるだろうからよ。
　それまで、がんばれよ」
「はい、わかりました」
「フェイト、そろそろ行くよ」
「なのは、そろそろ行こうか」
「うん、そうだね、ユーノくん」

「ヴィータちゃん、フォワードのみんなもしっかりしてきたね」
「…なのは、昨日だけど…大丈夫」
「へーきへーき、フェイトちゃんが元気づけてくれたから、もう大丈夫だよ」
「なのは、最悪の場合、聖王として改造されたヴィヴィオと対決しなければならなくなる
　かもしれないけど、それでも、大丈夫？」
「大丈夫だよ。最悪、ブラスターモードがあるし」
「なのは、また無茶なことを…」
「フェイトちゃんのオーバードライブの方がよっぽど無茶だよ。
　それに、エクシードモードでも、十分すぎる能力はあるからね。
　よっぽどの事がない限り、ブラスターモードは使わずに済むよ」
「その、よっぽどの事って…」
「そういう事が起きないための、戦力集中だろ。
　ところでユーノ。ゆりかごの弱点っていうのは、どこになるんだ？」
「うーん。…ゆりかごって言うのは、聖王に魔力を供給するための母船っていう意味と
　聖王が生活するための宮殿っていう意味と、次元世界の支配者としての聖王が
　執務するための城っていう、３つの意味があるんだ。
　そのために、一撃で動きを止められるような急所っていうのはない。
　ただ、動力炉、聖王、司令室、この三つを同時に潰せば、機能を停止させることが出来ると思う。
　動力炉は、主動力炉以外にもいくつか機能維持のための補助動力炉が備えられてるし
　各動力炉の出力がどの程度かまでは、明らかになってないから、どこまでやればいいかわからないけど
　聖王の間と司令室は、それぞれ一個しかないから、潰すのはそれほど難しくないんじゃないかな」
「つまり、中に入ったら、戦力を３分して、同時に潰せばいいってことだな」
「もちろん、集中して一個ずつ潰してもいいんだけどね」
「そんな暇ねーだろ」
「まあ、それは現実にゆりかごを見つけてからだよ。もしかしたら、スカリエッティも
　まだゆりかごを見つけてないかもしれないし」
「だといいんだけどさ」
「中に入ったなら、クラールヴィンドで走査してみましょう」
「そうだな。…ここまでが、すべて、憶測だ」
「さてと…ええ天気やなあ、肉眼でもアースラが見えるわ」
「うん、…これなら、目視転送すら出来そうだね」
「こちらロングアーチ１八神はやて。アースラ聞こえますか？どうぞ」
「こちらアースラ。聞こえてますどうぞ」
「中庭にいる私ら７人、そっちの転送装置でアースラに転送してください、どうぞ」
「了解した、７人を転送でアースラに収容する、どうぞ」
「了解、転送を待ちます、オーバー」

「何にも起きなかったな、なんか拍子抜けしたよ」
「観月、それで、これからどうするつもり？」
「…今から、神機の力を解放します」
「え？観月殿、神機の力は、決して使ってはならないのではなかったのか」
「ええ、…普通なら、決して使ってはならない力です。
　ですが、あれから１０年、管理局の手助けで、ある程度までなら
　神機の力を制御出来るようになりました。特に、ここのように、自然に守られた
　場所でしたら、神機の制御は、それほど難しくはありません。
　神機は、その世界の心のすさみ方に影響される物。
　戦乱に充ちた、すさんだ世界であれば、その力も荒々しい物になりますが
　心の落ちついた世界でしたら、その力も、それに応じた発揮のされ方をします」
「…難しいことはわからな……え、観月ちゃん、もう神機を発動したの？」
「いえ、私はまだ何もしていませんが…」
「あ、あれを見て」
「なんでしょう？」
「…な、なんだありゃ…」
「山が…動いている………」
「………ゆりかごね」
「楓」
「話に聞いてたゆりかごしか、考えられないわ。…あんな巨大な宇宙船みたいなもの」
「このタイミングで動くとしたら、あれなんだろうな…」
「もたもたしてて、タイミングを外したってことかよ…」
「いえ～おそらくは～私たちが～ここに来ることを～予測して～待機していたのでは～」
「つまり、これ全体が、罠」
「ですが、私の切り札の方は、スカリエッティ様も予測していないはずです」
「観月ちゃん、だけど、手遅れじゃないかな？」
「いいえ、…ここまでが、静さまの、予測通りなのでしょう？」
「はい～私たちが～アジトを襲撃する態勢に入った瞬間に～ゆりかごが動くだろうとは～
　思ってました～。アジトと～これほど近くだとは～思いませんでしたけど～」
「ここにアジトがあるっていうのは、確定なの？」
「…弁慶様、私は、目が見えない代わりに、自然の声を聞くことが出来ます。
　神機はその土地を清める力、そして、その土地の様子を知る力があります。
　この丘の下には、人工の動力が埋まっているのを感じます。
　それが何かはわかりませんが…おそらくは、スカリエッティのアジトと考えて、よろしいかと」
「…とりあえず、確かめないと…ゆりかごが動いたなら、なおさら」
「ええ、もちろんです。…行きますよ」
「え？観月ちゃん」
「驚かないでください。…大地を、揺らしますから」

「スカリエッティ様、そこにいるのは、わかっているのです。
　この丘の地下には、高濃度AMFの反応があることを、アースラからの高々度
　魔力探査で調べてあるのですから。…もし、スカリエッティ様、あなたが
　なんの返事もなされないようであれば、私は、あなた方を、アジトごと、破砕します」
「観月ちゃん！」
「…弁慶様、…今、スカリエッティ様がされていることは、犯罪でもなければ、革命でもありません。
　これは……戦争なのです。それに、思い出してください、S級魔導師ゼスト様率いる
　ゼスト隊が、おそらくは、スカリエッティ様のアジトを襲撃して、全員死亡してしまったことを。
　今突入すれば、同じように私たちも、全滅の危険を冒すことになるでしょう。
　こうするのが、一番安全なやり方です。…スカリエッティ様は、既に、人殺しなのだということを
　お忘れになってはなりません」
「…観月殿のやり方は、荒っぽいが、正しいな。
　なるほど、スカリエッティを無理に生け捕りにする必要はないわけか。
　たとえ、スカリエッティが逃げ出したとしても、拠点は潰すことが出来る」
『やめろ！何をする！おまえたちは自分たちが何をしているのかわかっているのか！
　私はどうでもいい…だが、私の作品を破壊するなっ！』
「スカリエッティ様、…これは、戦争なのです。
　スカリエッティ様が、降伏されるというのであれば、攻撃を辞めてもよろしいのですよ。
　ですが、そうでなければ、多少の犠牲は、戦争である以上、不可避です」
『違う！私は、人殺しなどではない！私は今まで誰も殺したことはない！』
「そりゃおかしいだろ。ゼスト隊は全滅して、少なくともクイントはしんでるはずだ」
『あれはドクターではありません。あれは…ドクターの意志ではないのです。
　むしろドクターは、可能な限り、ゼスト隊の方を助けようとなさいました』
「おまえは誰だ」
『私は、戦闘機人No.Iウーノ。ドクターの秘書を務めさせていただいてます』
「ゼスト隊を方を助けるだと？だが、クイントさんは死んだし、騎士ゼストは死にかけ
　メガーヌさんは行方不明。しかもルーテシアは誘拐している。それで一体何を
　どう助けたと言いたいんだ」
『そのメガーヌがここにいる。私の、大切な作品だ。…私の娘達の１人なのだよ…
　まだ動かせる状態ではない。彼女には、レリック１１番が必要なのだ。
　やめろ、やめてくれ…おまえ達には血も涙もないのか！』
「……一体どういう事なんだ？」
「普通に考えれば、意味のない命乞いなのだが……普通に考えていいものかどうかわからん」
「うふふ～では～あなた方を信用して～取引でもしましょうか～」
「静、一体どうするつもり？」
「簡単なことですよ～私たちは～あなた方のアジトを～教会騎士団と～陸士１０８部隊で～
　完全に包囲させていただきます～そして～それから～ゆりかごと～あなた方の切り札が～
　機動六課によって～封じられたら～おとなしく～投降して～頂きましょう～」
「それって、べつに何も譲歩したことにならないんじゃ」
『…ドクター、ゆりかごにアースラからの魔導師が突入したことを確認』
『そうか、クアットロ…奴らが入ったか…ふふふ・・くっくっく…ふわーはっはっは。
　これで君たちは完全に罠に掛かったな。いいだろう、その条件、飲もうじゃないか』
「ええ～これで～あなた方が～完全に～罠に～掛かりましたね～」
『ふふ、君たちに、いいことを教えてあげよう。…あのゆりかごも、このアジトも、すべては
　君たちの行動を封じるための、囮にすぎないのだよ』
「ええ～そうでしょうね～そして～本命は～騎士ゼストを陽動にした～地上本部襲撃～」
『…ふむ、君たちは馬鹿ではないみたいだな。だが、そうだとすれば、戦力の配分を
　大幅に間違えてると言っていいだろう。ここにいるのは、私とウーノと…』
「隙があったなら、私たちを地中に引き込もうと待機している、セイン様だけですね」
『見えているのか』
「気配を感じ取るのは、私の得意とするところです」
『それでは意味がないな、セイン、帰っておいで』
『はーいドクター』
「ま、ゆりかごに配備する戦力があんまり少ないようなら、ゆりかごを落とした後
　反転してあんた達の切り札とやらを潰せば済む話よ。
　ちゃんと計算はしてあるわ」
『それはどうかな？君たちがゆりかごを落とすより、私の娘達が地上本部を制圧する方が早いよ』
「それは～どうでしょうね～」
「…あのさ、盛り上がってるところ、悪いんだけど…つまり、俺たちはここで
　他の奴らの活躍を期待して、ぼーっと待ってなきゃならないってこと？」
「そういうことになりますね、弁慶様」
「………最終決戦だろ、これ…」
「…ぼやくな弁慶。こういうのも、戦ではままある事だ」
「…………オールオアナッシング…地上の星計画が成功して、地上本部を守り抜き
　ゆりかごを止められるか、それとも…」
「そういうことになったね、弁慶」

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