俺の名前は武蔵坊弁慶。ていうか、なんで異聞・義経伝・四なのに
俺たちの出番が異様に少ないんだ。

 

「ぼやくな弁慶。新人達に出番を回してあげるのも、先輩の役回りだよ」
「わかってるよ九羅香」
「隊長達はみんな揃ってる見たいやな。せやたら、これから会議を始めるわ」
「はい」

 

ここは、機動六課隊舎内にある、会議室だ。
ここに集まってるのは、機動六課の隊長達〜つまり、ロングアーチスタッフのとりまとめ役
グリフィスに、訓練中隊の中隊長代理のシグナムに、小隊長のなのはとフェイト
そして、俺たち、打撃中隊こと義経軍団からは、九羅香と俺が出席している。

 

「リィンを無視するなんてひどいですよぉ。
　はやてちゃん、これが書類ですぅ」
「ありがとなあ。さてと、手元に書類は配ってある思うし
　長々話ししてもだれるだけやろから、手短に、当面の仕事について話しとくわ。
　まず、機動六課の主力に当たる訓練中隊は、新人４人を実戦に投入できるよう訓練してや。
　本当は一年ゆっくり掛けてやりたいところやけど、あんまり悠長にもやってられへん。
　可能な限り速やかに戦力化してほしいんよ。
　打撃中隊には、訓練中隊の新人が実戦投入可能になるまで、戦闘任務は全部こなしてほしいんや。
　ロングアーチスタッフは、実働両中隊のサポート役やな。
　さて、質問は？」
「はやて、可能な限り早くというのは、具体的にどのくらいの期間で、どの程度の
　実力を期待している？」
「フェイトちゃん…そうやな。少なくともガジェットを独力で撃破可能なぐらいの戦力で
　期間は３ヶ月以内、これぐらいで頼むわ。
　正直、機動六課設立は遅すぎるぐらいや、あんま悠長にやってられる時間、ないんよ。
　もし空戦魔導師の投入が必要になったら、隊長や副隊長を引き抜いて投入せなあかんし
　打撃中隊へガジェット対策で過重な負担掛けてしまうことにもなる。
　早ければ早いほどええ…んやけど、あんま無理はせえへんようにな。
　殉職者出したら、元も子もないんやから」
「わかった」
「はやてちゃん、それで疑問なんだけど、ガジェット対策って普通の
　陸士部隊も当然排除に動いてくれるんだろ？」
「弁慶さんの期待を裏切って悪いんやけど、そんなんは一切なしや。
　ガジェットは、全部機動六課で対処せなあかんのよ」
「なんで？機動六課って本来実験部隊なんだろ。なんで実験部隊が
　ミッドチルダの安全に全責任を負うようになるんだよ」
「…それについては、私が説明する方がいいかな」
「頼むわなのはちゃん」
「弁慶さん達は、初めからアームドデバイス使いだから感覚としてわからないと思うんだけど
　ガジェットには、魔法を無力化するフィールド〜AMF〜を展開する能力があるんだ」
「それは知ってる。だけど、あれに対処するのはそう難しくないだろ」
「だけど、それに対応する訓練をしている陸士部隊はいないんだ。
　だから、ガジェット相手にはほとんど対応出来ない。
　対応出来るとすれば、首都航空隊ぐらい。それも、本局出向の経験がある人だけだと思うよ」
「なんで、陸士隊はそういう訓練をやってないんだ？」
「ガジェットが、人を殺したことはないからな。
　怪我した人はあるけど、基本、殺人兵器やのうて、あくまで
　ロストロギアを捜索、強奪するための機械みたいなんや。
　そしたら、ミッドチルダの治安維持からいうと、優先順位、下がってしまうんよ。
　なにしろ管理局地上部隊は、ミッドチルダの治安全部に責任があるんや。
　火事から遭難からテロから、全部に対処せなあかん。それも、全部人が死にかねへんことばっかりや。
　人がしなへんことまでは、手がまわらんのよ」
「それで俺たちの出番かよ。ま、ガジェット自体そんな撃破に手間が掛かるわけじゃないからいいけど」
「弁慶、それでも油断は出来ない。いつ、ガジェットを放ってる連中が
　殺傷プログラムを組み込んで送り出してくるかは、わからないんだ」
「そうだな…それに、ロストロギアを集めてる機械っていうことは、俺たちが把握するまえに
　何か恐ろしいロストロギアを、製造者の所へ送り出してる可能性もあるってことだよな」
「そういうことや。…機動六課の第一の任務は、ガジェットの捕捉、撃破。これや。
　…新人達が実戦投入可能になったら、一度ベルカ自治領に行って、後見人の騎士カリムから
　話を聞いてほしいんやけどな」
「主はやて、ベルカ自治領に何かあるのですか？」
「騎士カリムが、機動六課の後見人になってくれた理由を聞いて欲しいっちゅうだけや。
　あと、打撃中隊には関係ないけど、なのはちゃんもフェイトちゃんも、リミッターについては
　十分理解してるな？」
「わかってるよ。市街地で魔法を使って、無用な被害を出さないように、あらかじめ
　魔力の発揮値を制限しておくっていうことだよね」
「そうや。普段みたいな魔力が発揮できへんから、その点気をつけてや」
「だけど、魔力の総量が減らされるわけでもないし、普段は魔力の消耗を押さえるから
　最大でAA級が使えるなら、問題はないよ」
「そうやな…AA級あれば、ガジェットを相手にする限り、負ける要素あらへんからな。
　けど、…いつまでも、リミッターありでやっていける相手とも、かぎらへんよ」
「そういうときには、当然リミッターは解除してもらえるんでしょう？」
「解除は出来るけど、私が許可出すわけにいかへん。許可する権限は地上本部や」
「あー」
「まず、降りそうにないね」
「そう心配せんでもええ、切り札は残ってる…もっとも、これやったら
　たぶん、レジアス閣下は二度と承認してくれへんやろけど」
「何か方法があるの？」
「まあな。…けど、それはほんまに必要になったときのために秘密にしとくわ」
「秘密だらけだな」
「まあな…悪うおもわんといてや、弁慶さん」
「悪くは思ってないよ。そういう仕事なんだから」
「さてと、他に質問はないか？無いようなら、会議は解散にするけど」
「私は特にないかな。とにかく、みんなを実戦で使えるように訓練すればいいんだよね」
「そうや、なのはちゃん」
「はやて、執務官としての捜査はしなくていい？」
「それはまた別の話や。新人が戦力化できるようになったら、すこし編成を
　変えるつもりなんよ」
「わかった」
「主はやて…新人を３ヶ月で戦力化するというのは、さすがに無理がありませんか？」
「その点については、大丈夫…やと思うけどな」
「普通の任務だったら、今日にでも投入できるよ、あの二人なら。
　それについては私が保証する」
「九羅香。やけに自信だな」
「私がはやてに推薦した二人だ、実力はちゃんと見ている」
「エリオとキャロについては、私が保証する」
「そうか。私は主はやての代理の仕事の方が多くなると思う。
　訓練の方は、二人と、ヴィータにすべて任せるようになると思うが、よろしく頼む」

 

---

 

「はい、そういう訳で全員整列！」
「はい、なのはさん」

 

ここは、機動六課の訓練場です。
本局にある、バーチャルリアリティ訓練システムを借りることが出来たので
思い通りのシチュエーションでの訓練が可能です。

 

「訓練校では、基礎的な事について学んでると思うけど、今日からはみんなに
　実戦に向けての、実地訓練をやってもらうことになるならね。
　さて、とりあえず今日は、みんなの実力を確認しておきたいから
　とりあえず、ヴァーチャルリアリティ空間で、私たち機動六課が排除すべき
　敵との、模擬戦をやってもらおうかな。
　シャーリー、Easyモードで、ガジェット一型のみ配置」
「了解、それで数は？」
「１人２機ずつでいいんじゃないかな」
「了解、全部で８機連携はなしで…と、配置完了」
「うん、じゃあ、４人で作戦を立てて、ガジェットをすべて排除して。
　相談時間は５分、５分経ったら強制的に作戦開始、わかった？」
「わかりました、なのはさん」

 

---

 

「で、ティア、どうする？」
「どうするって、まずガジェットにどんな性能があって、どんな攻撃が有効かも
　わからないんじゃ、対処のしようがないわよ。
　スバルとあたしに何が出来るかはわかってるけど、エリオやキャロの事は
　全然わからないし…二人とも、何か特技は？」
「僕は…早いのだけが取り柄ですから」
「サポート魔法と、…あとはフリードぐらい…」
「O.K.。教科書通りにやるわ。…市街戦ね。スバル、開始後直ぐウィングロードを使って
　あたしらをあそこに見える中で一番高いビルへ道をつけて。
　あたしとキャロはそこから全体へ火力支援を入れるわ。
　スバルはそれが終わったらエリオと一緒に地上に降りて姿を隠す。
　あたしが幻影を使って相手をつり出すから、二人で連携して各個撃破。
　キャロは…サポート魔法っていっても、何が使えるかわかんないから
　そのときになってからってことにしとくわ、それでいい？」
「O.K.ティア」
「わかりました、ティアナさん」
「…あ、はい…わかりました…」
「…準備は出来たみたいね。…じゃ、Ready-GO」

 

スバルの奴がさっとウィングロードを展開する。
あたしとキャロはスバルの後ろをはしってビルの屋上へ。
魔法で体重を軽くして走ることで、ビルを駆け上がるのもそんなに辛くはない。
エリオは地上にいて、あたしたちが上がるのを援護する位置についている。
今のところ、ガジェットの気配はない…！

 

「ガジェット、４機、正面から来ます」
「エリオ、とりあえず物陰に隠れて。
　スバル、急げ」
「言われなくてもっ！」
「よし、到着。…エリオ、上から火力支援するわ。
　スバル、どれから叩くかエリオに指示を出して。
　キャロ、見張りはお願い」
「わかりました」

 

あたしは素早く魔法弾を撃ってガジェットの連携を切る。
あとは、二人がかりで一機ずつ壊せば大丈夫なはず。
！まさか、魔法弾が消えた？

 

「ちょ、ウィングロードが消されるっ」
「スバル、反転、距離を取って」
「今のは一体？」
『それがガジェットに搭載されてる特殊機能AMF
　近づくと魔力を中和しちゃうから気をつけて』
「やっかいな代物ね…さて、何か考えある？」
「魔法が使えないからって、対処する方法ならあるっ！
　ティア、とにかく援護射撃を」
「いいわ。…エリオ、対処法何か思いついた？」
「ええ、僕もちょっと思いついたことなら」
「キャロ、あんたは？」
「え、ええ…魔法が通用しないなら、魔法以外の手段を使えば、いいんですよね」
「ま、基本はそうなるわね。けど、何かあるの？」
「ええ、あります」
「じゃ、それを試してみなさい。…あたしは、また別な手を使うから」

 

そう言ってるうちに、逃げるスバルを、ガジェットが二機追いかけてるみたいね。
スバルは素早く路地裏に入ると、ガジェットも普通に路地裏に曲がっていく。

 

「地上から手の届く範囲にあればウィングロードなんて関係ないっ！
　これでも喰らえっ！」

 

スバルの奴、馬鹿力でガジェットの装甲をぶち破る。
馬鹿力って言っても、魔法で腕力を強化した、一種のアームドデバイスによる攻撃だけど。

 

「ふーん、つまり、物理的障壁の中にある魔力は、中和出来ないってわけね」

 

さらにさらに追い打ちを掛けに来たガジェットもスバルは殴り飛ばして大破させる。
なんだ、魔法が中和されることを除けば、それほど強力な相手じゃないんだ。
スバルは大丈夫…エリオは？

 

「鬼さんこちら〜と、行くぜっ」

 

エリオはガジェットを引きつけると、歩道橋を切り落としてガジェットにぶつけてる。
ぶつかるガジェットもどうかしてると思うけど、ま、タイミングのはかり方は見事ってとこかしらね。

 

「フリード・ブラストフレア」
「くきゅるー」

 

キャロは、召喚魔法で網を張ってガジェットの動きを制限してから
自分のつれている白竜、フリードの炎でガジェットを焼いている。
ふーん。あの竜、結構使えるみたいね。…さて、あとはあたしだけか。
みんな、物体を使ってガジェットを壊してるみたいだけど、あたしは
あくまで射撃屋なのよ。…魔法が通用しませんはいそうですか、じゃ
射撃屋は務まらない！

 

…スバルのを見てわかった、二重弾核を使えばAMFを突破できる。
問題は…あたしにそれが作れるかどうか…砲撃用魔法弾は作ったから…あとは
対AMF用の保護膜を作るだけ…固まれ…固まれ……大丈夫、これは
兄さんにやり方は教わった…一度できたことなら必ず出来る……よし、完成！
一旦完成すれば、ホールドした状態で回りをチェックする余裕はあるっ！

 

「…よし、そこっ！」

 

回避？甘い、こっちは誘導弾。２機同時に撃破出来るっ！

 

「…エリオ、撃破数報告」
「二機撃破しました、ティアナさん」
「キャロは？」
「二機撃破…です」
「スバル？」
「ティア、二機撃破、ノルマクリアだよ」
「じゃあ、あたしが２機で合計８機ってこと？」
「ティアナ、状況を報告して」
「はい、なのはさん…スバル、エリオ、キャロ、そして私が２機ずつガジェットを撃破
　合計八機撃破です」
「うん、なかなかよくやったね。これで、大体どんな相手と戦うか、基本はわかったかな？」
「はい」
「それじゃあ、今度は戦闘の連携について、どれぐらい出来るかちょっと実力を見せてもらおうかな。
　ルールは今から説明するから…」

 

なのはさん相手に連携して一撃を入れる、というのはさすがに無理で全員が
アクセルシュートに撃ち落とされた。
そこでひとまず今日の訓練は終わり。何が悪かったのかレポートを提出して、それから
ヴィータ副隊長の指導による体力作り、その後でフェイトさんから
管理局法についての講義。機動六課での訓練生活は、まだ始まったばかり。

 

それから３ヶ月後、私とスバルが、実戦に出るための試験で何があったかの話は最初にやったと思うけど
エリオとキャロの話はまだだったはず。
次回は、エリオとキャロの、実戦参加試験の様子について。それで良かったかな。