異聞・義経伝・参：第二十章

「では、まずはグレアム提督の事例から始めましょうか。クロノ、起訴事実は？」
「使い魔による夜天の書事件の捜査妨害、および、使い魔による管理局職員への暴行。
　管理外世界住人への傷害未遂。それから、管理外世界住人に対する不可逆的接触、以上。
　証拠については特に提示するひつようはありませんね、グレアム提督」
「すべて管理局の記録にあるとおりだよ。よく調べてあるね、感心したよ」
「グレアムさん、起訴事実をすべて認めるのですか？」
「…弁明しなければならないかね？」
「お父さまはべつにわるいことしたわけじゃないじゃない」
「お父さまがクロノを殴れとかいったわけじゃなくて、あれはあたしらの現場判断なんだから」
「それでも、捜査妨害と管理外世界住人への傷害未遂、および、管理外世界住人への
　不可逆的接触は残りますよ」
「管理外世界住人との接触ったって、はやてはお父さまと同じ世界の住人でしょ」
「管理外世界住人ってだけなら、お父さまだって、管理外世界住人じゃない。
　同じ世界の住人が、たまたまあしながおじさんしたって何もわるくないわよ」
「………たまたま、と主張するには無理がありすぎますね。
　ですが、管理外世界住人との不可逆的接触について争うのはやめましょう。
　不可逆的接触であるかどうかについてすら、争点になるでしょうから。
　ですけれど、管理外世界住人への傷害未遂については、議論の余地がないはずですよ」
「傷害未遂ったって、夜天の書が暴走したら死ぬってわかってるし」
「ていうか、放置してたら、夜天の書に魔力吸われて死んでるんだから
　それを阻止するのは、傷害っていわないわよ」
「それは詭弁だ。凍結世界へ送ろうという計画があったことは、間違いないんですから」
「………けど、もっともはやてにとって安全なやり方だってことも、間違いないよ」
「凍結処分のあと、修復方法が見つかる可能性は０じゃないけど、ほっといたら
　1年以内に死ぬ確率は、かなり高かったもんね」
「………しかし、それでもそれは違法行為だ」
「緊急避難は違法じゃないわよ」
「…疑わしきは被告の利益の原則に従うべきでしょう。
　管理外世界住人への傷害未遂ではなく、管理外世界住人への不可逆的介入の未遂でしょうね。
　もし、夜天の書を修復する方法があるなら、グレアム提督はそうしたはずよ。
　修復不能だと判断したから、修復を放棄して、修復せずに、もっとも安全と思われる
　夜天の書事件の解決法を採用した。…違法ではあるけれど、公判が維持できるかしらね。
　クロノも、次に提督が主張する事を聞けば、納得できるとおもうわ」
「次に来る物？…リーゼとアリアの傷害罪をどう弁明するかですか」
「夜天の書事件を解決するために、私の権限で、あの二人に命じてやらせたことだ。
　私は、あの二人の擁護のためには、そう主張するし、それが事実だよ」
「…なるほど。グレアム提督の権限による、秘密作戦というわけですか。
　これでは僕には否定する証拠の出しようがない。第一、A's作戦からして、提督の
　修復プログラムを見つけ出したから実行できたようなものですからね。
　なにもかもがグレーゾーンというわけだ。僕には手の出しようがない。
　証拠不十分により不起訴処分をリンディ提督に提案しますよ。
　何か証拠を見つけて裁くとすれば、それは法務部の仕事だ」
「わかりました、グレアム提督、ロッテもアリアも、それでかまわないわね」
「あたしらは反対する理由がないよ」
「私も、反対はしないよ。…個人的には、結果がどうあれ、闇の書事件が片づいたら
　管理局を引退するつもりだったことは、申し添えておく」
「辞表でしたら、レティの方に回してくださいね。
　さて、これで管理世界の話が終わったから、次は、夜天の書の扱いについて話しましょうか。
　これも、ロッテとアリアの集めてる情報で、何をしてたかはほぼ確実に把握出来てるわ。
　けど、とりあえず最初に確認しておきますけど、夜天の書は、古代ベルカの魔道書なのね？」
「それに間違いはない。…私ですら、最初の主のことについては忘れてしまったが
　過去のいずれかの時点で、古代ベルカの魔道書であったことは確実だ」
「ありがとうリインフォース。古代ベルカは管理世界の一つであることから、ロストロギア
　夜天の書も、管理局の管理対象として扱うことになります。
　あら、不服かしら？」
「勝手に管理対象扱いされて納得できるわけねーだろ」
「ヴィータの言い分にも、一定の理解を示すべきだろう。
　だが、主が管理世界の住人であった場合の行為については、管理世界の法が
　適用されることについては、異論はないだろうね？」
「ま、主が管理世界住人じゃしかたねーよな。
　主には服従しなきゃなんねーしよ。けど、はやては管理世界の住人じゃないだろ」
「はやてちゃんのことについては、また後で。
　まずは、それ以前にやったことについての話よ」
「以前の行為についても、管理局の記録によって明らかな通り、管理局員、及び
　管理世界、管理外世界の住人に対する暴行、傷害、および殺人。管理世界及び
　管理外世界の生物に対する不法狩猟。…特定ロストロギアの不正使用については
　主の責任として追及しないことにしても、これだけの罪は犯してるはずだ」
「…よろしいですか、クロノ執務官」
「リインフォース？」
「以前の主の行為については、夜天の書に所属する、守護騎士プログラムの行為である。
　そういうことになるはずですね？」
「もちろん」
「ならば、いまここにいる4人…シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラの4人は
　私の管制下を離れて、我が主、八神はやてのリンカーコアに転写されたプログラムに基づき
　我が主、つまり、八神はやてのリンカーコアより生成された守護騎士です。
　あなた方が裁こうとしている守護騎士プログラムは、すでに存在しない。
　故に、被疑者の消滅に従い、裁くべき対象は存在しない」
「それは証明不可能な主張だ。全く受け入れられない」
「それ以前の問題として、管理局が保有している証拠の信頼性を問題にしたいね」
「グレアム提督？」
「管理局が持っている証拠は、守護騎士プログラムが感情のない破壊装置であることが
　前提になっているような代物だよ。だが、我々が確認した守護騎士プログラムは
　はたして、感情がない破壊装置といえるようなものかね？
　それに、執務官の主張は撞着している。感情のない破壊装置の行為であるなら
　それに責任を持つのは、その装置を制御している人物、つまり、主であるはずだ。
　だが、その主はすでに管理局が裁いた後だ。逆に、守護騎士に独自の判断力がある
　…そして、それが事実なのだが…とするなら、それを把握していない我々の
　証拠に、一体どれだけの信用を置くべきだろうか」
「彼らが行ったこと自体については、十分な証拠能力がありますよ」
「だが、彼らの行為を裁くには不十分だ。彼らが主の命令に対して、どの程度の拒否権が
　あったのか、今となっては知るすべがないのだからね。
　もし、裁くとすれば、それについて知ることがまず必要だよ」
「…いずれにせよ、守護騎士プログラムについては、情報が少なすぎるわ。
　本当に、修復されてるのかどうか、それらについて十分な情報が必要ね。
　相当の期間、保護観察して、まず守護騎士プログラムそのものについて知らなければならない。
　これが結論ということになるかしら」
「…私としては、それに異議を唱える理由がない」
「…僕もそれに反対はしません」
「では、リインフォースを含めて、この問題にも決着がついたことにしていいでしょうね。
　では、次は…はやてちゃんについて考えましょうか。
　ここから先は、裁判じゃなくて、管理局とみんなとの相談よ。
　それで、はやてちゃんは、どうしたいかしら」
「どうしたいか言われてもなぁ。…せや、保護観察いうて、具体的にはどうなるん？」
「管理局の収容施設、一般にはいずれかの無人世界で、その行動を観察することになる。
　必要に応じて面接、検査、その他保護対象者についての情報を集めた上で
　有人世界での保護観察、保護観察処分解除、あるいは本裁判にかける、といった処分が行われる」
「…どっちにせよ、わたしとは離れなあかんのか？」
「…そういうわけでもないわ。はやてちゃんが、夜天の書の蒐集をヴォルケンリッターに
　命じたとしても、管理外世界の住人によるロストロギアの使用は、管理局にとっての
　違法行為ではなくて、管理局の管理能力としての違法行為よ。
　けど、夜天の書自体が管理世界に所属するロストロギアだから、管理外世界に対する
　不可逆的接触の禁止から、はやてちゃんの魔法は、封印することになるわね。
　誤解の無いように言っておくけど、これは、はやてちゃんを罰するとか、そういう意味じゃないわ。
　だけど、海鳴市ではやてちゃんが生活するのに、実は魔法使いでした、というんじゃ
　まともな生活が送れるかしらね？魔法を封印するのは、その世界に適応した生活を送れるようにする
　という意味があるのよ」
「…そしたら、シグナム達とは、永久にはなればなれやろ」
「そうなるわね」
「…他の選択肢、ないん？」
「はやてちゃん、はやてちゃんも、管理局に入ればいいんだよ」
「なのはちゃん、それはどういうことなん？」
「管理局員になること自体は、管理世界の住人に限られたことじゃないんだ。
　管理外世界の住人でも、管理局の存在を知っているのなら、自発的に管理局へ
　入局することを求める事は出来る。
　もちろん、実際に入局するには、管理局の承認が必要だけど、民間協力者という形でなら
　大抵の場合、管理局に所属することが出来る」
「管理局に入ったら、シグナム達といつでもあえるん？一緒におれるん？」
「残念ながら、そういうわけにはいかないわね。保護観察処分中に、主に合わせられるかどうかは
　私にもわからないわ。多少は便宜を図ってもらえるようにお願いはしてみるけど、決めるのは
　私じゃないもの」
「あんたらが、特別プログラムを申請すりゃいいんだよ。そうすりゃ、むしろ主と
　一緒にいてもらうほうが有利になる」
「特別プログラムって、どういうことかしら？」
「それについては、テスタロッサくんに、説明してもらうのが早いだろう」
「フェイトちゃん、特別プログラムってなんなんや？」
「直ちに管理局に所属する魔導師となることで、保護観察処分の居住場所を
　管理局そのものにする制度だ。私は、なのはと一日でも早く会えると聞いて申請した」
「そのプログラムには何か制限があるのか？」
「管理局に入隊するのだから、管理局員としての、普通の入隊試験には合格する必要がある。
　あと、管理局員とはいっても、あくまで保護観察中だから、身元引受人の目の届く範囲にいる必要がある。
　私の場合、リンディ提督が身元引受人になってくれたから、私のわがままも聞いてもらえた」
「身元引受人って、えらべねーのか？」
「私が引き受けてもいいけれど、私は管理局を辞めるつもりだからね」
「辞めるに辞められない事情が出来たんじゃないかしら。
　保護観察が解けるぐらいまでは、管理局で働いてもらいたいわね」
「わたしも、リンディおじさんがリインらを引き受けてくれるなら、そのほうがええなあ」
「…前にも言いましたけど、これだけのことをされたのなら、最後まで
　優しいグレアムおじさんを続ける義務があると思います」
「…まいったね」
「本当に、ヴォルケンリッターが、破壊プログラムじゃなくて、法の番人の側に
　回るっていうんなら、お父さまにも協力して欲しいね」
「優秀な魔導師は慢性的に不足してるもんね」
「ねえ、はやてちゃんも一緒に管理局に入ろうよ。
　せっかく、魔法資質を持って生まれたんだから、自分の能力を最大限、活かした方がいいよ、絶対」
「なのはちゃんは、魔法使うの好きなんか？」
「好きっていうか…他に取り柄ないし」
「魔法使いとしては、才能があふれかえってるよ」
『Of course,she is my master』
「概ね、基本方針はそれでいいわね。管理局入隊の手続きなんかについては
　またあとでエイミィから説明させるわ。
　さて、次に進みましょう」
「次…神機と、第97管理外世界Bのことについてですね、リンディ提督」
「そうね。それで、ユーノくん。神機についての調査結果はどうかしら？
　神機はロストロギアとして指定しなければならない？」
「保有する魔力自体は、夜天の書と同等か、それ以上ですね。
　ですが、神機はかなり高度な魔法技術で作られてますよ。安全性の高さは
　今回、景時が用いた時に、危険な暴走を起こさなかったことで証明済みです。
　学術的に見れば特A級ですけど、指定ロストロギアとして管理局が管理するほどではありません。
　管理局で適切な助言を行うなら、現地で十分管理できると判断します」
「なら、神機については現地管理で問題ないわね。
　それで…これから、一番大事な話になると思うんだけど、ユーノ君。
　この、第97管理外世界Bについてよ。魔法文化レベルDの、第97管理外世界よりは
　高い魔法文化レベルが存在すると思うんだけど、どれくらいの魔法文化レベルに
　指定するのが正しいかしら」
「…僕が調査した範囲で言うと、まず、この世界を管理外世界Bと呼ぶのが、間違ってますね」
「ユーノ君、それってどういうこと？」
「簡単にいうと、管理局の基準時間に近い時間に存在するのは、この世界の方で
　なのは達の住んでいる世界は、管理局標準時間…つまり、ミッドチルダ時間っていうことに
　なるんだけど、ミッドチルダ時間を基準にして、なのは達の世界が800年以上進んでいる
　って考えるべきだと思う。魔法文化でランクDなのに、物質文明レベルでミッドチルダ並み
　魔力密度が極端に低い、といった事を考えると、そういう結論が出る。
　平行世界では、一般に魔力密度の上昇が時間軸の遅れをもたらすんだ」
「そのことについては、後で学会に論文でも発表してちょうだい。
　今必要なのは、この世界の魔法文化レベルを暫定的にせよ、判定することよ」
「一般的な次元跳躍は不可能ながら、世界固有のロストロギアによる次元世界間の移動が可能。
　過去、魔法文化レベルAであった時代は存在するでしょう。
　今現在の魔法文化レベルは、BもしくはC。ヴォルケンリッター相手の戦闘の結果を考えると
　魔法文化レベルBとするのが妥当であると判断します」
「…専門家の意見は聞いての通りだけど、魔法文化レベルB判定なら、管理外世界ではなく
　管理世界への参加を求めるべき水準ということになるわ。
　管理局としては、それでかまわないかしら？」
「あたしは管理局への参加を求めるべきだってのに一票」
「私も、反対する理由はないね」
「…フェレットもどきがそう判断するなら、そうなんでしょうね」
「フェレットもどき言うな！」
「ま、まあユーノ君、押さえて押さえて…」
「では、管理局を代表して、第97管理外世界Bに対して、改めて
　管理世界への参加を求めます。管理世界へ参加することにより、この世界については
　管理局より、魔法文化についての支援が得られるとともに、管理局法に基づく
　ロストロギア、および、次元移動の管理が義務づけられます。
　…とはいっても、神機を使わない次元移動は出来ないみたいだし、実際には
　管理局から魔法技術の移転が可能になる、ということぐらいかしらね」
「…それについては、私には決めようがないよ。だって私はこの世界を代表する権限がないもの」
「そういう問題でもないのよ。九羅香さん。
　管理局はあくまで、ロストロギアと次元間移動に関する問題について対応する組織だから。
　管理局の母体であるミッドチルダだけは、世界それ自体も管理局システムに組み込まれてるけど
　一般的な管理世界は、次元間移動についてだけ管理局が管理して、その世界自体については
　自治が行われてるのが普通よ。
　だから、管理世界に入るかどうかも、次元移動能力のある組織…あるいは、個人が
　自分の判断で決めればいいことよ」
「そういうことなら、決めるのは1人しかいないわよね」
「そのようだな」
「楓様、与一様、それはどういう事なのでしょうか」
「弁慶さんをこちらの世界に呼んだのは、間違いなく観月様です。
　ですから、管理世界にするかどうかは、観月様がお決めになることであるということでしょう」
「それでさ、管理世界に入ったら、あたしらにはどんな得になることがあるんだ？」
「管理世界に入るなら、あたしらが、魔法の使い方について教えられるようになるよ」
「あんたらは、今でも結構強いけど、本当の魔法の使い方を覚えたら、もっともっと強くなる。
　それは保証するよ」
「戦うだけならクロノより強くなるかもね」
「だから、魔法って言うのはなにも戦うだけじゃなくて…」
「はいはい、それはフェイトちゃんやなのはちゃんの時に聞きましたって。
　それで、観月さん、答えは？…ってせかしちゃわるいかな」
「…次元移動についても、管理世界に入ると、支援してもらえるのでしょうか」
「ええ、それが管理世界に入るっていうことの最大のメリットね」
「…わかりました。私は、私の責任の範囲で、管理世界に入ることに同意します」
「そうですね～そうすれば～弁慶さんや～弁慶さんの兄妹は～元の世界に～
　安全に～帰れることに～なりますね～」
「では、改めて、観月さんを、管理局の権限で代表者として受け入れるとともに
　管理局を代表して、暫定的に、管理局提督の地位と称号を贈ります。
　正式には、評議会の承認が必要なんだけど、こういうのは基準を満たしてるかどうか
　機械的に判定するだけだから、承認されないってことがないと思うわ」
「…で、義経軍団の全員に要請するんだけど」
「何だろうか」
「管理局員として働く気はない？
　管理局員になれば、この世界と第97管理外世界とを比較的自由に行き来出来るよ。
　それに、あんた達がまだ見たことのない世界や、想像すらしたことのない世界を見ることも出来る」
「…九羅香さん。僕の知っている歴史が正しければ、与一さん以外、もう
　この世界には居所がなくなってると思うんです。
　いずれにせよ、別な世界を目指すのでしたら、僕たちの世界を選んでも、かまわないんじゃないでしょうか」
「…俺の知ってる歴史でも、九羅香や紅葉や玲奈や楓はとっくに死んでるもんな。
　いくら景時がいなくなってるからって、これから鎌倉中心の時代が来るんなら
　正直、九羅香達の居場所はなくなってるんじゃないかって思うよ。
　本当は、俺たちの世界に来ないかって誘いたかったんだけど…」
「…弁慶も管理局に入るっていうんなら、行ってもいいかな」
「…でも、俺呼ばれてないぜ」
「べつに、魔法使いじゃなきゃ管理局に入れないって決まりはないよ」
「そうそう、エイミィだって、魔法使いじゃないし」
「わるかったわね」
「誰もわるいていってないってば」
「…けど、管理局にだって選ぶ権利ぐらいあるだろ」
「9歳でも通る試験だよ」
「9歳でも天才っていうのはいるからなぁ…」
「大丈夫、なのはだって通るんだから」
「アルフ、それは言い過ぎ」
「わるかったよフェイト」
「まあ、概ね管理局の方針は決まったわね。
　さてと、エイミィ、今までの話をまとめて本局に送ってちょうだい。
　あと、アースラはオーバードライブを掛けまくったから、無理はさせたくないわ。
　本局から、工作艦と、九羅香さん達を運ぶための客船を回してもらえるように要請を。
　それが終わったなら、地上に降りましょう。
　一仕事終わったんだから、打ち上げパーティでもひらくべきだわ」
「パーティか？ええなあ、わたしも手伝うわ」
「パーティ？」
「宴会のことだよ与一」
「ふむ…宴会か」
「そうだね、みんな友達になるんだし、親睦会は開かなきゃ」
「ああ、そうだな。じゃあ、行こうか、…って、どうやって行くんだよ」
「転送装置はまだ壊れてないわよ。
　アレックス、アースラスタッフも、待機要員を除いて全員上陸よ。
　今まで無理して働いたんだから、思いっきり羽を伸ばしましょう」
「かあさん、だからそこで光の翼を出さなくたって…」
「文字通りに羽伸ばしてるわね」

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