ぼけー。

 

わけのわからないことだらけで、一体何が起きてるのかを把握しようという
努力をすることもあきらめたい気分になる。
最初は、突然鎌倉時代の京都みたいな場所へ投げ出された。
そこで、サッカーやってたら蹴鞠の名手の噂が立って、貴族に拾われた。
蹴鞠の技を見せつつサッカーやってたら、はやてちゃんとヴォルケンリッターの乗った
車に出会った。それで、はやてちゃん達と行動してたら、なぜか弁慶と
義経一行に出会って、神機とか言うよくわからないものの奪い合いが始まった。

 

はやてちゃんは、神機がなければ死んでしまうっていうけど、神機を使うと
やっぱり死んでしまうとか言う話になって、時空管理局とかいう、そういう
訳のわからないことをなんとかする組織が、はやてちゃんを助けるってことになった
と思ったら、景時とかいう変なおっさんが現れて、化け物を作りまくった。

 

気がついたら、時空航行艦なる、SFちっくな代物の中に送り込まれ、そして
弁慶達はそのSFちっくな代物にはびこる化け物を退治に出かけている。
俺の妹も、弁慶の野郎と一緒に出かけていった。

 

けど、サッカー選手の俺には、もうなにも出来ることがない。
そういえば、シグナムの奴、なんか魔道書に吸収されたみたいに見えたけど
大丈夫なんだろうか。
主を頼むなんて、俺に言ってたけど、間違いなく頼む相手を間違えてるだろ。
こんな状況で、俺に何をしろっていうんだ。

 

モニター画面を見つめる。
はやてちゃんと同い年ぐらいに見える白い服を着た女の子が
ピンク色のぶっといビームをリインフォースっていう名前の
制御プログラムだっけ？・・・とにかく、三対の羽を持った堕天使みたいに見える
女性に打ち込むところまでは見た。
あのリインフォースとはやてちゃんがユニゾンしてるとかいうけど
そもそもユニゾンとは何か全然わからない。
誰かに説明して欲しいところだけど、みんな、この船の中に現れた
化け物対策や、俺にもはっきりわかるぐらいにやばい魔法を使いまくってる
景時対応で手が離せないみたいだ。話し相手が全くない。

 

おれは、ただモニターを見つめるだけだ。

 

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「…夜天の書修復プログラム実行完了。これより夜天の書の再起動を開始します」
「了解。リインフォース。夜天の書の再起動開始…基本プログラムロード」
「基本プログラムロード開始…守護騎士プログラムロード…各守護騎士プログラム用
　リンカーコアを夜天の書より切り離し…我が主、守護騎士プログラムの制御をお願いします」
「了解や…シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ。…夜天の書の主、八神はやてが命じる。
　…八神はやての名において、守護騎士プログラムよ、起動せよ」
「ありがとうございます。我が主。これで守護騎士プログラムを私より分離することが出来ました」
「…大丈夫なん？景時と支配権の競り合いをするのに、ヴォルケンリッターが必要やなかったんか？」
「私の主は、我が主八神はやてです。…景時との綱引きは、修復プログラムの動作により
　必要なくなりました。今景時が支配しているのは、夜天の書の魔力の大半を持つ
　自己防衛プログラムのみ。私の領分は、私自身が、八神はやての名の下に
　確実に管理されています」
「そうか…」
「我が主。プログラム修復ですべてが終わるわけではありません。
　自己防衛プログラムの処分が必要です。…せめて、自衛のためにバリアジャケットとデバイスを」
「リインとユニゾンしたままやあかんの？」
「…我が主、主は、私に新しい名前をくださいました。
　ですから、私からもまた、主に新しい姿を、贈りたいのです」
「そうか、それなら、リインの言葉に甘えようかな」
「ありがとうございます、我が主」

 

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「ユーノ君、夜天の書の修復は上手くいってるの？」
「はやてに関する限りは、上手く行ってるようにみえるね。
　ヴォルケンリッターの再生も完了しているし、…ほら、なのは」
「あ、はやてちゃんだ…でも、あの格好…」
「…もしかして、あれが夜天の書の正常なユニゾン形態なのかな」
「それは違うんよ、ユーノくん」
「はやてちゃん」
「みんな、ありがとな。…これは、リインフォースからの贈り物や。
　リィンが、私のために作った、バトルジャケットとデバイス…シュベルトクロイツなんよ。
　…シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ。…みんなも、ありがとな」
「はやて…」
「はじめまして、やな。グレアムおじさん。
　それで、この二人がおじさんのいう、リーゼ姉妹なん？」
「…ちょ、はやて、本当にそれだけでいいのかよ」
「どないしてん？とうさんかあさんが死んだのは、グレアムおじさんのせいやないし
　今こうして話できるのも、グレアムおじさんの修復プログラムのおかげやろ。
　………みんな、ありがとなぁ…ほんまに……わたしは、世界一の幸せもんや…」
「主はやて。申し訳ありませんが、まだすべてが終わったわけではありません」
「…おい、景時。さっさとその夜天の書の残骸を手放せよ。
　今はまだ自己防衛プログラムが起動してねーからいいけどよ。
　自己防衛プログラムが暴走を始めたら、間違いなく飲み込まれるぜ」
「…梶原景時。時空管理局執務官として、あなたに要請します。
　直ちに夜天の書を放棄して、管理局に投降してください。
　僕の知る第９７管理外世界Bの法に照らしてあなたの行為は反逆罪として
　死刑に当たると思われますが、管理局法に従うならば、最悪でも
　命だけは助けることが出来るはずです。
　もしあなたがそのまま防衛プログラムに巻き込まれることを選択するようであれば
　それはもはや管理局とも幕府とも無関係に、あなた自身の自殺行為ですよ」
「そういって、きさまらもこの力を欲しているのであろう。
　決してだまされるものか」
「そんな無意味な力など求めてない。それは制御不可能だ」
「やってみなければ何事もわかるまい。わしは、この自己防衛プログラムの力を手に入れる。
　天下じゃぞ。天下じゃ。この力を制御できさえすれば、天下が取れるというのに
　なんできさまらに武器を捨てて従わねばならん。
　神機の力はまだ儂にある。この力でかならず、天下を獲る。
　この国だけではなく、この世界、いやおまえ達の世界をもかならず支配してくれるわ」
「…クロノ君。説得はむりのようだね。…仕方がない、リンディ君に言って
　転送魔法で軌道上にひっぱりあげ、アルカンシェルでまとめて吹き飛ばしてもらおう。
　君は、もう十分すぎるほど彼を救うための手は尽くした。
　君自身が言うとおり、もはや、これは管理局が彼を処罰するのではない。
　景時の自殺なのだ」
「…わかりました。直ちにリンディ提督に提案します」

 

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「ええ、それは了解したわ」
「リンディ提督、ちょっと待って欲しい」
「九羅香さん。それはどうして？」
「それでは神機まで破壊されてしまう。神機を景時殿から回収しなければ。
　今すぐ我々を向こうに送って欲しい。管理局が回収してくれないのであれば
　我々の手で神機を回収する」
「けど、それは危険過ぎるわ。暴走を始めた自己防衛プログラムの恐ろしさは
　あなた方の想像をはるかに超えているわよ。
　たとえ、あなた方がヴォルケンリッターと互角に戦える力があるとしても
　神機の回収を行うなんてことは、不可能だわ」
「しかし、神機は我々の世界のものだ。…あなた方の協力には感謝しているが
　それとこれとは話が違う」
「…困ったわね…あまり時間をかけると、アルカンシェルを直接打ち込むことになるわ。
　そうなると、あなた方の世界にも多大な被害を及ぼしてしまう。
　ここは、グレアム提督やクロノの言うとおり、神機ごと自己防衛プログラムを破壊するべきね。
　破壊した神機の埋め合わせなら、管理局でちゃんと行います」
「それは神機ではない！」
「…九羅香。リンディ提督。…我々が、神機を回収することを認めてもらえないだろうか」
「シグナム？」
「…まだ、自己防衛プログラムが作動するまで若干の時間がある。
　景時が飲み込まれるか、景時が自己防衛プログラムを支配するには、さらに時間があるだろう。
　それまでに、我々が神機を回収して、九羅香に返そう。
　それなら、問題はないはずだ」
「…いいたかないけど、あたしらがどっち転んでも、管理局的には問題ねーだろ」
「はやてちゃんは、どうするのがいいと思うのかしら？」
「我等守護騎士は、主の命に従う」
「そんなん、聞くまでもないやろ。シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ。
　みんな、わたしに命、預けてな」
「我等ヴォルケンリッターは主のために！」
「主はみんなのために、や」
「…はやて…」
「けど、回収するって、どうやってやるん？」
「…一応、こういう事態に備えて計画だけは立ててある。
　既に自己防衛プログラムは、変態のための結界を発生させた。
　あの結界が崩壊するとき、自己防衛プログラムは第一形態を表すだろう」
「第一形態ってなに？」
「簡単にいうと、特撮に出てくるような巨大怪獣だよ、なのは」
「さすがユーノ君。すっごくわかりやすい」
「こほん…第一形態の自己防衛プログラムは、４層の防御結界で守られている。
　吸収された景時は、その奥のコアの付近にいるだろう。
　そこまで切り込んで、神機を回収してもらうことになる。
　…それで、まず、シグナム」
「なんだ」
「シグナムが第一層を破壊、第二層破壊がヴィータ、第三層の破壊をなのはにお願いする。
　最終層の破壊は、はやて…君に頼む」
「了解や…必要な魔法は、リインが教えてくれるはずや」
「その後、僕がデュランダルで一時的に凍結させ、動きを封じる。
　その隙に、ヴィータの援護でシグナムが切り込み、コアをむき出しにする。
　どこにコアがあるか調べるのは、シャマルのクラールヴィントの仕事だ。
　ザフィーラは予備として、ヴィータ、シグナムの援護を頼む。
　ユーノは、シグナムが神機を回収したなら直ちにシグナムを転送魔法で回収すること。
　全員が安全圏まで離脱したら、グレアム提督、ロッテ、アリア、３人の転送魔法で
　アースラに帰還。その後、アースラの転送装置で自己防衛プログラムを
　軌道上に引き上げ、アルカンシェルで破壊する。
　…リンディ提督の承認を受け次第、直ちに実行にかかる」
「クロノ、計画は承認します。直ちに実行を」
「わかりました、リンディ提督」

 

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皮肉な話だ。神機を手に入れて主を救おうとしていた我々が
主を救うための最後の任務として、やはり、神機を回収しようとしている。

 

「レヴァンティン！」

 

シュトゥルムファルケンで自己防衛プログラムの防御陣第一層を破壊する。

 

「鉄槌の騎士ヴィータと、鋼の伯爵グラーフアイゼン！」
「ギガントフォーム！」

 

ヴィータの巨大化した鉄槌が、第二層を破壊。

 

「行くよ、レイジングハート」
「All right,my master」
「全力全開…スターライト…ブレイカー！」

 

なのはのスターライトブレイカーが第三層を砕く。

 

「…ごめんな…かんにんな…
　…響け終焉の笛、ラグナロク！」

 

主はやての放つラグナロクが、最終層を突き破り、そのまま自己防衛プログラムにも打撃を与える。

 

「…デュランダル発動」

 

クロノのデュランダルが、自己防衛プログラムを凍り付かせる。
今なら、自己防衛プログラムに接近できるはずだ。

 

「ヴィータ、援護しろ」
「わーってる。気をつけろよシグナム。いつまで凍ってるかわかんねーんだからよ」
「懐そばにいるものより、中途半端な距離にいるほうが危ないのもよくあることだぞ」
「わってるってんだよ。…行くぜアイゼン！」
「ヤヴォール」

 

ヴィータの誘導弾が、景時が飲まれたと思われる場所を叩く。

 

「…魔力打撃を与えれば、魔力供給が為されることで場所がある程度特定できるはず」
「了解や。…二人とも、少しはなれとき…魔力打撃やな…これでどうや
　ディアボリック・エミッション！」

 

自己防衛プログラムを中心に、闇の波動が広がっていく。
主のディアボリック・エミッションが魔力打撃モードで発動されたのだ。
だが、この打撃は、自己防衛プログラムの覚醒も引き起こすだろう。
接近の危険度はむしろ上がったはずだ。

 

「見えたわ、シグナム。神機は中心部よりやや上、主首の付け根に！」
「了解…突っ込むぞ、レヴァンティン」
「ヤヴォール」
「行くぜアイゼン、牽制に入る」
「撃たせはせん！」

 

自己防衛プログラムの砲撃システムにザフィーラが攻撃を加える。
時間短縮のため、直線的につっこんでいるのだから、簡単な砲撃でも
命中していただろう。

 

「であーっ！」

 

ヴィータのハンマーが、自己防衛プログラムの脳天を叩く。
だが、それは単に叩きやすい場所というのにすぎない。
自己防衛プログラムの意識がヴィータに向いただけのことだ。

 

だが、それで私には十分だ。

 

「紫電一閃！」

 

レヴァンティンで自己防衛プログラムの首を切り落とす。
切り落とした先にあるのは、プログラムの核に取り込まれ掛けている景時と
その景時が握りしめている神機。

 

私は、レヴァンティンで景時から神機を切り離し、神機を回収する。

 

「シャマル、これが神機か？」
「ええ、シグナム、確かにそれよ。魔力量と魔力波動から間違いないわ」
「シグナムさん、僕に合わせてください。今転送魔法で引っ張り上げます」
「心得た」

 

転送魔法が発動すると、私はすぐになのは達のそばに現れていた。
援護のため突っ込んでいったヴィータは、そのまま突き抜けてグレアム提督達と
同じ場所についている。

 

「ロッテ、アリア、さあ、始めようか」
「ええ、お父様」
「転送魔法発動、アースラまで一直線！」

 

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「リンディ提督、転送魔法発動を確認」
「さて、提督はどこへ登場するかしらね」
「すまないが、艦橋に直接転送させてもらったよ。
　確認が早いだろうからね」
「ええ、はやてちゃんにシグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラのヴォルケンリッター４人。
　ユーノ君になのはちゃんのコンビ、グレアム提督にロッテ、アリアのリーゼ姉妹。
　クロノもいるわね。…リインフォースとはまだユニゾンしたままなのね、はやてちゃん」
「そうや」
「では、最終段階に入ります。エイミィ、転送装置最大出力、自己防衛プログラムを
　軌道上へ引き上げて」
「了解、リンディ提督。直ちに転送装置を作動させます」

 

元々、暴走した自己防衛婦老グラムを引き上げるための転送装置。
少々抵抗した程度で阻止できますかって。
魔力炉はオーバードライブ気味だけど、１分や２分で吹き飛ぶほどぼろくもない。

 

「リンディ提督、軌道上に自己防衛プログラムの転送中、３０秒後に予定地点へ
　転送完了予定」
「了解…アルカンシェル発射準備３０秒前、総員待機…………」
「自己防衛プログラム転送完了」
「アルカンシェル発射！」

 

リンディ提督が、アルカンシェルのセーフティロックを解除すると
砲撃プログラムに従って、転送完了直後の自己防衛プログラムに向けて
アルカンシェルが発射されます。

 

………

 

「自己防衛プログラムの反応…完全消滅」

 

…これで、終わりかな、闇の書事件は。
なにもかも、完全に終わったで…いいはずだよね。

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