「ただいまー」
「おかえりなさいませ。あなた」
「どうした玲奈、悪い物でも食ったのか？」
「いきなりそのリアクションはないだろ。
　ちょっとあたしが気を利かせてやったってのに」
「ドスのきいた声で言われてもうれしくない」
「あー、うー、えー、こほん。
　おかえり、My Darling」
「ただいま、はにー」
「こら弁慶、発音悪いぞ」
「ごめんって」
「ったく、こんなんでよくセンター試験通ったな」
「ほっとけ、ヒアリングはあっても、英会話はないんだよ」
「難聴なのか？」
「え？」
「ヒアリングテストじゃ聴力検査だろ」
「あ・・・そっか、hearは、聴くじゃなくて、聞こえるだもんな」
「そういうこと」

 

そろそろ状況を説明しよう。
結局俺は神機を封印して現代に帰ることにした。
玲奈のことは心残りだったが、俺には忍者の棟梁の婿がつとまらない。
玲奈に忍者を辞めろとも言えないし、第一玲奈が冒険に満ちた生活から
離れられるはずがない。面白ければなんでもありが玲奈の信条だし
俺はそんな玲奈が好きなのであって、動物園のダチョウみたいになった
玲奈なんて見たくなかった。

 

が、俺が現代に帰ってきたとき、玲奈もまたそこにいたんだ。

 

「そりゃ、あたしは忍者だからな」
「だからって俺に抱きついて現代に帰ろうとするなんて無茶苦茶だろ」
「面白そうだったからいいじゃないか」
「そりゃ、その通りなんだけど・・・」

 

魔法使いでもない俺が玲奈を現代で生活できるようにする方法なんて
あるわけがない。…んだけど、手っ取り早い方法がひとつだけあった。

 

結婚してしまえばいいのだ。
結婚すればその時点で当たらし戸籍が出来る。
玲奈自身の戸籍はなくても、その点さえなんとか
クリアできれば…不法入国者扱いされなければ…

 

「あたしがちょちょっと原簿をごまかしたから全然大丈夫だったろ」
「犯罪じゃないかっ！」
「気にすんなって、もう誰もみやしないんだから」
「ま、その…そりゃ、…ま、いっか」

 

まあ、なにかしら裏技はいる。

 

というわけで、受験を何とか突破して大学生になれた俺と
受験をなんとかごまかしてなんとか高校に入れた玲奈とで
普通に新婚生活を送っている。

 

「ここらで、ひとつお約束が入るべきだろ」
「お約束って？」
「そりゃ、お約束だよ」
「それじゃわからないだろ」
「はい、ここでナレーター登場」

 

こっちをつかうのかよ！

 

「見てないでちっとは働け」

 

ったく、人使いが荒いというか何というか・・・

 

「つべこべいうな！」

 

へいへい。・・・タイミング外すとこういうのって面白くないんだよなぁ…

 

「いい加減覚悟決めろよ・・・」

 

はい、じゃ、やらせていただきます。

 

・・・・やっぱパス。

 

どかばきぐしゃ・・・

 

「もったいをつけるから外すんだろ！」

 

そ、その通りです・・・

 

「あーあ、下らないことをやっているから晩飯が冷えちまったじゃないか」
「電子レンジに掛ければいいよ、それで、晩ご飯ってなに？」
「カップうどん」
「のびてるじゃん・・・」
「文句言うなら食わなくていいぜ。一応ゆでたまごもあるぞ」
「い、いえ、食べさせていただきます」

 

まあ、今時の夫婦だから、これでも普通の範囲だろう。

 

旦那の名前は弁慶、奥様の名前は玲奈。
普通の二人は普通に妖魔と戦って普通に時間移動をして普通に結婚しました。
ただひとつ普通じゃなかったのは、奥様は女子高生だったのです。

 

「いや、このシチュエーションで一番まともなぶぶんだと思うぞ…」

 

気にするなよ、タイトルに合わせただけなんだから。

 

「そうそう、あたしはもう忍者を廃業したからな」
「廃業したのか？」
「まあ、な。…やっぱり、この時代に忍者じゃまずいんだろ」
「まずいって言うか…あんまり危ないことはして欲しくないよ、やっぱり」
「わかってるって。この時代は危ないもんな。夜も明るくって忍者の出番がないや」
「そっか、そういうこともあるよな」
「ま、たまには腕試しで学校に侵入したりはしてるけど」
「こらこら」
「試験問題を盗んだりしてないんだからいいじゃないか」
「ま、そりゃそうだけど・・・ごちそうさま」
「お、もう食ったのか。じゃ片付けておくよ」
「いや、それはいいよ。俺が後でやっておくから」
「後でっていったら忘れるだろ」
「いや、まだデザートを食ってないし」
「デザート？みかんでも持ってこようか」
「いや、それはいいって、…chu」
「なっ！」
「ごちそうさま。じゃ片付けてくる」
「あ、こら弁慶」

 

…ごちそうさまでした。