○月×日△曜日

 

　今日、紅葉おねえちゃんが、帰ってきました。

紅葉おねえちゃんは、義経様と一緒に、妖魔退治に出かけてました。

玲奈おねえちゃんや与一おねえちゃんや、義経様は、妖魔を退治したから
それぞれ分かれて、別々のことをしてるそうです。

鈴は、紅葉おねえちゃんが帰ってきてくれたので、うれしいです。

早速、お赤飯を炊いて、みんなと一緒に祝いました。

 

○月×日△曜日

 

　今日は、お寺のお掃除の日です。
住職さんの言いつけ通りに、お寺を掃いたり、ゴミ拾いをしたり
草むしりをしたりします。
みんな子供なので、すぐにほうきを、刀代わりにチャンバラごっこをしたり
むしった草で首飾りを作ったりしてました。

紅葉おねえちゃんは、そんなこを怒ったりなだめたりで、自分の仕事が出来てませんでした。

鈴は、紅葉おねえちゃんのかわりに、みんなと遊んであげました。

なのに、後で、住職さんに怒られました。

紅葉おねえちゃんの仕事を増やしてたみたいです。

こんどから、お仕事が終わってから、花飾りを作ります。

 

○月×日△曜日

 

　今日は、紅葉おねえちゃんが、とってもおっきな服を繕ってました。
弁慶お兄ちゃんが着てた服なんだそうです。

もう、弁慶お兄ちゃんは、未来っていう国に帰っちゃったから
この服を着ることもないと、前に、紅葉おねえちゃんは言ってました。

紅葉おねえちゃんに、思い切って、弁慶お兄ちゃんは帰ってこないんだから
服を繕うより、仕立て直した方がいいんじゃない、って言ってみました。

紅葉おねえちゃんは、ちょっと悲しそうな顔をして、それから
「2度あることは３度ある」という言葉を教えてくれました。

 

○月×日△曜日

 

　今日は、都の貴族の方が、わざわざ破れ寺においでになりました。
子供を何人か、下人として奉公にとりたい、と申し出られました。
奉公に行くと、遊んでばかりもいられないけど、ここよりは
いいものが食べられるそうです。

最初に鈴に声が掛かったので、鈴は、正直に、紅葉おねえちゃんが
行くところに行きますと答えました。

貴族の方は、誰も奉公にとらずに、寺に寄進だけして帰られました。

残念に思う子はいませんでした。みんな、紅葉おねえちゃんが大好きなんだと思いました。

 

○月×日△曜日

 

　今日は、紅葉おねえちゃんが、ちまきを作ってくれました。

まだ五月になってないよって紅葉おねえちゃんに言ったら
弁慶おにいちゃんのいる、未来っていう国だと、今日が端午の節句になるんだって
教えてくれました。

弁慶お兄ちゃんの国では、ヨーロッパって国と、同じ暦を使っていて
日本の暦は使ってないんだそうです。

紅葉おねえちゃんは、弁慶おにいちゃんからもらった、不思議な機械で
弁慶お兄ちゃんの時代の暦が、わかるんだって言ってました。

不思議な機械は、紅葉おねえちゃんにとって、とっても大切なものなので、鈴にも
さわらせてくれませんでした。

 

○月×日△曜日

 

　今日は、紅葉おねえちゃんと一緒に、散歩に出かけました。

そういえば、紅葉おねえちゃんが、妖魔退治から帰ってから
紅葉おねえちゃんは、変な咳をすることがなくなりました。

お医者様を呼ぶこともなくなりました。紅葉おねえちゃんの
病気は、妖魔を退治したら、すっかりよくなったみたいです。

紅葉おねえちゃんに、どうやって治したか聞いてみたけど
紅葉おねえちゃんは、顔を赤くして、教えてくれませんでした。

鈴は、何か、悪いことを、聞いたのでしょうか。

 

○月×日△曜日

 

　前に、お寺に寄進した貴族の方が、またお寺に見えました。
みんな一緒に、奉公に欲しいそうです。
紅葉おねえちゃんが、最初に鈴にどうしたいか聞かれたので、鈴は、はっきりと
紅葉おねえちゃんは、奉公に行くような身分の人ではありません、とお答えしました。

それを聞いた、貴族の方は、鈴が何か勘違いしてると思ったようでした。

何を勘違いしているのか、貴族の方のおつきの人に聞いてみました。

大人の話だからといって、鈴には教えてくれませんでした。

お付きの人の態度が、鈴には、傲慢に見えたので、鈴は
紅葉おねえちゃんには、いいなづけがいるんだって、誇張して教えてあげました。

どこにいるのか聞かれたので、遠くの国だって答えました。

貴族の人は、今日は日が悪いとかいって、帰って行きました。

住職さんは、何か、困ったような顔をされてましたけど
紅葉おねえちゃんは、何か、安心したような顔だったので
きっと、鈴は、紅葉おねえちゃんのためになることをしたんだと思います。

 

○月×日△曜日

 

　紅葉おねえちゃんが、弁慶お兄ちゃんの服を、洗い張りしました。

鈴も、お手伝いしました。

紅葉おねえちゃんが、弁慶おにいちゃんの服を仕立て直さずに
繕った理由が、なんだか、わかったような気がしました。
弁慶お兄ちゃんの服は、とっても大きくて、暖かかったです。

 

○月×日△曜日

 

　今日は、住職さんに呼ばれました。
鈴に折り入って話があると言われました。
紅葉おねえちゃんには、いろいろ、縁談があって
最近よく来てる、貴族の方も、その1人なのだそうです。
鈴が、弁慶お兄ちゃんの事を持ち出すので
紅葉おねえちゃんの縁談が、上手くまとまらないから
もう、そんなことは、言わないようにとおっしゃられました。
鈴は、住職さんに、紅葉おねえちゃんには、待ち人がいるんだって答えました。
住職さんは、遠く離れた人は、死んだ人も同じだとおっしゃいました。
死んだ人も、消えて無くなったわけではなくて、十万億土というところで
暮らしているのだと教えてくれました。

鈴は、住職さんに、十万億土と、未来と、どっちが遠いか聞いてみました。
住職さんは、どっちも、人には超えられないぐらい、遠い、と教えてくれました。

鈴は、鈴のお父さんやお母さんも、十万億土に暮らしているけれど
いつもいっしょにいる、と、住職さんにお答えしました。
住職さんは、ちょっと困った顔をされました。
それから、鈴に、大人になることの話をされました。
鈴は、住職さんに、弁慶お兄ちゃんは、紅葉おねえちゃんの所に
必ず帰ってくると話しました。
住職さんは、もっと困った顔をされました。
鈴には、おとなの話は、わからないです。
鈴には、弁慶お兄ちゃんが、紅葉おねえちゃんをおいて
どこかへ行ってしまうなんて、信じられません。

鈴が、そう言うと、住職さんは、優しい顔になって
鈴のお父さんお母さんも、鈴をおいて、どこかへ
行きたかった訳じゃないと、おっしゃいました。

 

○月×日△曜日

 

　紅葉おねえちゃんの所へ、毎日のように、和歌が届けられてます。
紅葉おねえちゃんは、礼儀正しいので、届けられた和歌には
かならずお返事を差し上げてます。
弁慶お兄ちゃんの服は、今日も、鴨居で威張ってます。

弁慶お兄ちゃん。早く帰ってこないと、あの服が
いつか仕立て直されてしまうかもしれないよ。