鈴木と鎌田の消失

　鈴木：あらすじになってないな。
　鎌田：間違ってもないけどな。
　　鈴：鎌田様。鎌田様はいま不幸なのですか？そんな…ひどい…
　鎌田：だからさ。弁慶が１０年分老けてるのをどう説明しろっていうんだよ。やってられるか。
　弁慶：ありのままをそのまま説明したらいいだろ。変にいいわけを考えても仕方ない。
　鈴木：誰がそんな奇想天外な話を信じるんだよ。
　　鈴：鈴は信じます。
　鈴木：いや、当事者の証言じゃ意味ないから。
　弁慶：だから、せっかく平成の世に来たんだから観光しようぜ。
　鎌田：おまえはほんとのんきだな。
？？？：あの、そろそろ私の紹介をしてくださいませんか。
　弁慶：ああ、そうだな。紹介するよ、俺の嫁の紅葉だ。
　紅葉：紅葉です。弁慶様のお友達の方々なのですね。これからよろしくお願いします。
　鈴木：あ、ああ、こちらこそ。
　鎌田：なにぼーっとしてるんだよ。
　弁慶：で、こっちが
　　茜：お父さん～このおじさん達だれ？
　弁慶：眼鏡を掛けてるのが鎌田で、たれ目が鈴木だよ。
　鈴木：弁慶、この子だれだ？
　弁慶：お父さん、って呼びかけでわかるだろ。俺の子供だよ。
　鎌田：ちょっとまて、なんでおまえに子供がいるんだよ。
　弁慶：驚くなよ。嫁がいたら子供がいても不思議じゃないだろ。
　鈴木：言われてみればその通りなんだが…。
　　鈴：茜ちゃん、よくきたね。
　　茜：えへへ～鈴おねえちゃんも来てたんだ。
　　鈴：ええ、ちょっと前に来てました。
　　茜：じゃ、一緒にあそぼ。
　　鈴：何をしてあそぼうか？
　　茜：えっとね。GB。
　鎌田：ちょっとまて弁慶！
　弁慶：どうした鎌田。
　鎌田：なんで平安時代にGBがあるんだよ。
　弁慶：いや、学生服のポケットに入れっぱなしにしてたから。
　鎌田：そうじゃない。なんでGBの電池が１０年も持つんだよ、あり得ないだろ。
　　茜：電池ってなに？
　鎌田：いや、茜ちゃん。電池がないとGBは遊べないでしょ。
　　茜：え？GBって、こうやって投げて遊ぶ物なんでしょ。

　紅葉：弁慶様。これが弁慶様の言う、”現代”なのですか。
　弁慶：ああ、そうだよ。元々俺が生まれた時代。
　紅葉：皆さん、ああいった衣装を着ているのですか。
　弁慶：ああ、そうだよ。まあ、学生服を着ているのは学生だけだけど。
　紅葉：あの服は、着ていると時々「ぴりっ」とすることがありますね、不思議です。
　弁慶：静電気だよ。
　　茜：せーでんきって、なに？
　弁慶：ちっちゃなカミナリのもと。「ぴりっ」ってくるのは、カミナリの赤ちゃんなんだぞ。
　　茜：じゃあ、大きくなったらへそとられるの？
　紅葉：そういうことはありませんから、安心しなさい。
　　茜：はーい。
　鈴木：弁慶の子供とは思えないぐらいにかわいいな。
　弁慶：ほっとけ、茜は紅葉似なんだよ。
　鎌田：なんか、弁慶が普通にうらやましいな。
　　鈴：鎌田様には鈴がいるではありませんか。
　鎌田：いや、だから１０年後にな…
　　鈴：鎌田様からみた紅葉様と、今の鈴と鎌田様の年齢差は同じぐらいのはずですが。
　鈴木：そういう言い方をしたら、あんまり年齢差がないような気もするな。
　鎌田：比率で言ったら全然違うだろ。
　弁慶：年齢を重ねれば差なんて気にならなくなるぞ。親子でも同じようにおじいちゃんおばあちゃんだ。
　鎌田：わけわかんない比較するなよ。ていうか、俺の事より弁慶の方が大問題だろ。
　　　　それに、鈴だって、向こうに家族とかいるんじゃないか？心配するんじゃ。

　鎌田：…あれ？俺、何か悪いこと言ったか？
　紅葉：……鈴は戦災孤児なんです。
　弁慶：俺が呼び出された時代は、ちょうど源平合戦の真っ最中だったからな。
　　茜：お父さんもお母さんも源義経の部将だったんだよ、すごいでしょ。
　鈴木：お母さんが部将ってのは無理がないか。
　　茜：義経だって女だったんだよ。
　鎌田：じゃあ今は男なのか。
　　鈴：鎌田様、べたなぼけです。
　弁慶：まあ、詳しい話は後でゆっくりするよ。
　鎌田：だからなんで弁慶は危機感ないんだよ。おまえこれからどうするんだ？
　弁慶：どうするって…なるようにしかならないんじゃないか。
　鈴木：なるようにって…おまえ、とりあえず１０も年をひろってるんだぞ。
　弁慶：だぞ…って言われてもな。俺に何が出来るわけでもないだろ。
　鎌田：だからさ、出来ることを何か考えようとか、あるだろ。
　弁慶：そうだよなあ。就職しないと家族が養えないからなあ。社会人は辛い。
　紅葉：私も何か内職でも探しましょう。
　　茜：茜もお手伝いする～。
　弁慶：茜はまず、学校に行かないとな。
　　鈴：学校とはなんでしょう。
　弁慶：学校ってのは、勉強するところだよ。平成の世じゃ、生きていくのに覚えなきゃ
　　　　ならないことが、平安の世よりたくさんあるからね。
　鎌田：あんまり実用性がなさそうなことも一杯教えるけどな。
　弁慶：それでも、知らないと知ってるのとでは大違いだよ。
　　　　平安時代に行って痛感したな。もうちょっとまじめに授業を受けてれば良かった。
　　鈴：鎌田様、私も学校に行った方がよいのでしょうか。
　鎌田：ええと…うん、そりゃ…通えるなら、行った方がいいと思うな。
　　鈴：通えなかったら、今すぐ…
　鎌田：だー。なんとか通えるようにがんばる。がんばるってば。
　　鈴：鎌田様…そこまで鈴の事を心配してくださるのですね。
　弁慶：さてと、とりあえず京都観光に出かけようぜ。鎌田、鈴木、金を貸してくれよ。
　　　　東京に帰ったら返すから。
　鎌田：…弁慶、今持ち合わせがないのか？
　弁慶：当たり前だろ。さっきまで平安時代にいたんだぜ。
　鈴木：紅葉さんが持ってるわけ、ないですよね。
　紅葉：ええ、申し訳ありませんが…。
　鎌田：………困ったな。長野先生が現れないと、まず宿代が払えないぞ。
　鈴木：そうだな、旅費も、…あーっ！帰りの切符も長野先生が持ったままだ！
　　鈴：その、長野先生とはどういう方なのですか。
　鎌田：俺たちの引率の先生だよ。どうしよう…。
　弁慶：歩いて帰るしかないな。道中は物乞いでもして。
　鈴木：今は平安時代じゃないんだよ。時代考えろ。
　紅葉：旅人に冷たい村はいまに滅びます。
　鈴木：だから、今は平安時代じゃないんだってばっ！
　鎌田：まあ、まて、おちつけ。冷静になってかんがえよう、ええと、その…。
　　鈴：一番あわててるのは、鎌田様です。
　弁慶：まあ、なるようになるさ。とりあえず京都観光にでも出かけようぜ。
　鈴木：あ、ああ、そうだな弁慶。せっかくだ、紅葉さんや茜ちゃんもつれて
　　　　平成の世の見学でもしてもらおうか。
　紅葉：はい、ではご一緒いたします。
　鎌田：お、おれもいくぞ。
　　鈴：鈴もお供します。
　　茜：茜もいく～。

　鎌田：ま、まて、それだと俺たちがいつまで経っても帰れないじゃないかどうしてくれる。
　弁慶：このさい俺たち全員で平安の世にまた戻れば一件落着しないか。
　鈴木：無茶言うな、鎌田はともかく。
　　鈴：私は鎌田様のおられるところでしたらどこへでも…。
　　茜：お父さん、どっちがいいの？
　紅葉：私も弁慶様とずっと一緒です…。
　鈴木：独り身は辛いな茜ちゃん。
　　茜：鈴木のおじちゃん、それ、口説いてるの？
　鈴木：そうじゃないよ。
　　茜：そうなんだ、残念。
　弁慶：おまえ、俺の娘に手を出すなよ。
　鈴木：出してないっての。
　鎌田：ていうか何かまともな落ちをつけろ～っ！
　　鈴：まともな落ちになったら鎌田様が消えてしまいます。
　鈴木：俺はいいのかよ…
　　鈴：関係ないですから。
　鈴木：速攻で言うな！
　弁慶：まあ、本当のことを言うと、古銭商に行けばなんとかなるだろうけどな。
　　　　平安時代のお金なら、それなりの価値があるだろうし。
　鎌田：本物だと思ってもらえればだろ…。
　弁慶：あ、それは盲点っ！

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