景時はぷかぷか笑ったよ。

 

「そのネタはもういいわ！」
「全くだ。大体がぷかぷか笑うとはどういう状態だ！」

 

失礼な、おまえ達は東北の文豪太宰治をしらんのか。

 

「しらん。第一これは宮沢賢治ではないか」
「景時殿。時代考証を無視するのはよくないぞ」

 

こらこら、二人ともそんなのんきな話をしていていいのかな？
鎌倉へ向かってくる義経一行から逃げている最中だというのに。

 

「やかましい！逃げているのではなく、転進と呼べ」

 

完全な全滅を玉砕と呼ぶような詭弁だな。

 

「ほっとけ」
「二人とも、ずいぶんと楽しそうですね」
「こ、これは政子様ご機嫌麗しゅう…」
「今まで機嫌が麗しくても、そなた達雑魚を見てずいぶんと機嫌が悪くなりました」
「そ、そんな、私たちもまじめにやっておりますのに」
「まじめにやっていればなお悪い。まじめにやってこれなら
　あなた方はただの馬鹿ではありませんか」
「た、ただの馬鹿というわけでは」
「救いようのない馬鹿だと言いたいのですか」
「そ、それより政子様、いったいどこからどうやって声を伝えておられるのです？」
「常玻璃の鏡を入手したのです。あなた方の情けない姿がばっちり映っておりますよ」
「な、なさけないと言われましてもその…」
「お仕置きです。雑魚なのは仕方ないといえ、すこしはまじめにおやんなさい」

 

「あーれー」

 

政子の妖術によって背後から地獄の番犬が現れて二人を追いかけ始めた。

 

「ほらほら一生懸命走りなさい。走らないと犬のえさですよ」
「 は、はしっておるわ。…と、年寄りは大切に」
「ひ、卑怯な景時。自分だけ年の功を自慢しおって」
「無駄話すると疲れますよ。ほらほら走った走った」
「は、はしっているというに…」
「ま、まさこさまこれはあんまりです〜」
「……義経一行が馬に乗って街道を進軍しているのでなければ
　こうやって走らせることもないのですけれども。
　義経に首を斬られるよりはいっそ地獄の番犬に食われた方がましでしょう。
　さあ、しっかり走るのですよ」
「ま、また走るんですか政子様〜」
「景時っ！わけわからぬことをいうな」
「ひえ、ひええ〜」
「ほらほら、無駄話しながら走るから番犬に上着を食われ掛けてるではありませんか」
「ひえ、ひえ〜」

 

人間、死ぬ気でやればなんでも出来る物である。
これで景時達は平安時代のマラソンの日本新記録を樹立したという。

 

公式計時ではないので、全然意味はなかったが。