ここは、いつもの崩れ荘、ではなく
弁慶達が通う高校の生徒会室である。
この生徒会室には、コンピュータ同好会から
巻き上げたわけではないにもかかわらず、パソコンが存在する。

 

それだけなら、普通なのだが、なぜかこの生徒会室には
WS360も存在していた。

 

九羅香：なにその、WS360って。
　紅葉：九羅香様、WS360というのは、最新のゲーム機です。
九羅香：いや、それはわかるんだ紅葉。
　紅葉：では、問題ないでしょう。
九羅香：問題あるよ。なにそのネーミングセンス。作った人の顔が見てみたいじゃない。
　弁慶：そういうなって九羅香。
　美沙：やっほー先輩達。ねえねえ、新しいゲームを手に入れたんだよ。
　玲奈：そりゃすごいや、さっそくやってみようぜ。
　美沙：うん、玲奈、じゃ起動…の前に、コントローラー出さなきゃね。
　弁慶：いや、先に、一体何を手に入れたのか説明してくれよ。
　　静：手に入れた〜ということは〜買ったわけでは〜ありませんね〜
　美沙：いっぺんに聞かないでよ。ちゃんと順番に説明するから。
　与一：おまえ達、生徒会室は遊び場ではないぞ。
　美沙：与一、堅いこといいっこなし。これは精神修養と肉体の鍛錬にも役立つんだから。
　与一：それで、一体何を手に入れたのだ？
　美沙：えっとね、Wonder Stellar Conquestだよ。
　弁慶：一体どんなゲーム？
　美沙：宇宙の魔法使いになって、星系征服の一翼を担うアクションMMOだよ。
　弁慶：よくわからん・・・・
　美沙：習うより慣れろだって。とりあえずキャラ作成してやってみようよ。
　　静：それで〜誰が〜プレイするんですか〜。
　美沙：そりゃ、もちろん…
九羅香：主人公だよね。
　紅葉：では、弁慶さま、代表でお願いします。
　弁慶：俺かよ。
　与一：仕方あるまい。本編のプレイヤーキャラはおまえなのだ。
　弁慶：いや、いきなり本編のプレイヤーキャラとか言われても困るし…
　美沙：いいからいいから、さっさとキャラメイクするよ。

 

そういうと、美沙はコントローラーを弁慶に装着する。

　弁慶：それで、ここから何をやればいいんだ？
　美沙：んと、最初に外見設定だね。…でも、これはランダムでいいや。
　弁慶：どう見てもロリぷに少女なんだが…
　美沙：現実とはギャップがあったほうが面白いよ。んじゃ次はパラメーター設定っと。
　弁慶：なんだこのパラメーターは。
　美沙：簡単に言うと、遠距離戦、近接戦、支援のどれが得意かってこと。
　弁慶：じゃ近接戦闘キャラにしてよ。
　美沙：うん、じゃ近接戦闘にして…さあ、オープニングだよ

 

『遙かなる未来…人類は、イデア界と現実界を結ぶ新しい技術を発見。
　これにより、科学文明に変わる新たな文明、魔法文明が幕を開けた。
　強大なる魔力発生装置〜K-unitの支援により、人類は超光速で星系を開拓し続けていた。
　だが、それは、かつて犯した過ちの轍を踏むことでもあった。
　無人テラフォーミングシップによる、無軌道なテラフォーミングは
　数多くの惑星に、地球的な生命と、地球的環境ををまき散らしていた。
　より重要なことは、テラフォーミングシップは、K-unitによる魔力によって
　魔法によって惑星全体を”汚染”してしまっていたのである。
　結果として、無人テラフォーミング船によってテラフォーミングされた惑星の大半は
　魔法生物の住む人外魔境と化してしまっていた。
　その、魔法生物と戦い、これを制圧し、人類の新たな一歩を切り開く勇者達。
　それを、人は、かつての大航海時代の戦士達の名を取ってこう呼んだ〜海兵隊：Marinesと！』

 

『そういうわけで、私が君たちの指導教官のまりあ・しょーとだよ☆
　まずは挨拶に』

 

どっか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん☆

 

『てへ、失敗失敗』
『まりあ少尉、また失敗したんやな。…と、よく見たな、今のが悪いお手本や。
　うちが、指導助手のみねあ・きゃんべる軍曹や。直接指導するんは
　まりあ少尉殿やのうて、うちやからな。これからよろしゅう。
　なんや、返事がないで。うちに言われたら、返事の後にはかならず
　軍曹殿、いうてつけて答えるんや。わかったな』

 

　弁慶：ええと・・・どうするんだ？

 

『こら、なに勝手に話ししてるねん。…音声認識してるんやで。
　大きな声で、『はい、軍曹殿』いうてこたえんかい』

 

　弁慶：はい、軍曹殿

 

『声が小さい。腹から精一杯声ださへんかい』

 

　弁慶：はい、軍曹殿！

『よろしい。…せやたら、習うよりなれろや。
　すぐに実戦練習に入る。VR訓練室に駆け足』

 

・・・

 

　弁慶：なあ、美沙。ここからどうすればいいんだ？
　美沙：んーと、ここで簡単に操作に慣れておくといいよ。
　　　　このゲームだと、移動は魔法の力を使うのが基本だから
　　　　移動も攻撃アクションの一種なんだ。
　弁慶：そんなのわかるわけないだろ。
　美沙：大丈夫、チュートリアルが画面に出てるから、その通りにすれば。
　弁慶：ああ、両手を画面に向かって伸ばすと、移動コマンドが出るのか。
　美沙：そうそう、そこで、両腕を動かして行きたい場所を選択して同時にパンチを出せば決定。
　弁慶：よし、VR訓練室を選択したぞ。

 

『遅かったな。まだ、オーギュメントの使い方に慣れてへんのやな。
　まあええわ。それはすぐに訓練で慣れるやろ。
　まずは、魔法の基本、変身のやり方から教えるわ。
　うちは、VR制御室から、指示を出すから、その通りに行動するんやで』

 

　弁慶：わかったよ。

 

『わかったよやあらへん！』

 

　弁慶：わかりました軍曹殿！

 

『そうや。せやたら、中に入りや』

 

九羅香：ねえねえ、これ、ロリぷにな女の子が、弁慶の声で叫んで、違和感ないの？
　美沙：ここで見てる人には違和感がありまくるけど、オンライン上だと予め設定した声に変換されてるよ。
　与一：すごい技術だな。
　美沙：Y○Hの新技術なんだって。
　玲奈：へえ〜でも、静だったら、どんな声色でもすぐにわかりそうだな。
　　静：それは〜どういう〜意味なんでしょう〜
　　楓：そりゃ、こんな間延びしたしゃべり方するのは、静ぐらいだわね。
　　静：あの〜私〜これでも〜悩んでるんですよ〜
　弁慶：お、画面が変わったぞ。

 

『よし、来たな新人。せやたら、まずは魔法使いの基本、変身や。
　あんしんし。変身いうたかて、魔法のかけ声が「はっぴんぱらりこずんぱらりん」だったりは
　せえへんからな』

 

　弁慶：心の底から安心したよ…

 

『せやたら、オーギュメントを高く上にかかげるんや。右手を上に力一杯つきだすんやで』

 

　弁慶：はい軍曹殿！

 

弁慶は、言われたとおり、ブレスレット型コントローラーをつけた右腕を高く突き上げる。

 

『デバイスプログラム・ロード。オーギュメントを起動します』

 

♪〜（お好きなBGMを思い浮かべてください）〜♪

 

『ここで決めポーズや！なんでもええ、とにかくかっこいいと思う格好をしてみ！』

 

びしっ！
さすがは武蔵坊弁慶、薙刀を構えるようなポーズなら綺麗に決まる。
画面の中のロリぷに少女も、同じように決めポーズをとる。

 

　与一：なかなか良くできてるな。
　紅葉：あ、あの…美沙さま…
　美沙：なに紅葉先輩、声がうわずってるけど。
　紅葉：あの…変身シーンって…
　美沙：え？あの変身シーン？気にするほどじゃないって、肝心な所は見えないようになってるんだから。
　廉也：そんなこと言っても、その…
　美沙：肌色のレオタードだと思って見てればOK。

 

『変身シーンの話はそれくらいでええやろ。さてと、今回は練習やから地上戦や。
　一本道をモンスターを排除しながら踏破して、キャンプにたどり着けば終了や
　さあ、冒険の始まりや！』

 

　弁慶：はい、軍曹殿！

 

---

 

細かい操作法についての解説は省略しよう。
必殺技の発揮には、技の名前を音声入力するとか
防御のためには、左手（右利きのキャラの場合）だけを画面の攻撃が来てる方向へ突き出すとか
攻撃は右手（右利きキャラの場合）を敵に向かって振ることで行うとか
ため（両手を腰に構えて叫ぶ）によって魔力が強化できる。シールド（必殺技の一種）で
一定時間無敵を発生させてからため→大必殺技、のコンボはボスキャラ戦の常套手段といった
ゲームの基本を学んだわけだ。

 

『これで、卒業や。つまらん訓辞は不要やろ。
　これからは、VRやない、実戦の場に出ることになる。
　1人やったら、とても生き抜くことなどできへん、厳しい世界や。
　せやから、仲間を大切にせえよ。卒業した以上、うちも、仲間の1人や。
　お金次第で助けにいったるからな。パートナーカードや、うけとり』

 

ぱぱーん。みねあのパートナーカードを受け取った。

 

　弁慶：はい、軍曹殿！

 

---

 

　弁慶：それで、これからどうすればいいんだ？
　美沙：初心者のうちは、パーティ募集を探すんだよ。チュートリアルでもあったでしょ。
　弁慶：あったけど忘れた。
　美沙：もう、しょうがないなぁ…レベルが低いキャラが一緒にいるほど実入りのいいミッションが用意してあるから…
九羅香：へえ、そんなのがあるんだ。
　美沙：うん。練習用シナリオは、レベルの低いキャラ支援用だからね。あ、これよさそう。
　弁慶：どれどれ…へえ、ベースキャンプの近くに湧いたモンスターの巣を撃滅するシナリオか。
　美沙：パワープレイのシナリオだし、適度なレベルの先輩キャラが待ってるから、飛び入りするといいよ。

　弁慶：よし、じゃあワープ！

 

『…いらっしゃい』
　弁慶：こんにちは。…入っていいですか？
Ｐ−７：いいよ。プレイは何回目？
　弁慶：始めてです。
Ｐ−７：そうなんだ。私も始めたのはついさっき。

 

　美沙：え、うそ。もうこんなレベルなのに？

 

Ｐ−７：このミッションなら、２，３回プレイしてるから大丈夫。MMO要素があるから、一緒に出てるグループがあるけど気にしないで。
　弁慶：ＭＭＯ要素って？
Ｐ−７：わからなきゃ気にしない気にしない。とにかく、目の前の敵をぶったおせばＯＫＯＫ．ＧＯＧＯ！

　弁慶：二人だけで行くんですか？
Ｐ−７：だって、ゲーム出来るのは一日1時間に制限されてるんだもん。さっさと行くよ〜。

 

　美沙：Ｐ−７さんは、支援タイプなんだね、じゃ近接タイプの弁慶先輩とはうまくいくかな
　弁慶：俺がＰ−７の盾役になればいいんだな。
九羅香：いけ弁慶！
　弁慶：おおー
　　静：でも〜Ｐ−７さん〜思い切り敵につっこんでます〜
　美沙：ええーっ！このゲームの支援キャラって、ほんと攻撃力ないよ。すぐ死んじゃうんじゃ。
　与一：すごいな、あのＰ−７とかいう奴は。
　廉也：相手の攻撃をぎりぎりの間合いで外してますね。
九羅香：それでいて、相手が防御発動するまえに近接戦闘用の武器で殴ってる。
　観月：攻撃サポートの魔法を自分に最大限掛けて攻撃力を増してますね。
　　楓：ていうか、属性の合わせ方も絶妙じゃない？武器を高速で変形させて適切に殴ってる。
Ｐ−７：さて、と。ちゃんと付いてきてる？
　弁慶：見失わないように追いかけてるよ
Ｐ−７：んと、じゃ今みたいな感じでやってみて。ＨＰは回復するから。
　弁慶：無茶いうなよ。そこまで上手くないから
Ｐ−７：何事も練習だよ、やってみる前にあきらめちゃめだって。
　弁慶：だから、間合いぎりぎりで一発攻撃をからぶらせて…直撃食った！
Ｐ−７：あ、危ない囲まれる。

 

Ｐ−７は、回復魔法を掛けつつ間合いをつめ、敵前でためて相手が攻撃モーションに入った瞬間必殺技を発動する。

Ｐ−７：追い打ち掛けて！
　弁慶：わかった。喰らえ！

 

弁慶も、実戦はくぐり抜けている、敵がひるんでる好きにぶん殴るぐらいは出来る。

Ｐ−７：よしよし、その調子その調子。
　弁慶：俺、どっちかっていうと、パワープレイなんだけどなー。
Ｐ−７：あ、俺っていうより、ボクっていったほうがかわいいよ絶対。
　弁慶：そうかな？
Ｐ−７：そうそう、中の人なんでわからないんだから、思い切りなりきらなきゃ☆
　弁慶：ボク、がんばるよ
Ｐ−７：そうそうその調子その調子。

 

聞いてる九羅香達は笑いをこらえるのが大変なようだ。

 

　弁慶：やったゴール。
Ｐ−７：うん、期待したよりよくやったよね。じゃ、これは私のパートナーカード。
　弁慶：ええと…
　美沙：パートナーカードの渡し方がわからないの？後ろで両手を組んでメニュー画面を開いてパトカを選択すればＯＫ
　弁慶：あ、出来た
Ｐ−７：うん、ありがと、また会おうね
　弁慶：またね。
九羅香：こっちも時間だ、そろそろ道場に行くぞ。
　弁慶：ああ、行こうか。結構楽しかったよ美沙。
　美沙：見てるこっちも面白かったよ
　玲奈：そうそう、ろりぷに弁慶なんて、滅多みれないもんな
　　楓：こんどっていうけど、こんどなんてあるのかしら。
　紅葉：弁慶様のお宅でしたら、ゲーム機を持っておられるかと
　弁慶：俺は持ってないよ。さすがにまだ高いから
　　静：では〜こんど〜私が〜買ってあげましょう〜
　弁慶：いや、いいよ静さん。
　与一：だが、これも接続料がいるのだろう？お金の掛かる話だな。
　美沙：それは仕方ないよ。向こうも商売なんだし
　紅葉：学校でプレイするのはふさわしくないですね。
　廉也：ゲーム機があること自体ふさわしくないような気がします。
　観月：廉也、私たちはそろそろ帰りますよ。
　廉也：はい、観月様。

 

こうして、美沙が入手したゲームは、二度と学校でプレイされることはなかったという。