じめじめじめじめ・・・
じめじめじめじめじめじめじめじめ・・・
じめじめじめじめじめじめじめじめじめじめ・・・

 

　　観月：なんだか、懐かしい始まり方ですね。
　　廉也：そうですね、観月様。
　九羅香：あーもう、なんでこんなに雨が降るんだよ。
　　紅葉：九羅香様、入梅したのですから、仕方がありません。
　　　静：そうですね〜。たまには雨が降らないと〜お休みできないです〜
　　与一：静殿は、外に出る仕事なのか？
　　　静：はい〜私は〜すとりぃとだんさぁですから〜
　九羅香：ストリートダンサーって？
　　紅葉：道路で踊る踊り子のことですね、九羅香様。
　九羅香：それなら、雨が降ったらお休みだね。
　　　静：はい〜そうなんです〜。
　　弁慶：こんにちは。
　　紅葉：いらっしゃいませ、弁慶様。
　　玲奈：うにゃ・・・なんだ弁慶、じゃましに来たのか？
　　弁慶：じゃまって失礼な。ちゃんと今日は用事があるんだよ。
　　玲奈：用事？どうせ紅葉の料理でもたかりに来たんだろ？
　　弁慶：違うって。剣道部のことで九羅香と打ち合わせ。…と、それはそれとしてひとつ聞いていい？
　九羅香：なんだ弁慶？
　　弁慶：なんで部屋を閉め切って扇風機を回してるの？
　　玲奈：見たらわかるだろ。
　　弁慶：いや、見てもわからないから聞いてるんだけど。
　　紅葉：あの、弁慶様、玄関先で立ち話もなんですから、どうぞ奥へ。
　　弁慶：ありがとう紅葉…と、まるで万国旗みたいに洗濯物が干してあるんだね。
　　廉也：ええ、そうです。雨が降ると表に干したんじゃ洗濯物が乾かなくて。
　　観月：除湿器のある部屋も、ここと、奥の部屋だけですから、扇風機も併用しないと乾きません。
　　弁慶：そうなんだ。でも、それなら、除湿器と洗濯物は隣にうつしてしまうか、人間が向こうに行ったら。
　　与一：向こうは向こうで、物置同然だからな。
　　廉也：ええ、こちらに洗濯物が干せるように、向こうにこちらの部屋の荷物をうつしてあるんです。
　　紅葉：すいません弁慶様、狭苦しくて。
　　弁慶：いや、そんなにあやまらなくていいよ紅葉。
　九羅香：狭いのは、紅葉のせいじゃないんだから。
　　　楓：そうよ、悪いのは、馬鹿みたいにでっかい図体してる弁慶ですからね。
　　弁慶：悪かったな、体が大きいのは生まれつきだよ。
　　　楓：生まれつきでも悪いわよ。あんたもう少しからだをちっちゃくしなさい。
　　弁慶：無茶言うなよ…
　九羅香：楓、それは言い過ぎだよ。
　　　楓：ごめんなさい…
　　弁慶：それで、九羅香、今年の練習試合のスケジュールなんだけど、いい？
　九羅香：それについては、生徒会の方で、今年も合同の交流試合をやろうと思うんだ。
　　　静：合同大会のほうが〜盛り上がりますから〜
　　紅葉：合同にすると、遠征費用も圧縮できるんです。
　　玲奈：いずこも、予算不足なんだな。
　　弁慶：玲奈、なんだか眠たそうだな。
　　玲奈：雨が降ると、なんか調子でないんだよな。
　　　楓：忍者がそんなことでどうするのよ。忍者はひとめに付かないときが勝負でしょ。
　　玲奈：雨に濡れたら、服が水を吸って動きにくくなるんだよ。
　　　静：それに〜ねこは〜雨が降ってると〜寝ちゃいますから〜
　　玲奈：誰がねこだ！
　　　静：私は〜玲奈さんの〜忍ねこのはなしを〜してるんです〜
　　玲奈：まあ、あたしの忍ねこも、無茶はさせられないしな。
　　　静：それに〜玲奈さんも〜ねこですし〜
　　玲奈：てめ、結局話をそっちに持ってくるんじゃないか。
　　　静：それはもちろん〜お約束ですから〜
　　玲奈：もう怒ったぞ静。
　　　静：目が〜覚めましたか〜
　　玲奈：おお、ばっちりさめた。
　　　静：それは〜良かったです〜
　　紅葉：ふふ、では、玲奈様も起きられたことですし、お茶でも煎れますね。
　　弁慶：ありがとう紅葉。
　　与一：弁慶も、ここに来たらお茶をのんでばかりだな。
　九羅香：まあまあ、時間的にも、そろそろお茶会の時間だよ。
　　紅葉：九羅香様、お茶請けはなににいたしましょう？
　九羅香：何がいいかな？
　　廉也：観月様、何かお茶菓子になるようなものが、ありましたでしょうか。
　　観月：そうですね。弁慶様から頂いたお菓子は、もうすべて食べたように思います。
　　弁慶：ごめん、今日は手ぶら出来ちゃったよ。
　　玲奈：気が利かないな。
　　弁慶：悪かったよ。
　九羅香：玲奈、たかるな。それじゃ、お茶菓子はなしでいいよ。
　　与一：九羅香殿が、食べることに執着しないとは、めずらしいこともあるな。
　　弁慶：だから、雨が降ってるんだろ。
　九羅香：べーんーけーいー。それではまるで私が、食べることしか考えてないみたいではないか。
　　弁慶：しか、って言えば言い過ぎだろうけど、食べることに執着はしてると思う。
　　　楓：お姉さまは、それだけ修練で動いてますものね、お姉さま。うどの大木の弁慶とは違うわよ。
　　弁慶：ほっとけ。…と、ありがと紅葉。
　　紅葉：どういたしまして、弁慶様。…どうぞ、九羅香様も。
　九羅香：ありがとう。

 

とまあ、雨の中でも、こんな感じでいつものような放課後が過ぎていく。

　　美沙：ちょっとみんな、私をのけものなんてずるい
　　観月：あら、いらっしゃいませ美沙様
　　廉也：あ、いらっしゃ…い…
　　美沙：あ〜廉也くん、なんでそんなに逃げ腰になるの？
　　廉也：いえ、…その…
　　観月：大丈夫です。今日の美沙様は、お菓子の手みやげしかもっておられませんよ。
　　廉也：ほっ・・・
　　美沙：そういうこと。はい、ちょっと旅行のおみやげを持ってきたからね。
　九羅香：あれ？美沙って、どこか旅行に行ってきてたの？
　　美沙：紅葉先輩の頼みで、ちょっと遠征先の下見にね。
　　与一：すまんな、美沙殿。
　　美沙：じょぶじょぶ。交通費は生徒会費から出してもらえたし。
　　紅葉：それで、先方さんの様子はどうでした？
　　　楓：先方さんって、また殺人事件なんて起きないでしょうね。
　　美沙：起きない起きない。大丈夫だよ、ここ２，３年は殺人事件なんて起きてないから。
　　弁慶：それじゃ４，５年前には、事件が起きてたのか？
　　美沙：そんなことないよ。…たぶん、調べてないけど。
　九羅香：弁慶、そんなに疑って掛かるな。普通はありえないんだから。
　　　静：そうですね〜
　　　楓：それにしても、暑いわね。
　　観月：除湿器自体が、熱を出しますから。
　　　楓：あたしは、閉め切ってる部屋に１０人も入ったら暑苦しいっていってんの。
　　玲奈：じゃ、楓が出ればいいじゃないか。
　　　楓：暑苦しいっていったけど、おねえさまと同じ部屋だからいいの。
　九羅香：ちょっとちょっと、楓ってば。
　　弁慶：暑苦しいっていうわりには、九羅香に張り付くんだな…。
　　　楓：べーだ。
　　紅葉：楓、人前ですよ。はい、美沙さま、ではありがたく頂きますね。
　　美沙：どーぞどーぞ。先方さんからのもらい物だから遠慮なく。
　　与一：なんだ、美沙殿が買ったわけではないのだな。
　　美沙：そんなお金ないから。…ま、生徒会のみんなっていっても、ここに持ってくるのと同じでしょ。
　　弁慶：それは言えてる。
　　紅葉：そうかも、しれませんね。

 

洗濯物に当たらないよう、低く座ってのお茶会。
会話の弾む１０人には、そんなもの気にならないらしい。