ここは、いつも通りのつぶれそう。

 

九羅香：いらっしゃい景川さん
　美沙：やっほー、九羅香先輩お招きありがと
　紅葉：弁慶様がみなさま全員分のクッキーを持ってきてくださいましたのでお茶会に致しましょう。
　　楓：ま、べつに要らないんだけど
　弁慶：いらないんだったら食うなよ
　　楓：気持ちを無にするのは悪いからもらってあげるっていってるのよ。
　与一：まったく、楓殿は素直ではないな
　　静：もらいものに〜もんくをいうものでは〜ありませんよ〜
　玲奈：そりゃそうだ。いくら安物だからってそんな文句を言うと罰が当たるぜ
　観月：あら、弁慶様はお菓子作りをなさらないのですね。
　弁慶：俺が作ってもおいしくないからね
九羅香：あは、弁慶、気を遣ってくれたんだ。
　弁慶：ま、まあ・・・そういうこと
　廉也：弁慶さんがおいしくないなら、僕のなんて人間の食べ物ではないですよ。
　観月：そうでもありませんよ。紅葉様に習って作れば誰でも上手に作れます。
　弁慶：廉也は自分で作ったのか？
　廉也：ええ、僕はお店で買うお金がありませんから
　弁慶：作る方が高く付くだろ
　紅葉：そこは、工夫でなんとかいたしました。弁慶様の差し入れの小麦粉と
　　　　重曹を役立たせていただきました。ありがとうございます。
　弁慶：いや、あれは余り物だからそんな感謝されても困るよ。
　美沙：へー。小麦粉にふくらし粉で作ったんだ。ねえ観月、一体なんだったの？
　観月：廉也、景川様にも用意したのでしょう。
　廉也：はい、観月様・・・景川さん、どうぞ、前のバレンタインの時のお返しです。
　美沙：あ、ありがと廉也君。大切に冷凍しておくね
　廉也：お願いだからすぐに食べて忘れてください。
　与一：まあいいではないか。毒も仕掛けもないのだろう。
　廉也：当たり前です。
　弁慶：でも、玲奈だったら絶対何か仕掛けてるはずだからな。
　玲奈：あ、どういう意味だよ弁慶
　弁慶：わさび入りの大福を作っておいて何を言う
　玲奈：あれはちょっとした・・おちゃめだから・・
　弁慶：ったく、涙と鼻水がとまらなかったぞ。
九羅香：弁慶、花粉症になったの？あれってなったら大変なんでしょ。
　弁慶：いや、違うよ九羅香。玲奈に前、わさび入りの大福を食わされたって話し。
　　静：玲奈さんは〜忍者さんですから〜変わった食べ物は〜よくご存じです〜
　美沙：へー、そうなんだ、今度教えてもらおうかな。
　玲奈：ああいいぜ。伊勢流忍術を取り混ぜた西洋流の奴を開発したから教えてやるよ。
　廉也：頼むからやめてくださいよ。実験台になるのは僕なんですから。
　美沙：そんなことないよ。大森君にもつきあってもらってるじゃない。
　廉也：僕が除外されることになってないです。
　紅葉：みなさん、お茶をどうぞ。
九羅香：ありがと紅葉。

 

紅葉がお茶を全員分回す。
いや、狭いので紅葉が入れたお茶をみんなで順番に回していくわけだ。

 

　　静：安い〜安いと〜言う割には〜おいしいですよ〜
　観月：ちゃんと、金属の缶に入っているクッキーなのですね。
　弁慶：まあね。バタークッキーだからそんなに高くないけど。
　与一：二缶で千円弱、といったところだな。
　紅葉：ですから、値段より気持ちが大切なのです、与一様。
　与一：ああ、悪かった、紅葉殿。弁慶、気を悪くしないでくれ。
　弁慶：いいよ、その通りなんだし。
九羅香：おいしければなんでもいいよ。
　玲奈：だからって九羅香は食べ過ぎだろ。そんなに急いで食べなくてもいいぜ。
九羅香：だって成長期だからおなかがすくんだもん。
　　静：成長期は〜もう終わってるのでは〜
　弁慶：そうだよなあ。俺もそろそろ背は伸びなくなったし。
　玲奈：それいじょう大きくなってどうするんだよ。いまに天井に頭がつくぞ。
　弁慶：いや、実際、古い家だと、普通に歩いていて頭をぶつける。
　玲奈：どんくさいな。
　弁慶：しかたないだろ。１８０ｃｍの身長で１８０ｃｍの高さしかない扉をくぐるんだから。
　廉也：大きいと大きいなりに苦労があるんですね。
　弁慶：まあな。服から靴から全部大きいから、体に合う服を探すのも大変だし。
　美沙：その点、廉也君はいいでしょ、ちょうどの体の大きさで、服を合わせるのも簡単。
　廉也：それは景川さんが服を探してくるのに都合がいいということなのでしょう。
　美沙：それはもちろん。廉也君大体私と同じ背格好だもん。私の服で大丈夫。
　観月：景川様は体が大きいほうなのですね。
　美沙：どっちかっていうと、廉也君が小柄なんだと思うよ。
　　静：私でも〜小柄だと言われることがあるぐらいですから〜
　美沙：うん、静先輩はそんなに大きくないと思うけど、どうしたの？
九羅香：静って、私たちがいたところじゃ大柄な方だったからね。
　与一：そうだな。弁慶に近い大男が珍しくもないのには驚いたぞ。
　　楓：時代が違うのよね。やっぱり、食べてる物がいいからじゃない。
　美沙：ええと・・・先輩達って、そんなに食べ物が貧しい所に住んでたの？
九羅香：そりゃへいあ・・痛い、痛いってば紅葉
　紅葉：九羅香様。・・ええ、私たちは奥州の山奥に住んでいましたから。
九羅香：そ、そうそう、奥州の奥の方に住んでたんだよ・・・あー、紅葉、あざになってる。
　紅葉：す、すいません九羅香様。
九羅香：なーんちゃって。
　弁慶：おい九羅香、そこまで紅葉をいじめてやるなよ。
　美沙：本物の牛若丸に那須与一だっていいたいんでしょ。学校新聞で読んだよ。
　与一：本物だ。
　美沙：与一ってば、そのネタ何回も使いすぎだよ。
　　静：いいんですよ〜私だって〜静御前の生まれ変わりだって〜紹介してもらってますから〜
　　楓：あたしや紅葉は無名なのよね。やっぱり長生きしなきゃいけないのかしら。
　紅葉：そういうのとは関係ないでしょう、楓。
　弁慶：いいよおまえらはまだ。
　観月：弁慶様はもう誰も本名を呼んでもらえませんものね。
九羅香：名前なんて符丁だからだから気にしなくていいって。名前は変えるのが普通でしょ。
　紅葉：戸籍の名前は本名ですから簡単に変えるわけにはいきませんよ九羅香様。
九羅香：え？そうなの。幼名とか法名とか戒名とか…
　与一：通称と本名はまた別だ。
　弁慶：まあ、難しいことはいいっこなしで…
　美沙：そだ、廉也君のも今食べようよ。一人で食べるよりみんなで食べた方がおいしいよ
　観月：そうですね。私のも出しましょう。
　廉也：え、そんな、観月様…
　玲奈：廉也、学校で配られるよりはここで食べてもらった方がいいぜ。
　美沙：さすがにそんなことしないよ。
　観月：そうなのですか、廉也。
　廉也：え、その・・・
　紅葉：新しいお茶を煎れてきますね。
九羅香：ありがと紅葉。
　美沙：んーと、廉也君結構器用じゃない。形もそれなりには整ってるよ。
　弁慶：本当だ。俺が作ったようじゃないよな。
　　楓：そりゃ、紅葉が指導したんだもの。当然よ。
　与一：努力の成果だな、廉也。
　玲奈：まあ、焦げたり生焼けだったりの失敗を重ねた結果だよな。
　廉也：え、ええ・・一ヶ月間、練習させてもらいました。
　　静：普通に〜買った方が〜早かったのでは〜
　　楓：3倍返しなんて脅すから、買うだけのゆとりがなかったんでしょ。
　観月：そんなに無理をしなくてもよかったのですよ、廉也。
　廉也：いえ、こういうのは気持ちですから。
　　楓：でも、弁慶のはどう見ても3倍にならないわよね。
　紅葉：その分、普段から弁慶様には差し入れをいただいているではありませんか。
九羅香：そうだね紅葉。ホワイトデーのお返しって、普段してもらってないから3倍っていうのかな。
　観月：そうかもしれませんね、九羅香様。
　玲奈：お、さすが紅葉、指導がいいな。
　紅葉：廉也様が真剣に練習した成果です。私は手助けしただけです。
　　楓：ま、廉也を仕込んだんだから、紅葉はたいしたものよね。
　観月：廉也は飲み込みは早いほうですよ。
　美沙：作った本人をほめてあげなきゃだめだよね観月。
　廉也：い、いえ・・・紅葉さんの指導が良かったのはたしかですから・・
　与一：そうだな。最初のうちは私から見ても恐ろしげだったが。
　廉也：そんなひどい形相でしたか？
　与一：いや、あぶなっかしいという意味だ。
九羅香：まあまあ、終わりよければすべてよしだよ。

 

お茶会はまだ続くらしい。

 

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　でもお話はお開き。