♪あかりをつけましょぼんぼりに〜♪
♪おはなをあげましょもものはな〜♪

 

　美沙：はい、そういう訳だから綺麗に撮ってね大森君。
　典泰：なにがという訳なのか説明しろよ、景川。
　美沙：見ての通りじゃない。ほら、兄貴から借りてきた高いデジカメなんだから壊さずに撮りなさい。
　典泰：兄貴ったって、俺が兄貴から借りたんじゃないかったく…
　美沙：ぶつぶついうな。それとも、大森君。もしかしてこっち側に座りたかった？
　典泰：いえ、喜んで撮影させていただきます。
　美沙：大変よろしい。では気合いを入れて撮影なさい。
　典泰：はいはい。

 

♪ごーにんばやしのふえたいこ♪

 

　弁慶：笛太鼓ったって、何か間違ってる笛太鼓だな
　与一：おまえは笛なだけましだ。私などどう見てもギターだぞ
　　楓：ていうか、なんで弁慶がお姉さまの笛なのよ。
　玲奈：そりゃ、九羅香が弁慶にやったからだろ。時計のお礼だ。
　　静：そうですね〜ですから〜すでに〜弁慶さんの笛なんですね〜
　　楓：納得いかないわ。本来ならあたしとおねえさまがお内裏様におひな様なのに。
　弁慶：いや、その時点で間違ってるだろ。
　　楓：じゃ、なんでお姉さまがお内裏様になってるのよ。
　美沙：あはは、楓先輩、それはいいっこなし。
九羅香：廉也が、お内裏様はいやだって言うから、仕方ないでしょ。
　美沙：ごめんね、観月はどうしてもおひな様にしたかったんだ。
　　楓：そりゃ、観月が入ると、どうしてもそこがおひな様になっちゃうわね。
　観月：私は五人囃子でもかまいませんよ。
　典泰：やっぱり、観月ちゃんは存在感が違うよ。
　廉也：そうです。おひな様は、観月様以外考えられません。
　紅葉：ですけれど、どうして廉也様が三人官女になっているのですか。
　与一：美沙殿が、廉也殿の隣に座りたがったからであろう。
　美沙：そんな本当のことを言わなくてもいいじゃない与一。
　玲奈：さて、じゃここで一つ特別にこいつを出すぜ

 

　　　　

 

　玲奈：どうだ、これぞ忍法画像表示の術。
　　静：とりたてて〜自慢するような技でも〜ないですよ〜
　与一：まったくだ。画像といっても、写真が現れるわけではないではないか。
　玲奈：うるさいな。文句があるなら自分で描けよ
　弁慶：いや、写真は描く物じゃなくて撮る物だと思うぞ
　観月：大体声の位置でどういう配置かはわかるのですが、具体的に説明していただけませんか。
　美沙：あ、ごめん観月。んじゃ、簡単に説明するね。じゃ、まず九羅香先輩から自己申告。
　　楓：それじゃ美沙が説明することになってないわよ。
九羅香：まあまあ、自己紹介したっていいじゃない。まず私がお内裏様の場所に座ってるね。
　　　　アパートの階段を利用して作ったひな壇の一番上だよ。
　観月：私がその隣で、おひな様の役ですね。
　紅葉：九羅香様の下に位置するのが私です。官女ですね。
　廉也：三人官女の真ん中が僕です。どうしていつも景川さんは僕に女装させたがるんですか。
　美沙：私が観月側に座ってる三人官女の三番目ね。そりゃ廉也君がかわいいからじゃない。
　廉也：そういう意味でかわいくなくていいです。
　弁慶：廉也、背を伸ばせ、そうすればかわいいなんて思われずに済むぞ。俺が紅葉の下、一番端で笛だな。
　与一：その隣でなぜかギターを持ってるのが私だ。なぜギターなのだ。
　美沙：ごめんね、弓に似た楽器を音楽室から借りたら、ギターになっちゃった。
　玲奈：弓を持つならバイオリンだろ。あたしが下の段真ん中、小太鼓役だな。
　　楓：そのとなりで鼓を構える役があたしよ。あー、なんでお姉さまのそばじゃないのよ。
　　静：そして〜私が〜五人囃子の反対端〜大太鼓ですね〜華麗に舞いながら叩きます〜。
　典泰：あ、静先輩、頼むから動かないで、ぶれちゃうよ。
　美沙：はい、自己紹介も終わったことだし、手芸部に仕立ててもらったせっかくの衣装をとってもらお。

　廉也：いや、もうこれ以上撮らなくていいです…
　美沙：ぼやかないぼやかない。衣装はもう借りちゃったから、写真あげないとまずいんだ。
　与一：既成事実の押しつけか、まったく、景川殿は。
九羅香：まあまあ、楽しいからいいじゃない。
　玲奈：そうそう、面白ければ正義だぜ。
　　楓：あたしはおねえさまの隣がよかったの。
　紅葉：ですけれど、普通にやると、九羅香様と弁慶様が親王ですよ。
　　楓：なんでよ。あたしじゃないの。
　紅葉：楓が、どちらになるんです？
　　楓：・・・・ごめん、あたしが悪かったわ。
　典泰：じゃ、みんないいかい・・・はい、笑って・・・

 

ぱちり

 

　典泰：はい、もう一枚

 

ぱち

 

こうして、美沙の思いつきの、人間雛飾りの写真が撮影された。
後日この写真が校内で密かに焼き増しされてしまったことは言うまでもない。