ここは、九羅香達のつぶれそう

 

九羅香：いきなりつぶれそうなんていうな！
　与一：その通りだナレーター。確かに耐震強度は足りていないが、決して手抜き建設ではない。
　紅葉：与一様、耐震強度が足りていなければ欠陥なのでは
　　静：建てたときには〜ちゃんと〜基準通りだったんですよ〜
　玲奈：時代が変わって基準も厳しくなったんだな
　　楓：潰れそうなのはかわんないでしょ。べつにくってかかるほどのこともないじゃない。
　観月：ですけれど、本当のことだから言われたくないこともありますね
九羅香：そうだね。本当のことでも言いたくないことってあるよね。
　紅葉：九羅香様、なにかいやなことでもあったんですか。
九羅香：それなんだよ紅葉、聞いてよ。今日がバレンタインなのは知ってるでしょ。
　紅葉：ええ、知ってますよ。
　玲奈：あたしなんか平安の世でも知ってたぜ。
　　静：玲奈さんは〜盗み見の名人ですから〜
　玲奈：人聞きの悪いこというな！忍者は情報を集めるのが仕事だ！
　観月：素性の知れない人について調べたのですね。
　玲奈：そういうこと、観月はわかってくれるよな
　　楓：そりゃ、未来から来たなんて言ったら疑うのが普通よね
九羅香：そんな説明しなかったんだけど
　与一：あの、いかにも不甲斐ない男を、頼りになるなどと言って紹介すれば普通は疑うぞ
　　静：まったくです〜
九羅香：だ、だって、そのときは、私だって正体しらなかったんだから
　紅葉：皆様、九羅香様の話の腰を折らないでください。今は九羅香様が受けたいやなことについて聞いていたはずです。
九羅香：ありがと、話を元に戻してくれて。
　　楓：ああ、おいたわしいお姉さま。いったいどこの弁慶がひどいことをしたんですか。
　観月：弁慶様だと決めてかかってますね。
　紅葉：楓、今私は、九羅香様の話の腰を折るなと申したはずですよ。
　　楓：あ、ごめんごめん紅葉。…ああ、すいませんでした九羅香様。
　玲奈：態度が露骨に変わりすぎ
　　静：まあ〜楓さんですから〜
　与一：九羅香殿。とにかく一息に話した方がいい。これではらちがあかぬ。
九羅香：いいよ、みんなの話を聞いていたら気が晴れたから。
　紅葉：それで、一体なにがあったのですか。
九羅香：今日学校に行ったら、バレンタインデーだからってみんなが私にチョコレートをくれるんだよ。
　玲奈：良かったじゃないか。人気者で。
九羅香：よくない。今日は女の子が男の子にプレゼントをする日ではないか。義経は平成の世では廃業してるのに。
　紅葉：九羅香様は男女を問わず人気があるのですね。
　　楓：そういう紅葉だって、継信やってたでしょ。あんたはもらわなかったの。
　紅葉：私は、九羅香様ではありませんから。
　玲奈：謙遜したんだか自慢してるんだかわからない表現だよな。
　　静：まあ〜気にしてもはじまらないかと〜
　与一：そういえば、弁慶と廉也はどうした？今日は学校が終わったらすぐに来ることになっていたはずであろう。
　観月：廉也は、学校から無事に帰れるような手はずを、景川様と弁慶様にお願いしております。
　玲奈：無事に？あたしらは無事に帰れただろ。変質者でもいるのか？
　与一：変質者ではないが、ストーカーではあるだろうな。
　紅葉：廉也様は、チョコレートを渡そうとする人で身動きとれなくなるでしょう。
九羅香：それで、弁慶が連れ出すの？でも、ばれたら弁慶がいてもどうしようもないでしょ。
　　静：ですから〜先に観月さんに〜帰ってもらったんですよ〜
　与一：それは一体どういうことなのだ。
　　静：観月さんが〜帰っていれば〜廉也さんも〜一緒だと思うでしょうから〜
九羅香：でも、それじゃ意味無いでしょ。うちの場所はみんな知ってるんじゃない？
　　静：うふふ〜私の計略に抜かりはありませんよ〜
　弁慶：ただいま〜
　美沙：こんにちは〜おじゃましていいですか？
　紅葉：ええ、どうぞ二人ともお上がりください。
九羅香：え？二人？廉也はどうしたの？
　弁慶：こら廉也、これは二度目だろ。十分人目にさらされてるんだから恥ずかしがらずに入れよ。
　廉也：他の人は誰も僕だと気づかないからいいんですよ。ここだとみんな僕だと知ってるじゃありませんか。
　弁慶：だからって、ずっと外に立ってるわけにもいかないじゃないか。入れよ廉也。
　廉也：では、一旦着替えて…
　美沙：廉也君。それは不許可だよ。約束、守らないんだったら、今から携帯で友達呼ぶから。
　廉也：そ、そんなぁ。
　弁慶：武士に二言はないよな。さあ入れ。
　廉也：うう…なんで僕ばっかりこんな目に…
　紅葉：廉也様、よくお似合いです。
　廉也：似合って欲しくないです。
　　楓：なんか、見て面白いっていうより悔しいって気持ちになるわね。なんであんたそんなにかわいいのよ。
　　静：やはり〜性格が顔に出るのでは〜
　　楓：静、いまさらっと嫌みを言わなかった？
　　静：嫌みなんていいませんよ〜皮肉を言っただけです〜
　　楓：同じことよ！
九羅香：まあまあいいからいいから、３人とも入ってよ。詰めれば１０人入れるから。
　弁慶：じゃ、遠慮無く。
　　楓：なんで弁慶が当たり前みたいにおねえさまの隣に座るのよ。私もおねえさまの…
　紅葉：狭いんだから入れるところに入らなければしかたないでしょう。
　　　　楓も九羅香様の隣なのですから贅沢を言ってはいけません。
　　楓：うー。廉也、あんたお姉さまの隣にすわんなさいよね。
　廉也：い、いえ僕はここで…
　美沙：そうそう、廉也君は私と観月の間だもんね。
　与一：ちゃっかり廉也の隣を確保するのだな。
　玲奈：与一はあの隣に行きたいのか？
　与一：いや、べつにそういうわけではないのだが。
　玲奈：ならべつにいいじゃん。
　与一：誰も悪いとは言っていないぞ。
九羅香：じゃ、紅葉、お茶いれてよ。私がもらったチョコレートをお茶菓子にしよ。
　紅葉：はい、九羅香様。
　弁慶：九羅香はもらったのか、いーなぁ。
　廉也：よくありませんよ。まともにつきあっていたら殺されます。
　美沙：さすがに命まではとらないって。でも、全員分を食べたら死ぬかもね。
　廉也：お、脅さないでくださいよ。あれで食べなかったなんて言った日には一体なにをされるか。
　観月：そういうときには、適当に食べたふりをしておけばいいのですよ。
　廉也：でも、誰からもらったのか忘れてしまうと何を言われるかわかりません。
　玲奈：そりゃ廉也の考えすぎだろ。送った方だって何を贈ったか忘れてしまうって。
　　静：そんな〜忘れんぼさんは〜玲奈さんぐらいです〜
　玲奈：なんだよ静、人を馬鹿みたいに。
　美沙：玲奈さんは、贈りたい人がいないからそういう風に思うんでしょ。
　玲奈：ま、贈りたい奴はいないな。弁慶には毒味させたけど。
　弁慶：毒味かよ。まあ、砂糖がふんだんに使えるってわけでなし、甘いお菓子ってわけじゃなかったけど。

　紅葉：現代ではいくらでも甘い物が手に入りますね。はい、どうぞお茶です。
九羅香：ありがと紅葉。
　弁慶：ありがとう紅葉。
　美沙：ありがとう、紅葉先輩
　廉也：ありがとうございます。紅葉さん。
　観月：ありがとうございます。紅葉様。
　玲奈：ありがとな、紅葉
　与一：かたじけない、紅葉殿。
　　静：もみじさ〜ん、ありがとうですね〜
　　楓：ありがと
　紅葉：では、いただきます。
　廉也：そういえば、九羅香さんは、いいんですか？味の感想とか言わなくても。
九羅香：いいよ、みんなでおいしく食べさせてもらってありがとうってお礼を言えば。
　紅葉：ええ、九羅香様にくださった方は、みなさん、そういうことを、期待されてると思いますよ。
　廉也：いいなあ。それだけですむひとは…
　弁慶：世の中には、全然もらえないやつだっているんだ、それよりはましだろ。
　玲奈：でも、一月後には三倍返しなんだろ。もらわないほうがいいんじゃないか。
　弁慶：そりゃ、もてる奴の税金って奴だ。
　廉也：そんな税金初めて聞きました。
　観月：受け取らなければいいのですよ。
　美沙：そうそう、受け取らなければいいんだって…はい、廉也君これあげる。
　廉也：景川さん、言ってることとやってることが矛盾してます…
　美沙：気にしない気にしない。私は倍返しとかいわないからね。…友達でしょ。
　廉也：え、ええ…友達ですよ。
　美沙：じゃ、友達ってことで受け取ってよ。お返しはいいから。
　廉也：あ、はい、でしたら…
　観月：私からもこれを上げましょう。
　廉也：ありがとうございます、観月様。
九羅香：はい、弁慶、これは私から。…一つぐらい、持って帰ったほうがいいんでしょ？
　弁慶：あ、もらっていいの、ありがとう。
　紅葉：弁慶様の分は、私たち全員分がありますから、どうぞ受け取ってください。
　弁慶：あ、ありがとうみんな
　玲奈：礼にはおよばないぜ。こっちはちゃんと来月取り立てるからな。ほい。
　弁慶：こら投げてよこすな。…うけとってやらないぞ。
　玲奈：やかましい。渡すだけありがたいと思えよ。
　　静：三倍なんて〜いいませんから〜どうぞ〜
　弁慶：チロルチョコ１個なら３個にして返すよ。静さん。
　与一：ハートチョコを３枚にして返すこともないぞ、弁慶
　弁慶：へーへー、気遣いありがとうございます。
　　楓：あ、あんたになんか上げたいとは全然思わないんだけど、み、みんなが渡すからなんだからね。
　弁慶：そんな無理にくれなくてもいいって。気持ちだけもらっておくよ。
　　楓：そんなに嫌がるなっ！手作りだからって毒なんて、…入れてないんだから。
　弁慶：な、なんか怖い…
九羅香：大丈夫だよ。私が毒味した後。
　弁慶：あ、それなら安心。
　　楓：どういう意味よ。
　弁慶：楓が九羅香に毒を仕込むわけないもんな。
　　楓：誰にも仕込んだりしないわよ！
　観月：楓様、それが日頃の行いではないでしょうか。
　　楓：あんたには言われたくないわ。
　観月：弁慶様、どうぞ。
　　楓：あんたは廉也にも渡したでしょうが。
　弁慶：こっちは試作品なんだろ。捨てるのももったいないよ。
　美沙：ま、そういうことかな。廉也君、実は先輩達の試作品を食べさせられまくったんでしょ。
　廉也：な、なんで知ってるんですか景川さん。
　美沙：そうじゃないかって思ったのよね。廉也君、そういう風な星の下に生まれてるから。
　廉也：どういう星の下ですか。
　弁慶：まあ、気にするなよ。あ、このチョコレート面白い。
九羅香：でしょでしょ。これは確か…

 

話は尽きないがひとまずここらでお話はお開き。
ちなみに、廉也の女装は、当たり前のことながら普通の制服である。
普通でないのは、髪型をあまりいじり回すことが出来ないので
カツラで黒いショートカットにしていたことぐらいで。

 

　廉也：なんでカツラで髪が短くなるんでしょう。
　美沙：そういうカツラもあるんだって。役者さんなんか、カツラでちょんまげにするじゃない。
　玲奈：なんか説明になってない…
　　静：気にしたら〜負けですよ〜

 

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おひらき