第二ラウンドのゴングが鳴るの。

「こんどはどんな戦いになるのかな」
「アインハルトさんの実力が見切られてなければ、第一ラウンドと同じような様子見になると思います」
「あれが様子見？」
「あの二人にとっては」

アインハルトさんは、ちょっと表情が硬くなってるの。エーデルガルトさんの方は、相変わらず殺気を感じさせず笑みを浮かべてるの。

「相変わらずエーデルガルトさんは殺気がないね」
「殺気がないのが恐ろしいの」
「確かに」

アインハルトさんは、このラウンド、たたき合いを避けて少し間合いは広めに取ってるの。
対するエーデルガルトさんはというと、やっぱりケーキでも買いに行くみたいに、でも油断なくそっとアインハルトさんの方へ近づくの。
アインハルトさんは、自分の間合いに入ったと思った瞬間、パンチを放つの。
でも、それはエーデルガルトさんも計算済み、逆にエーデルガルドさんのストレートがアインハルトさんを捕らえるの。

「アインハルトさんがダウンですね」
「軽く打ったように見えても、一撃が重いんだ」
「そうですね」

アインハルトさんは、立ち上がって構え直すの。
アインハルトさんからは、殺気を感じるの。

「チャンピオン優勢かな、これは」
「ヴィヴィオはそう思うの？」
「だって、アインハルトさんは今で一杯一杯だけど、エーデルガルトさんはまだ余裕があるもん。
　殺気がないのが恐ろしいのは霧子の言う通りだよ」
「気配が読めないって事？」
「そういうこと」

確かに、殺気がなければ、気配を読むわけにもいかないの。
殺気を殺してるというより、自然体でエーデルガルトさんは戦えるみたいなの。

「アインハルトさんの目の焦点がぼけてる？」
「さっきのダウンのダメージが強いのかな」
「違うみたいね。目の焦点を合わせてしまうと、逆に相手の動きが分からなくなると悟ったみたい」
「あの間に？」
「そうね」

焦点をぼかして、見えてないけど見えている状態を作るの。
これはかなりの高等技術なの。それがアインハルトさんがこの場面で使えるみたいなの。

「アインハルトさんが動いた！」

エーデルガルトさんへまっすぐアインハルトさんが突っ込んでいくの。
それに対応してエーデルガルドさんは片手でガードの構えを見せるの。
アインハルトさんは、それが見えたのか、急ブレーキをかけて、横っ飛びに体をかわすの。

「今のは？」
「カウンターがくるのを察したみたいですね。
　片手でガードしようとしたから、反対の手が来るのが読めたのでしょう」
「あの一瞬でそんなことが出来るんだ」

それをエーデルガルトさんが追撃していくの。
アインハルトさんは、それに対応してガードの構えを見せるの。
エーデルガルトさんは、ガードの構えを見て間合いをひらき直すの。

そして、数秒両者の動きが止まるの。
でも、それはほんの数秒なの。

こんどはエーデルガルトさんの方が少し間合いを開くの。
それからエーデルガルトさんの踏み込み！
アインハルトさんは、それをきちんとガードするの。

エーデルガルトさんはちゃんと二の矢を用意してたみたいなの。
ボディへもう一撃。
ガードが下がった所を顔面にジャブ。これもアインハルトさんはガードするけど、次のエーデルガルトさんのボディアッパーはまともに食らってしまうの。
これでアインハルトさんはダウンするの。
エーデルガルトさんは自分のコーナーに向かうけど、戦闘態勢は崩してないの

「今のも気配を変えたの？」
「ですね。でも、この試合はダウンをいくつ奪ってもそれだけでは勝てませんよ。
　最後の立ってる側の勝ちですからね」
「とはいえ、ポイントはエーデルガルトさん有利ですよね」
「それはもちろん」

アインハルトさんはまた立ち上がるの。
少し、頭を振って、それから、少し殺気が抑えられるの。

「アインハルトさんも殺気を剥き出しにするのはやめたみたいなの」
「殺気を感じられてるのがアインハルトにも理解出来たのでしょう」
「試合中にどんどん修正してるってこと？」
「ですね」

アインハルトさんは、自然体で構えるの。
それを見たのか、エーデルガルトさんは逆に自然体から、すこし殺気を感じさせるの。
そして、強引にボディへストレートを打つの。
もちろん、アインハルトさんはそれをガード出来るの。
それはエーデルガルトさんも計算の上のはずなの。
次の瞬間、エーデルガルトさんの殺気がまた消えるの。
アインハルトさんはそれを感じたのか、逆に間合いをひらき直すの。

「殺気がない方が恐ろしいんでしょうね」
「そうですね。ダウンは、２回とも、殺気を感じさせないときの一撃でしたから」

アインハルトさんはじっと構えてるの。
エーデルガルトさんはそれを確認すると、そっと……

「断空拳！」

まだ遠いと思える間合いから、アインハルトさんは断空拳を打つの。
それでも断空拳はエーデルガルトさんにヒットするの。
でも、エーデルガルトさんはダウンすることなく、アインハルトさんへカウンターを打ち込んでるの。
そのカウンターでアインハルトさんはダウンするの。でも、エーデルガルトさんも膝をついてるの。

アインハルトさんはダウンからすぐに立ち上がるの。
もちろん、エーデルガルトさんもすぐ構え直してるの。

「クロスカウンターだと互角ですね」
「そうですね。でも、それはお互い学習したはず」

アインハルトさんは、こんどは積極的に前に出て行くの。
でも、目の焦点をきちんとは合わせてないの。
そしてラッシュ。
エーデルガルトさんはそれを受けたりよけたりで反撃はしてないの。

アインハルトさんは反撃がないのを確認したのか、間合いを開くの。
エーデルガルトさんもそれに追撃はしないの。
アインハルトさんは、ちょっと残念そうなの。

「逆に踏み込んで来るのを期待してたみたいなの」
「強烈な一撃をお互いが受けたなら、回復力はデバイスの性能でアインハルト有利と見てるのでしょうね」
「前回は確かにそうだったの」

前回はそうだったの。でも、それはちゃんとお互い計算に入れてるはずなの。
だから、エーデルガルトさんもそれにはのらないの。

エーデルガルトさんが構えたまま前に出るの。
アインハルトさんはそれにフリッカーで対応するの。
もちろん、エーデルガルトにクリーンヒットはしないの。
かるく片手でエーデルガルトさんはガードするの。

とはいえ、二の矢はアインハルトさんにもあるの。
素早く体を落としての足払いをアインハルトさんは仕掛けるの。
エーデルガルトさんはそれを間合いを開いてかわすの。
アインハルトさんが体を起こそうとする瞬間、エーデルガルトさんのボディキックがアインハルトさんにクリーンヒットするの。
アインハルトさんはたまらずダウン。

「ギャンブルが裏目に出ましたね」
「エーデルガルトはアインハルトの動きが完全に見えてますね。
　逆に、アインハルトは、エーデルガルトの動きが完全には見えてない」
「それって、アインハルトさんが不利って事じゃない」
「ですね。アインハルトにまだ切り札が残ってればですけど」

アインハルトさんは、再び立ち上がるの。
この試合は３ダウン制じゃないから、１ラウンドに３ダウンしてもアインハルトさんの負けじゃないの。
でも、ポイント的にもダメージ的にも、アインハルトさんが厳しくなってることは否めないの。

アインハルトさんは、それでも自然体で構えてるの。
今のダウンを奪ったエーデルガルトさんの方がちょっと意外そうな顔をするの。
そして前に出るのはアインハルトさんの方なの。
静かに、でも断固として。

クロスレンジまで何事も起きずに間合いが詰まっていく両者なの。
そこからアインハルトさんのボディアッパーがエーデルガルトさんへ。
これをエーデルガルトがガードするの。
アインハルトさんはそこからエーデルガルトさんの側頭部へフック。
これをエーデルガルトさんがスウェイでかわすの。そこへアインハルトさんが顔面へストレート。
これをエーデルガルトさんがガードしつつ間合いを開くの。

「覇王！　断空拳！」

その、間合いを開くことで、ちょうど断空拳に適した間合いに、エーデルガルトさんが入ってしまうの。
でも、エーデルガルトさんも断空拳を両腕でガードしてるの。
ガードしてる分、ダメージは通らなくて、エーデルガルトさんは膝をつくこともないの。
それでも、断空拳の威力は抜群で、エーデルガルトさんはコーナーまで吹き飛ばされるの。

アインハルトさんは、それに追撃していくことはしないの。
エーデルガルトさんは、本当に満足そうな顔をしてるの。

ここで、第二ラウンド終了のゴングが鳴るの。

「このラウンドはエーデルガルトさんのものでしたね」
「とはいえ、アインハルトも完全に負けてるわけじゃないですね」
「でも、もう断空拳すらクリーンヒットしなくなりましたよ」
「確かに、それは懸念材料ですね。ノーヴェがそこをどう修正するように言えるかですね」
「エーデルガルトさん、隙が無いね」
「だからこそチャンピオンなんですよ」

そう、だからこそチャンピオンをやってるの。
アインハルトさんが苦戦するぐらいの実力の持ち主なの。
アインハルトさんは、次、どう修正しいていくの？



 

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