充実した、リオの実家での合宿も終えたら、あっという間に夏休みが終わってしまったの。
夏休みが終わってしまえば、冬にある、U15に向けての練習と、二学期が待っているの。

「霧子、二学期が従になってるよ」
「泪、U15ぐらい勝てないと、ヴィヴィオには追いつけないの」
「そうかも。だけど、落第したんじゃなんの留学に来たか分からないよ」
「うん、それは思うの。空木教授やアインハルト先生に、こっちの世界について説明出来るぐらいには勉強するつもりなの」
「だね」

勉強は中の上になんとか食らいついてるの。だけど、始めからこの世界にいて優等生なヴィヴィオやコロナには追いつけないの。
だけど、勉強は授業で集中してやって、終わったらU15に向けての練習が待ってるの。

「終わった〜」
「じゃあ、ジムに向かうの」
「一緒に行こっ」
「そうだね、アインハルトさんはまだ授業があるみたいだから、先に行こうか」
「うん」

私達は、ヴィヴィオ、リオ、コロナと一緒にノーヴェがやってるジムへ向かうの。

「よう、勉強は順調に進んでいるか？」
「もちろんだよ」
「ヴィヴィオはあんまり心配してないさ、それより留学生の二人は大丈夫か？
　サンクト・ヒルデ魔法学院はレベルが高いからな。生半可な勉強じゃ置いて行かれるぞ」
「それは大丈夫なの。分からないところは、ヴィヴィオ達に聞いて、なんとかしてるの」
「そうか、それなら大丈夫だろうな。
　さて、ヴィヴィオは秋になったから、すぐにインターミッドの決勝トーナメントに出ることになる。
　他のメンバーはU15に向けての練習になるな。
　インターミッドはある意味なんでもありの戦いだが、U15は格闘メインで魔法弾とかない。長物すら禁止だ。
　そういう意味じゃ、霧子や泪には厳しい戦いになるだろうな。
　コロナも、ゴライアスは封印だから、その分肉体を鍛えることになる。
　リオはある程度大丈夫だろうが、床は今回マットだから剥がして飛ばすとかは出来ないぞ」
「あれはもうやらないよ」
「ならいいが……」
「それと、霧子、泪、コロナ、リオの4人はインターミッドの成績で予選免除だ。
　だが、ミウラは予選からの出場になる。これはアインハルトも同じだな。
　その分、早めに仕上げないと試合に間に合わない。
　だから、これからの練習の主体はヴィヴィオ、ミウラ、アインハルトの3人になる。
　霧子達には悪いが、これは日程の都合なんだ、理解してくれ」
「それはかまわないの」
「そうだね、チームノーヴェで頂点を目指そう。インターミッドは結局決勝で前々回チャンプに負けちゃったし」
「まあ、あれは相手がわるったし、ヴィヴィオも無茶しすぎだ。
　世界は広いから、もっといろんな相手と戦う事になるかもしれん。ミッドチルダ予選は最難関と言われてるが、
　いろんな世界から来る闘士がミッドチルダに劣るとは限らないからな」
「U15はインターミッドと違って、各世界ごとにやる。だから、ミッドチルダだけで頂点を目指す事になる。
　いろんな世界の相手はいないが、だからといって、それだけ相手が弱いって訳じゃない。
　ミッドチルダのチャンピオンともなれば、次元世界最強と言っても過言じゃないほどの実力だ。
　つまり、インターミッドで優勝するのと難易度的にはあまり変わらない。相手がジークじゃないのが救いって程度だな」
「ボクが勝ち抜いていけるでしょうか」
「予選なら実力が十分に出せれば、ミウラは問題ない。あのミカヤに勝ったぐらいだ。
　ただ、精神的な強さがもっと必要かもしれないな」
「自覚はあります」
「そんなに自分を追い込むな。練習試合なんかで自分の実力を正確に把握できれば、自信もついてくる」
「遅くなりました」
「アインハルトか、授業が終わってからまっすぐ来たんだな」
「はい」
「さっきも話をしたんだが、アインハルトとミウラは、U15を予選から戦わなければならない。
　U15もトーナメントだから、予選だって一回負けたら終わりだ。
　その分、仕上げは予選免除のインターミッド上位組より早くする必要がある」
「はい」
「さて、話はここまでだ、まずはアップを始めてくれ。
　それが終わったら、アインハルト、ミウラ、そしてヴィヴィオがメインになる練習をやる。
　だからといって、霧子達が手抜きしていい訳じゃないからな」
「はい」
「よし、じゃあアップ開始」

そういうわけで、ジムの中でアップをして体を温めるの。
それが終わったら、また全員そろってノーヴェの指示を待つの。

「よし、じゃあ、まずアインハルトだが、実力的には予選突破は問題ない。
　その点はミウラも同じだ。問題は二人とも精神面にあると思ってる。
　そういうわけで、ミウラ、まずはコロナと模擬試合を頼む。
　コロナ、ゴライアスでミウラと戦ってくれ」
「ゴライアスはU15じゃ禁止ではありませんでしたか」
「その通りだが、これはミウラの練習だからな」
「分かりました」
「全力で頼むぞ、コロナ」
「もちろんです」
「ミウラも本気でやれ、相手はゴライアスだ、気を抜けば一発で持って行かれるぞ」
「はい」

そういうわけで、練習用のリングにコロナとミウラが上がるの。
実戦ならゴライアスは試合開始後に創造しないといけないけど、今回は先にゴライアスが創造されるの。

「近くで見るとますます巨大さを実感するの」
「だね……」
「よし、では、試合開始、1ラウンドだけだからな」
「はい」

二人の声がハモると、ゴングが鳴るの。
ゴライアスは上からパンチをミウラさんに放つの。
ミウラさんは、ゴライアスのパンチを楽にかわしていくの。

「動きはいいね、だけどこれは？」

ゴライアスの腕を見ていたミウラさんは、次のゴライアスの蹴りに一瞬反応が遅れるの。
だけど、それは本当に一瞬だけ、すぐに気配を感じたミウラさんはそれもかわすの。
だけど、コロナの狙いは蹴りを当てることじゃなくて、足を上げてミウラさんを踏み潰すことだったの。

「待ってました、抜剣！　スターセイバー」

ミウラさんは抜剣すると、踏み潰しに来る足を支えるの。

「単純な力ならリオさんの方が上ですけど……」

じわじわとミウラさんの姿勢が低くなってくるの。
ゴライアスはここぞとばかりに体重をミウラさんに掛けていくの。

「よし、今っ！」

ゴライアスが全体重をミウラさんに掛けた瞬間、ミウラさんはゴライアスの足にパンチを加えるの。
ゴライアスは全体重をミウラさんに掛けてたから、そのパンチで足を砕かれると体勢を完全に崩して倒れるの。

「そこまで！　よし、ミウラ、落ち着いてたぞ」
「ええ、ゴライアスが相手と聞いたときからイメージトレーニングしてた通りの戦い方が出来ました」
「そうだな。イメージ通りに体が動くのは大切なことだ。ミカヤとの戦いの時みたいな無茶な突っ込みじゃなくて
　イメージを組み立てて作戦通りに戦えたのは立派だぞ」
「今まで教わったことを実践させていただきました」
「練習が身になるってのが、つまり、実力がつくってことさ。
　コロナ、そういうわけだから、ミウラの予選相手が決まったら、情報収集は頼む。
　それぞれの相手に勝てるイメージを持てれば、大抵の奴はミウラが負ける相手じゃない」
「はい」
「さて、次はアインハルトだ。……けど、アインハルト、第97管理外世界の経験で、すこしは吹っ切れたか」
「はい、覇王の拳が、確かに破壊の拳ではないことは認識しました」
「そうか。それだけでも進歩だな。
　じゃ、ヴィヴィオ、軽くスパーの相手をしてくれ」
「分かった」
「よし、じゃあヴィヴィオは魔法弾封印な。普通の格闘でアインハルトに対抗するんだ」
「えー、それじゃアインハルトさんの方が強くない？」
「インターミッドじゃそれ以上の相手と当たるかもしれないぞ。
　それに備えての練習だと考えるんだな」
「はい」
「あと、指示はアタシが出すから、それに合わせてやれよ」
「分かった」
「アインハルトは、自分の思うとおりにやっていい。
　今まで、セコンド抜きでやってきただろう？　まずは、自分の思いでやってみてくれ」
「はい」
「よし、じゃあ練習試合開始、これも1ラウンドだけな」

二人がリングに上がると、ゴングが鳴るの。

「ヴィヴィオ、相手の動きをしっかり見てよけるんだ」
「分かった」

アインハルトさんは、軽くジャブを放ちながら間合いを計るの。
ヴィヴィオはギリギリまでそれを引きつけてから体を最小限に動かしてかわしていくの。

アインハルトさんは、それを見て一端間合いを開くの。

「ヴィヴィオ、カウンター準備」
「分かった」

アインハルトさんにも、それは聞こえてたはずなの。でも、アインハルトさんはかまわず突っ込むの。

「！」

ヴィヴィオはそれにカウンターを軽く放つの。
でも、アインハルトさんは、そのカウンターを受けて逆に強烈なパンチを打つの。
ヴィヴィオのカウンターは軽かった分だけ、それに対応する余裕があったの。
アインハルトさんのパンチを身を引いてかわすの。

「ヴィヴィオ、次は踏み込んで行け」
「分かった」

開いた間合いを、逆にこんどはヴィヴィオが踏み込んで行って詰めるの。
アインハルトさんはインファイトを挑まれて、ちょっとびっくりしたみたいなの。
だけど、アインハルトさんは、すぐにそれに対応して、自分もインファイトを挑むの。

ヴィヴィオの素早いジャブの連打がアインハルトさんを襲うの。
アインハルトさんはそれをすべてガードで受けていくの。

「ヴィヴィオ、間合いを開いて！」

ヴィヴィオはそれを聞いて、ジャブからフリッカーに切り替えようと間合いを開けようとするの。
アインハルトさんは、それに対して間合いを詰めてヴィヴィオに逆にジャブの逆襲を加えるの。

「ヴィヴィオ、カウンター！」

ヴィヴィオは大きく体を動かしてアインハルトさんのジャブをかわすと、体を落としてストレートを打つの。
だけど、アインハルトさんもそれは想定内だったようで、ヴィヴィオのストレートは空を切るの。

「覇王！　断空拳！」

ヴィヴィオの上からアインハルトさんのチョップがヴィヴィオの肩めがけて振り下ろされるの。
ヴィヴィオは体を落として踏み込んでる分よけられ……

「まあ、それしかないな、ヴィヴィオ。そこまで！」

ヴィヴィオは体を地面に投げ出してアインハルトさんのチョップをよけるの。
だけど、これじゃチョップはよけられても、立ち上がるチャンスが得られそうにないの。

「カウンターが大ぶりにすぎたな、ヴィヴィオ。だが、体を投げ出すという判断そのものは間違いじゃない。
　間違ってるのは、体を投げ出さなきゃならないぐらいに追い込まれる原因を作った大ぶりなカウンターだ」
「ノーヴェ、一撃で決めるカウンターを狙ったんだけど、それが間違いって事？」
「そうだな。おまえの力は正直パワータイプには全然かなわない。
　それを補うのが相手の力を利用したカウンターだ。
　だから、大ぶりする必要はないんだ。相手よりちょっとだけ早く、弱くていいから確実に当てる。それが大事なことさ。
　アインハルト、ヴィヴィオと戦ってどうだった」
「攻撃が全然当たりませんでした。私の動きが見切られてるみたいに思います」
「ヴィヴィオはアインハルトと一回やってるし、練習も一緒にしてるから、アインハルトの癖もつかんでるからな。
　だけど、聞きたいのはそういうことじゃない。アインハルト、おまえは誰と戦ってた？」
「ヴィヴィオさんですけど」
「それでいいんだ。まだオリヴィエの影を追ってるんじゃないかと心配したんだ」
「……確かに、それはある程度吹っ切れた気がします。ヴィヴィオさんはヴィヴィオさんですし、私はクラウスではありません。
　でも、私は自分の実力を確かめたい。そして、頂点に立ちたいんです」
「頂点を夢見ない格闘家なんていないさ。実力がそれに伴ってるやつと、伴ってないやつがいるだけだ。
　アインハルトは前者の方だ。クラウスの無念を忘れろなんて言わない。だが、おまえはクラウス＝インクヴァルドじゃない、アインハルト＝ストラトスだ。
　アインハルトとして、クラウスが作り出した、覇王流で頂点を目指せ」
「はい」
「よし、次は……」

こんどは私達の練習が始まったの。
U15予選は10月にはもう始まるの。そして、インターミッド本戦も。

 

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