練習の日々はあっという間に終わり、今日からUnder 15ウィンターカップの予選が始まるの。

「見るのも練習のうちだ、今日はミウラとアインハルトの試合だが、U15の様子を見て学ぶといい」
「はい」
「わかったの」
「じゃ、あたしはミウラとアインハルトと一緒に選手控え室の方へ行ってくる。
　おまえ達は観客席で応援を頼む」
「はい」
「実力を出してきます」
「やれるところまでやるよ」
「頑張ってね」
「ありがとうございます、ヴィヴィオさん」

そういうわけで、ミウラさんとアインハルトさんは予選会に臨むの。
私達は観客席に向かうの。

「予選からといっても、ミウラさんもアインハルトさんも、ヴィヴィオに負けただけだよね。
　ヴィヴィオはインターミッド準優勝なんだから、普通に相手が悪かっただけじゃないかなあ」
「一戦ごとに成長しただけだよ」
「でも、アインハルトさんとは初戦で当たってるの」
「そうだったっけ？　でもでもでも、まぐれもあるし、精神面であの頃のアインハルトさんは不安定だったから」
「それはあるかも」
「予選が始まるよ」
「そうだね、コロナ……最初はどんな人が出てくるんだろう」

U-15はサマーカップとウィンターカップがあるの。
サマーカップに出るには、インターミッドを諦める必要があったから、私達は出場予定がなかったの。
でも、インターミッドを諦めた組が出場するということは、ウィンターカップにはインターミッドを
惜しくも予選落ちした実力者が現れるということなの。

「そういう意味じゃ、ミウラさんやアインハルトさんも当てはまるよな」
「そういうことなの。だから、他にもダークホースがいておかしくないの」
「まず、ミウラさんの予選第一試合が始まるよ」

ミウラさんの相手は、U-15ぎりぎりみたいな人だったの。
この人も、インターミッドからの転向組なのかな？

「普通にやればミウラさんの相手じゃないと思います。
　サマーカップで予選落ちしてますし」
「じゃあ余裕だね。そのときの相手は？」
「サマーカップ優勝者、リンネ・ベルリエッタさんですね」
「……だめじゃん、参考にならないよ」
「……ですね」

ゴングが鳴るの。
予選は1ラウンドのみ、KOがなければその後判定になるの。

ミウラさんは、落ち着いて相手の動きに対応しようとはせず……インファイトをいきなり挑んで行くの。
相手もそれは計算通りみたいで、カウンター体勢に入るの。
ミウラさんは、それにもかまわず接近していくの。

中距離での迎撃を素早くかいくぐると、ミウラさんは一気に間合いを詰めてボディに一撃。
それで勝負あり、KO勝ちなの。

「あっけなかったですね」
「中距離での迎撃を選択したのが間違いだった気がする。
　カウンター狙いならもっと引きつけるべきだし、遠い間合いで戦うなら、遠距離戦を挑むべきだった」
「当てる自信があったんでしょうね」
「そうだろうけどね」

次はアインハルトさんの予選初戦なの。

「相手は？」
「アインハルトさんの敵じゃないですね。こちらはインターミッドの予選落ち組です」
「楽勝じゃん、そのときの相手は？」
「アインハルトさん当人ですね」
「相手にとっては雪辱戦か、案外やっかいかも」
「研究はしてるでしょうね」

ゴングが鳴るの。
アインハルトさんは、無造作に近づいていくの。

「いくら一度勝ってる相手とは言え無謀じゃ……」

相手はそれを挑発と受け取って、一気に間合いを詰めていくの。

「覇王！　断空拳！」

抜く手も見せぬアインハルトさんの一撃が相手に決まってそれでKO。

「すごい……」
「意図的な挑発だったのかな」
「どうなんだろう？　だけど、一撃必倒だったのは事実だね」
「よくあんな人にヴィヴィオは勝てたと思うの」
「あのときのアインハルトさんは、あんなに落ち着いてなかったよ」

その後も、ミウラさんとアインハルトさんは順調に勝ち上がって予選を突破したの。

「よーし、お疲れさん。ミウラもアインハルトもよくやった。
　二人ともリングで落ち着いてたぞ」
「ありがとうございます」
「コーチの練習のおかげです」
「フィジカルは言われて色々と鍛えられても、メンタルを鍛えるのは自分自身が第一だ。
　その点、おまえらは合格点だ。が、すぐに本戦が始まる。
　それに備えて一段と練習を強化する……と、言いたい所なんだが、あたしはしばらく
　ヴィヴィオを連れてインターミッドの本戦のセコンドにつく。
　その間の練習とセコンドについては、知り合いに頼んであるから、安心してくれ」
「知り合いって、どなたなんですか？」
「ミカヤをリーダーに、ミカヤに人選を頼んである」
「はい」

ミカヤさんは、インターミッドの時にもお世話になったの。

「みんな、すまんな、肝心な時にそばにいられなくて」
「謝ることじゃないの。ヴィヴィオがインターミッドの予選を勝ち抜いたってことなの」
「みんなの分も頑張ってくるからね」
「行ってらっしゃい」
「サンクト・ヒルデには休学届をだしてある。なのはさんも遠征には許可をくれてる。
　しばらく留守をするが、ジムの運営にも穴は空けないように手配してあるからな」
「はい」
「よし、じゃあ早速出発準備だ」
「え？　もうなの？」
「ああ、明後日からインターミッドの本戦が始まるからな。
　一日前には会場に乗り込んでおく」
「用意周到ですね」
「みんなそうしてるさ、インターミッド一本なら、半月前にはその世界に行ってるだろうな。
　ヴィヴィオ、準備は怠りないか」
「大丈夫だよ。バナナはおやつのうちだよね」
「そうだな」
「あ、普通にながされた」

そんな会話をしながら、私達はU-15ウィンターカップの予選会場を後にしたの。
今日は予選だし、予選からといっても、やっぱりミウラさんやアンハルトさんは
シードされてると思うの。
だけど、本戦はそうはいかないはずなの。
それは、私達も同じなの。

ノーヴェもいなくなるし、気持ちを入れて行く必要があると思うの。



 

---