あれからまた時間が流れたの。
そして、今日はノーヴィス級の試合がある日なの。

「よし、全員そろったな」
「はい」
「各人にゼッケンを渡す、この番号で試合会場に呼ばれるから忘れないようにな」
「はい」

ノーヴェからゼッケンを受け取って前後に付けるの。

「5人参加か、ずいぶんと賑やかだな」
「ザフィーラの旦那じゃないか。そういう八神道場は何人出場なんだ？」
「こいつ一人だけだ」
「ミウラ＝リナルディです、よろしくお願いします」
「いや、お願いされても困るけどよ。
　この子が旦那のメガネにかなったってことかい」
「ああ、そうだ。ノーヴィスを突破することを期待している」
「そっか、こっちも紹介するよ、そっちから見て左から順番に、ヴィヴィオ、コロナ、リオ、泪、霧子だ」
「ザッフィーの道場からも出場するんだ、楽しみだね」
「ああ、そうだ。ヴィヴィオは腕を上げたか」
「わかんない。他の人とどのくらい実力差があるかはこれからやってみるよ」
「そうか」
「おい、霧子、呼ばれたぞ、試合会場に行かないとな」
「はい、ノーヴェ」
「霧子が一番槍だね」
「うん、勝ってくるの」

ノーヴェにつれられて試合会場に行くの。
会場はかなり広くて、リングもたくさん設置されてるの。
観客席も、閑散としている、というわけではなく、それなりに見学者がいるの。

「もっと寂れた感じを考えてたの。割と見学者が多い気がするの」
「言ったろ。この世界じゃ格闘が人気あるスポーツだって。
　ノーヴィス級でも、見学しようっていうファンは少なくないんだ。
　もちろん、関係者もいるけどな」
「あ、ノーヴェ、こんにちは」
「ああ、だけど、なんでここにお嬢が？
　お嬢はもうノーヴィスじゃないだろ」
「有望そうな子がいたら目を付けておこうと思って」
「あの、こちらはどなたなの？」
「ああ、悪い悪い、紹介するよ。こちらはルーテシア。ルーテシア=アルピーノ」
「ルーテシアよ。基本は召喚術士だけど、魔法戦全般をやるかな」
「当たることになったらよろしくお願いするの」
「その前に目の前の相手ね」
「そうなの」
「よし、時間だ、行ってこい。自信を持て、ミカヤも筋がいいってほめてたぞ」
「分かったの」

相手は普通の格闘をやるみたいなの。
こっちは槍使い。

「槍使いか、ま、せいぜい頑張れよ」
「ありがとう、頑張るの」
「なんか拍子抜けする奴だな」
「双方リングの位置について」

審判の指示に従って、位置に着くの。
ミカヤさんところでの修練の成果を出すときが来たの。

「Ready……GO!」

ノーヴィスは1ラウンドだけやって、後は判定なの。
判定は基本的にLPの残存量で決まるの。
もちろん、K.O.すればそこで終わりなの。

「やっ！」

落ち着いて相手を見て、ロンギヌス・スピアを相手のみぞおちにたたき込むの。
相手はそのまま場外へ飛びでてしまうの。

「K.O.」
「え？　もう終わりなの？」
「終わりだ霧子、よくやったな」
「なんだか拍子抜けしたの」
「まあ、ノーヴィス級だからな。
　だからといって、気を抜くなよ。どんな伏兵が潜んでるか分からないのがノーヴィス級だぞ」
「分かったの」

泪達も順調に初戦を突破したところでお昼が来るの。
昼食はノーヴェが作ってくれたお弁当なの。

「みんな1ラウンドK.O.勝ちだったの？」
「そうだよ。今日全部勝てば本予選に参加だって」
「本予選か、勝てるといいね」
「勝てるといいねじゃないよ、勝つんだよ」
「こんにちは、お邪魔していいですか」
「あ、ミウラちゃん、こんにちは。
　ザッフィーはどうしたの？」
「師匠はお昼ちょっと行くところがあるんで、ノーヴェさんところでって。
　ご心配なく、お弁当は作って持ってきました」
「ミウラさんは初戦どうでした？」
「緊張しましたけど、なんとか判定で勝てました」
「リラックスリラックス、相手は自分達より強いって思えば緊張もしないよ」
「そういうものなんですか、ヴィヴィオさん」
「そうそう、胸を借りるつもりで当たっていけば大丈夫。
　ザッフィーとはスパーやってるでしょ。
　その感じでいいんだよ」
「ヴィヴィオさん参考になります」
「え、参考になるかどうかは分からないけど、それで緊張が解けるならいいんだけど」
「昼からは適度に緊張していきます。まあ、相手の方が強いなら、負けて元々ですよね」
「そうそう、私達は初参加なんだから、実力をしるのが大事だよ」

そういうわけで、昼の試合が来るの。
ヴィヴィオの言う通り、初参加の私達より、相手の方が格上かもしれないの。
ただ全力で当たっていくだけでいいの。

次の対戦相手は棒使いだったの。
リーチ差は同じ。これなら気兼ねなく全力が出せるの。

「霧子、ロンギヌス・スピアは封印だ。
　格闘で相手を倒すんだ」
「え？　でも、全力を出さないと……」
「全力で格闘をやるんだ。いいな、全力でだぞ」
「分かったの」

棒使い相手に格闘だと不利だと思うんだけど、ノーヴェが私達のコーチなの。
そう言うからには、何かノーヴェに考えがあるはずなの。
たとえば……

て、相手はもうリーチ差を利用してアウトレンジしようとしてきてるの。
ならこっちは、それをかいくぐるんじゃなくて……

「はいっ！……えっ！」

相手の振りが少し大きくなったところで、大きく踏み込んで右手で棒を受け止め、
あいてが棒を戻そうとしたときにさらに踏み込んで左手で殴るの。
体勢が崩れたところで、ストレートをたたき込むの。

「K.O.」
「よし、よくやった、リーチ差が絶対的な差じゃないっていうのはよく分かったろう。
　おまえも槍でリーチがあるからって油断するなよ」
「はい、分かったの」

そういうことを教えるために、ノーヴェはあえて槍を封印させたらしいの。
だけど、本番でやることでもないと思うの。

「気を抜くな、まだまだノーヴィス級の試合は続くからな」
「分かったの」

そして、夕方が来るの。

「よーし、全員ノーヴィス級突破、本予選出場確定だな」
「全員そろって突破できて良かったね」
「あれだけ練習したんだから、それなりには成果が出ないとね」
「練習はみんなしてる。おまえらはその練習を上回ったってことだ。
　しかしながら、ノーヴィス級だと、格闘をたしなむ程度にやってる奴が多数いる。
　そういう奴は本予選には出てこない。
　それに、今だから言うんだが、ノーヴィス級でおまえらはシードされてたんだ。
　つまり、ノーヴィス級の試合が始まる前の、事前審査でおまえらは有望と見なされたって事だ。
　だから、ノーヴィス級にいたダークホースとは基本的に当たってない。
　だけど、本予選は本当の実戦になる、こんどこそ本当に強い奴と当たるからな。
　気持ちを引き締めていけよ」
「事前審査ってなんなの？」
「受付の時に軽くスパーがあっただろ。
　そのときの動きと、基礎体力とか、魔力量とかの、基本的な才能とで、ノーヴィス級のシード選手が決まるんだ
　ノーヴィス級は千差万別な選手が来るから、本予選にあまり実力差がある選手が出てこないようにしてるんだよ。
　よし、まあ事前審査の話は……と、話をしてたら旦那が来た」
「そちらはどうだった？」
「予定通り全員突破、旦那の所は？」
「ミウラなら初戦以外は全部K.O.で突破した」
「そっか、良かったな」
「次からはそうはいかんかもしれん。
　しかし、ミウラの緊張を解いてくれたな」
「それが狙いだっただろ、旦那」
「そういえば、ミウラちゃんは」
「もうすぐ来る」
「助言ありがとうございます、ヴィヴィオさん。
　おかげでノーヴィス級を突破することが出来ました」
「次は本戦だな」
「はい、本戦も全力で頑張ります」
「よし、その意気だぞ」
「はい」
「じゃ、来週また会おうな、ミウラ」
「そうですね。来週は、もう本予選の第一戦ですね」
「うん、ミウラちゃんも頑張ってね」
「頑張るよ。みなさんも頑張ってください」
「もっちろ〜ん」
「よし、じゃあミウラ帰るぞ。帰ったら課題を修正して、本予選に備えるからな」
「はい、分かりました」
「さあ、じゃあ、あたしらも帰るか。
　今日の練習は無し、疲れたろう。明日からまた5人で練習して、本予選に備えよう」
「分かりました、ノーヴェ」

こうして、私達はノーヴィス級を突破したの。
だけど、シードされてたっていう言葉がちょっとだけひっかかるの。
だとすると、私達は格下の選手とだけ当たってたことになるの。
それだと、全戦K.O.でも自慢にならないの。
本当の戦いは、これからなの。

 

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