アインハルトおじいちゃんがくれたコアブレインによる、オーギュメント改造品は、DSAAのチェックもパスして
無事、インターミッドで使えることになったの。

「使えるからってスタートラインだからな。
　残り一ヶ月、徹底的に鍛え上げるぞ」
「覚悟してるの」
「それで、どんな練習かな、ノーヴェ」
「今までは、みんなと合同でやってきたが、これからは各人の能力を最大限伸ばすために
　各自特別コーチの元で練習を積んでもらう。
　特別コーチはあたし以上に厳しいから、気合いを入れて練習に励めよ」
「はい、それで、特別コーチって、誰なの？」
「焦るな霧子、順番にコーチの名前と地図を渡す」
「地図？」
「ああ、泪、これから一ヶ月は出稽古だからな。
　コーチのところに行って、練習するんだ」
「了解〜、で、誰が誰の所に行くのかな」
「まず、リオは、ディードの所へ行ってもらう。
　コロナはオットーの所だ。
　同じ教会にいるから、二人で行けばいい」
「分っかりました〜」
「分かった」
「それで、霧子はあたしの友達のミカヤのところで練習だ。
　ミカヤ・シュペル、１７歳でインターミッド出場選手の一人だが
　天瞳流の師範代をやってるから、教えるのも仕事の内だ。
　インターミッド予選突破で全国大会に出たこともある実力者だ」
「分かったの」
「そして、泪は、これもあたしの友達、ハリーんとこで練習だな。
　炎熱魔法の使い手で、格闘戦も得意、ハリー・トライペッカっていうのが本名だ。
　インターミッド出場選手でもあるんだが、スパー相手を回せって言われてたからな。
　泪は全力を出せよ。こちらも相手はインターミッド予選準決勝進出の実力者だぞ」
「はい」
「ねえ、ノーヴェ、私は？」
「ヴィヴィオはあたしとつきっきりで練習。
　今までより厳しく行くからな、覚悟しとけよ」
「分かった、ノーヴェ」
「と言うわけで、ヴィヴィオ以外の４人はそれぞれの場所へ移動開始。
　先方への挨拶はもう済ませてるから、紹介状だけ持っていけばいい。
　霧子と泪は一人で行くことになるが、クラナガンの公共交通は使えるよな」
「うん、使えるの」
「大丈夫だよ」
「よし、じゃあ行ってこい」

今まではずっと泪と二人だったの。
だけど、今日からは一人で練習場所に行かなきゃいけないの。
たぶん、そういうことも、ノーヴェの考えの中にあると思うの。

「ここなの」

地図と住所を調べて、天瞳流の道場に着くの。
地図についてる玄関の写真と一致してるし、ここで間違いないと思うの。

「こんにちは、私は雲野霧子なの。ノーヴェコーチの紹介でここに練習させてもらいにきたの」
「ああ、君が雲野霧子か、私はここの師範代、ミカヤ・シュペルだ。
　インターミッドに出るそうだね。それで、どのくらいの実力を身につけることを想定してるのかな？」
「どのくらいっていうのが分かるほど経験は積んでないの。　
　ただ、私には勝ちたい人がいるの。その人を超えたいの」
「ライバルがいるのはいいことだ。それで、誰なのかな、それは」
「初めて完敗した相手、高町ヴィヴィオなの」
「ああ、ノーヴェちゃんとこの秘蔵っ子か。
　ノーヴェちゃんに言わせると、あの子は特別な天才だからな。
　それを超えるとなると、かなりの特訓を積まないといけないぞ」
「かなりの特訓は覚悟してるの。だけど、ヴィヴィオって特別な天才なの？」
「それが分からないようじゃ、まだまだ未熟だな。
　今まで一緒に練習してたんだろう？」
「そうなの、だけど、私達より上ってことしか分からないの」
「そっか、でも、ヴィヴィオちゃんを超えるとなると、これは大変だぞ」
「努力するの」
「よし、その言葉、忘れちゃダメだぞ」

そう言うと、ミカヤさんは私を道場に上げてくれたの。
ミカヤさんは木刀を、私はデバイスを構えるの。

「君のことはノーヴェちゃんから聞いてる。
　槍型のデバイスを使うんだってね」
「そうなの。だけど、ノーヴェの所だと、格闘も習ってるの」
「どっちがメインになるのかな」
「デバイスを使うなら、私は槍使いなの」
「よし、じゃあ槍の特訓だ。
　まずは君の実力が見たい、普通に練習試合からやろう」
「分かったの」

私は、私のデバイス、ロンギヌス・スピアを起動するの。

「変身魔法も使って。全力で来てもらわないと実力が分からない」
「分かったの」

変身魔法で体格を上げるの。
これで、身長だけはミカヤさんと並ぶの。

「よし、じゃあ、始めようか」

ミカヤさんの構えに隙はないの、だけど、こっちから挑んで行かないと
練習にならないの。

「踏み込みが甘い！」

軽く誘うだけの槍をミカヤさんは跳ね上げるの。
だけど、私も軽く誘うだけだったから、それは想定内。
ミカやさんの次の動きが見えたから、私は反対側に避けるの。
そして、大きく踏み込んでロンギヌス・スピアを突き入れるの。

ミカヤさんはそれが見えてたみたいで、これも木刀ではじくの。
ミカヤさんは少し不満げに見えるの。
なら、もっと私は一生懸命にならなきゃいけないの。

呼吸を整えて、練習通りに腰を入れてロンギヌス・スピアを突くの。
突撃みたいに深くは入れず、相手の動きが見える範囲で、それでも鋭く突き入れ、素早く戻すの。

ミカヤさんは、それをしっかりと受け止めてるの。
まるでこちらの動きが全部見えてるみたいなの。
さらなる加速が必要……

それは一瞬の出来事だったの。
ロンギヌス・スピアをかわして小手を打ったの。

「小手一本、だね」
「そうなの」
「君の実力は大体分かった。基礎はできてるけど、まだまだ経験不足だね」
［その通りなの。だから、ここで経験を積むの」
「その意気やよし。なら、徹底的にしごくから、どんどん打ち込んできて」
「分かったの」

ミカヤさんにはこの日、全然歯が立たなかったの。
だけど、ミカヤさんは、その都度何がダメかダメだしをしてくれたの。

「今日はここまで。学校があるんだろう？　あんまり遅くなっちゃダメだぞ」
「ありがとうございました。また明日は大丈夫なの？」
「大丈夫だ。うん、なかなか筋のいい子をノーヴェちゃんは回してくれたよ。
　一ヶ月後には、ノーヴィスを突破して、エリートクラスの予選に出てるかもしれないな」
「それで、ヴィヴィオに追いつけるの？」
「まあ、無理だな。ヴィヴィオちゃんはエリートクラス、つまり本予選でもいいところに行けるだけの実力がある。
　ノーヴェちゃんはそれ以上を狙ってるだろう。つまり、ヴィヴィオちゃんに追いつきたければ
　まだまだやることは一杯あるってことだ」
「分かったの。なら、もっともっと練習するの」
「練習メニューは私が考える。帰ったら学校のことに専念しないとね。
　インターミッドはあくまで部活動みたいなものなんだから」
「そうするの」
「よし、じゃあまた明日」

翌日も、その翌日も、体作り込みの厳しい練習が続くの。
だけど、ミカヤさんとのメインは、あくまでスパーリングなの。
徹底的に実戦経験を積んで、体に実戦感覚を覚え込ませないとダメだってミカヤさんは教えてくれてるの。

だから、徹底的にやるの。ヴィヴィオや泪も同じように特訓を積んでることは
学校で話をして知ってることなの。
ヴィヴィオに追いつきたければ、私はそれ以上の練習が必要なの。
時間が限られてるからこそ、練習時間は最大限努力しないといけないの。

「インターミッドのノーヴィス大会が始まるまであと２週間だね」
「そうなの、泪」
「あはは、霧子は時間感覚なくなってるみたいに聞こえるよ」
「ヴィヴィオ、そういうわけじゃないの。だけど、なんだか近すぎるような気もするの」
「私はむしろ遠すぎる気がするぐらいだよ。早く実戦やりたい」
「ヴィヴィオは自信あるの？」
「自信はないよ、だけど、自分の実力を試してみたい気持ちで一杯なんだよ。
　私だけ出稽古してないから、自分の実力がどんなものかよく分からないんだよ」
「私達は自信喪失するようなことばかりかな。
　ハリーさんは元気づけてくれるけど、でも、ああ実力差を見せられるとちょっと萎えちゃう」
「大丈夫だよ、砲撃番長ハリー・トライペッカに勝てるようなら本大会に出られちゃう」
「１０本中１０本勝てないけどね。一回ぐらいはハリーさんをあっと言わせたいんだけどな。
　そういえば霧子の方は？」
「私も似たような物なの。スパー相手として役者不足なのを心配してるの」
「そんな心配はいらないんじゃないかな、インターミッド出場選手がこの時期時間を無駄に使ったりはしないよ。
　だから、ちゃんと先方にとっても練習になってるって」
「だといいんだけど」
「さ、宿題を終わらせたらまた明日ね」
「うん、また明日」

あと二週間でインターミッドが始まるの。
私の実力はどの程度向上していて、どの程度他の人に通用するの？

 

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