「霧子、ここがミッドチルダなの？　普通に地球と変わらないね」
「私もそう思うの。文化的にも大差なさそうに見えるの」

私の名前は雲野霧子、友達の柊泪と一緒に、第一管理世界ミッドチルダの首都クラナガンに来てるの。
案内役はクロノ・ハラオウン執務官。これから私達が通う事になる学校へ案内してくれる所なの。

「信号機も、赤が止まれ、青が進めで同じだ。自動車の動力は、多分君たちの世界の方が進んでいるぐらいだと思う」
「K-unitに相当する魔法動力ってないの？」
「残念ながらない。質量エネルギーを直接他の形式のエネルギーに転換する、というのは僕たちの世界には手に余る」
「でも、魔法力はあるんだよね。それって……」
「……魔法資質のある存在には確かに魔力のエネルギー転換は可能だ。しかし、それを機械化して
　自動車の動力にはできていない。魔法を補助するデバイスは存在するが、魔法力そのものは術者の資質に依存する」
「そんなものなの」
「だからこそ、評議会は速やかに第97管理外世界を速やかに管理世界へと移行させたいと願っている。
　どんなロストロギアを生み出すかも分からない」
「ロストロギアって、文明が進みすぎて文明そのものを滅ぼすような存在でしょ。
　そんなもの……」
「泪、パパ達が解決したヨーロッパ消失事件は、十分文明を滅ぼしかけたと思うの」
「それもそうか。世界がSC空間に飲み込まれて消滅する瀬戸際だったもんね」
「こほん、いずれにせよ、基本的な文化水準や文化のあり方は、管理世界同士でそう変化はない。
　その理由について学者達は議論しているが、今のところ定説はない」
「難しく考えるのは止めようよ、とにかく、世界が似たような物なら暮らしやすくていいじゃない」
「そうかもしれないの」

日本語が通じているように見えるのは、この世界の補助デバイス、念話装置によるものなの。
この種の意思疎通装置は、地球にはないから、こっちの世界の方がこういう分野だと進んでるみたいなの。

「さて、君たちは全寮制の学校に通うことになる。自分達の力で友達を作りたいと思っているかもしれないけれど
　この世界の案内役として、一応、この学校の生徒を一人選任させてもらった」
「案内役？」
「第97管理外世界に行く二人については、第97管理外世界の方で配慮してくれることになっている。
　逆に、ミッドチルダに来ている君たちには、こちらで案内役を用意した。
　年齢は君たちと同じだから、気軽に話をしてくれるといい」
「気軽にって、クロノ執務官は案内役じゃないの？」
「僕は仕事で忙しい」
「でも、14歳なんでしょ」
「ミッドチルダでは、才能次第ですぐに成人扱いになる。
　執務官試験に合格している僕は、当然の様に成人としての仕事がある」
「そんなものなんだ」
「あ、学校が見えて来たの」

次元港から市街までは列車で、そこから学校までは徒歩で移動してたの。
その徒歩での移動が小一時間経った頃、目的の学校、サンクト・ヒルデ魔法学校に到着したの。

「今到着したことを案内役に伝える」
「案内役って誰なの？」
「すぐにくる、君たちと同い年の女の子だ」
「そうなの」

本当にすぐに一人の女の子が走ってきたの。
茶色の髪、背は私達よりちょっと低いくらい。
着ている服はこの学校の制服みたいなの。

「こんにちは〜クロノ君……じゃなかった、クロノ執務官、この二人が異世界からのお客様？」
「そうだ、こちらが雲野霧子、で、こちらが柊泪」
「そうなんだ、初めまして、霧子ちゃん、泪ちゃん」
「で、こちらが一年間この世界で案内役を務めることになっている高町ヴィヴィオだ」
「高町ヴィヴィオ、サンクト・ヒルデ魔法学校の4年生です。これからよろしくね」
「こちらこそよろしくなの」
「よろしくね。ところで、高町って姓だと思うけど……」
「……ママは高町なのは、第97管理外世界出身の魔法使いで
　今は管理局で教導隊のお仕事をしてるんだよ」
「パパは？」
「……よくわかんない、ママとも養子縁組してるだけだし」
「悪いこと聞いたの？」
「ううん、全然。一応孤児ってことになると思うんだけど、気にしたことないよ」
「第97管理外世界の常識についてもある程度知っているこの世界の住人で
　君たちとも同い年、案内役には適任だと思っている」
「案内っていうか、友達だよね」
「まあ、一緒にやっていて欲しい」
「右も左も分からないし、よろしく、ヴィヴィオ」
「ヴィヴィオ、よろしくお願いなの」
「まっかせなさーい、なんてね☆
　ごめん、偉そうだった？」
「ううん、根暗にされるよりそっちの方が絶対いいよ」
「ありがとう、泪ちゃん」
「では、僕は仕事があるからそろそろ帰る。
　あとの事はヴィヴィオに任せる」
「分かった。お仕事頑張ってね、クロノ執務官」
「ここまでありがとうございました」
「ありがとうなの」
「礼には及ばない。では失礼する」

そう言うと、クロノ執務官は学校を後にしたの。
残されたのは私と泪とヴィヴィオの3人。

「じゃあ、まずは寮まで案内するね。私は自宅通学だけど
　二人は学校備え付けの寮に住むことになるんだよね」
「そう聞いてるの」
「じゃ、案内するね」

寮は学校に入ってからすぐそばだったの。
そして、ヴィヴィオは慣れた様子で私達が一年やっかいになるはずの
部屋に案内してくれたの。

「ここが二人の部屋だよ。
　管理局の予算の都合と、一人部屋でないほうがさみしくなくていいだろうっていう判断で
　二人の相部屋になってるって」
「それはかまわないの」
「ふーん、荷物は後で業者が持ってくれることになってるから、とりあえず一休みしようか」
「一休みするなら寮の中に食堂があるから、案内がてらに移動しよ」
「うん、手荷物をおいたらそうするの」

寮の中の食堂は一階にあったの。

「あ、ヴィヴィオ、あの二人が留学生？」
「そうだよ。紹介するね、ええと……こちらが柊泪ちゃん、こちらが雲野霧子ちゃん」
「柊泪だよ、よろしく」
「雲野霧子なの」
「でね、そっちの八重歯の子がリオ・ウェズレー、こっちのおとなしそうな子がコロナ・ティミル」
「リオ・ウェズレーだよ、よろしく」
「コロナ・ティミルです。よろしくお願いします」
「二人とも私の友達なんだよ」
「そうなんだ。留学生って聞いたってことは、私達のことはもう知ってるって事？」
「知ってるよ。でも、この学校じゃ異世界からの留学生も珍しくないから
　特に注目は浴びないと思う」
「リオ、そっちの方がいいよ。変に注目集めるよりはずっと」
「そういう事情もあってこの学校が二人の留学先に選ばれたってクロノ君が言ってたよ」
「クロノ君って、クロノ執務官のことなの？」
「あ、そうそう、クロノ執務官って言わないと失礼だよね。
　ついついママの口癖がうつっちゃう。
　そだ、とりあえずお茶にしようか。
　二人とも長く歩いてきてて疲れてるでしょ。
　冷たいお茶を頼んでくるね」
「こっちの世界のお金は持ってきてないけど……」
「それぐらいおごるだけのお金はあるよ」

せっかくなので、好意に甘えることにするの。

「一休みしたら、学校の中を案内するね」
「ヴィヴィオ、今日は練習はお休み？」
「うん、ノーヴェに言って特別に練習はお休み。
　明日からはまたちゃんとやるから」
「練習ってなんなの？」
「一応格闘の練習をしてるんだよ。まだまだ未熟だけど
　今年はインターミッドにも出たいって思ってるんだよ」
「インターミッドって？」
「19歳以下10歳以上が参加できる魔法格闘の大会だよ。
　男女別にはなってるけど、年齢は無差別級なんだよ」
「10歳と19歳がぶつかり合うって、それすでに無茶すぎる大会だろ」
「そんなことないよ、体格差は変身魔法で埋め合わせ出来るから
　あとは才能と努力次第」
「変身魔法？」
「これだよ……行くよ、クリス！」

そう言うと、ヴィヴィオはポシェットにいたウサギのぬいぐるみをかざしたの。
ウサギから光がほとばしると、ヴィヴィオを包み込んで、それからヴィヴィオの
体が大きくなっていくのが分かるの。

「ほら、こんな感じ」
「なんか魔法の国に来た感じがするの」
「あはは、ミッドチルダは魔法文化の進んでる世界だからね」
「ここまで普通に地球と変わんない気がしてきたけど、こういうのを見るとやっぱりすごいなって思う」
「まあ、これは格闘の練習をするとき専用だから」

そう言うと、ヴィヴィオさんは体を元に戻したの。

「じゃ、学校内を案内するね」
「よろしく」
「ヴィヴィオ、じゃあ、私はノーヴェ先生のところへ行ってくる」
「コロナは休みじゃないもんね。ノーヴェには明日よろしくって言っておいて」
「いいよ」
「あたしはヴィヴィオに付き合うかな。修行は帰ってからやるから」
「うん、じゃあ、一緒に回ろっか」

こうして、私達はヴィヴィオ、リオと一緒に学校内を一通り回ったの。
まだ始業式は始まってないみたいで、学校は春休みみたいなの。

その翌日の話はまた次の話にするの。

 

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