「お疲れ様です」
「お疲れ様」

万年人手不足は管理局の宿痾。ここ、無限書庫も例外ではない。
身元調査でよほどの事がない限り、才能さえあれば司書として採用されることは、それほど難しいことではない。
そして、私、ファビア・クロゼルグにとって、司書として採用されるべき才能に事欠くということはない。

目指す場所は1カ所だけ、だけど、目的の物は一つじゃない。

相手が自分から分散してくれたのは助かる。危険区画だから、司書長も司書資格があるからといって自由には行かせてくれない。
だけど、今は別。今行けば、単なる応援と思ってもらえるはず。

「プチデビルズ。あくまで妨害は危険区画の暴走に偽装するようにね」

これは大前提。司書長がこっちを遠隔で見てるのは分かってる。
私が動いてると知れば、管理局員の直接介入もありうる。
八神はやてと愉快な仲間たちとぶつかり合うかもしれない。
それは避けたい。
あくまで各個撃破でいくのが私の基本計画。

「魔女の戦いは、あの人たち、知らないはず」

そう、それが私の強み。そして、たぶん弱み。
長丁場に持ち込まれないことが大事。そして、私のことを知られないことが。

……獲物みっけ。しばらく隠れて様子をうかがう。
あれは、確かミカヤ・シュペルに、リオ・ウェズリー。

「んーと、ここには見当たらないみたいですね、ミカヤさん」
「検索魔法も使えるんだ、リオちゃんは」
「うちの実家、道場やってるんですよ。で、すごい量の資料とかありまして
　それ調べるのに検索魔法とか覚えたんですよね」
「そうか。うちも代々道場をやっているが、私は検索魔法は苦手だな」
「意外ですね。うちの道場って無手勝流っていうか、節操がないっていうか
　剣術とかもやってますから、一度うちにきてみませんか。
　参考になる資料とかもあるかもしれないですよ。
　それに、うちのおじいちゃん強い人大好きだから、ミカヤさんなら大歓迎ですよ、きっと」
「私が強い人かどうかは分からないが、剣術の書というのは興味があるな。
　一度お邪魔してみたいものだ」

……頃合いかな。

「ミカヤ・シュペル、リオ・ウェズリー」
「えっと、あなたはたしか……」
「エレミアの手記は見つかった？」
「見つからないけど？」
「そう」

さすがに相手も百戦錬磨、こっちの殺気を感じ取った。
だけど、一撃でこちらを切り伏せよう、というのではない。
それでは遅い。

こちらの魔法で、デバイスを花束に変えてみせる。

「こういういたずらは感心しないな」
「ミカヤ・シュペル、リオ・ウェズリー。これを見て」

プチデビルの中に吸収する。まあ、魔女の力をもってすればこんなもの。
そろそろ本命にうつろうかな。

魔法で場所の当たりをつける。

「ハルにゃん。見つかった？」
「ハルにゃん？」
「ごめん、気に障った？　アインハルトで略してハルにゃんって可愛いかなって
　思ったんやけど……ほら、豹のデバイスもってたやろ」
「ティオのことです？　アスティオン……略してティオってよんでますけど」
「せやから、アインハルトも略してハルにゃんでおそろいでいいかな……って」
「よびたいようによんでもらってかまわないです、そう呼ばれたら自分のことだと思うようにします」
「うちのことも、ジークって呼んでもらってかまへんよ。みんなそう呼ぶから」

ターゲット・ロック。

「ジークリンデ・エミリア、アインハルト・ストラトス。真名認証……水晶体認識終了……」
「？」
「吸収」

これでおしまい。DSAAでなければ、チャンプといえども、魔女の敵ではない。

「ジークリンデ・エミリア。あなたには後で聞きたいことがあるから、ほかの子とは別の瓶……」

吸収されて、瓶詰めにされてもまだ動ける？　そして騎士甲冑を装着した？
デバイスどころか、下着にいたるまで一切合切ひんむいて捨てたはずなのに。

エレミアの神髄で瓶を打ち破る。さすがにエレミアの末裔。一筋縄ではいかない。
でも、それが限界。魔法の爆弾でジークリンデ・エレミアを吹っ飛ばす。
これでしばらく動けないはず。

また同じ手で吸収できるほど甘い相手ではないだろう、とりあえず三十六計逃げるが勝ち。
インクヴァルドの末裔は我が手中にあり。あとはエレミアのクローンとオリヴィエの手記を手に入れること……。

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