ここまで、うちの事を研究してたんや。エレミアの神髄、みせな納得できへんやろな。

「アインハルト、気をつけろ、向こうが切り替わった。本気で来るぞ」

本気で言われてもな。うちはいつでも本気で試合やってるんやけどな。
ただ、これは普段つかわへんだけや。

「はいっ」

アインハルトが身構える。何が来るかは分かってるようや。
ギャラリーも、何が起きるかは、おおむね分かってる。一昨年も使ったことあるしな。
一昨年おらんかった人は、しらんかもしれんけど。

「消えたっ？」
「月光ちゃん、上っ！」
「え？　早い……ヴィヴィオちゃん、よくついて行けるね」
「一応競技選手だから」
「つか、なんか雰囲気やばいぜ、殺気が尋常じゃねえ」
「殺気が尋常じゃないって、冬美ちゃん……顔色悪いよヴィヴィオちゃん、どうしたの？」
「来るっ！」

手応えなし、か。
いきなり直撃いうんは甘いわな。けど、かすってるか。バリアジャケットが破れてる。

「な、なんだよ今の……リングがえぐれてるじゃないか」
「あれがエレミアの神髄、イレイザーです。ボクの抜剣と似てなくもないですけど……」
「けど、抜剣は収束魔法、あっちはほぼゼロ時間発動で威力も段違いだぜ。
　なんだよあれ。当たったら一発で持って行かれるじゃないか」
「当たればエミュレートでなく負傷する威力がある。私も一度受けたことがある」
「あ、ミカヤさん、こんにちは」
「こんにちは」
「エミュレートでなく負傷するって……それ、反則にならないんですか？」
「反則ではないな、あくまで、威力が大きな一撃というのに過ぎないから」
「威力が大きな一撃っていっても……」
「アインハルト、むやみに突っ込むなっ！」

あれをみて、守りに入らない気持ちは立派や。まだ前に出て打ち合おういうんやな。
けど、……動きが遅い。
まともにみぞおちに一撃を入れる。
これで身動きとれんやろ。
こんどは、かわせへんはずや。

「な、動けない相手にエレミアの神髄をたたき込むっていうのかよ。
　手加減抜きったってやり過ぎじゃないのか」

これがやり過ぎになる相手やったら、うちも気が楽や。
この子は、まだ、本当の自分の限界を出してない。
本当の自分の限界をだしきらへんかったなら、うちがそれを引き出せへんかったなら
うちはこの子の受け止めたことにならへん。
それやと、お話、できへんやろ。

「アインハルトっ！」
「……っ……」

ほら……な。

「ティオ……ありがとう」
「にゃ……にゃぁ……」

デバイスは限界を超えたみたいやけど、この子はぎりぎりでかわした。
デバイスがダメージを回復させて、この子は首の皮一枚回避したんや。
ほんま、性根入ってるわ。
けど、今度は手応えあったで。エミュレートやなしに、負傷してる。
タオル入れてもええんちゃうか？

「……ありがとう、ティオ……もう、十分です、あとは休んでいて……」
「……にゃあ！」

あの子のデバイスが限界を超えてあの子を回復させる。
エミュレートじゃないダメージをも回復させたようや。
けど、デバイスは限界に達したみたいやな。

後は、あの子の素の力だけやし、あの子のLP自体ほとんど０になってる。
何かがかするだけでも、LPは０になってしまうやろ。

あの子は、デバイスなし、LPなしで、何が出来る？

あの子は、デバイスなし、LPなしでも、前に出ることが出来た。
デバイスに頼って前に出てるわけやないと思ってけど、その通りやな。
けど、うちも、その拳、正面から拳で受け止める勇気がないわけや、ないんよ。

拳と拳が正面からぶつかり合う。
これは、意地と意地の正面対決や。
……ゆずらへんのか。ちゅうか、最初の激突でLPがけずれへんかったんか。
しゃあないな。
この拳の対決は、引き分けや、たいしたもんや。

けど、勝負はうちの勝ちや。
拳をひいてたたらを踏ませる。
その瞬間にボディに全力の一撃を入れる。
これでLP０。勝負ありや。

あの子は、思いのありったけをうちにぶつけることが出来たやろか。
そこらも含めて、お話、聞かせてもらおうかな。

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