「ご先祖様に誇りを持つんはええ、けど、きみが生きてるんは、ご先祖様のためだけなんか？」
「私は、私のためにここにいて、自分の意思で戦うだけです！」
「そうはみえへんからいうてるお節介や」

せやな、ご先祖様に縛られてる自覚はないやろな。
と、感傷に浸ってる暇はなさそうや、あの子が突っ込んでくるわ。
ムキになったんかな。動きが直線的や。これはカウンター入れてくれいう催促か？

「変化した？」

ギャラリーは驚いてるみたいやけど、これは定石。
直線的な動きやから、カウンターの催促に乗っただけや。
カウンターをかわして懐に入ってきたあの子を接射で捌く。

ふきとばしを引き留めて、それからボディに一撃入れる。
続いて肩にチョップ。……ダウンとれたやろ。

……出来れば、立ってほしくないんやけど、あの子はこれくらいでは負けへんやろな。
あのデバイス〜アスティオンやったかな〜あれはあの子にゾンビみたいな回復力を与えてるからな。

「うちがきみと話をさせてって言ったんはな。
　きみがもし自分の過去に縛られてるんやったら、それはとても悲しいことやから」

あの子が立ち上がる。
ダメージも回復してる見たいや。あれだけ打撃を与えたのにもう回復してるし。
頑張り屋なのは認めるわ。
あきらめずに突っ込んでくる闘志もな。

けど……

今度は殴りかかる拳を正面から受け止めて腕十時に持ち込む。
決まったやろ。

「なくなった国や、いなくなった人のために、きみが人生を犠牲にするのは、間違ってる」

？

この子、決まった腕十時を力でふりほどこういうんか？
無茶するな、エミュレートやなしに関節壊すで？
……ふりほどきよったな。
そっか……そっちがそうくるなら、力業でふりほどけんので行こうとするか。
フロントチョークや、これは意識を飛ばす。根性自体が効かんから、これで終わりやろ。

「それになにより……きみの戦いは痛々しすぎる
　今日の試合は、うちの勝ちや、起きたらもう少しゆっくりはなそ」

それにしても、何がこの子をこんなに突き動かすんやろかな。
まるで、ご先祖様が今この子に乗り移ってるみたいやなあ……

！

一撃入れられた？
衝撃でフロントチョークが外れる。
けど、意識ははっきりしてないはずや。
すぐならカウンターが……
たたみかける一撃やて！
きれいに入れられた。……完全に入ったな、今のは……

「やったあ、アインハルトさん、練習通りです！」

……練習通り？
そっか、この子、前の試合は同門対決とか言われてたな。
今を一緒に生きる、仲間がいてたんやな……
ご先祖様に縛られてるだけや、なかったんや。

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