「にてる……？」

アインハルトさんが、小首をかしげます。
音声が入ってないので、何を話してるかは分かりません。

『ジークリンデさんが、アインハルトさんに、自分たちが少しにてる、という話をされてるみたいですね』
「ライチェントゥークス、聞こえるの？」
『我が主、興味あるかと思って集音してみました』
「ありがと、ライチェントゥークス」

「ま、試合中や、お話は後でな」

ジークリンデさんが、魔法弾を発生させます。

「エレミアの技、受けてもらおうか」

「なんて高密度の魔法弾……直撃すれば一発で落とされかねないですよ」
「直撃すればだろ。けど、アインハルトさんには、あれがあるんじゃないか」
「確かに、……受け切れれば……」
「受けきりますよ、アインハルトさんは」
「コロナ」

「ゲヴェイア・クーゲル……ファイア！」
「旋衝破！」

そう、アインハルトさんにはこれがある。
魔法弾が相手なら、投げ返せる。

とはいえ、それはジークリンデさんも想定内だったようで
投げ返した魔法弾が当たってもノーダメージです。

「なるほどなあ……じゃあ、これはどうかな」

高速の低空タックルがアインハルトさんを襲います。
そこから足をつかんでの投げ技、さらに関節技……

「ヴィヴィオは練習したけど、これは使わなかったよな」
「使うときなかったんだよ、冬美ちゃん」
「練習はしたんですか」
「うん、そうだよ。コロナちゃん」
「でも、微妙にピンチじゃないか、アインハルトさん。
　関節技使う相手なんて、ジークリンデさんぐらいしかいないんじゃない？」
「ここは大丈夫みたい」
「コロナちゃん」

強烈なけりでジークリンデさんの関節技を解きます。
とはいえ、関節を痛めたことに変わりはありません。
さすが無敗の女王だけのことはあります。

「あ、まずい、アインハルトさん、ジークリンデさんを見失ってる」
「冬美ちゃん、どういうこと？」
「アインハルトさん、右っ！」
「え？」
「遅いっ！」

強烈な投げがさらにアインハルトさんに襲いかかります。
さらにもう一度。

さすがのついにアインハルトさんもダウンです。

カウント１，２。

「え？　もう立ってる？」
「あー、アインハルトさん、もう少し休めばいいのに」
「アインハルトさんらしいですね」

「さーて、まだ序盤や、君もまだこんなもんやないんやろ」
「その笑顔は余裕の証ですか」
「あ、ごめん、失礼やったかな。つーか、強い相手との戦いは楽しいし、君にも楽しんでほしいかな〜って思って。
　ていうか逆に聞いてええかな。　君はなんでわらわへんの？」
「……！」
「？」
「……私は……笑ってはいけないからです」
「どうして？」
「……」
「ごめん、試合中に聞くことやなかったかな」
「いいえ、別に……」
「ほな、こうしようか、うちが試合に勝ったら、少しお話させてぇな」
「力尽くでということでしたら、ご随意に」
「ほんならすぱーんと殴り合おうか。実はヴィクターともハリーともこれでなかようなっったんや」
「そうですか」
「さーいくよ……”鉄腕”　解放」

……そう言うと、”無敗の女王”ジークリンデ・エレミアは肘の上までを覆う防護武装を展開しました。
「黒のエレミア……」
「どうしたんだ、ヴィヴィオ」
「黒のエレミア、古代ベルカの王族の一つですね」
「なんだそりゃ。つまり、ジークリンデさんも古代ベルカ流の使い手ってことなのか」
「ええ、そういうことになります。アインハルトさんと、その意味では、ちょっとにてますね」
「……それだけのことならいいんだけど」

どうやら、ここからが本番になるようです。
アインハルトさんは、本気のジークリンデさんに、どう戦うんでしょうか。

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