「痛いよぉ、痛いよぉ……」
「大げさに痛がるなよヴィヴィオ、クラッシュエミュレーションはもうとれてるだろ」
「だからって痛いものは痛いんだもん」
『すいません我が主、攻撃に魔力を全部回して防御をおろそかにしてしまいました』
「ライチェントゥークスは悪くねえよ。あれをかわしたミウラを褒めないとな。
　いや、ほかにも使える魔法がいろいろあったのに、封印して勝てるって思ったあたしが悪かったのかも」
「あれをかわされたら打つ手なしだよ冬美ちゃん」
「ヴィヴィオちゃん、本当に大丈夫？　聖王の鎧を貫通されたんでしょ？」
「まだひりひりするけど、それ以外は大丈夫。魔力を使い切って疲れてるだけ」
「だといいけど……」

ここは、インターミッド大会の医務室です。
レベル３以上のデバイスによるプロテクトがなされてるので、基本的にけがはしないのですが
それでも魔力の消耗はしますし、エミュレートとはいえ痛いことに変わりはないので
医務室は用意してあります。

「こんにちは、高町さん、川崎さん、中島さん」
「あ、エミーちゃんこんにちは」
「ようエミー、試合を見てくれてたのか」
「ええ、高町さんの大舞台ですもの。結果は残念でしたけど、いい試合でしたよ」
「エミーはこれからだったよな」
「ええ、そうですわね。高町さんの分までがんばりますわ」
「エミーちゃんの試合って、なんかがんばるっていう感じしないんだけどな。
　なんだか、淡々としてて、気がついたら判定で勝ってるって雰囲気だよ」
「そうかしら？　私なりにはがんばってるつもりなんですよ」
「ヴィヴィオ、もう大丈夫？」
「あ、なのはママ、まだちょっとひりひりするけど、もう大丈夫だよ」
「そうなの、それはよかった」
「あ、なのはママ、どうだった？」
「うん、ヴィヴィオ、よく頑張ったね。結果は残念だったけど」
「あのクッキー残念なできだったんだ」
「あれ？　クッキーのできを心配してたの」
「試合の方はもう結果が出てるもん。ミウラちゃんの方が一生懸命だった分、ヴィヴィオより上の結果が出せたってことだよね、きっと」
「ヴィヴィオは一生懸命じゃなかったの？」
「試合の時だけ一生懸命でも、二足のわらじと、格闘一本槍とじゃ差が出ちゃうよ」
「だったらヴィヴィオも格闘を目指せよ、絶対パティシエより格闘の方が向いてるって」
「やだ、絶対ヴィヴィオはパティシエさんになる〜」
「ふふっ、向いてなくてもなりたいことが天職じゃないかしらね」
「エミーちゃんもそう思うでしょ、ね」
「向いてることが天職じゃないかなぁ」

こんこん。

「はい、あいてますよ」
「あの、大丈夫ですか」
「あ、ミウラちゃん、おめでとう」
「あ、ありがとうございます。けがとかしてないです」
「それは全然平気。心配してくれてありがとう」
「さっきまで痛がってたくせに」
「あー、冬美ちゃんそれは言わない約束〜」
「そんな約束してねえっての」
「ふふ、相変わらずですわね」
「それで、ミウラさんは、お見舞いに来てくれたんですか」
「そうです、月光さん。手加減なしにやっちゃったんで、大丈夫かなって……」
「それなら大丈夫だよ。ライチェントゥークスもちゃんと防御に入ってくれたし……」
『いや、我が主、私は攻撃に魔力を回してましたから』
「あーライチェントゥークス、せっかく私がフォローしようとしてたのに、好意を無にする〜」
『しかし、真実は真実ですから』
「聖王の鎧を貫通されたのはこれで２度目だよ、１回目がなのはママのスターライトブレイカーで、２回目がミウラちゃんだね」
「それって褒められてるんですか？」
「褒めてるんだよ、勝者なんだからもっと胸を張ってくれなきゃ」
「ありがとうございます、ヴィヴィオさん。……そうですね、強いヴィヴィオさんに勝てたんですから」
「ヴィヴィオはそんなに強くないよ」
「一応地球代表なんだぜ、ヴィヴィオは。世界代表なんだから強いってことにしてくれないと困るんだよ、主にあたしが」
「ふふ、そうでしたわね。高町さんは第９７管理外世界に住んでらっしゃるんですものね」
「第９７管理外世界？」
「なのはママの出身世界だよ」
「そうなんですか、どんなところなんです？」
「どうって……文明段階はミッドチルダとそうかわらないかな。ただ魔法がなくって……」
「ヴィヴィオちゃん、冬美ちゃん、そろそろリオちゃんの試合が始まっちゃうよ、行かないと」
「おっと、そうだな」
「そうですわね。……ミウラさん、よろしければ一緒にリオさんとハリーさんの試合を見に行きませんか？」
「いいんですか、よろしくお願いします」

そういうわけで、私たちはリオさんとハリーさんの試合の観戦に出かけました。
医務室で時間をとったおかげで、試合自体はすでに始まっていました。

「お、試合はもう始まってるみたいだな」
「そうですわね。お互いLPの消耗はないようですね」
「炎熱砲撃魔法の打ち合いが相殺、ハリー選手と互角って、リオさんすごい……」
「まあ、私たちと練習してたんだから当然だよ☆」
「大きく出たなヴィヴィオ」
「だって、そうでなきゃ、ミウラちゃんが弱いことになっちゃうじゃない」
「ボクはまだまだですよ……」
「試合の方に集中しましょう」
「そうだね、月光ちゃん」

「よう、結構鍛えてきたな、ちびっこ」
「はい、サインをもらったときから、目標にしてがんばってきましたから。
　覚えてもらっていて光栄です」
「そうか。じゃあ、手加減抜きってのも覚えてるよな」
「はい、もちろんです……でも、こちらも手加減抜きで行きますよ。
　紅蓮拳」
「ガンフレイム！……ちっ、これも相殺か」
「みたいですね……でも、春光拳は炎熱魔法だけじゃないんですよ……雷光縄」
「なにっ……バインド魔法か」
「はい」

「ああ、リーダーバインド魔法かかりすぎっスよ」
「性格素直ですからね……」

「へっ、けどこんなのあほのエルスのバインドに比べれりゃたいしたことねえ。
　すぐにブレイクしてやんよ」
「バインドはあくまで時間稼ぎですよ番長！」
「なんだとぉ」
「どっこい……しょぉ」
「はあぁぁぁ？」

「あらあら、リオさんったら、リングを引きはがして持ち上げるなんて、無茶をいたしますわね」
「リオちゃん、ゴーレム創成の代わりにリングを直接ぶつけるんだ」
「えと、エミーちゃん、ヴィヴィオちゃん、そういう問題？」

試合はまだ始まったばかりです。けど、リオさんは、絶好調のようですね。

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