アインハルト・ストラトスにコロナ・ティミルか。コーチはいい選手を育てた物だ。
私が当たったとしても、勝てたかどうかはわからないな。

次の試合は、高町ヴィヴィオにミウラ・リナウディの対戦か。
ミウラには、私は土をつけられている。そのミウラに、ヴィヴィオはどう戦うのか。
それを……。

「あ、なのはママにフェイトママだ、こんにちは〜、ねえねえ、これ、ヴィヴィオが作ったんだよ。
　ちょっと試食してみて〜」
「へぇ、ヴィヴィオが作ったんだ、クッキーだね、いただきます」
「いただきます」
「ヴィヴィオ、これから試合だってのがわかってんのか？」
「わかってるよぉ。いまさらじたばたしたって始まらないって。
　やるべき事は、試合前に全部終わってるって、冬美ちゃんだって言ってたじゃない」
「そりゃまそうだけど、おまえはリラックスしすぎだろ」
「緊張しすぎるよりいいよ冬美ちゃん」
「ゲッコウはいつでもヴィヴィオの味方だよな。まあいいや」
「なんや余裕かましてるな」
「あ、こんにちははやてお姉ちゃんにシグナムおばちゃんにヴィータお姉ちゃん。
　ザフィーラおじちゃんはもう試合会場の方？」
「そうだな。ヴィヴィオも、そろそろ試合会場の方に行った方がいいぞ、時間が迫ってる」
『シグナムさんの言うとおりです我が主、あと10分で試合開始ですよ我が主』
「そうなんだ……と、あ、ミカヤさんだ。ミカヤさんも観戦されてたんですか」
「ああ、私にとっての今年のインターミッドは終わってしまったが、まだ来年もあるのでな」
「そうですよね。あ、このクッキー食べてみてください、試合が終わったら感想をお願いします」
「わかった、いい試合を期待しているぞ」
「試合結果じゃなくて、クッキーの出来の方を」
「試合はどうでもいいのか？」
「試合は……まあ、それなりにがんばります」
「それなりで勝てる相手ではないぞ、ミウラは」
『我が主なりの全力表現なんですよ、悪く思わないでください、ミカヤさん』
「……まあ、見ててくださいよ、いったんリングに上がったら、ヴィヴィオは変わりますから」

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たしかに、噂では、エリートコースまで上ってきた相手を、ガードの上からノーダメージ一撃で落としたという。
高町ヴィヴィオの実力も、それなりに本物ではあるのだろう。
だが、その程度のことなら、私にでもできるはずだ。
ミウラは、その上を行く。どうするつもりだ？

「あ、ヴィヴィオ、先に言っておくけど、今回は分身魔法禁止な」
「えー、全力全開でないとミウラちゃんには勝てないよぉ」
「その代わり、大人モードは解禁」
「やったあ！」
「その代わり勝てよ、全力で」
「大人モード解禁♪大人モード解禁♪」
「聞いてないか」
「ライチェントゥークス、聞いた？　大人モード解禁だって。魔法使用許可を」
『了解です、我が主』
「師匠、向こうは大人モード解禁なんて言ってますけど、作戦は変更なしでいいんですよね」
「変更はなしだ。ヴィヴィオはどのレンジでも戦える。なら、自分のもっとも得意なレンジで戦え」
「わかりました。行くよ、スターセイバー」
『All Right Master』

二人ともが臨戦態勢に入る。
だが、ヴィヴィオの方は、16才程度の肉体にまで成長している。
あれが大人モードということか。
リーチが伸びることで、アウトレンジしようということのようだ。
だが、それだけで勝てるほど、ミウラは甘くあるまい。
ほかにどういう策があるというのだろうか？

Ready ……　Go!

試合開始と同時に、ミウラが突っ込んでいく。
自分の距離で戦うために間合いを詰めるつもりのようだ。
それに対して、ヴィヴィオは的確にカウンターを入れていく。
決してミウラの距離にミウラを入らせない。
だが、それだけでは……。

「ヴィヴィオ、やれっ！」

ミウラが自分の間合いに入った。
ここからミウラのラッシュが始まる。

そう誰しもが思った瞬間、ヴィヴィオのカウンターがきれいに入った。
ミウラが場外へと吹き飛ばされる。

「ま、これは挨拶代わりだな。
　自分のレンジに入ったからってヴィヴィオのカウンターをなんとかできる訳じゃないぜ」

あのセコンド……川崎冬美と言ったか。
あの若さでよく見ている。ヴィヴィオの実力を引き出す頭脳といったところか。

「ミウラ、なにやってる、試合中だぞ。とりあえず立て！」

ヴィータの叱責がミウラに飛ぶ。
たしかに、カウントが続いているのにミウラはぼんやりと横たわっているだけだ。
これでは場外負けしてしまうだろう。

「……はっ。すいません、ヴィータさん」
「大丈夫かい？」

レフリーが声を掛ける

「大丈夫です、まだやれます」

試合再開。だが、自分のレンジですらきれいにカウンターを食らって、ミウラはどう戦うつもりだろう。

「カウンターを食らっても作戦は一つ！　自分のレンジに飛び込むまでっ！」
「あちゃぁ、天才ヴィヴィオ唯一の弱点をもう見抜いてきたか、さすがにミカヤさんに勝ってるだけのことはあるな」

「あの、ミカヤさん」
「ゲッコウだったかな、なんだ？」
「月光とかいてアカリと読みます。でも、今はそういうことはいいです。
　ヴィヴィオちゃんの唯一の弱点って、どういうことなんです？」
「唯一かどうかはわからないが、これまでのヴィヴィオの戦いのビデオを見る限りでは、フィニッシュブロー以外の
　通常の攻撃の威力が、ミウラに比べて弱い。相打ちを繰り返す戦いになったなら、ミウラに分があるだろうな」
「そういうことなんですか。それで、ミウラちゃんはノーガードで自分の間合いに飛び込んでいけるんですね」
「そういうことだな、前回はヴィヴィオに自分から間合いへ飛び込まされたせいで、大きなカウンターを受けてしまったが
　今度はそういうことがないように、慎重に相打ちをねらって攻撃しているようだ」

しかし、相打ち覚悟の攻撃だけでは、またいつか大きなカウンターを受けかねない。
ミウラにはどんな攻撃があるというのか……。

「！……ヴィヴィオ、間合いを……」
「遅いっ！」

ミウラにはこれがあった、通常よりも深く大きな踏み込み。これで一気に間合いを詰めての掌底がヴィヴィオをとらえる。
ヴィヴィオはそのまま場外にたたき出される。

「さすがミウラちゃん、これで五分だね」
「そうですね、ヴィヴィオさん」

「……二人とも、笑顔ですね」
「なるほど、冬美の言うとおりか。ヴィヴィオも楽しんでるのだな、格闘を……天才と呼ぶわけだ」

お互い、挨拶代わりの一撃を入れあった。
勝負はこれからだ。

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