私の名前は、高町ヴィヴィオ、ヴィヴィオ＝スクライア＝高町＝テスタロッサ＝ハラオウンだよ。
今、私たちはプライムマッチの観戦中、試合は砲撃番長ハリー選手と、バインドの名手エルス選手の対戦なんだよ。

「ハリー選手、ニュートラルコーナーへ」
「あーへいへい」

「なあ、ヴィヴィオ陛下」
「どうしたの、シスターシャンテ」
「なんでハリー選手は右手をかばうようにしてるんだ？　魔力ダメージなんだから、負傷とかしないはずだろ」
「えとえとえと、シスターシャンテって、もしかしてDSAAのルールとか、把握してない？」
「どういうこと」
「DSAAだと、攻撃がヒットして、”重度の負傷をする”って判定になると、そのダメージが模擬的に再現されるんだよ」
「それって、ハリー選手が砲撃で自分の腕を打ったから、その打撲がエミュレートされてるってこと？」
「そういうことになるね」
「ふーん。そういえば、あたしの対戦相手はそういう状態になってたっけ。自分がやられることがないからわかんなかった」
「あはは、シスターシャンテは強いからね」
「ふふ、試合が再開されるみたいですよ、ヴィヴィオさん、シャンテさん」
「そうだな、よくみとけよヴィヴィオ」
「もちろんだよ冬美ちゃん」

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「ガードしても砲撃がまともにあたりゃ吹っ飛ぶってわかれば、勝負はあったも同然だなデコメガネ、行くぜ」
「まともに当たればの話でしょう。あなたの砲撃のパターンは今ので見切りました。もうまともにはあてさせませんよ」
「ほざけ」

大火力の砲撃がエルス選手を次々と襲います。けど、エルス選手も正面からガードはせずに、シールドで受け流しながら
バインドにかかります。どうやら、勝負は大技の撃ち合いから、魔力の削りあいへと変わったみたいです。
けど、砲撃番長ハリー選手は、大火力砲撃を控えるわけではないから、対抗上エルスもバインドの速度を落とすわけに行かないみたいなんだよ。
これじゃ双方とも、魔力消耗速度は激しくって、第3ラウンドにはもう双方限界だよね。

「……エミー、この勝負、どっちが有利と見る？」
「計算で勝敗がつくならエルスさん、根性勝負になればハリーさんだと思いますわ、冬美さん」
「うまく逃げたな。ヴィヴィオはどっちと見る？」
「わかんないよ、冬美ちゃんはどう思う？」
「心理戦じゃ番長が勝ってたな。けど、正直どっちが勝ってもおかしくねえよ」
「えと、シスターシャンテはどちらが有利だと思いますか？」
「どっちが有利っていう試合じゃなくて……次の一撃を決めた方が勝つんじゃないかな？」
「どっちが魔力を残してるかの勝負じゃないかしらね」
「ルーテシアお姉ちゃんはそう考えるんだ」
「……動くぞ」

冬美ちゃんの言うとおり、ハリー選手が動きました。

「いい加減に落ちやがれっ！」

”4連、バースト……バレット！”

「決まった！」
「いや、ヴィヴィオ、ガードが入った、落とし切れてない、これはカウンターが来る」

”パニッシャー！”

ハリー選手は今の一撃で魔力を完全に使い切ってしまってます。
ここでバインドを完全に決められました。このまま締め上げられては、勝負ありです。

「そうさな、魔力は完全に切れて砲撃は不可能、けど、それではいお手上げってんじゃ
　あのお嬢様にあわせる顔がないんだよっ！」

そういうと、ハリー選手はクラッシュしてるはずの右腕を思いきり後ろに引っ張ります。
反動でエルス選手が前へ引っ張られます。

「えええ？」
「残りLP１２０なら、普通に殴っただけでも通るだろ、一撃必倒パンチ！」

クラッシュエミュレートで骨折してるはずの右腕で、ハリー選手はエルス選手を殴り飛ばします。
これが決め手になってエルス選手はノックアウトされました。
ハリー選手のKO勝利です。

「うっしゃーっ！……う……ぅぅぅぅぅぅぅ……」
「リーダー、まだクラッシュエミュレートは解けてないっスよ、無茶しないでくださいっす」

「ま、なんにせよ、これでリオちゃんの相手はハリー選手に決まったわけだよね」
「うん、がんばる」
「けど、サインをもらった相手と試合か。……思えば遠くにきたもんだよな、リオ。……がんばれよ」
「もちろんだよ、冬美ちゃん」
「終わったら、あたしとも組み手しろよ、魔法抜きで」
「うん、魔法抜きでね」

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こうして、プライムマッチは終了したんだよ。
それから数日後、チームナカジマ、っていうか、アインハルトさんと、コロナちゃんとの対戦の日がやってきました。
お互い、この日のために秘密の特訓をやってきたみたいですけど、どんな特訓をやってきたんでしょう。

「コロナちゃん、大丈夫？」
「うん、やれることは全部やったから、大丈夫……勝つよ」
「勝てるだけのことはやってきたんだ。最初の一撃で落とされなければ、勝機はあるもんね」
「うん、最初の一撃でやられない秘策、ちゃんとあるからね」

アインハルトさんには、あえて話しかけませんでした。
アインハルトさんは、覇王流を信じるっていうことのほかに、何もないはずですし
それに、コロナちゃんに試合前話しかけてると、アインハルトさんに話しかける時間が
とれませんでしたから。

アインハルトさんには、冬美ちゃんが話をしに行ってるはずです。

私たちは、急いで観客席に戻ります。

「冬美ちゃん、アインハルトさんの様子はどうだった？」
「いつも通り、試合前の緊張をしてたぜ。コロナの様子はどうだった？」
「コロナちゃんは、いつもよりちょっと緊張してたみたい。だけど、勝つための練習はしてるって」
「そっか、一撃で落とされなければ、いい試合になると思うぜ。けど、一撃で落とされない方法って
　何があるかだよな」
「うーん、コロナちゃん、自信はあるみたいだったんだけどなぁ」
「ヴィヴィオちゃん、冬美ちゃん、試合が始まるよ」

試合開始と同時に、コロナちゃんは一気に空中に飛び上がります。
踏み込みが主体の覇王流の一撃をこれでかわしたわけです。
けど、ここからさらに何かなければ、ゴーレム創成に入るだけの
時間が稼げてません。

「爆砕！」

急速落下と見せかけて、コロナちゃんは地面を爆破しました、これでアインハルトさんの
視界を封じます。これならたしかにゴーレムを作り出す時間を稼ぐには十分です。
そして、ゴーレムを作ることができれば、コロナちゃんにも十分な勝機があるはずです。

戦いは、これからが、始まりです。

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