「ちゃーっす、両陛下にゲッコウに冬美にリオ」
「こんにちは、ルーテシアお姉ちゃんにシスターシャンテ」
「ふふ、お二人とも今日は観戦ですか」
「せっかくのプライムマッチだから観戦しない手はないってね」
「そういうこと。時に陛下、覇王っ子とリオは一緒じゃないんです？」
「アインハルトさんとリオさんは、練習の後ビデオで観戦するそうですわ」
「試合なんて生で見ないと本当の味はわかんないもんだって言ったんだけどよ。
　二人とも練習の方が大事だっていって聞いてくれなかったんだよな」
「それだけ、次の試合に入れ込んでるんだよ、冬美ちゃん」
「そうだろうな、ゲッコウ」

両陛下もヴィヴィオ陛下のお友達も、相変わらずの用だな。
あたしが心配するほどのこともないか。

「シスターの方も、順調に勝ち上がってるみたいだな」
「そりゃま、教会代表として恥ずかしくないようにはね」
「私も一応は教会代表ですわ」
「エミー陛下は別枠ですよ」
「ふふ。シスター代表としてがんばってくださいね」
「そうさせてもらいますよ」
「冬美ちゃん、シスター、そろそろ選手入場だよ」

と、雑談はここまで、そろそろ選手入場だ。
この席から見えるのは、ハリー選手とエルス選手の試合だな。
エルス選手……エルス＝タスミン、結界魔道師か。去年は都市対抗ベスト８になってるな。
対するハリー選手は言うまでもなく砲撃番長ハリー＝トライベッカ、射砲撃の名手だ。
応援もハリー選手の方が多い。そりゃ委員長タイプより番長の方がキャラが立ってるから仕方ないよな。

”ブラックジャスティス　セットアップ”

エルス選手がバリアジャケットを装着します。ま、委員長タイプらしく、正統派のミッド式みたいだね。
格好は黒い半袖のセーラー服と言ったところ。胸元のリボンがチャームポイントっていったところかな。かな。かな。
ま、見た目は大事じゃないっすよ。問題は実力。何を見せてくれるか……。

「さて、不良生徒を成敗しますか」
「ほーお、やってみせろよデコ眼鏡」
「おうともやらいでか」

ありゃりゃ、二人ともメンチの切り合いをやってるよ、けど、んなことやってるようじゃ、番長のペースかな。

「双方位置について」

審判が両者を分けます。
どうやら、試合開始の時間が来たようです。
ちなみに、プライムマッチのLPは１５,０００。4分4ラウンドです。

「さぁて、軽くあほをぶっ飛ばすか」
「おす」

「先輩、がんばって」
「大丈夫、正義は勝ちます」

”レディ……セット”
……
「Fight」

試合が始まった。
試合開始と同時に、エルス選手が仕掛ける。

「アレスティングネット展開……ホールド開始」

魔法陣が無数に現れると、そこから鎖が飛び出す。その先端には手錠だ。
その手錠がハリー選手を襲う。

「ずいぶんと派手な魔法だな。だが……」
「甘いですよハリー選手」

背後からも、側面からも、次々と鎖が襲いかかる。まさに鎖の全周攻撃。動きを止めて待ったのが
ハリー選手の判断ミス、最初からクロスレンジに飛び込んで相手にコントロールの暇を与えるべきではなかった。

「ホールドフィニッシュ！」

そう、次々と現れる鎖に動きの範囲を狭められて逃げ道を封じられたハリー選手は、とうとう完全にバインドされてしまった。

「ああ、言い忘れてました、鎖を引きちぎっても無駄ですよ。パニッシャーは鎖より金属輪の方に拘束効果があるんです。
　逃れる方法はありませんよ」
「そいつは貴重な情報をありがとよ。じゃ、こうすりゃいいんだろ……」

そういうと、ハリー選手は右手から発生させた魔法弾を左手にたたき込みます。

「簡単な問題だぜ。てめーをぶちのめすには片腕使えりゃ十分だ。……食らえ、ガンフレイム！」

馬鹿威力の砲撃魔法がリングを埋め尽くしてそのままエルス選手を飲み込んでいった。
こりゃエルス選手もたまらないかな。

「けほっ」
「へっ、バインドも解けたか。けど、こっちも本調子じゃねぇな、威力がいまいちだ。
　リングアウトしたまま休んでないでさっさと上がってこいよ、これで終わりじゃないんだろ」
「あたり前ですっ！」

まだお互い切り札は残してるようです。けど、結界魔術師エルス選手に、どんな切り札が残ってるっていうんですかね。 

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