……抜剣、ボクの技術の集大成で最後の切り札。ぶつけるんだ……ボクの全部を！

ミカヤさんは、LP差を使って逃げ切ろうという考えはないみたいだ。収束魔法の弱点、それは
言うまでもなく、魔力収束に時間がかかると言うこと、もし、ミカヤさんがボクの魔力収束を
妨害して削りに来てたら、ボクは抜剣を使う間もなく削り落とされたかもしれない。
けど、ミカヤさんは、ボクの全力に、全力でぶつかって来てくれる。

それがうれしい。……それがボクの唯一の勝機だからというだけではなく、ボクを一人のファイターとして
認めてくれているという意味で。

「……行くよ、スターセイバー」
「All right」

”抜剣！飛燕”
”天月・霞”

二つの力がぶつかり合う。
まずい、はじかれる……けど、これで太刀筋は見えた。LPもミカヤさんのほうが大きく削れた。
いける、これならいける。
次の一撃、ミカヤさんの攻撃をかわせさえすれば……そう、それが問題なんだけど…かわせさえすればっ！

着地した瞬間、すぐに間合いを詰め直す、ミカヤさんも、それはわかっていたようで、返す刀で
ボクを切り伏せに来る。……だけど、最初の一撃ほど太刀は早くない。あの一撃は手にも
ダメージを与えていたようだ。これならかわせる、懐に潜り込める……行くよ、スターセイバー……

「一閃必墜ッ！」

”抜剣！星煌刃！”

完全に入った！これでボクの勝ちのはずだっ！

……って、もしかして、オーバーキル？
あは、あはは、やりすぎちゃったかな……ごめん。

「ったく、むちゃくちゃな試合しやがって」
「すいません、ヴィータさん」
「勝てたからよかった、とはいえんな。指導事項は山ほどある。
　一週間後の相手は、あんな戦い方ではかてんぞ」
「はーい」
「まあまあ、それでもミウラはようがんばったよ。
　ミウラもスターセイバーもお疲れ様」
「一回線突破おめでとう〜♪」
「はい……ありがとうございます！」
「Thank you,master」
「ところで師匠」
「なんだ、ミウラ」
「一週間後はあんな戦い方では勝てないって、次に当たる相手って、ヴィヴィオですよね。
　ヴィヴィオって、そんなに強い相手なんですか」
「あたしとシグナムがユニゾンして2人がかり、ていうか4人がかりで勝てなかったことがある相手だ」
「そ、そんなに強いんですか！」
「まあ、あんときとはルールも違うから一概には強さ比べはできねーけどよ。まあ、試合を見ればわかるんじゃねーか」
「向こうが手の内を見せてくれるといいがな」
「おっと、噂をすればだ」
「やっほー、すごいねミウラちゃん、相手は都市本戦3位にもなったことのある実力者だよ。それを倒すなんてすごいすごい〜」
「すごいしかいえねーのかよヴィヴィオは、ボキャ貧かっての」
「えー、だってすごいじゃない冬美ちゃん。対戦相手はアインハルトさんの練習相手でもあったんだよ」
「そうですね。私も、初めて対戦したときには、20連敗した相手でした」
「午後からは私たちも試合があるんだよ、よかったら見ていってね」
「うん、師匠からも見るように言われてるし、しっかり見させてもらうよ」
「ありがとう、応援してよね」
「応援といえば……あのおまんじゅうっ！　なんで劇辛まんじゅうなんか混ぜてるんだよ」
「えー、おもしろくなかった？　ロシアンルーレットおまんじゅう。コメディお菓子として有名だって聞いたんだよ」
「あんなもの師匠に食べさせようとするな、ボクが食べたからよかったようなものの……」
「あれ、ミウラちゃんが食べたんだ、ごめん、ザッフィーかヴィータお姉ちゃんが食べるものだとばっかり思ってたんだよ」
「冗談は時と場合を心得てやるものだと言いたいところだが……あれでミウラの緊張が解けたのは事実だな」
「ま、感謝はしてるぜ」
「ありがと、ヴィータお姉ちゃん、ザッフィー」
「えと、冬美ちゃん、どうしたの、硬い顔して」
「ん、ちょっと考え事をしててな」
「ふふ、手の内をどの程度見せるか考えておられたのですね」
「エミー、手の内ばらすようなこというなの」
「手の内を見せるとか見せないとかじゃなくて、全力で行かないと勝てないんじゃないの？　相手はエリートランクなんだよ」
「全力を出すにせよ、作戦っていうものがあるんだよ。……どんな作戦で戦うか決めないと、戦いようもないからな」
「えー、一回戦突破すればいいんだからヴィヴィオの得意な技を使いまくって全力でいこうよぉ」
「……いや、大人モードは禁止」
「けちー、冬美ちゃんのウルトラけち〜」
「ま、手の内さらすようなまねはしたくなかったんだけど、ミウラさんはヴィヴィオの友達ですから
　特別に、これが高町ヴィヴィオだっていうのをお見せしますよ」
「じゃ、大人モード〜」
「あれ使ったら高町ヴィヴィオじゃないだろ」
「えー、あれが楽しみなのに〜」
「あれは後のお楽しみにとっとけ」
「うー、わかった、ミウラちゃんとの戦いにとっとく」
「最初から勝てるつもりなんですね」
「ま、高町ヴィヴィオの全力を使えば、負ける相手じゃないはずですから」

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昼休憩も終わり、午後の部が始まりました。
ヴィヴィオの友達も、順調に勝ち上がってきてるようです。

「エミーちゃんは毎回判定勝ちだよね、なんで判定勝ちにこだわるの？」
「せっかく強い方と当たるんですもの、そのすべてを吸収しなければ、もったいないですわ」
「さすがエミーちゃん、私は全力で戦わないととても勝てる気がしないよ」
「そういうヴィヴィオの番だぜ、作戦は今言ったとおり」
「いーのかなあ。なんかぱくりっぽいんだけど……」
「ぱくりだろうがなんだろうが、あたしを信じろ、それで勝てるって」
「うん、信じる、とりあえず一回戦を勝てばノルマは達成だよね」
「ミウラ相手には全力でやれよ、友達相手に手抜きは失礼だからな」
「わかったよぉ。とにかくこの試合は、絶対に勝つからね」

ヴィヴィオは、こっちに向かって手を振ります。

「ミウラちゃん、絶対に勝つからね、来週は一緒に試合しようね〜」
「油断しないでくださいね！」

ヴィヴィオは、わかってるという風にうなずきます。

でも、手の内を見せるといいますが、いったいどんな戦いをするというのでしょう。

「試合はじめ！」
「ライチェントゥークス、魔力回収プログラム、ドライブ」
『了解です、我が主』

試合開始の合図と同時に、魔力回収プログラムをデバイスに動作させます。
しかし、それでは一気に攻め込まれて身動きがとれないまま攻撃を受けるはず……

「川崎流奥義一分の見切りっ！」

ヴィヴィオは、魔力回収はデバイスに専念させ、自身は、かわすことに専念するようです。
なるほど、これなら収束魔法の欠点、収束中動きが止まることを回避できます。
しかし、それで十分な魔力が集められるんでしょうか。それに、回避に専念するといっても
攻撃してこない相手だとわかればかさにかかって攻めてくるんじゃないかと思うんですけど。

「よくみとけ、すぐれた動体視力と、優秀なボディバランス、そして攻撃をおそれない勇気によって
　必要最小限度の動きで相手の攻撃を紙一重でかわす、あれがヴィヴィオの得意技、川崎流奥義、
　一分の見切りだ。おまえも攻撃が単調になったら、ぜんぶあれでかわされると思っておけよ」
「はい、ヴィータさん」
「そして、……来るぞ」
「師匠、何が来るんです？」

「これがヴィヴィオの全力全開！　スターライト…ブレイカー！」

今のはいったい？……まるで星煌刃のように足から魔力光がほとばしると
ガードの上から完全に相手を吹き飛ばしてKOした？

「やったあ、ノルマクリア〜」
「はしゃぐなヴィヴィオ！　ガードの上からごり押ししただけじゃねーか。
　崩すとかかいくぐるとかカウンター当てるとか、なんかもう少しやりようがあっただろうが。
　あれじゃただのパワープレイだ。実力見せるっていいながら全然実力見せてねーよ。
　すいません、なんか実力見せるっていいながら、つまんないもの見せちゃって。」
「あはは〜まあ、勝てば官軍ってことでいいじゃない」
「えと、……ヴィヴィオ、今のはいったい？　ヴィヴィオも抜剣を練習してたの？」
「ううん、収束魔法はなのはママから習ってたけど、抜剣はミウラちゃんが使うのを見るまで知らなかったよ。
　見よう見まねでやってみただけ。だけどすごい威力だね、私、びっくりしちゃった」
「……見よう見まねで、あの完成度……」
「だから、収束魔法の練習はしてたんだってば。見よう見まねなのは足で撃つことだけだよ。
　手で打つ練習は、スバルお姉ちゃんのディバインバスターでやってるから、その応用、そんな難しくないってば。
　ミウラちゃんだって、すぐできるって」

……すぐできる、訳がない。
もしかしたら、ヴィヴィオのスターライトブレイカーは、ボクの星煌刃より完成度が高いかもしれない。
これが……高町ヴィヴィオの……実力。
一週間後、ボクは、この人と、つまり、少なくとも、今の自分を間違いなく超えてる人と、戦わなければならない。

 

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