ミカ姉ぇ……ミカヤさんの試合がもうじき始まるな。相手はミウラ・リナルディか。今回がはじめてのインターミッドとはいえ
エリートコースまで上がってきたんだ、実力は本物だろう。ちょっと見に行ってくるかな。

「おーい、ジーク、ミカ姉ぇの試合があるぞ、見にいかねぇか？」
「いや、あたしはいいよ。ここで柔軟でもやってる？」
「そういわねぇで見に行こうぜ。なんか今年は面白いものが見れそうな予感がするんだよな」
「いや、いいよあたしは、ミカさんには合わせる顔あらへんし、それなのにあたしが応援しに行くのもなんか違う気がするんよ」
「あれは試合だろ。黒白つけるのは仕方ないことだっての。それにあたしは応援って言ってないぜ。おもしろそうだから見に行こうっていってるんだよ」
「けど……」
「あー、押し問答してると試合がはじまっちまう、おまえら、問答無用だ、ジークを連れて行くぞ」
「へい、リーダー」
「あ、こらちょっと」
「素人相手に暴れるのはなしですぜチャンプ」
「あーおろしてぇな」

てなわけで、ここは試合会場。
１２０００LP持ちの4分4ラウンド。ライフ数が多い分、一撃必殺をねらうにはちょっと苦しいかもしれないな。

「お互い気合いが入ってるのがわかるだろ」
「ミカさんも例年以上に気合い入ってるなぁ。けど、相手の子、なんか勝算あるんやろか」
「あの八神家の秘蔵っ子らしいからな。なんか考えはあるんだろう。ミカ姉ぇも、弱点ないわけやないし」

ゴングが鳴る。
ミカ姉ぇは、居合いの定石通りに待ちかまえる。相手の子〜ミウラ〜は、真一文字に突っ込んでいく。

「リーダー、あの子いきなり自爆攻撃ですかい」
「いや、あの子が勝つチャンスがあるとすればあれしかない」
「どっちにせよ、飛び道具がないなら、ミカさんの間合いの内側に入り込むしかないんや。けど、あの子にそれができるかなあ」

それができるかどうか、答えはすぐに出た。

−天瞳流抜刀術−月輪〜水月二連！

いきなり場外へとミウラは吹き飛ばされた。

「ふゅー、一度に二発、まともにくらい込んでましたぜリーダー、これじゃ一撃必殺でミカさんの勝利じゃないですかね」
「……どうかな、あの子、ああみえてミカ姉ぇの攻撃を防御してたからな」
「どれだけLPを残してるかやな。けど、様子見の突進へのカウンターに１０，０００以上の打撃を与えるとは、さすがミカさんやなぁ」
「様子見の突進なんですか、あれで」
「ガードはしっかり固めてたぜ。そうでなければ、おまえらの言うとおり、一撃轟沈してた」

ミウラは、場外から立ち上がってきた。

「大丈夫、まだやれるね、スターセイバー」
「ALL RIGHT」

「リーダー、あの子、まだやれるつもりみたいですけど、大丈夫なんですかね」
「大丈夫、っていうには厳しいんやないか。あと一回まともに食らったらそこで終わりだろ」
「どうかな」
「ジーク？」
「あの子、十分強い、ミカさんはそれに気づいてるから慎重になっている。
　あの子の目はまだ死んでない。このラウンドで、ミカさんに勝てるつもりでいるんだ」
「このラウンドで勝てるつもりでいるって？　いったいどうやって？」
「何か、切り札はあるんやろな、たぶん」
「切り札だけじゃ足りない気がするけどな」
「リーダー、あの子が動きますぜ」

そう、ミウラが仕掛けた。

一瞬で間合いを詰める。この踏み込みの早さ……なるほど、天瞳流の攻撃の間合いの外ぎりぎりから、飛び込むことができるわけか。
最初の攻撃を受けたことが、この攻撃の基礎になってるってことか。
クロスレンジに入れば抜刀術もそう簡単に効くものじゃない。

「ミカ姉ぇの動きが鈍ったな」
「うん。ミカさんはスピード重視で装甲はほとんどつけてへん。密着状態で格闘型の打撃を食らうのはきついやろな」
「けど、これだけならLP差のごりおしでミカ姉ぇが勝てるやろ。ミウラが勝つにはまだプラスアルファが必要じゃないかな」
「それはそうやなぁ。なんかすごい必殺技がない限り、あの子はかてんやろ」

そう、ミカ姉が間合いを開くために小太刀でなでるだけで、ミウラのLPは８００削られた。
双方のLPは、ミカ姉ぇ８２００，ミウラが８００、これならなでるだけでミウラは落ちる。

「抜剣」

ミウラがそうつぶやくと、魔力がミウラの周りに集中していく。

「おもしろい、収束魔法か」

ミカヤもそうつぶやく。

「だからインターミドルは楽しい、思いもよらぬところで君のような強敵に出会うことができる」
「ありがとうございます。ボクの全部、ぶつけさせていただきます」

「な、きてよかっただろジーク、おもしろい試合になるって」
「確かにおもしろい試合になったなぁ。どこに原石が転がってるかわからんもんや」

ふと、サインをねだってきたあの子達のことを思い出す。もしかしたら、あの子らと本当に当たることになるかも、なんて思ったりもする。
そのときには、ミカ姉ぇみたいに、わくわくした戦いになるんだろうかな。

 

 

---

 

前へ　戻る　次へ