めりかるうぃっしゅ う゛ぃう゛ぃっど
〜応援 エミー＝シュミット〜
選考会から一週間が経ちました。
高町さん、リオさん、コロナさん、アインハルトさん、ミウラさん、そして私も含めて
初出場組は順調にスーパーノーヴィスにエントリーされました。一回戦を勝てば、エリート組と
戦うことが出来る位置に当たります。
ルーテシアさんも、当然のように選考会で好成績を残された様です。
高町さんから、スーパーノーヴィスエントリーのお祝いということで、ケーキを頂きました。
ケーキは、桃子おばさまの監修で、高町さんご自身がお作りになったそうです。
全員分用意されているので、おいしく頂きました。ミッドと地球が離れているので
冷凍バターケーキになるのが残念だと、高町さんのビデオレターにありました。
もちろん、こちらからもビデオレターをお送りさせていただきました。
言うまでもなく、本番に向けての練習も怠らずに行っています。
「アインハルトさん、今日はどういったご用件でしょう」
「ミカヤさんはご存じですか？」
「ミカヤさん？ 確か、アインハルトさんが稽古に出かけられていた方でしたね」
「ええ、そうです。そのミカヤさんから、見せたい物があるから来るようにという
話でしたので、是非エミーさんにも一緒に来ていただきたくて」
「そうなのですか、では、ご一緒いたしましょう。ですが、なぜ私を誘ってくださるのですか」
「エミーさんでしたら、私の見落としたことも、ごらんになれるかと思いまして」
「それは買いかぶりすぎですわ。私の能力といえども、見たことがそのまま出来るように
なるわけではないのですから」
「それでも、ミカヤさんが、わざわざ私に見せようというのですから、可能な限り
それを吸収したいと思うんです」
「わかりました、私の出来る限りのことは手伝わせていただきます」
ミカヤさんの指定された場所は、ミッド郊外にある廃車置き場でした。
ミッドチルダの文明レベルは、高町さんによると、第９７管理外世界とほぼ同じなのだそうです。
ですから、第９７管理外世界にあるものは、たいてい存在します。廃車置き場もそう。
そこには、宙づりにされたバスと、バスを宙づりにしている重機、そして、さやに収められた
刀をもつミカヤさんが待っておられました。
「ミカヤさん、お招きありがとうございます」
「ミカヤさん、こんにちは」
「こんにちは、アインハルト、エミー」
「見せたい物とは、一体なんなのでしょうか、ミカヤさん」
「ん、まあ、ちょっとした、試し切りをな」
「試し切りとは、まさかあの大型バスをきるというのですか？」
「そのまさかだ」
「……」
「信用していないな」
「刃渡りからして足りてないように見受けられますが、それで切れるのですか？」
「エミーは鋭いな、だが、切れる。天瞳流抜刀居合術とは、そういう技だ」
「魔力で切るなら切れないことはないと思いますが、それでも簡単ではないですよ」
「まあ、論より証拠だ。……おじさん、お願いします」
「あいよ」
「ぶつけるんですか」
「その方が斬りやすい」
２台の重機が、バスを水平にして安定させる、それからいったんミカヤからに近づけるようにゆらし
それからミカヤから遠ざかるようにふりをつけると、ミカヤにぶつけてくる。
次の瞬間。
バスは真っ二つに斬られていた。
”−−天月・霞”
「……ほとんど魔力を使わずに、こんなことが出来るなんて……」
「刃渡りが足りないとか、そういう問題ではありませんでしたね」
「おじさん、ありがとうございました。おかげでいい居合い斬りが出来ました」
「ふふ、魔力だけがインターミッドで物をいうわけではない、ということだ」
「ありがとうございます、すごすぎて参考にできるかどうかわかりませんが、勉強にはなりました」
「……どうした、アインハルト」
「刀は、刃こぼれとかしてないんですか」
「ああ、手応えから言えば大丈夫だった。一応確認してみるか？」
「ええ、お願いします」
確かに、ミカヤさんの言うとおり、刀は刃こぼれひとつしてませんでした。
これが天瞳流……世界はまだまだ広いのですね。
「これでは、レベル３のデバイスなしで参加しては命がいくつ合っても足りませんわね。
私の友達が悔しがるわけですわ」
「友達？」
「川崎冬美、川崎流格闘術の師範代ですわ」
「格闘術の師範代か、こんど、一度会ってみたいものだな」
「私と同じ１０歳で、魔術師ではありませんわ」
「魔術師ではなくてもいい、１０歳で師範代なら、相応の実力の持ち主なのだろう」
「ええ、それはもちろんですわ」
「あの、時間ですから……」
「もうそんな時間か、では、そろそろおいとまするとするか」
そのまた翌日、インターミッド、スーパーノーヴィス予選会がありました。
私たち、新人組は、みんなKOで勝ち進むことができました……といいたいところですが
ミウラさんは、なぜか判定にまでもつれて、ぎりぎりの勝利になってました。
「ミウラちゃん、あんな弱くないはずなのに、なんであんなことになっちゃったんだろう」
「緊張のしすぎだな、ヴィヴィオだって緊張がほぐれてるのに、なんであんな緊張しちゃってるんだろう。
明日はエリート組とやりあうっていうのに、あんな緊張してちゃ勝負にならねーよ」
「冬美ちゃん、なにか、ミウラちゃんにしてあげられることってないの？」
「ゲッコウ、してあげるもなにも、あたしら、一応は敵同士なんだぜ、敵に塩を送るったって
応援ぐらいしかしてやれることもないよ」
「……応援ぐらいで大丈夫でしょうか」
「どういう意味だよアインハルト」
「次のミウラさんの相手、ミカヤさんなんです」
「ミカヤって……アインハルトの稽古相手の、あのミカヤ？」
「ええ、そうです？」
「……大丈夫かよ。あんなのに苦戦してるようじゃ、とてもじゃないが
勝てるわけがないと思うぜ」
「……そうだ、ヴィヴィオ、お菓子のさしいれしてあげる☆
笑顔の魔法のお菓子で、ミウラちゃんの緊張をほぐしてあげるね」
「笑顔の魔法のお菓子って、ヴィヴィオ大丈夫かよ、そんな器用なの作れるのか？」
「じょぶじょぶ、ちゃんと作れるんだからっ」
「まあ、不出来で笑われるっていうんだったら、確かに役には立つかもな」
「あーひどいよ冬美ちゃん……」
「けど、この前送ってくれたバターケーキはおいしかったよな、コロナ」
「うん、おいしかったよヴィヴィオちゃん」
「えへへ、ありがとコロナちゃん、リオちゃん、だけど、今回はそういうのとも違うから」
「じゃ、どんなのを送るんだ？」
「んーと、言っちゃうと魔法が解けるから秘密」
「秘密なんだ」
「うふふ、高町さんにも、秘密はありますものね」
「あー、エミーちゃん、言っちゃだめだよ」
「ええ、わかってますわ」
そして、そのまた翌日。
ミウラ選手の控え室には、何もしらない月光さんが、ビデオレターと一緒に
差し入れを持って行くことになりました。
「え、えと、これ、ミウラ選手以外のセコンドとか応援の人のためにどうぞって
ヴィヴィオちゃんからの差し入れです。選手の人に食べさせると、変なこと
疑われるかもって冬美ちゃんが言ってましたから……けど、笑顔の魔法は
必ずミウラちゃんにも伝わるからって……じゃあ、よろしくお願いします」
「笑顔の魔法？ ヴィヴィオのやつ、一体何を持ってきたんだ？」
「ふむ、魔力がこもってるわけでもないようだが、一体何があるというんだろう」
「お菓子は４つ入ってるみたいだな。ザフィーラ、２つ食うか？」
「いや、俺は１つでいい、ミウラ、一つ食ってみるか？」
「い、いえ、緊張で何も食べられないです」
「そういうな、一つぐらい、食っておけ、緊張がほぐれる。ヴィータ
とりあえず、毒味で一つ食え」
「あたしが毒味役かよ……まあ、いいけど……ん、うまい、あげ饅頭だな、こりゃ。
ヴィヴィオの奴も結構腕を上げたようだな」
「……そうだな、うまいぞミウラ、食っておけ」
「あ、はい、じゃあ一口だけ……うわあ」
「ど、どうしたミウラ」
「み、水、水〜〜」
「え？……あたしらが食べたのはなんともなかったのに」
「……ビデオレターがついてると言ってたよな、それに謎解きがあるかもしれん」
『えへへ……ロシアンルーレット饅頭だったんだけど……ちょっと悪趣味だったかな、ごめん。
でも、緊張はほぐれた？ 本当のミウラちゃんの実力は、スーパーノーヴィス戦でみせた
程度じゃないでしょ。本当のミウラちゃんの実力を見せて、次の試合でやりたいな。
……そうじゃないと、ヴィヴィオじゃ勝てない……って、それじゃヴィヴィオが
ただの卑怯者か。ヴィヴィオも次の試合、全力で行くからね、ミウラちゃんも
全力でがんば！』
「ロシアンルーレット饅頭かよ、悪趣味なもの持ち込みやがって」
「本来俺か、ヴィータの、どちらかが食べてミウラを笑わせるつもりだったのだろう。
ミウラが食べたのが予定外だったようだな」
「うぅ……まだ口の中がひりひりする……ヴィヴィオの奴、ぜったいこの借りは返すんだから〜」
「その意気だぜミウラ、そのためには、まずこの試合勝たないとな」
「うん」
同じ頃、私はアインハルトさんと一緒に、ミカヤさんの控え室の前にいました。
「アインハルト、エミー、こんな所にいていいのか？」
「ええ、試合は午後ですから、次の試合、油断しないようにしてください。
スーパーノーヴィス戦はあんな風でしたけど、本来のミウラさんの実力は
あんなものじゃないはずですから」
「わかっている。……あんな緊張しまくった状態で、あれだけのことが出来るなら
本来の実力は、その数倍であることぐらいな。
心配するな、……予選を駆け抜け、……出来れば、お前達とも当たりたいものだ。
それまで、お前達が負けるんじゃないぞ」
「はい」
ミウラとミカヤの対戦の時がやってきた。
方や、あがり症のルーキーながら実力は十分。
方やインターミッドに７回出場うち５回本戦出場の実力者。
この対戦の行方や如何？