ここは、ミッドチルダにある、インターミッド予選会場です。

何千人という魔導師や格闘家が、ミッドチルダ魔法戦技の頂点を目指して戦う場です。

ヴィヴィオちゃんも、見事に選考試合に勝つことが出来ました。勝ち方でも

ポイントがあって、良い勝ち方をすると、トーナメントでちょっとしたシードポジションが

もらえるんだそうです。けど、何千人もいる中での戦いですから、ちょっとシードされたぐらいでは

そう勝ち抜くのも楽なことではないですよね。

 

インターミッドの都市予選で優勝するのって、甲子園を予選から始めて、優勝するぐらい大変なんでしょうか。

そういう風に思うと、ものすごく大変なことな気がしてきました。ヴィヴィオちゃん、大丈夫かな。

あれだけ特訓はしてたけど、他の人も同じぐらい特訓はしてるはずです。まだ10歳のヴィヴィオちゃんでは

この試合に出てくる、ティーンエイジャーの選手の人たちとは、経験からして違うのではないでしょうか。

 

あ、あちらでは、リオさんが試合をやってます。コロナさんは、もう試合が終わってて、勝ち抜いたみたいでした。リオさんも、実力差がはっきり出て、余裕で勝利してます。すごいですね。次はアインハルトさんですか。

相手は槍使いのようです。槍を構えて・・・え？　私の目には何が起きたか把握できませんでした。

一瞬のうちに、アインハルトさんの踏み込みで、槍ごと相手の選手の方が吹き飛ばされてます。

 

「ふーん、あれが噂の覇王様ってやつか。ミカヤの奴が仕込んだだけのことはあるんだな」

「あの、あなたは？」

「あー、リーダーを知らないとはモグリだなてめぇ」

「リーダー？　あの、すいません。わたし、こちらの世界にはくわしくなくて」

「なんだ、田舎ものなのか」

「ええ、第97管理外世界から来たんです」

「管理外世界からのお客さんか、これは珍しいな、ね、リーダー」

「おう、そうだな。あたしは、ハリーっていうんだ、よろしく」

「ハリー、っていうと・・・5組の第1シード選手でしたっけ」

「そう、その5組の第1シードだ。ところで、管理外世界からミッドっていうのはほんと

　珍しいじゃないか。一体だれの招待でこっちに来たんだ？」

「誰の……っていうわけじゃないんですけど、ヴィヴィオちゃんが出場するんで

　その応援に来たんです」

「ヴィヴィオって？」

「高町ヴィヴィオ……管理局の高町なのは一尉の娘なんです」

「高町……高町って、あのなのはさんの？」

「管理局の白い悪魔の娘まで出場してるんすか、それはまた……で、結果は？」

「なんとか選考会は勝つことが出来ました。本人は一回戦勝てればいいなんていってますけど

　冬美ちゃんはもっと上をねらってる見たいです」

「冬美ちゃんって？」

「私の友達で、川崎冬美っていうんです。冬美ちゃんは川崎流の師範代なんですけど

　魔法使いじゃないから、この大会には出られないんです」

「ま、管理外世界じゃ魔法が使えないのが普通だからな、仕方ないか。

　その、高町ヴィヴィオって奴は、何組なんだ？」

「4組だったとおもいます」

「じゃ、あたしとはあたらないか。まあ、何年か先には、あたしと当たるところまで

　強くなってるようにがんばれっていってやってくれよな」

「はい、そうですね。……けど、冬美ちゃんは、今すぐでも当たれるぐらいに強いつもりかも」

「その、冬美ちゃんっていうのは、よっぽど大言壮語癖があるんだな」

「ええ、遠距離射撃戦とバインドをなのはおばさんに、中距離武器戦をフェイトおばさんに、

　近接格闘戦を冬美ちゃん自身が仕込んだ上に、格闘戦も出稽古したから、どの距離でもひけは

　とらないはずだって言ってました」

「はは、コーチだけは一流だな。ほんと、何年か先が楽しみだぜ……と、あそこに見えるは

　ヘンテコお嬢様じゃねーか。なんだ、ヴィクターの奴も一緒か」

「ヘンテコお嬢様にヴィクターさんですか？」

「誰がヘンテコお嬢様ですの、ポンコツ不良娘」

「ったく、今年は選考会から参加なのかヘンテコお嬢様」

「まったく、少しは組み合わせぐらい見てなさいよ、私は6組の第一シードですわ」

「そうかい、ま、組み合わせなんて興味ないからな」

「ずいぶんと余裕ですことね」

「ま、雑魚はアウトオブ眼中ってやつ？」

「誰が雑魚ですの誰が」

「反応するってことは、自覚はあるんだな」

「……で、あなたはちゃんと勝ち上がってきたんでしょうね」

「あたしは5組の第1シードだっつーの」

「あの……二人とも」

「なんだ、月光ちゃん」

「第1シードって、どれくらいすごいんですか？」

「……あはは、そういえばそこから説明しないといけなかったか」

「卑怯ですわよ、子供を味方につけるなんて」

「子供はリーダーの純粋さを見抜くんスよ」

「簡単いうと、シードにもいろいろランクがあるっていうことですわ。

　完全ノーシードのノーヴィス。軽くシードされているスーパーノーヴィス。

　確定的にシードされてるとまあいえるエリート、その中でも上位に与えられるスーパーエリート。

　そして、どの組でも1人しか存在しない選ばれた最強のシード選手、それが第1シードですわ」

「そうなんだ。つまり、ものすごく強い選手ってことですよね」

「まあ、そういうことになりますわね」

「よき肉体によき精神が宿るとはかぎらねぇけどな、ヘンテコお嬢様みたいに」

「ポンコツ不良娘だけには言われたくないですわ」

「あぁ。あんまり気取ってると、こんどは予選落ちしかねないぜ、なにせ今年の新人はすげぇのがそろってるからな」

「それはこちらの台詞ですわ。あなたの組にも、なかなか楽しそうな選手がそろってるみたいじゃないの」

「……けど、覇王っ娘が来てるのは、うちの組みたいやな」

「そうみたいね、ジーク」

「覇王っ娘って……アインハルトさんのことなんですか？　アインハルトさんって、そんなに強いんです？」

「強いかどうかはわかりませんけど、話題の人には間違いないですわ。覇王インクヴァルドの

　記憶と戦技を受け継ぐ娘。是非ともこの手で倒したかった」

「ま、絶対無理だな、ジークがまけるところは想像できない」

「うちはそこまで強いことはないよ。途中棄権してるようじゃまだまだや」

「それはジャンクフードなんて食べてるからでしょ」

「ちゃんとしたものもたべてるんよ」

「それならいいですけど……たまにはうちに遊びに来なさいな。おでんぐらいごちそうするわよ」

「へーきや」

「……」

「あら、仲良くお話ですの？」

「あ、アホのエルスだ」

「誰がアホのエルスですか。それにしても、珍しいですわね。

　ハリーさんとヴィクターさんが仲良くしてるなんて」

「まあ、な。お客さんの前で喧嘩なんてしてられんし」

「ポンコツ不良娘の方が喧嘩を売ってこなければ、私はいつでも仲良くする用意はありますのよ」

「その言い方がすでに喧嘩を売ってるような気もしますけど、、、お客さん？」

「初めまして、エルスさん。私、第97管理外世界から来た、中島月光っていいます」

「ナカジマ・アカリ？」

「ええ、月の光と書いてアカリって読みます。漢字を使わない国の人には、ちょっと

　説明するのに手間どっちゃいますね」

「そうなんですか。……管理外世界からよくいらっしゃいました。

　インターミッドをごらんになるのは始めてですの？」

「はい、初めてです」

「どう？　感想は？」

「すごい人数の大会なんですね」

「ふふ、会場はここだけじゃないですからね」

「ここだけじゃないんですか？」

「ええ、ほかにも会場があって、そこでも試合が行われてますよ。

　何日もかけて、ミッドチルダ代表の3人を決めるの。

　今年こそは、私もその3人の中に入るつもりよ」

「ジークと、あたくしと、あと一つ枠があるから、精進しだいですわね、エルスさん」

「そうだな、俺とジークとあと一枠あいてるもんな」

「……やっぱり、あなたとは仲良くできそうにありませんわね」

「……最初にメンチ切ってきたのはそっちだぜ」

「二人とも、お客さんのまえで喧嘩はあかんよ」

 

ぷるるるるるるるる・ぷるるるるるるるる。

 

「あれ、携帯が鳴ってる。マリエルさんからミッドチルダ対応にしてもらったから誤動作じゃないよね。

　誰からだろう……はい、中島です」

『はーい、こちらルーテシア、月光ちゃん、今大丈夫？』

「はい、私なら大丈夫ですけど、ルーテシアさんは、選考会は大丈夫でした？」

『選考会は楽勝。それよりすごいことがあったんだけど』

「すごいこと？」

『魔女よ魔女。本物の魔女が大会に登場したの』

「本物の魔女って……みんな、この大会に参加してるのって、魔法使いですよね」

『そういう意味じゃなくて、術式が本物の魔女の魔法使いが現れたのよ。それでね、対戦組が

　私と一緒なの。それってすごくラッキーじゃない。本物の魔女と対戦できるなんて』

「魔女って、そんなに珍しいんですか」

『すごく珍しいのよ。ただでさえレアなうえに、大会に出てくる魔女なんて滅多いないんだから』

「なんだかよくわからないけど、ルーテシアさんが興奮しているのはよくわかりました」

『シスターシャッハも順当に勝ってるってみんなにはつたえといて。チームナカジマやヴィヴィオちゃんは

　どう？ちゃんと勝ってる』

「もちろん。5人ともちゃんと勝ちましたよ」

『やっぱり、特訓の成果が上がってるわね。私も負けてられないわね。帰ったら対魔女戦の準備をしなきゃ。じゃ。』

 

「今のは、何の電話だったんだ？」

「ルーテシアさんからです。本物の魔女と対戦出来るって喜んでました」

「へー、本物の魔女か、それはまた珍しいものがみれそうだな」

「試合会場が別だからみれへんよ」

「録画をみればいいだろ」

「生で体験してこそ本物だしな。今年は活きの良い奴がそろってるから、予選もちゃんとみときたいしな」

「あら、予選落ちの危機感をもってらっしゃるの」

「そういうお前はどうなんだ？　え？　ヘンテコお嬢様」

「私は、ありをとるにも全力を尽くす主義ですのよ」

「なら、そういうことだ」

 

トップレベルの選手の人たちは、気さくな人たちでした。

けど、ひとたび試合になれば、同じぐらい油断のない人たちでもあるのでしょう。

ヴィヴィオちゃん達は、この人達相手に、ちゃんと戦いが出来るのでしょうか。

 

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