めりかるうぃっしゅ う゛ぃう゛ぃっど
〜格闘家見習い エミー＝シュミット〜
「あー楽しかったね、エミーちゃん」
「そうですわね、高町さん」
今、私たちは、帰りの時空航行艦の中にいます。
楽しかった4日間の合宿も終わり、明日からはまた日常が帰ってきます。
「ちょうどいい息抜きになったかな。明日からまた仕事〜」
「けど、仕事があるだけいいよ、あたしは訓練メインで出動は、たぶんなし」
「あんたは出動がない方が世の中が平和でいいんじゃない、スバル」
「そういうティアナも、仕事がない方が平和な職業じゃない」
「あたしは、犯罪捜査がなくても、書類整理とかいっぱい仕事があるのよね。
事件メインの執務官になったはずなのに、なんでデスクワーク主体なんだろう」
「それだけ、世の中が平和だってことじゃないの」
「いえ、フッケバイン捜査は、それだけでは済む問題ではないのです」
「そーだよな。すぐ姿を消されるから、こっちはいつも後手後手踏んでる」
「先回りできればいいんですけど……」
「いつも、事後の現場検証ばかりだからな」
「それはわかってるわ、だけど、先回りするにもね。依頼ルートを見つけられれば
先回りできるのかもしれないし、それが無理でも、一時的に出あれ被害を
食い止められるのかもしれないけど、それすら無理だもの」
「G13型トラクターの購入依頼を探したら？」
「ヴィヴィオ、デューク東郷じゃないんだから」
「え、けど、依頼って3行広告に出すのが基本ってシャーロック・ホームズも言ってたよ」
「三行広告ね、まあ、それも当たってみるわ」
「わーい、少しは役に立った〜」
「主ティアナ、しかし、それはすでに調査の対象にしてるのでは」
「なんだ、とっくに調べてたのか、残念」
「調べてないわけないだろ。ヴィヴィオが思いつくぐらいのことはみんな思いついてるって」
「そこまで追い打ち掛けなくていいよ冬美ちゃん……」
「そういえば、ヴィヴィオちゃんも、インターミッドに出るんだよね。
インターミッドって、どれくらいのレベルがあるものなんです？」
「それは私も聞いてみたいことでした。私たちの実力で、どの程度通用する物なんだろう」
「んー、聞いてもがっかりしないか？」
「そんなにインターミッドってレベルが高いんですか」
「私たちは参加したことないからわからないですけど、かなりハイレベルだとは聞いたことがあります」
「そうだよね。僕らは、自然保護官のお仕事がメインで、インターミッドとかは興味ないけど」
「エリオにキャロは、そうだよね。わたしも、インターミッドに出たことはないし」
「フェイトさんも出たことないんですか？」
「わたしと、フェイトちゃんは、ローティーンの頃は地球暮らしだったし
ハイティーンになってからは、管理局のお仕事が忙しかったからね」
「なのはママも出たことないんだ」
「そうだよ、ヴィヴィオ」
「それで、ノーヴェさん、がっかりしないから、教えてもらえませんか」
「そうだな……アインハルトとエミー陛下なら、ノーヴィス相手ならいい勝負が出来るだろうな。
けど、エリートクラス相手だと正直厳しい。まして、コロナ、リオ、ヴィヴィオの3人だと
エリート相手じゃ、手も足も出ないんじゃないか」
「へー、エリートって、時空戦艦を沈める奴が相手で楽勝ってレベルなんだ、そりゃ
化け物じみてるってもんじゃないな」
「ははは、そういう意味じゃないって。陛下が時空戦艦を沈めたのは、外部からの魔力供給ありの
前提でだろ。DSAAじゃ、外部からの魔力供給は禁止だからな。
それに、自分の体に負荷のかかる魔法を使うと、その分はてきめんLPの低下になって現れる。
その上に、生まれつきの頑丈さとかは無関係に、LP総量は決まってるし、試合会場も
超音速機動なんてやったらすぐ場外になるほどの大きさしかない。はっきり言えば、陛下にとっては
不利な条件がそろってるんだ」
「あの、ノーヴェさん、それ以前に、エリートとノービスと、どう違うんですか？」
「ああ、エリートとノーヴィスは、過去の試合経験と、スパーリングの結果で決まる」
「シード校と普通の学校の違いみたいなものなんですね？」
「まあ、そういう言い方も出来るかな。ともかく、地区予選で地区代表を決めて
地区代表から都市代表を決める。都市代表同士が集まって世界代表を決めて、世界代表同士の
対戦で優勝すれば、10代女子最強ってわけだ。まあ、何十万、何百万って参加者の中の頂点だから
そう簡単にはたどり着くわけがないけどな」
「何百万という中での頂点……」
「そう堅くなるなってアインハルト、初参加なら、感じをつかむだけでいい。
そこで負けるのも、勉強の内さ」
「だってさ、ヴィヴィオ。帰ったら大人とも混じって特訓するぞ」
「えー、私はパティシエさんのお勉強の方が大事なのに〜」
「なのはおばさんは出たことがないっていうんなら、お前が初の地球代表ってことだからな。
あんまり無様にまけられるとあたしが困るんだよ」
「え〜月光ちゃんからも何か言ってよ」
「あの、がんばって、一回戦は勝ってね、ヴィヴィオちゃん」
「あーん、月光ちゃんまで〜」
「師範代、今から特訓したら、どこまで強くなれますか」
「そりゃ、みんな今から特訓はするだろうから、勝ち抜きでどこまでってのはわからない。
ただ、特訓しなけりゃ、一回戦負けするのは確実だな」
「まずは初戦突破出来るだけの実力が身につくようにがんばります！」
「私も、ゴーレムに磨きを掛けないと」
「ふふ、私も負けてはいられませんわね」
「陛下は、見るのも勉強ですからね」
「だってよ、ヴィヴィオ、見るのも勉強なんだから、明日から大人組に混じって練習な」
「えー、明日から〜、相手はこどもなんでしょ」
「19歳まで出てくるなら、大人とかわんねーって、他流試合も含めてびしびし行くぞ」
「そこまで言うなら冬美ちゃんが出ればいいのに」
「あたしは、魔法使いじゃないから出られないんだってば。
地球代表の魔法使いとして頼むぜ」
「うー、まあ、一回戦負けしないようにがんばる」
「エリートコースの奴らに負けないぐらいの特訓メニューを作るからな」
「冬美ちゃん、エリートコースの相手って、アインハルトさんより強いんでしょ。
人間で十分対抗出来るのかな」
「対抗できるかどうかも含めて、地球代表じゃないか」
「あ、そか」
「そういうわけだから、がんばれよ、ヴィヴィオ」
「私も、師範代にはよく教わらねばなりませんね」
「陛下用の練習メニューもちゃんと考えておかないといけないですね」
「私は、……」
「アインハルトには、自分の流儀があるだろうから、ストライクアーツの型を
教えても仕方ないと思うんだよな。スパーリングパートナーを適当に
見繕ってくるから、それで何かをつかんでくれればと思うんだよ」
「はい、わかりました、お願いします」
それから、2週間が経ちました。
私達は、今まで以上のストライクアーツの練習量をこなしてます。
インターミドルまであと一ヶ月ちょっと、初戦突破は誰にとっても
最初の目標ですから、みなさん、相応の特訓を積んでおられるはずですね。
「アインハルトさん、おはようございます」
「おはようございます、エミーさん」
「今日は、アインハルトさんのデバイスを受け取る日でしたね」
「ええ、どんなデバイスが出来てるか楽しみです」
「おはよう、エミーちゃん、アインハルトさん」
「おっはよ、エミー、アインハルトさん」
「よ、全員そろったな」
「はい、師範代」
「……ん？ どうしたアインハルト、よそ見して」
「いえ、あそこで練習されてる方がちょっと気になって」
「ちょっと気になって？ ああ、ありゃミウラじゃねぇか」
「ミウラさん？」
「ザフィーラんとこで練習してる通い弟子だよ。
確か、今年のインターミッドで初参加なんじゃないかな」
「そうなんですか、結構出来そうですね」
「見ただけでわかるか」
「ええ、スパーを見てれば多少は……あんな遠い間合いから、何をするつもりなんでしょう」
なるほど、ミウラさんは、５ｍぐらいの間合いをとって、わらを巻いた棒杭に対峙してます。
サンドバッグじゃなくて、棒杭？空手の練習のようですね。
「…はっ！」
素早い踏み込み、そして勢いをつけての回し蹴り、一撃で棒杭は折れてしまった。
「ああ〜せっかくヴィータさんが立ててくれたのにまた折っちゃったよぉ〜」
鋭い一撃です、あれで初参加というなら、インターミッドにはどれだけの
腕自慢が集まるというのでしょうか。
「あ、そだ、インターミッドで思い出した、あたしたち、インターミッドの
砲撃番長にさっき出会ったんだよ」
「インターミッドの砲撃番長とは、どなたのことなんですか」
「あれ、エミーちゃんも一緒に見なかったかな。ほら、合宿の時の都市本戦ベスト８だった
ハリー＝トライベッカ選手だよ」
「その名前で思い出しましたわ。あの方、砲撃番長というあだ名なのですね」
「うん、思ったより優しい人だったよ。それでサインまでもらっちゃった」
「サインですか？……可愛い絵ですわね」
「うん、それは思った」
「エミーは、すごい選手に興味ないのか」
「そういうすごい方とは、当たるまで勝ち抜けるとは思いませんわ」
「ま、そっか。ベスト８なら、シードされてるもんな」
「……9年は、早く過ぎますよ」
「どうされました、アインハルトさん」
「いえ、まだ時間があると思ってる内に、20歳になってしまうのではないかと……」
「そんな先のことより、目先の試合だぜ。考えてもはじまらないだろ」
「そうですね、ノーヴェさん」
「はろー、エミー陛下にお友達のみなさん」
「あたしらはエミーのおまけかよ」
「あら、シスターシャンテ、お久しぶりです」
「陛下もお元気そうでなによりです」
「シスターシャンテも、インターミドル初参加だそうですね」
「ええ、そうですね。まあ、勝手に参加したってことでシスターシャッハには怒られたけど」
「けど、参加取り消しにはならなかったのですね」
「まあ、最後は許してもらったからOKってことで」
「せっかくだから、一手お手合わせ願えませんか」
「陛下には、一度見せた技が通用しないじゃないですか、見せられませんよ」
「……残念ですね、シャンテの技も覚えようと思ったんですけど」
「……いや、いいや、一勝負お受けしますよ、エミー陛下。
なにしろ、この技は”見えない”ですからね」
見えない技とはなんでしょう。興味があります。
インターミドル、化け物じみた腕自慢の集まるところのようですね。