めりかるうぃっしゅ う゛ぃう゛ぃっど
〜聖王 エミー＝シュミット〜
「さて、盛り上がって参りました模擬戦も最終第３戦を迎えております。
今回は、完全ランダムでのメンバー分けによるバトルロワイヤル戦。
メンバーは、紅組がなのは、ティアナ、エリオ、キャロ、コロナ、銀のシャマル、ノーヴェ、アインハルト、
白組がフェイト、スバル、リオ、ルーテシア、銀のシグナム、銀のヴィータ、銀のザフィーラ、エミー（敬称略）
審判は第二戦に引き続きましてメガーヌ＝アルピーノ、紅組担当が中島月光、白組担当が高町ヴィヴィオ、
解説はおなじみ川崎冬美、実況は私セインでお送りいたします。
今回は完全なくじ引きで決まった組み合わせですけど、どう見ます解説の川崎さん」
「どうみるって、どっちもけっこうバランスとれたいい組み合わせになってるんじゃないか。
ただ、収束魔法が撃てるメンバーが、紅組に偏ってるから、白組は紅組の砲撃に対抗する
戦術を何か考える必要があると思うぜ」
「ありがとうございます。今回は、ガチンコ勝負のバトルロワイヤル戦、フラッグ争奪戦と違って
お互いのつぶし合いが必須の戦いだけに、全く違った作戦を組み立てる必要がありそうです。
では、現場の月光さん、紅組の様子をお願いします」
「はい、紅組です。こちらは作戦参謀ティアナさんによって戦術が組み立てられてます」
「こっちの切り札は、なのはさんの収束魔法、相手の切り札は、おそらくルーテシアの
転送魔法になるはず。だから、できるだけ相手を密集させた状態で戦うのがこちらの基本になるわ。
理想は包囲戦、それが無理なら密集戦を維持すること。
後方担当が向こうの方が少なくて、こっちは後方要員が多いから、前線では数的劣勢になる可能性がある。
それを埋め合わせるのに、幻術を使って攪乱を試みる。火力はこっちが優位にあるんだから、撃ち合い
上等って考えで行くわよ」
「……だそうです。こちらからは以上です」
「はい、ありがとうございました。では白組の方の状況を、ヴィヴィオ陛下、お願いします」
「はい、こちらヴィヴィオです。白組は、エミーちゃんに何か考えがあるみたいです。
エミーちゃん以外の全員が分散した状態で前線に出て、収束魔法を撃たれる前に
数的優位で相手を押し切るのを基本にするようです。
けど、エミーちゃん、何を始めるのかな」
「はい、ありがとうございますヴィヴィオ陛下。さて、お互いの作戦タイムも終わったところで
試合開始の合図がありました。第三戦の開始です」
「さて、クリス、なのはさんにティアナさんの収束砲撃魔法に対抗しなければなりませんね」
クリスは、黙って頷きます。
「では、私も最初から、高町さんではありませんが、全力全開で行きましょうか。
クリス、魔力吸収開始」
全力で、空間の魔力を吸収していきます。これは、なのはさんやティアナさんも
行おうとしていることのはず。収束魔法の威力は、吸収した魔力と、自分自身の魔力の
合計ですから、出来るだけ空間の魔力を吸収しておくことが、勝負の分かれ目になります。
おなじ魔力値どうしなら、吸収量の多い方が勝ちます。それに、私の方が、なのはさんよりは
魔力値が低いですもの。どうしても、吸収開始は早くしなければなりません。
それに……まあ、なぜ聖王の魔力光が七色に輝くのか、その理由も見せなければなりませんわね。
紅組の方は、なのはさんを中心に、シャマルさん……ジンベルリッターのシャマルさんですが……
が、目の役割をしているようです。これでは、ごまかしはきかないでしょう。
しかし、７人全力で攻撃に出ている白組ですから、この状態ではなのはさんも魔力吸収に
集中は出来ないはず。……スバルさんとノーヴェさんは、直ちに1on1の戦いを始めました。
リオさんには、コロナさんのゴーレムが立ち向かっているようです。ルーテシアさんは
ティアナさんの幻術を破るのに専念しています。ジンベルリッターの……つまり
銀のシグナムさんには、エリオさんが対抗に出て参りました。ヴィータさんには、なのはさんが
センターガードとして射撃で牽制をいれています。銀のザフィーラさんは、地上に降りて
アインハルトさんと格闘を始めました。けど、これではフェイトさんがフリーです。
フェイトさんをバインドしようと、キャロさんががんばりますが、フェイトさんのスピードには
ついていけてません。なのはさんが射撃でキャロさんの援護に入ります。
でも、フェイトさんのスピードの方が一枚上！キャロさんにフェイトさんのスマッシュヒットが加えられます。
どうやら、後方支援タイプが多すぎて、パワーゲームに持ち込まれると紅組は不利なようですね。
私が出る幕はないのかもしれません。
「そうは行かないわよ。センターガードが二人いるんだからね」
ティアナさんのファントムブレイザーが、フェイトさんを包み込むように放たれます。
が、フェイトさんはこれを楽々回避。でも、それでフェイトさんは間合いが開きます。
その隙に、こんどはキャロさんがスバルさんをバインドにかかります。
スバルさんはバインドをかわそうとしますが、その延長線上になのはさんのディバインバスター重ね打ち。
スバルさんのLPも大きく削られます。しかし、こうやって戦っていては収束魔法の出番はないでしょう。
私の作戦は、必要ないということになるのでしょうか。
「さて、エミー陛下が開始位置から一歩も動かず魔力を吸収している状態で
紅組と白組は一進一退の攻防をつづけていますが、この状態をどう見ます解説の川崎さん」
「シャマルさんが実質戦闘要員でないのが紅組のつらいところみたいだな。
エミーの奴が遊兵になってるのに、それにつけこめてない。けど、シャマルさんだって
何か考えはあると思うぜ。ここから、何かやってくるんじゃないのかな」
「ですけれど、幻影を見破る能力は、幻影を使ってこない白組相手には
通用しないのではないでしょうかね」
「話に聞く、シャマルさんの能力からすれば、実力を隠してるってところじゃないか」
「シャマルさんにどんな実力があるというのか……あ、シャマルが地上に降りた。
普通にはしっているがスピードが遅い」
「あ、あの走り方は見たことがある。ヴィヴィオの入隊試験の時のだ」
「ヴィヴィオ陛下の入隊試験？」
「ヴィヴィオが機動六課に入るために、シグナムさん、ヴィータさんと
模擬戦をやったことがあるんだよ。あのときもあんな走り方だった。
ぱたぱたと遅いんだけど、遅い動きには理由があったんだよな」
「それはどんな・・・」
ザフィーラさんが、一瞬注意をシャマルさんに向けました。それで
アインハルトさんには十分だったようです。きれいな一撃がザフィーラさんにはいります。
のけぞったところを、シャマルさんがバインド、身動きとれなくなったところへ
アインハルトさんの一撃が入ります。見事なコンビネーションで１kill。
これで、こちらの数的優位はたちまち数的劣勢へと変わります。
けど、まだ私が動くタイミングではありません。私が動くとすれば
もう少し先、なのはさんとティアナさんが、動いた後でなければなりません。
「エミーの奴、平然とザフィーラさんが落とされるのを見てるけど、大丈夫なのかな。
これでアインハルトがフリーになった。次はリオが落とされるぜ」
「けど、飛行魔法の使えないアインハルトさんでは、空中戦の劣勢をひっくり返す力は
ないというのが見立てではないでしょうか」
「いや、数的優位さえ作れれば、紅組には切り札がある」
「そういえばそうですが、当たらなければ意味はない……」
なのはさんが、高度を急激にあげていきます。一体何を考えてるのでしょう。
これを追ってフェイトさんが追撃します。なのはさんとフェイトさんの一騎打ちが始まりました。
シグナムさんは、相変わらずエリオさんとの一騎打ち、スバルさんは、ノーヴェさんと
今のところLPで劣勢ながら、戦い自体は互角、ヴィータさんは、ティアナさんと
射撃戦を始めてます。しかし、だんだんとお互いの戦闘領域が狭まっては来ているみたいです。
これは……
「ルーテシアさん、転送魔法の準備を、多分、ティアナさんとなのはさんはあれをやるはずですわ」
「あれって何？アインハルト」
「説明してる時間が、とにかく転送魔法でこちらの出す座標へジャンプの準備を、
タイミングはこちらで計ります」
「了解、サポートは入れる……って、嘘っ、アインハルトに落とされた。
絶対リオの方に向かうと思ったのに」
「……仕方ないですね、自分で飛びます」
「ごめん、おねがい」
計算が狂いました、けど、これが決まれば白組は一発大逆転勝利のはずです。
「……よし、今」
「スターライトー……」
「……ブレイカー」
そう、収束魔法どうしをぶつけ合わせて魔力の爆発を作り出し、その爆発力で
みんなを吹き飛ばす。それがティアナさんとなのはさんがねらった攻撃です。
この爆圧で、なのはさん、なのはさんを追っていたフェイトさん、砲撃を相殺した
ティアナさん、地上で戦っているコロナさん、リオさん、アインハルトさん、そして
シャマルさん以外は、爆圧で吹き飛ばされて戦闘不能に陥ってしまいます。
ですが……
「あれは……」
「エミーちゃんも光の羽が使えるんだ……」
「エミー陛下から生えている光の翼はいったいなんでしょう、解説の川崎さん」
「あれも見たことがある、ヴィヴィオが使った光の羽だ、砲撃魔法の魔力を吸収して
それを自分のものとして使えるよう、一時的に羽の形にして蓄えておくんだ」
「そんな器用なことが本当に出来るんでしょうか。それではまるで魔力に対しては無敵……」
「そう、無敵なんだよ。エミーも、ヴィヴィオも……」
「こんどは、こちらの番ですわ。全員バインド……そして、高町さんの究極魔法
ヴァニシング＝イクスプロージョン！」
「全力全開の砲撃魔法を放ったことで動きのとまってしまったティアナに元々
動きの速くないシャマル、ゴーレム使いのコロナ、そしてアインハルトが
エミー陛下のバインドに引っかかった、そしてそこへ容赦なく、無数の光球が
現れるとそのすべてが爆発した。これでシャマル、コロナ、アインハルトの
3人は……え、アインハルトは無事、そして爆発で目のくらんでるリオを
アインハルトが襲撃する。
一方空中のなのはとフェイトは再びたたき合いを始めた」
「この勝負、フェイトちゃんと、私と」
「どっちが生き残るか」
「だね」
なのはさんとフェイトさんの戦いは、ますます激しさを増しているようです。
ですが、私がしなければならないことは、アインハルトさんと対決して、そして、勝つことです。
「空戦魔導師の定石通り、絨毯爆撃を使わせていただきます。
これに陸士のアインハルトさんは、どう対応されるおつもりですか？」
私は、空中から誘導弾を放ってアインハルトさんを攻めます。
アインハルトさんは、誘導弾をつかんで投げ返しますが
距離が十分に開いているので、再誘導して攻撃しかえすのはわけのないことです。
「……卑怯だとはおっしゃらないのですね」
「空が飛べるなら当然の攻撃方法だと思います。
ですが、これを破れないようでは、私の覇王流もそれまでということです」
「何か策があるというのですか」
「……覇王、断空覇！」
危ないところでした。直撃していればかなりのLPを削られたでしょう。
油断大敵とはこのことです。地上から空中への砲撃魔法を、アインハルトさんも持っている。
誘導弾では勝負がつかない。となれば……
「一手、お手合わせ願います」
「空中からの砲撃は使わないのですか」
「それで倒せるほど、柔なアインハルトさんではありませんでしょう」
「そのつもりです」
「そういうことです」
「では」
「いざ」
アインハルトさんとの立ち会いは、これで3度目です。
魔法なしでの戦いでは、アインハルトさんに一歩譲ってきました。
ですが、私も聖王を目指す身。そして、魔法ありでは、シスターシャッハと
互角以上に戦って来ました。格闘戦で遅れをとっては、シスターにも
申し訳がたちません。
アインハルトさんは、動きを止めてこちらの動きを待っているようです。
私も、動きを止めて、アインハルトさんが動くのを待ちます。
アインハルトさんの考えが読めません。相手の考えが読めないときに
不用意に動くのは危険です。
動かないことを前提に、何か考えてるのかもしれません。ですが、下手な
動きをするよりは、動かない方がより安全でしょう。
「……」
「……」
転機は、全然予期せぬところからやってきました。
「エミー、二人がかりでなのはを落とす、手伝って」
「わかりましたわ。フェイトさん、アインハルトさんを振り切れるようなら
援護に回ります」
そう、アインハルトさんを振り切れれば。
間合いを開こうとしたのを、アインハルトさんは見逃しませんでした。
おおきくふみこんで打ち込んできます。
こちらにカウンターの準備がないことを見切った行動です。
こちらはそれをシールドではじきます。
「格闘にシールドを？」
「これが私の流儀ですわ」
大きなステップで距離を開こうとします。
ですが、アインハルトさんも距離を開こうという動きにはぴったりついてきて
私の思い通りにはさせてくれません。
飛び上がろうとすれば、断空覇の餌食でしょう。
ですが、……もうすこし大きく跳び下がれば。
「壁っ！」
「もう後はないですよ」
「なら前に出るまでです」
見よう見まねのクロスカウンターを打ち込みます。
が……所詮は見よう見まね、LPはこちらの方が大きく削られます。
これを繰り返していては勝てません。ですが……。
「一撃必殺……ディバイン＝バスター！」
「覇王、断空拳！」
お互い、至近距離で必殺の一撃を撃ちあいます。
これを相殺できれば威力の大きな私の勝利のはずです。
ですが……アインハルトさんの踏み込みは、私の予想をさらに超えてました。
相殺しきれてません。……もし、LPが互角であれば、それでも私の勝ちだったでしょう。
しかし、最初のクロスカウンターで削られた分が、私の敗因になりました。
「……さすがですね。全力で行かせてもらいましたが、勝てませんでした」
「……」
アインハルトさんの返事は、ありませんでした。どうやら、直撃で
LPをすべて失い、意識まで持って行かれたようです。
こちらは、LPが二桁台に落ちただけですから、まだなんとか立って入られますが、戦闘不能です。
これで、紅組と白組の勝敗は、なのはさんと、フェイトさんの戦いに絞られました。
「なのは、これで、決着をつけるよ」
「……！。……バインド？ そしてこの魔法陣……」
「ザンバーで斬るのが無理なら、動きを止めて魔法を削り落とす。
LPを二桁まで削れば私の勝ち、削りきれなければ……」
「カウンターを防げるだけの魔法力も残さないってことだよね」
「そういうこと。……フォトンランサー、ファランクスシフト……シュート！」
魔法弾がなのはさんの周りを叩きます。ですが……
「最後の一撃、どう？なのは……」
「……ラウンドシールドで防いでLP１１０残り、ぎりぎりだけど、私の、勝ちだよ！」
「くっ……ファランクスシフトはなのはに通用しないみたいだね……」
「フェイトちゃんの魔法力がそれだけ落ちてたってことだよ。……じゃあ、お約束
スターライト＝ブレイカー！」
「かくして、第三戦は、お約束通りというか、なのはのスターライトブレイカーで
紅組が勝利となりました。審判はメガーヌ＝アルピーノ。紅組担当は中島月光
白組担当は高町ヴィヴィオ、解説は川崎冬美、実況はセインでお送りいたしました。
これで、本日の中継を終わります」