めりかるうぃっしゅ う゛ぃう゛ぃっど
〜覇王流継承者 アインハルト＝ストラトス〜
「チームは勝ったとはいえ、収束砲撃で落とされてはまだ私は未熟と言うことですね」
「なのはママの収束砲撃を受けたら落とされるのが普通だよ」
「初めから、落とすつもりで砲撃してるんですものね」
今は、非対称フラッグ戦も終わり、メガーヌさんとルーテシアさんが
試合場の後片付けをやっている最中です。
私たちは、こども組で集まって、非対称フラッグ戦の感想戦を行っているところです。
「砲撃魔法が来るのも想定してたつもりだったんだけど、格が違ったね」
「ティアナお姉ちゃんを押さえることが出来るつもりだったのにな。ね、ブランゼル」
『そうですね、マスター』
「何がそうなのかわかんねーけどよ。エミーもむちゃくちゃな作戦立てるよな」
「大人組に何か油断がなければ、時間切れに持ち込まれてしまうと思っただけですわ」
「だけど、みんなすごいよね。いつ魔法の練習とかしているの？」
「あたしは家が道場やってるから、帰ったらいつでもかな」
「家が道場やってるって、冬美ちゃんと同じなんだね」
「冬美んとこも、家が道場なのか。道理で強いわけだ」
「魔法抜き、同年代って条件なら、ちょっとは出来るつもりだぜ」
「ヴィヴィオは冬美ちゃんの修行につきあうときだけ〜」
「あの、ヴィヴィオちゃん、魔法使いじゃない人相手に、魔法を使って練習してるの？」
「ううん。魔法はほとんど勉強してないよ。一度見た魔法は完全に覚えられる、ってだけ。
練習してるのはパティシエさんの方」
「ヴィヴィオちゃんは、パティシエさんになるんだもんね」
「うん、そうだよ月光ちゃん」
「けど、どう見ても格闘家の方が向いてるよな、ヴィヴィオって、そう思わないですか、アインハルトさん？」
「私に聞かれても困ります。……まだ、手合わせしたことがありませんから」
「じゃ、ノーヴェお姉ちゃんに言って、今度は手合わせするような組み合わせにしてもらおうか」
「手合わせするような組み合わせ？」
「あれ、言ってなかったか。今日は組み合わせを変えて3戦やることになってるんだぜ。
第二戦じゃ、あたしも参戦するからよろしくな」
「ノーヴェさん、いつ来られたんですか」
「いや、さっき来たばかり。……ところでさ、コロナとリオとエミー陛下は参加することが
決まってるんだけど、アインハルトとヴィヴィオ陛下にも、出来れば参加してほしい物があるんだよ。」
「私に参加してほしい物ですか」
「ヴィヴィオに参加してほしいものって、なにかな」
「インターミドルチャンピオンシップ」
「なんでしょうか、それは」
「あれ？ 表の世界でやることがないって言ってた割には、こんな有名な大会を知らないのか」
「私は格闘にしか興味がありませんでしたから……」
「そっか、DSAAのルールでやるっていっても、インターミドルは魔法戦技が主体だからな。
格闘メインのアインハルトじゃ知らないのも無理はないか。
けど、人数は少ないけど、近代ベルカ式の格闘家だって参加するんだぜ」
「だったら、スバルお姉ちゃんも参加するのかな」
「スバルは出ないだろ。管理局の仕事が忙しいし、もう年齢制限をこえちまってるからな」
「年齢制限があるんですか？」
「ああ、参加年齢は10歳から19歳までなんだ。管理世界出身者が主体だけど、管理外世界の
人間だって参加しないわけじゃないからさ。……だから、ヴィヴィオ陛下も参加しないかって
声を掛けてるんだけど」
「えー、ヴィヴィオ清祥に行かないといけないから、時間がないよぉ」
「そこらは、あたしらの方で都合つくように何とかやってみるから、ヴィヴィオ陛下も
参加してみてくれよな」
「……インターミドルチャンピオンシップ。とは、どのような人たちが集まるんでしょうか」
「どのようなって、10歳から19歳の腕自慢の魔導師が集まるんだよ。
今回の模擬戦がDSAA公式ルール通りだろ。それと同じ形式で、腕を競い合うんだ。
魔法が使えて、class3以上のデバイスを持っていて、DSAAに所属する団体の構成員になってれば
誰でも参加できるぜ」
「そうなんですか。じゃあ、私には参加資格がないことになりますね」
「そりゃまたどうして。アインハルトは、ミッド出身だし、所属団体ってことなら
あたしんとこの道場がDSAA所属だから、うちの登録メンバーで出ればいいんじゃないか。
第一、コロナやリオだって、うちの所属で出ることになってるんだぜ」
「ですけど、私はまだデバイスを持ってませんから」
「デバイスを持って無くてあの実力なんですか。それはすごいですね」
「ありがとうございます。コロナさん。……ですけど、私にはデバイスの自作が出来る技術もありませんし
特に古代ベルカのデバイスとなると……」
「その点についてなら、あたしの知り合いに相談して、試合開始までにはなんとかしてやるよ。
要はやる気があるかどうかだ」
「やる気は……あります。自分の実力を試してみたいと思いますから」
「いい返事だ。……じゃ、あと一時間後には第二試合開始だからな」
「こんどはあたしも入れてくれよ」
「DSAAじゃ魔法使いじゃない奴は不参加なんだよな、悪い」
「ちぇ。解説やってるだけじゃ蛇の生殺しだっての」
「冬美ちゃん、後で魔法抜きの対戦をしてもらったら」
「そうでなきゃ割にあわねぇよ」
「私は……別に見学だけでいいから」
「ゲッコウは格闘家じゃねぇだろ。あたしは格闘家だからさ。自分の腕を磨かなきゃって思うんだよ」
「自分の腕を磨いて、それから、どうするんですか？」
「アインハルトさん、自分の腕を磨いてどうするって、そんなこと考えたことねえよ。
そりゃ、将来は道場を継げる程度の実力は身につけたいと思ってるけど
そんなことより、強くなるって、それだけで楽しいことじゃないですか」
「強くなること……」
「……アインハルト、どうした？ 覇王としてやるべきことがあるんじゃなかったのか」
「ええ、……覇王クラウスの思い、そういうものは確かにあります。
ですけれど、何のために強くなるのか、そういうことは考えたこともありませんでした」
「けど、戦うのは嫌いじゃないだろ」
「もちろんです。……今でも、戦い足りないと思っているぐらいですから」
「じゃ、次の対戦は、楽しくなると思うぜ。元スターズ小隊と、元ライトニング小隊の対決を
基本にするからな。人数とパーティの組み方はまだ考え中だけど基本は出来てる」
「誰かが審判にならないと、人数が非対称になっちまうぜ。やっぱりあたしも混ぜてくれよ、ノーヴェさん」
「それは無理だってば……けど、今回はエミー陛下に見学に回ってもらおうかな」
「ええ、いいですわ」
「どうしてエミーちゃんが見学なの？」
「第三戦はヴィヴィオ陛下を外してバランス調整するつもりなんですよ」
「じゃ、ヴィヴィオお菓子作ってる〜♪」
「踊るなっての。小学生かお前は」
「小学4年生〜」
「あーわかったわかった。あたしはおとなしく解説やってるとするよ」
「お願いな、冬美」
「了解ですよ、ノーヴェさん。スバルさんにもよろしく伝えてください」
「スバル姉なら、今なのは達と作戦の打ち合わせ中じゃないかな。
さてと、あたしもそろそろフェイト達んとこ行くかな。
こんどは純粋なフラッグ戦だから、攻防のバランスが大事になるだろうからさ」
「純粋なフラッグ戦？それで、ヴィヴィオはどっちにつくことになるの」
「ええと……スターズ小隊が、なのは、スバル姉、ティアナ、ジンベルリッター4人にヴィヴィオ陛下。
ライトニング小隊組が、フェイトにエリオにキャロにルーテシアお嬢にアインハルトとコロナとリオ、
そして、あたしで計8人ずつに別れることになるな」
「基本的に、こども組からフェイトさんが抜けて、代わりにヴィヴィオが大人組に入る構成になるんだな」
「ま、そういうことになるかもな。けど、ライトニング小隊組が陸戦メイン。スターズ小隊組が
空戦主体と、メリハリのある組み合わせにはなってるはずだぜ」
「……それで、いつ、開始なんですか」
「焦るなってアインハルト、試合会場を組み直してからの話だ。
じゃ、あたしはそろそろ行くから。時間になったら呼びに来るからな」
「うん、じゃあね、ノーヴェお姉ちゃん」
「ヴィヴィオはなのはおばさんの組だろ」
「あ、そうだった」
全開の戦いは、まったくの不完全燃焼でした。
なのはさんには、一矢報いるのがやっとの戦いになってしまいましたし
その後のフラッグ奪取戦では、なすすべなくなのはさんの収束魔法に
焼かれてしまいました。こんなことでは、乱世を統べる覇王になるなどとうてい無理です。
私は、もっともっと強くならなければなりません。……覇王の名にふさわしい水準になるまで。
ですけれど……けど、もっと戦える。それだけで胸が高鳴る自分がいるのを感じます。
覇王流をもっといろんな人に試してみたい、そんな気持ちです。
たとえば、なのはさんの娘、お菓子屋さんを目指しているはずなのに
格闘家に向いているとみんなから言われる、ヴィヴィオさんには、私の拳は届くのでしょうか。
そして、戦い損ねたスバルさんや、空戦魔導師のジンベルリッターのみなさんや、
幻術師のティアナさんには。
……胸の高鳴りが止まりません。戦える、ただそれだけの理由で。