めりかるうぃっしゅ う゛ぃう゛ぃっど
〜聖王陛下 高町ヴィヴィオ〜
私の名前は高町ヴィヴィオ、ヴィヴィオ＝スクライア＝高町＝テスタロッサ＝ハラオウン。
清祥小学校の小学4年生で、パティシエ見習いだよ。
いま、私たちは合宿でルーテシアちゃんの家に遊びに来てます。
アインハルトさんとか、エミーちゃん、それに、なのはママ達は修行や練習なんだけど
私にとっては、パティシエさんの勉強とは関係ないから、遊びだよね。
そして、今やってることは、セインさんの反省会です。
「反省はしてまーす」
「態度が全然反省してないっての。だいたいけが人が出たらどうするつもりだったんだ、セイン」
「怪我しないように注意してやってたってば。ちょっと楽しませようとしただけなのに
そこまで怒らなくてもいいじゃないか」
「楽しんでたらそんなに怒らないと思うよ、セインお姉ちゃん」
「陛下は厳しいなぁ。そんなにセインさんの出し物はつまらなかったですか」
「つまらないとかおもしろいとかの問題ではなく、迷惑だってことだよ、セイン」
「えー、水中に得体の知れない生き物がいるのは秘境の基本じゃないかぁ」
「本当に反省してんのかよ」
「こんどはもっとおもしろいことをやろうと思ってま〜す」
「全然反省してないだろ」
「だって、ただ温泉につかって暖まったって全然おもしろくないじゃんかよ〜。
何かアクシデントとかイベントとかなきゃせっかく秘湯に来た意味ないじゃんか〜」
「それはセインだけっ」
「あーなんだよノーヴェ。行き先は別だけど、元はといえば、同じ姉妹じゃないか」
「そうなんだよなぁ。これであたしより年上だっていうんだから」
「自慢じゃないが、お前らより精神的には大人じゃないんだからな」
「本当に自慢になってない」
「あの、セインお姉ちゃん、本当に反省してる？」
「……反省は、してます、ヴィヴィオ陛下」
「じゃ、ごめんなさいは」
「ごめんなさい」
「じゃ、ヴィヴィオ的にはもういいや、みんなはどう？」
「ふふ、私ははじめから怒っていませんわ」
「二度としないっていうならいい」
「こういういたずらは二度としませ〜ん、受けが悪かったし」
「受けたらまたやるつもりだったんだ、セインさん」
「受けなかったから怒られてるって自覚はあるんだよ」
「まあ、つっこみはなしってことで、ね、いいじゃない。アカリちゃん」
「たく、ヴィヴィオはいっつも甘いんだから」
「陛下、ありがとう」
「陛下って呼ぶのは禁止。陛下になるのはエミーちゃんだよ」
「エミー陛下も陛下ですけど、私達にとって、陛下だったのはヴィヴィオ陛下ですから」
「ヴィヴィオさん。呼びたいように呼ばせてあげたらいいじゃありませんか。
少なくとも、蔑称ではないのですから、ね、セインさん」
「ありがとうございます、エミー陛下」
「エミー陛下も意外と甘いんだよな」
「秘境に秘湯かぁ。そういう方向でお客が呼べないかな」
「お嬢は、ここを観光地にされるおつもりですか」
「つもりっていうか、いつかこの世界を開拓して一大観光地にするのが私の夢だもの。
だから、隔離処置期限が切れても、ずっとここにいるんだから」
「期限って切れてたんですか」
「そうよ。隔離期限中は、行きたいところにもいけなくて鬱だったけど
今は、その気になればミッドチルダにもいけるから、気分はすごく開放的。
だけど、ここを開拓するのが楽しいから、今は開拓メインかな」
「そうなったら、ヴィヴィオもお菓子屋さんを出店していい？」
「大歓迎だよ、ヴィヴィオちゃん」
「だけど、その前に、一人前のパティシエにならないとな、ヴィヴィオ」
「わかってるよ、冬美ちゃん」
「ところで、リオちゃん。さっき見せたのって、いったい何？」
「何って、本当は明日のためにとっておきたかったんだけど、あれがあたしのとっておきの魔法。
エミーちゃんやアインハルトさんの大人モードを参考に、自己流でアレンジした大人モードなんだ。
うちの実家は格闘やってるし、独自の魔法式を組んで、大人モードをやってみたってわけ」
「それで、炎雷砲ってどんな技？たしか炎と電気がいっぺんに出てたように見えたよ」
「コロナ、それはあたしが、炎と雷の両方の変換資質持ちってこと」
「それはすごい。ヴィヴィオは変換資質一つもないのに」
「そんなこといったらあたしは魔法が全然つかえねぇっての。
ヴィヴィオはほめどころ間違ってないか」
「えー、でも、変換資質を二つも持ってるって珍しいよ冬美ちゃん。
フェイトママだって、変換資質は一つしか持ってないのに」
「あの、ヴィヴィオちゃん、変換資質って、どういうこと？」
「簡単にいうと、魔法を物理的な何かに無意識に変えられる能力のことだよ。
フェイトママとエリオお兄ちゃんは、雷の変換資質持ち、シグナムおばちゃんは
炎の変換資質持ちだし、リインフォースIIお姉ちゃんは、氷の変換資質持ちなんだ」
「魔法って、そもそも魔力で何かを作り出すものじゃないのか」
「魔法にもいろいろあるから、一言じゃ言い尽くせないよ。
なのはママみたいに、魔力をそのまま魔力ダメージで出せる人もいるんだよ」
「さて、と。明日はこども組と大人組の対戦をやるけど、心の準備は出来てるか？」
「大人組とこども組の対戦ですか」
「そうだよ、アインハルトさん」
「対戦って、どんなことをやるんでしょう」
「今日、なのはママ達とティアナお姉ちゃん達が対戦したでしょ、ああいうのを
大人組とこども組に別れてやるんだよ。大人組は魔力制限があるから、周りを破壊して
回ったりはしないけど、それ以外は本気でやるからね」
「……本気、なんですか」
「本気だよ。なのはママもフェイトママも魔力制限入れるだけで本気は本気。
今までは、大人組同士の対戦に、こども組が混じってやっていたんだけど
今年は、趣向を変えて、大人組とこども組で対戦するんだって」
「じゃ、セインさんはこども組に参戦したい」
「セインは見学っ！」
「えー、ずるい〜あたしもいっしょにやりたいよお」
「セインお姉ちゃんの能力って、特殊すぎて出てきても練習にならないよ」
「そんなことないって。シスターシャッハみたいな高速短距離転送持ち相手なら
セインさんとの対戦もきっと役にたつよ」
「……まあ、なのはママと相談してみるね」
「やった、ありがとうヴィヴィオ陛下」
「それで、チーム分けはどうなるんです？」
「いまのところ、18歳未満チームと、18歳以上チームに分かれる予定になってる。
高町教導官にフェイト執務官にスバル防災士長とティアナ執務官にジンベルリッターが
大人組で、エミー陛下にコロナとリオ、ルーテシアお嬢様にエリオとキャロ、それから
アインハルトと、ヴィヴィオ陛下がこども組、これで8対８になる」
「セインさんの出番〜」
「まだなのはさんの許可はもらってない。それに、一応審判役は必要だからな。
メガーヌさんに頼むんでなきゃ、あたしがやらないといけない。
やっぱ、セインは見学だな」
「えー、ヴィヴィオ陛下は話をしてくれるって言ったのに〜」
「……やっぱり、セインさん、反省が足りてない」
「えー、お嬢様まで〜」
「なあ、これ、こども組がえらく不利じゃないか」
「そうかな。エミー陛下にヴィヴィオ陛下が加わってるから、それほど
こども組が不利って感じはしてないぜ。
作戦も、お嬢ならちゃんと組み立ててくれるはずだしな。
それに、こども組には、魔力制限がないんだぜ」
「ですけれど、ジュエルシードは禁止ですわね」
「次元航行艦からの魔力供給もないんだよ」
「おまえら人間の会話しろよ」
「冬美ちゃんも、魔法を習ったら？ そうすればもっと強くなるよ」
「ヴィヴィオちゃんヴィヴィオちゃん。管理外世界の人にみだりに魔法を教えるのは禁止って
なのはおばちゃんが言ってたじゃない」
「なのはママは、管理局の協力者にだから問題なかったんだよ。
だから、冬美ちゃんも協力者になればいいんだよ」
「簡単に言うなっての。まあ、あたしは見学に回るよ。
リオの大人モードが、どこまですごいものか、見てみたいしな」
「あっと驚かせて見せるからな」
「ああ、楽しみにしてるぜ。けど、次対戦するときも、かつのはあたしの方だからな」
「魔法抜きでも勝てるように、レベルを上げてやるよ」
「ライバルを持つっていいことだね、月光ちゃん」
「……なりたい自分がある人はいいなぁ。私はまだ何になりたいかも決まってないから
ライバルももてないや」
「なりたい自分っていうのはなくても、なりたくない自分はあると思うよ。
そこから遠ざかるように、なりたい人を探せばいいんじゃないかな」
「ヴィヴィオちゃんは、桃子おばちゃんみたいなパティシエさんだよね」
「うん、そうだよ、アカリちゃん」
「……なりたい、自分……」
「どうしたの、アインハルトさん」
「私の拳は、あの人たちに、届くんでしょうか」
「届かせるんだよ」
「え？」
「届かせるんだよ。なのはママは、そうやって思いをぶつけてきたんだから」
「届くかどうかじゃなくて、届かせる、んですか」
「うん、アインハルトさん」
明日は、なのはママ達との対戦です。
パティシエさんの修行とは関係ないお遊びですけど、他の人にとっては
思いを届かせるための、大切な対戦になりそうです。
ヴィヴィオも、なのはママみたいな、不屈の心を持ちたいとは、思ってます。
ヴィヴィオも、なのはママに、届かせるからね。