めりかるうぃっしゅ う゛ぃう゛ぃっど
〜聖王教会シスター セイン〜
「ちわー。野菜とたまごの配達です〜」
「あら、いらっしゃい、シスターセイン」
「セインでいいですよ。メガーヌさん」
「ふふ、いつも教会から新鮮な野菜と玉子ありがとうね」
「いえ、これもシスターとしてのつとめですよ」
「それで、今日はこれからすぐ帰るの？ なんなら、すこし遊んで帰る？」
「あんまり油を売ってると、カリムに怒られますからね。
けど、ちょっとぐらいなら大丈夫かな」
「そうこなきゃ。あなたも、まだ遊びたい盛りですものね」
「ま、そうですね」
今は夕暮れ時、そろそろ、訓練を終えた機動六課組や、遊び疲れた
子供達も夕食にやってくる頃じゃないかな。
「そうそう、セイン、料理を作るのを手伝ってくれない。
人数が多くて大変なのよ」
「それはかまわないですけど、あたしがいるのは内緒にしてくれません？」
「いいけど、どういう理由なの」
「ちょっと、楽しいことをしようかなって思ってますから」
「そう、あんまりひどいいたずらはしないようにね」
「わかってますって」
ま、温泉でちょっとしたサプライズを仕掛けるだけだからね。
いたずらっていっても、かわいいものでしょ。
「あー、もう夕方〜全然遊び足りないよぉ」
「ヴィヴィオ、おまえどんだけ遊びに飢えてるんだよ。こっちはくたくただっていうの」
「それは冬美ちゃんがノーヴェさん達と一緒に格闘の練習をしてたからだと思うよ」
「ふふ、アインハルトさんとは、仲良くなったみたいですわね」
「エミー、アインハルトさんの方が年上だろ、なんでエミーが仕切ってるみたいな言い方するんだよ」
「あら、すいません。差し出がましかったでしょうか」
「いえ、エミーさんらしくていいと思います」
「そういってくれてありがとうございます。アインハルトさん」
「明日は、とっておきで度肝を抜いてやるからな」
「とっておきって、なにかあるのか、リオ」
「もちろん。うちの実家も格闘やってるんだから、それ相応のとっておきもあるって」
「へー、リオにもとっておきがあるんだ。わたしも、新しいデバイスをルーテシアさんに
作ってもらうことになってるし、明日はとっておきの見せ合いになるのかな」
「楽しみにしてるぜ。リオ、再戦もしたいしな」
「魔法ありで魔法使いでない人と戦うのは禁止だから、再戦っていっても無理だよ」
「なんか、魔法ってそんなに危険なのか」
「使い方しだいじゃ危険だよ。力の一種なんだから」
「そっか。川崎流の拳と一緒だな」
「そういうこと」
「あ、なのはママ、おつかれ〜」
「ヴィヴィオ、ちゃんといい子にしてた？」
「もちろん〜。ヴィヴィオはいつでもいい子だよ」
「そう、それはよかった」
「あ、スバルさん、お疲れ様でした」
「おつかれ、冬美ちゃん。どう、今日一日楽しんだ？」
「は、はい、めいっぱい楽しませてもらってます」
「冬美ちゃんって、やっぱりスバルさんの前だと性格が変わるんだ」
「性格はかわってないっての、ゲッコウ。年上の人に対する礼儀だよ。礼儀」
「そっか。あ、フェイトおばちゃん、大丈夫ですか、なんだか息が上がってるように見えますけど」
「あ、大丈夫。ちょっと今日は体調が悪かったけど、明日には治ってるから」
「あんまり無理すると悪いですよフェイトさん。お医者さんに見てもらったら」
「大丈夫。自分の体を自分で管理するのも、お仕事のうちだからね」
「そうなんですか。……無理は竹刀でくださいね」
「ありがとう。月光」
「ジンベルリッターのみんなは、体調大丈夫？ 明日もハードになるわよ」
「ああ、私は大丈夫だ」
「つまんねーこときくなよ。あたしらの体調は大丈夫にきまってんだろ」
「決まってるものではないですけど、私が見たところでは、今のところ大丈夫みたいですね」
「俺もまだ元気だ」
「キャロは大丈夫？」
「うん、エリオ君」
「さあ、運動した後はもりもり食べるぞ〜」
「スバル、あんた食い過ぎると太るわよ」
「太らないぐらいに運動してるってば、ティア」
「あ、そ。まあ、フォワード魔導師だし、それぐらいは食べないといけないのかもね」
「アイスクリームもありますよ、スバルさん」
「ありがと〜話がわかるね、ルーテシアちゃん」
「毎年のことですもんね」
「ちゃんと、メガーヌさんにお礼を言わないとね」
「はーい」
そんな会話を、あたしは地中で聞いていた。
これぞセインさんのIS、ディープダイバー。
JS事件の時には、シスターシャッハにいっぱい食わされたけど
あれから修練を積んで、さらに技に磨きをかけたんだから
今度は少々の相手でも大丈夫。
と、もう食べ終わったみたいだね。じゃあ、目的地に移動っと。
「さて、食べ終わったことだし、後片付けしようか」
「はい、僕も手伝いますよ」
「あら、いいのよ。お客さんに手伝わせても悪いわ。それに、
ルーテシアが温泉を案内したいって言ってるし、先に温泉に
行ってきたらどう？」
「いえ、お世話になってばかりでも悪いですから。それに、温泉には
先にエリオとザフィーラに入ってもらった方が気兼ねが無くていいんです」
「そう、なのはさん。じゃあ、お言葉に甘えようかしら」
「すぐに上がって来ますね」
「片付けもすぐには終わらないから、ゆっくりしてくるといいわよ」
「仕事は大人数と言う。すぐに終わるだろうから、あまりゆっくりもできまい」
「ザフィーラは人型で入ってね。抜け毛の処理も大変なんだから」
「心得た」
「はい、じゃあ行ってきます」
「ルーテシア、場所は案内してあげてね」
「はーい」
「というわけで、ここが私の自慢の温泉」
「うわ、でっかい」
「これが、すべてルーテシアの設計なのか？」
「えっへん、すごいでしょう。単純泉だから、効能はあんまりないけど
熱いお湯の岩風呂にぬるめの露天風呂、打たせ湯に電気風呂まで
各種取りそろえてるから、いろいろ楽しんでね」
「心得た」
「って、なんで脱衣場まで一緒に？」
「ちょっと設計ミスで、男湯と女湯が別れてないから、脱衣所も男女兼用なのよね。
それで、ちょっと仕掛けがないかどうか調べ中。中の案内もしたいし」
「いや、いいって」
「そんな、遠慮しない。ほら、私は脱がないから気にしなくて大丈夫」
「いや、そういう問題じゃなくて」
「じゃあどういう問題？」
「……」
「……我々にも、恥ずかしいという感情はあるのだ」
「……ああ、そういうこと。残念、せっかくわたしが設計した温泉の説明を
事細かにやろうと思ったのに」
「それはキャロ達相手にやってよ。僕らは適当に入って出るから」
「りょーかーい。じゃ、わたしはママの手伝いに行ってくるからね」
「はーい。よろしく〜」
「よろしく頼む」
うんうん、ルーテシアはいない方が話が早くていいかな。
とりあえず、男性陣だけになってから話をした方が早いはず。
「あー、いい湯加減ですね、ザフィーラさん」
「そうだな」
「背中流しましょうか」
「いや、いいよ、自分で洗えるから」
「まて、ここには我々二人しかいないはずだが、今の声はいったいだれなんだ」
「その答えは、セインさんでーす」
「わっ」
「そんな驚かなくてもいいでしょう。セインさんの能力は、いまさら知った訳でもないでしょうに」
「いや、なんでわざわざ温泉なんかに来てるんですか」
「なんだ、シスターも温泉に入りたかったのか。では我々はすぐに退散することにしよう」
「あー、そんな私を仲間はずれにしなくてもいいのに」
「仲間はずれっていうか、キャロ達と一緒に入ればいいじゃないですか、セインさんは」
「少年、それは間違ってる、間違ってるっすよ」
「いや、わざわざ水着着て温泉に入るぐらいなら、みんなと一緒に入ればいいじゃないですか」
「いろいろとみんなを楽しませる趣向をこらそうというのに、一緒に入ったら
ぶちこわしじゃないですか」
「それと、水着で僕らの湯に入るのと、どう結びつくんですか」
「単刀直入に言うと、のぞきの手伝いをしてあげようっていう話なんですけどね」
「……普通に犯罪でしょ、それ」
「大丈夫、10歳までなら混浴しても全然OK」
「もう14歳ですってば」
「少年老いやすくって言うけど、本当だねぇ」
「そういう問題じゃないでしょう。あんまりからかうと怒りますよ」
「そうはいっても、のぞきに興味はあるんでしょ」
「ないです」
「ありゃりゃ、断言しましたね」
「当たり前でしょう。何がうれしくてのぞきなんかしなきゃならないんですか」
「こういうときは、のぞくのが礼儀だとは思わないんですか。のぞこうとも思わないっていうのは
みんな魅力がないって言ってるのと同じですよ」
「そんな礼儀聞いたこともありません……って、ザフィーラさん、どこ行くんですか。
自分だけ逃げるなんて卑怯ですよ」
「いや、俺はただ湯あたりしそうになったから上がるだけだ。
エリオも、あまり無理につきあわずに、上がった方がいいぞ」
「ええ、そうします」
「ありゃ、機嫌そこねるようなことを言いました？」
「言った言わないの問題じゃないですって。なんでのぞきなんてしなきゃならないんですか」
「そこが禁断の地なら、あえて踏み込んでいくのが男の道だとは思わないんですか」
「人の迷惑にならない範囲での話です」
「ドクターとは性格が違うんすねぇ」
「あの人を基準にしないでください。っていうか、あの人はのぞきをやってたんですか」
「ドクターがあたしらのぞいても仕方ないでしょう。ナンバーズはドクターの作品なんだから」
「それじゃ僕がのぞきしてもしかたないっていうことで納得してください」
「度胸がなさすぎですよ」
「度胸の問題じゃないでしょう。僕はもう上がりますからね」
「ありゃりゃ、まあ、まだ明日もありますよ」
「しませんってばっ！」
そんなに、みんな魅力がないですかね。可愛い子ばっかりなんだから
気を引くためにも、何かやったほうがいいと思うのに。
まあいいか。当初予定通り、セインさん劇場の開幕ですよ。
「みんな、今日はお疲れ様」
「おつかれ〜」
おお、かもがやってきましたね。
んじゃ、楽しいセインさん劇場の開幕といきますか。
「ねえ、この温泉、全部ルーテシアが設計したの」
「お遊びだけどね。まだサウナも設置してないぐらいだし」
「こんどくるときにはサウナも出来てるかな、ルーちゃん」
「サウナが希望なら作っておくよ。一年あれば、設計して設置するぐらいできるし」
「うん、期待してるね」
「任せなさいって……わっ」
「どうしたのルーちゃん……きゃ」
「キャロ、何があったの」
「え、あと、スバルさん、その……なんか」
「わ」
「ちょっとスバル、騒がしい……きゃあ」
「どうしたのかな」
「ふぇ、フェイトさん、水中に何かいます」
「水中に？ ルーテシア、何か温泉で飼ってない？」
「飼ってないよ。それに、温泉で飼うような生き物がいたら、最初から説明してるって」
「それもそうか」
「なんだか、大人組の方が騒がしいですわね」
「なんか生き物が出た……わっ」
「どうしたの冬美ちゃん、きゃあ！
「ふふ、確かに、何かいるみたいですわね」
「エミー、なんでエミーは落ち着いてるんだよ」
「何かさわったようですが、危害を加えるつもりはなさそうですわね」
「何かさわっただけで十分危害だっての」
「えーん、気持ち悪いよぉ」
「あー、こんどは月光がやられたか」
「……アインハルトさん、どうしたの？」
「はぁ……はっ！」
「すごい、水切り！」
「手応えがありませんでした。荷がしたみたいですね」
「エミーちゃんでもだめなんだ」
「きゃあ」
「コロナもやられたか。あと生き残ってるのは……」
「こっちにいるのはリオちゃんぐらいだと思う……」
「……わっ！」
「え、誰！」
「絶招 炎雷炮！」
な、なんですかあれは。リオが急に背が伸びたと思ったら
炎と電気の混成のハイキックですと。
完全に不意をつかれた、ばたんきゅー。
ていうか、セインさんは水中呼吸も出来るから生きてるけど、生身の人間があいてだったら
水没して溺死するところだぞ。ちょっとした冗談相手にひどすぎる。
ぶくぶくぶく。