めりかるうぃっしゅ う゛ぃう゛ぃっど
〜戦技教導官 高町なのは〜
「さて、午後からは、模擬戦をやろうか」
「はい、なのはさん」
「ところで、なのはさん。模擬戦をやるのはいいんですけれど
いったいどういう形式でやるんですか？」
「そうだね。ギャラリーもそろってるみたいだし、何より、この合宿が終わったら
ティアナはすぐフッケバイン関係の事件で、ジンベルリッターと仕事だよね。
だから、ティアナ＋ジンベルリッターと、残りのわたし、フェイトちゃん、スバル、
エリオ、キャロの５vs５でやろうか」
「わかりました」
「ティア、手加減はなしで行くからね」
「それはこっちの台詞よ、スバル」
「骨の折れそうな模擬戦になるな」
「だが、楽しみなんだろう、ヴィータ」
「もちろんだぜシグナム」
「魔力制限は入れるんですか？」
「そうだね、魔力レベルAAをリミットにしよっか。模擬戦なんだから」
「わかりました。周りに被害を出さないようにですね」
「AAでも十分周りに被害が出るぞ、シャマル」
「そこは精度でカバーしますよ。ザフィーラさん」
「言うな、エリオ。見せてもらうぞ、その実力のほど」
「エリオ君、大丈夫？」
「大丈夫だよキャロ。二人でのコンビネーションはいつも訓練してる通りのはず」
みんないい表情してるね。見学に来たヴィヴィオたちに恥ずかしくない模擬戦をしなきゃね。
「なら、時間は10分、一人でも落とされたらその時点で訓練終了、模擬戦用意……始め！」
ティアナはいつものように幻術を使って分散する。
ジンベルリッターは、シャマルを中心に、ザフィーラがシャマルの護衛の位置に
そしてヴィータちゃんがグラーフアイゼンで誘導弾をわたしの方に放ち
シグナムはボーゲンフォルムでキャロをねらってる。
「キャロ、今回はあなたが全体指示を出して」
「え、あ、はい、なのはさん」
「キャロ、危ないっ！」
エリオがフリードを操ってシグナムの矢をかわす。
うん、話しながらでも、ちゃんと周りは見えてるね。
「えと、スバルさんは間合いを詰めてヴィータさんを押さえてください。
なのはさんはスバルさんの援護射撃を、わたしはスバルさんを魔力ブースとします。
フェイトさんはウィングガードのポジションに入って警戒をお願いします。
エリオ君はリザーブ、とりあえずティアナさんの動きに対応できるように」
「O.K」
落ち着いてるね、キャロ。だけど、それは教科書通りかな。
「反応が遅いっ、ヴィータさん、覚悟っ！」
「かかったわねスバル。最初の一撃以外全部あたしのフェイク・シルエット」
「え？」
スバルがこえのした方に振り返る。
そこにいるのは、ザフィーラにまたがったティアナの姿。
「ファントムブレイザー！」
「え、あ、ちょっとっ、うそっ！」
あらら、魔法弾がスバルを包み込むように撃ち出されてる。
ティアナも魔法弾の誘導精度を上げたみたいだね。
けど、ここで終わらせるわけにはいかないかな。
「レイジングハート。アクセルシュート、連続射撃」
「Yes,my master」
「さすがなのはさん、ファントムブレイザーを全部打ち落とすなんて」
「うまく考えたね、ティアナ」
「そう、うまく考えてあんだよ。
第一弾をかわしても次の攻撃がまってんだ、センターガードはうごかねーからな。
行くぜ、アイゼン」
「ヤヴォール」
姿を消したと思ったら、もう上空、太陽方向からの一撃か。
悪くないね。
『ラウンドシールド』
「戦技教導官は後ろに目がついてるとはよくいったもんだぜ」
「後ろに目がついてるんじゃなくて、太陽方向はいつでも警戒してるってだけだよ」
「太陽方向以外なら見えるじゃねぇか、まあいい、しばらくあたしと遊んでもらおうか」
「いいよ、教導隊では、打撃戦も練習してるんだから」
わたしをヴィータちゃんとのたたき合いに持ち込もうっていうことか。
ということは、たぶんフェイトちゃんには……
「今日は勝たせてもらうぞ、テスタロッサ」
「わたしをシグナムで押さえようっていうことだね」
「そういうことだ。行くぞ」
「受けて立つよ、シグナム」
「なのはさん、フェイトさん、二人はお願いします」
「いいよ、キャロ。二人は足止めしておくからね」
「だけどキャロ、これじゃ負けないことは出来ても、勝てないんじゃないかな」
「ティアナさんの幻術を見破るのは、ケリュケイオンじゃ無理なんだよ、エリオ君。
だから、確実に二人を減らしてくれる方が、戦いやすくなるの」
「それはいいけど、ここからどうするの」
「幻術対策その2、見えるものを一つずつつぶしていく。お願い、エリオ君」
「まかせとけ」
「スバルさん、ウィングロードの高度を上げてください、空中戦に持ち込みます」
「O.K。キャロ」
キャロがフリードに乗っていないと飛べないように、ティアナも陸戦魔導師だから
ジンベルリッターの助けを借りないと飛べない。だから空中戦に持ち込めば
数的優位を作り出すことが出来る。間違ってないよキャロ。
だけど、幻術というティアナの優位に、どうやって対抗するつもりかな。
「スバルさんは突入準備を、エリオ君はヒット＆アウェイで、フリーゾーンにある
幻術つぶしをお願いします。わたしはフリードとケリュケイオンで物陰を
攻撃しますから」
「了解、キャロ」
「よし、行くぞストラーダ」
エリオは、ストラーダの推進力を使って、飛ぶことが出来る。
その竜騎士的能力を使って、地上を襲撃しようって考えみたい。
「こら、なのは、よそ見してんじゃねえ！」
「そういうヴィータちゃんこそ、距離をとって誘導弾をあわよくば
エリオにぶつけようとしてたでしょ」
「けっ。見えてたのかよ。ま、５vs５なのも忘れて一騎打ちに没頭してる
バトルジャンキーどもとは違うんだよ、こっちは」
「だけど、指示を出してるのは、ティアナじゃなかったね、今のは」
「まあ、な。けど、作戦自体はティアナ執務官が考えてるんだぜ」
「タイミングの指示は、シャマルだね」
「まあ、そうなんだけどさ。だけど、次の一手は度肝を抜くぜ」
「んー、戦技教導隊じゃ、毎日奇策を考えては試してる人たちばかりだから
あんまり驚くこともないよ」
「バトルジャンキーの巣窟かよ」
「否定、できないかな」
「ていうか、なんだあのエリオの飛び方は、ふらつきまくってねらいにくいったら
ありゃしねえ」
「あれは前にエリオにあったときに教えておいたことだよ。
まっすぐ飛ぶものは、その速さを見切れる相手にとっては、止まってるのと
まったく同じだってね。だから、まっすぐは飛ばないようにしてるってわけ」
「なんだ、なのはが教えたのかよ。ったく、余計なことしやがって」
「キャロ、あたしの出番は」
「スバルさん、もう少し待ってください。エリオ君と
わたしがいくら幻術を叩いても、ティアナさんの姿も、ザフィーラさんや
シャマルさんの姿も見つからないんです。何を考えてるのかわからない以上
下手に動き回るのは危険です」
「けど、飛ぶとしたら……え？ウィングロードにアンカーガンっ！」
「飛行魔法は使えなくても、重力制御は魔法使いの初歩の技っ！」
「えと…」
「スバルさん、ディバインバスターで迎撃ですっ！」
「あ、そか……一撃必倒……ディバイン…バスターっ！」
「甘い、そっちは幻術、本物はこっちっ！」
「上っ！」
「フリード、ブラストフレア」
「くっ」
「嘘、あれはザフィーラ」
「本命はこっちっ！」
「ティア、あたしを相手に接近戦を正面から挑むつもり？」
「執務官は一人でも活動できるように訓練してるのよ」
「いい度胸じゃない、かならず落とす……」
「スバルさん、もうそれ幻影です」
「え？」
「つかまえ……たっ！」
「あ？」
「キャロ？」
よく考えたね、ティアナ。スバルを連続で攻撃すると見せて、本命は
クラールヴィントを使ってのキャロ捕縛だったんだね。
だけど、この模擬戦は、バインドしただけじゃ勝利にならないよ。
「ここまで、なのはさん、フェイトさん、シグナム、ヴィータの4人の戦闘で
空間には魔力が満ちてる。だから……一撃必殺、スターライト……」
容赦ないね、ティアナ、これはわたしも本気で止めないとまずいかな。
「わりー、ティアナ執務官。レストリクトロックにかかった」
「ディバイン……」
「ブレイカーっ！」
「バスターっ！」
空中で大魔力の砲撃同士が激突して炸裂する。
うん、いい威力だよ、ティアナ。
「んー、ツメがあまかったかな」
「いや、十分よく考えてたね、ティアナ、及第点」
「及第点かぁ」
「落とせてないんだから、合格点はあげられないよ」
「そうですよね、けど、まだ……」
「まだ時間じゃないけど、模擬戦は切り上げようか。
一休みしたら、フィジカルトレーニングの続きをやろうね」
「はい、なのはさん」
「やるな、テスタロッサ」
「そっちこそ、シグナム」
「あの、フェイトさん、模擬戦終了だそうですよ」
「シグナム、模擬戦はおわりよ」
「きいてねーよ、二人とも」
「もう、しょうがないなあ。ティアナ、部下のことには、上司が責任を持つものだよ」
「あの戦いの中に割って入れっていうんですか、なのはさん」
「止めるように言ってるんだよ、ティアナ」
「わかりました、なのはさん……二人とも、すこし、頭冷やそうか……」
「わっ」
「なんだ」
「模擬戦は終了ですよ、二人とも」
うーん、確かに止めろって言ったけど、なにもわたしの幻影を
二人の間に出さなくてもいいんじゃないかな。
「なんだ、終了か、残念だな、テスタロッサ」
「そうだね、シグナム」
「二人とも、まだ合宿は始まったばかりよ。きっと、また模擬戦の機会もあるわ」
「急な招集がかからなければな」
「シグナムは悲観主義者だね」
「二人とも、フィジカルトレーニングに移るからね」
「はーい」
「ねえ、見てて退屈しなかった、みんな」
「退屈なんてする暇なんかなかったぜ、な、リオ」
「そうですよ、なのはおばさん」
「なのはママすごーい」
「ふふ、ヴィヴィオさんはなのはおばさまのことしか見えてなかったようですわね」
「あの……あれが、模擬戦、なんですか」
「なのはママたちの普通の訓練だよ、アインハルトさん」
「アルザスの飛竜の召喚師に竜騎士、戦技教導官に執務官……あれが、表の世界の
本気なんですね」
「本気、ってわけでもないぜ。日常の楽しみの範囲ってとこかな」
「あれが、楽しみなんですか、ノーヴェさん」
「ああ、本気の試合になったら、あんなものじゃ済まないからな」
「……少し、私たちも体を動かしませんか」
「うん、ああいうのを見てると、私たちも体を動かしたくなるよね」
「さんせー」
「はい、子供達も体を動かしにいくようだし、私たちも体を動かそう」
「了解であります」
「スバル、そこでふざけない」
「え、ティア、ちょっとしたおちゃめだってば」
うん、ジンベルリッターとティアナも、かなりの実力がついてるかな。
だけど、どれほど実力をつけても、これで十分、ってことは、ないんだよ。