「そういうわけでさ。エミーたちの試験休みは、機動六課メンバーに
　エミーとその友達をつれて、そっちで合宿しようって話は前からしてたと
　思うんだけど、そちらの都合はどうかな」
「ええ、こちらは大丈夫ですよ。あの子も最初に話を聞いてから張り切って
　準備なんかしてましたもの。きっと、歓迎すると思いますよ」
「そうか。じゃ、メンバーは、なのはさんにフェイトさん、ハチマキの姉貴に
　ランスター執務官とエリオにキャロ、それからヴィヴィオと冬美に月光、
　もちろんエミーとコロナにリオ、それからアインハルトにあたし……ノーヴェの
　総勢十四人だけど、これだけの大人数で
　大丈夫かな」
「ええ、大丈夫ですよ。あの子も張り切って拡張工事をしてますから
　十四人が四十人でも、大丈夫なぐらい」
「そんな大人数で押しかけたら、かえってこちらが遠慮しますよ」
「ご心配なく。こちらは無人世界ですもの。拡張工事ならいくらでも出来ますからね。
　それに、私も体が治ったから、買い出しもなれたものですわ」
「そういってくれると助かる。じゃ、詳しい説明はついた後でお願いするぜ」
「ええ、きっとびっくりすると思いますよ」

ぷつん。

「ママ、今のはノーヴェから？」
「そうよルーテシア。高町さんたちがこっちにくるそうよ」
「……こんどの、休みだよね……」
「ええ、そうよ」
「……待ち遠しいな」
「ふふ、そうね。この日に備えて、ずいぶんと張り切って準備してきたものね」
「……ママ、もう一度施設を見回ってきていい？」
「いいわよ。全部、あなたたちが作ったものですものね」
「……ありがとう」

私はルーテシア。ルーテシア＝アルピーノ。召喚術士。
昔みたいな大魔力による転送は、レリックを摘出されて出来なくなったけれど
ガリューを呼んだり、使役用の召喚獣を呼び出したりすることなら出来る。

「……ガリュー、おいで」

ガリュー。私の守護獣。どんなときも私を守ってくれてきた。
もちろん、今も私を守ってる。私の一番大切な子。
そのガリューは、いつものように私のそばでかしずく。
最初に見ておくべき場所は、陸戦魔導師用に作った
レイヤー建造物たち。
私の家の外れにある草原に、ガリューたちを召喚して
作り上げた、田舎町の映画セットみたいな建造物。
そして、建築家の卵として、私が作った最初の建物なんかでもある。
訓練用の建物だから、中には家具なんてないし、窓ガラスみたいな
割れると危ないものも、出来るだけ排除してある。
管理局の手助けがあれば、訓練用疑似空間を使いたかったけれど
まだ隔離中の身では、そういうものを貸してくれるはずがないし
自分で買えるほどお金持ちでもない。
出来ることは、自分の力で、この世界にあるものを加工して、工夫して
いろんな建物を造ることだけ。

「ガリュー、パターンBの機動」

ガリューに命じて、レイヤー建造物の強度確認をする。
といっても、実際に陸戦魔導師が飛び回ったかのように
ガリューに飛び回ってもらって、壊れたりきしんだりするところが
ないかどうか見てみるだけ。
……うん、大丈夫、これならAA級魔導師の訓練に使っても
人に怪我をさせるような壊れ方はしないはず。

「ガリュー、次に行こう」

次に出かけたのは、湖畔の斜面と、湖そのものを利用した
アスレチックコース。
第97管理外世界のテレビ番組も参考にして作った
いろんな仕掛けが、フィジカル面のトレーニングには役立つはず。
水面に浮かぶ木の板を飛ぶことで敏捷性を養うゾーンに
ぶら下がって移動するはしご、滑車に網に一本橋。
アスレチックコース入門にあったアスレチックコースレイアウトに
私流のアレンジを加えた、ルーテシアスペシャルコースになってる。
ガリューは、一つずつのアスレチック道具を使って、がたがないか
どうか確認中、私の方も画鋲虫を使ってひびが入ってたりしないか
確認する。……うん、ここも大丈夫。完璧。

「ガリュー、次に行くよ」

ガリューは黙って私についてくる。
次に私たちが向かったのは、宿泊用のロッジ。
ママの言う四十人宿泊可能はおおげさだけど
男女混成でも二十人以上の宿泊が出来るように設計してある。
一階は食堂や厨房や団らん室なんかを集めて、宿泊は二階に集中させた。
もちろん、言うまでもなく火災報知器は完備、スプリンクラーすら
設置して火災対策も万全を期してある。

「うふふ〜ガリュー、一年勉強しただけでこれだけのことが出来るなんて
　もしかして、私って天才かもね」

ちょっと大きなことを言ってみる。

「さて、ガリューはそこで待ってて」

そうそう、宿泊用ロッジには、大切な設備が残ってたんだった。

「じゃーん。見てこれ、井戸を掘るつもりで掘ってたら、偶然見つけた
　天然温泉。言うまでもなく掛け流し……ちょっと湯加減を見ちゃおうっと」

この温泉、源泉は熱すぎるんで、水で薄めて流してる。
だから湯加減も見てみないとちょうどいいかどうかはわからない。
自動調節装置はあるけど、やっぱりこういうのは入って確かめてみないとね。
んー、極楽極楽……

はっ。自分を見失ってしまった。
あんまりガリューを待たせても悪いし、そろそろあがろうっと。
うん、湯加減もばっちり、おはだもつやつや。
これで完璧、あとはお料理の腕をふるうぐらいかな。

「ガリュー、休んでていいよ。私はこれから4日間分の献立を
　ママと一緒に考えるから」

ガリューは、私の指示に従って姿を消す。
うふふ、うふふふ、楽しい四日間になりそうな予感。
ヴィヴィオやコロナは、私の作った建物たちを見て
なんていうかな。私にこんな才能があってびっくりするかな。
それとも、もっとすごい建物のアイディアを持ってるかな。
たとえば、お菓子の家とか。

そうだ！こんどくるときにまでに、お菓子の家を造っちゃおう。
よーし、まずは基本設計のイラストからだ、がんばちゃうぞ。

けど、まずは四日間の献立作りをママと一緒にするところからだよね。
なにしろ、ヴィヴィオたちがくるのは、明日なんだから。

---

前へ　戻る　次へ