私の名前は高町ヴィヴィオ、ヴィヴィオ＝スクライア＝高町＝テスタロッサ＝ハラオウン。
今、ヴィヴィオ達はクラウディアに乗って次元の海を航行中です。
別にヴィヴィオ達が何かする予定はないんですけど、冬美ちゃんとヴィヴィオは悪者に狙われてるので
安全を考えて、クラウディアにいます。
「つか、どこへ行くんだろうな、この船」
「わかんない。逆襲って言うぐらいだし、敵の本拠地へいきなり乗り込むのかも」
「乗り込むたって、相手は神出鬼没のフッケバインだろ、どうやって捕捉するんだろう」
「フッケバインとは限らないんじゃないかな、冬美ちゃん」
「じゃ、ゲッコウはどこだと思うんだ？」
「わかんない、けど、怪しげな会社が相手かも」
「そういや、そっちの可能性もあるんだよな。
ったく、敵は一つでいいっての。なんでこう妙な連中に絡まれるかな」
「ごめんなさい、絡まれる原因を作ったのは……」
「あー、それは言いっこなし、リリィさん。
悪いのは絡んでくる連中の方だから」
「すいません、気を遣って頂いて」
「だから謝ることじゃないって。
謝って欲しいのは、襲ってくる連中の方だ」
「そうかもしれませんけど」
「話し中すまんなあ」
「あ、はやてお姉ちゃん」
「そろそろ、目的地に到着や」
「ずいぶん時間がかかったんですね」
「いや、まっすぐ行けば本局からすぐなんやけどな。
航路を擬装するためにいろいろ寄り道したんよ」
「そんな相手なんですか」
「なにせ、相手は管理局本局から犯罪者を隠すだけの能力があるんや。
絶対に管理局に１枚かんでる。
せやから、それ相応の対応をこっちもせなあかん」
「で、これから何が始まるんです？」
「戦争や、いや、こっちの予想が当たってたら冗談抜きでな」
「本当は何が始まるんです？」
「ちょっとした査察や、相手がおとなしく出てくれたら」
「おとなしい相手なんですか？」
「わからへん。から、相応の準備をして突入せなあかん。
と、話はここまでや。まあ、クラウディアに危険は無い予定やから
ゆっくり待っててや」
「はやてお姉ちゃん、頑張ってね」
「そうやな、ここが正念場や」
そう言うと、はやてお姉ちゃんは、クラウディアのラウンジから去って行きました。
クラウディアは次元の海を出て、通常空間へと躍り出ます。
「……ここ、どこなんだ？」
「ヴィヴィオにもわかんない。
管理外世界じゃなさそうだけど」
「大気圏に突入するみたいですね」
クラウディアは宇宙空間から大気圏に突入します。
下に降りれば、また何か分かるかもしれません。
転送を使わないところを見ると、管理世界で間違いなさそうです。
クラウディアの船窓からは、やがて市街地が見えてきます。
市街地ということは、……どういうことなんでしょう？
「どっかの捜査には間違い無いんだろうけど、これだけ人が居るところが多いと
どこか分からないね」
「そうだね、アカリちゃん」
「危険はないと言ってましたから、ここからどこかへ行くんでしょうけど」
「そうだね、リリィさん」
憶測をたくましくしても始まりません。
たぶん、何かあるなら、……あ、艦内放送です。
「第一突入隊は、直ちに降下準備にかかれ、
繰り返す、第一突入大破、直ちに降下準備にかかれ」
「飛行魔法を使うんだ。本当の奇襲だね」
「飛行魔法許可はとれてるんだろうか」
「出てるから飛んでいくんじゃないかな」
「ま、そりゃそうか」
管理外世界と違って、管理世界では飛行魔法、転送魔法は許可制です。
転送魔法はそれが濫用されると危険だからですが、飛行魔法が許可制なのは
単なる交通管制の問題です。
だから、転送魔法と違って、飛行魔法は割と許可が出やすくなってます。
転送魔法で行く方が奇襲効果は高いのですが、飛行魔法で降下するのは、
その方が許可が取りやすいからでしょう。
「第一突入隊降下開始。引き続き第二突入隊は待機位置に入れ」
「割と大規模なんだな」
「船窓から魔力光が見えないかな」
「見えたら何が分かるんだよ」
「だれが行ったか分かるよ。あ、あの色はフェイトママだ」
「執務官が行くのか、じゃあ、普通の抜き打ち捜査なんだろうな」
「抜き打ちなら普通じゃないよ」
「普通の抜き打ちテストもあるぐらいだし、普通の抜き打ち検査があってもいいんじゃないか」
「抜き打ちテストも普通じゃないってば」
「でも、ヴィヴィオは抜き打ちテストを受けても大丈夫だろ」
「それとこれとは話が別だよぉ」
とはいえ、管理世界で執務官が抜き打ち捜査というだけなら
ここまで大がかりにやる必要もない気がします。
それとも、捜査先がよほど危険なのでしょうか。
「第二突入隊降下、警戒隊は待機状態を維持」
「第二突入隊で突入隊は終わりなのかな」
「どうなんだろう、窓から何か見えるかな」
窓の外からは、フリードが見えます。
ということは、突入するのはエリオお兄ちゃんと、キャロお姉ちゃんみたいです。
「なのはママは待機してるみたい」
「なのはおばさん温存かよ、何があるんだろうな」
「なのはママは戦闘メインだから、別に捜査だけなら必要ないはずなんだよ」
「でも、一緒に来てるんだろ。荒事がなきゃいいけど」
「さすがに管理世界で管理局と一戦交えたりはしないと思うよ」
「そりゃそうだけど、管理外世界じゃ普通に一戦交えてきたからなあ」
「それはヴィヴィオ達が民間人だからだよ。管理局相手には勝負してこないって。
それこそ、プレシアおばあちゃんぐらいに覚悟を決めてないと」
「だといいけど」
「第一突入部隊、交戦中。第二突入部隊は第一突入部隊の援護に入れ。
第一警戒隊、降下開始」
「警戒隊も複数いるのかよ」
「あの魔力光はシグナムお姉ちゃんにヴィータお姉ちゃんだ」
「なのはおばさんはまだ待機か、交戦中っていうのにのんきな……」
「あ、あれ見て」
「艦内放送が何も言わないところを見ると、普通の次元航行船じゃないのか？」
「そうかもしれないけど、こっちに接近してるようにも見えるよ」
「第二警戒隊、予定通り防御態勢に入れ、飛空艇フッケバイン、接近中」
「フッケバインだって！」
「っていうか、予定通りって……」
「つまり、フッケバインがここに現れることも想定通り……あ、銀十時どうした？」
「フッケバインより通信です、回線を開きます」
「はーい、みんな元気してた？ こちらはカレン。
あの研究所に先に目をつけてるなんて、お姉さん予定外だったな。
けど、ヴァンデインコーポレーションの、普通の研究所だって思ってると
管理局も大やけどするわよ。あそこは、あの研究の本拠地なんだから」
「あの研究って、なんなんですか？」
「それは、私達が突入して帰るときに教えて上げるわ。
じゃね」
「交信終了」
「あの研究って、何の研究なのかな」
「わかんないけど、なにか危ない研究なのは間違い無いよ。
だって、執務官相手に武力で抵抗してるんだよ」
「それもそうだな」
ここで待ってても、分からないことだらけです。
けど、無鉄砲に危険に身をさらすのは、自分だけではなくみんなに迷惑です。
分かることは、捜査先が研究所で、執務官相手に暴力で捜査を阻もうとするだけの
違法な行為があるだろうということぐらいです。
フッケバインが何の関係があるのかは、まったくの謎のままですけど。