「フッケバイン接近中、防御火網展開」
ヴィヴィオ達は今、クラウディアの艦内に居ます。
そのクラウディアは、今、とある研究所の捜査のために大気圏を航行中です。
そして、大気圏を航行中のクラウディアに向けて、フッケバインが接近してきました。
もしかしたら、挟み撃ちに遭うのかもしれません。
「けど、はやておばさんだって、その程度は想定済みだろ」
「まあ、なのはママがまだ残ってるから、大丈夫なんじゃないかな」
「はやておばさんも待機してるし……あ、打ち方始めた」
船窓から、見えるのはフッケバインへのクラウディアによる砲撃です。
しかし、クラウディアの砲撃は当たってもフッケバインには全然効いてないみたいです。
「なんだあれ、そんなに重装甲なのか？」
「うーん、なんでだろ、当たってはいるのになあ」
フッケバインは体当たりをかけてくるつもりのようです。
それをクラウディアは回避しようともしてません。
「おいおい、大丈夫なのかよ」
「大丈夫だと思うけど……」
「神出鬼没のフッケバインなんだから、むしろ現れてくれたのを好機と思ってるんじゃないかな」
「つまり、向こうが接近してくるのが想定の作戦？」
「そうでもないと、こう無策な理由が分からないよ」
「無策、なのかな」
「当たるぞ」
冬美ちゃんの言葉は、ちょっとだけ外れました。
フッケバインの狙いは、体当たりではなく、接舷でした。
ここまで接近されると、砲撃も危険ならしく、クラウディアも撃ち方を止めてます。
「予定通り接舷戦に入る、突入部隊は直ちに飛空艇フッケバインへ突入せよ」
「ここまで全部予定通りだって。さすがはやてお姉ちゃんだね」
「それはいいんだけど、戦力が二分されてるぜ、大丈夫なのかな」
「大丈夫だよ、なのはママが残ってるし」
「シグナムおばさん達もいるからな。大丈夫だといいけど」
「はやてお姉ちゃんの作戦だよ、大丈夫だって」
なのはママを先頭に、ヴォルケンリッターが突入を開始します。
が、フッケバインからも、こちらへ突っ込んでくる相手がいるようです。
「クラウディア相手に突入してくるぜ、大丈夫なのか？」
「うーん、なのはママが向こうに行ったし、大丈夫じゃないかも」
「何が起きるんだ？」
「総員に告ぐ、フッケバイン先遣隊がクラウディアに侵入した。
武装班及びフォワードチームは直ちに排除にかかれ」
「ちゃんとはやてお姉ちゃんは予備を残してるよ」
「けど、それはフッケバインだって考えてるだろ、大丈夫なのかな」
『カレンより通信、回線を開きます』
「どんな通信なんだ銀十時」
『はーい、よい子の味方カレンさんだよ。
いろいろとやることはあるんだけど、今はまずあなたたちを保護するわ。
じっとしててね。これからそっちに行くから』
「行くからって、場所が分かるんですか」
『銀十時が誘導してくれるからすぐ分かるわよ、じゃ、すぐ後で』
「おい、銀十時、なんであいつらを誘導するんだよ」
『誘導しているわけではありません。どうやら、彼らは私の位置を知る方法を持っているようです』
「はー、それじゃ逃げても無駄か」
「じょぶじょぶ、はやてお姉ちゃんはそれも計算済みだよ」
「だといいけどよ……」
こっちにフッケバインのメンバーが接近してきてることを
ライチェントゥークスを使って、リインフォースツヴァイお姉ちゃんに連絡します。
狙いがここと分かれば、防衛方法もあるでしょう。
「だといいけど……」
「スバルお姉ちゃん達が阻止に入ったって」
「なら安心出来るかもな。スバルさんだろ」
「けど、新手を送り込まれたらどうするのかな」
「そこは、なのはおばさん達がなんとかするんじゃないかな」
フッケバインと研究所の二正面作戦を展開してるはやてお姉ちゃんです。
戦力はいくらあっても足りないはずですが、どういう工夫をするのか謎です。
そんなことを思っていると、突然扉が切り裂かれます。
「はーい、よい子のみんな、カレンさんだよ〜」
「よい子のみんなって、途中阻止部隊が居たはずなのに」
「そっちは他のメンバーで押さえてるわ。
別にクラウディアを沈めようっていうわけじゃないのよ。
ただ、あなたたちを保護しに来ただけ」
「保護って、どういうことだよ」
「エクリプスウィルスは、殺人ウィルスよ、いろんな意味で。
その危険から冬美ちゃんを守るには、私達と一緒に行動した方がいいの」
「冗談じゃない！」
「あらあら、聞き分けのない子は嫌いよ」
「そういう問題じゃないだろ。今管理局じゃ治療法を探してる。
イクスヴェリア用ワクチンだって開発できた。
エクリプスウィルス用のワクチンだって、近い将来……」
「開発できるとは思えないわ。開発できたとしても、それを使う前にやることがあるわよ」
「やる事って？」
「エクリプスウィルスを復活させ、それを悪用しようとする連中へ罰を与えることよ」
「それだって管理局がなんとかするだろ。管理局だってアホの集まりじゃないはずだろ」
「バカの集団じゃないとしても、腐敗した組織よ。
それじゃヴァンデインコーポレーションは止められない」
「だからって、何をするっていうんだよ」
「私達の手で、ヴァンデインコーポレーションの悪事を暴いて、連中を壊滅させる」
「管理局なら無理なことが、フッケバインなら出来るというのか」
「出来るわ」
カレンさんは言い切りました。
だけど、なのはママに無理なことが出来るとはとても思えません。
「時間が無いわ、力尽くでも連れて行く」
「そんなことさせない！ ライチェントゥークス、魔法使用許可を」
『分かりました、我が主』
「銀十時、戦闘モード。ゲッコウは逃げろ、あたしが援護する」
「う、うん……気をつけて」
「スバルさんたちが来るまでの時間稼ぎだ、なんとかする」
「リアクトします、冬美さん」
今、ここにフェイトママ達が居てくれたら、と思います。
だけど、フェイトママもシグナムお姉ちゃん達も、エリオお兄ちゃんもキャロお姉ちゃんも
みんな研究所の方に行ってしまいました。
割とここは手薄です。だからこそ、カレンさんはここに来てるんです。
この状況、相手の実力は分からない。
果たして、私達はカレンさんに拉致されずに済むんでしょうか。